June 14〜 July 20,  2014

”What's Your Last Supper Like?”
最後の晩餐で味わう食事は?


今週は、イスラエル・パレスティナ情勢の緊迫が益々高まっていたけれど、そんな中、 7月17日木曜に起こったのが、マレーシア航空17便のミサイルによる撃墜事件。
乗員、乗客 298人の命が失われた同事件が起こったのは、現在戦争状態と見なされている ウクライナ東部の上空。 マレーシア航空側は、ルートの安全を確認した上での飛行だったと主張しているものの、 航空関係者は、オランダのアムステルダムからクアラルンプールに向っていた17便が ウクライナ上空をあえてルートにしたのは、コスト削減のためであったと指摘。
実際、17便の機種である ボーイング777-220ER機は、乗員、燃料、保険、機体メンテナンス等を含めた 1時間当たりの飛行コストは日本円にして約250万円。 この飛行時間を縮めることが、航空会社の利益を増やすのは言うまでもないことで、 マレーシア航空は 安全が定かではない ウクライナ上空を飛行ルートにすることによって、 乗客1人当たり$66ドル(約6600円)のコスト削減をする計算になっていたことがオーストラリアの メディアによって指摘されているのだった。
したがって、同機をミサイルで打ち落としたのがロシアであっても、 ウクライナであっても、マレーシア航空側への非難は避けられない状況になっているのだった。

また墜落現場からは、犠牲者の私物が盗まれていることも指摘されており、 マレーシア政府は、特にクレジット・カードの盗難・悪用を危惧するコメントを発表。
さらに犠牲者の遺体が2日も真夏の高気温の中で放置された後、 冷蔵設備のある列車に運び込まれたことについても、 様々な批判が聞かれていて、 今後もこの惨事の捜査と事態収拾には 世界中の関心が注がれることだけは確かなのだった。




さて話は全く変わって、金曜日に私が参加したのが、第5回目のディナー・クラブのメンバーが再び集まっての バーベキュー・パーティー。
例によって、美味しいワインとお料理を味わいながら、ガールズ・トークが何時間も続いたけれど その中で出てきた話題が、「最後の晩餐で何を食べるか?」。
実はこのメンバーで、ディナー・クラブの食事をした際にも、この話題が登場していて その時に私が話していたのは、「今、ニューヨークで何処でも好きなレストランに連れて行ってあげる、と言われたら、 絶対にマディソン・スクエア・パーク(写真上左側がそのディッシュ)を選ぶけれど、生涯で最後の食事だったら、 もっと日ごろから自分が気に入って食べているものが食べたい」ということなのだった。

今もその気持ちは変わらないけれど、金曜日のメンバーがこぞって「最後の晩餐」のメニューに挙げていたのは 美味しいお寿司。 私はと言えば、お寿司とステーキの間で迷っていて、加えて麺類には全く未練がないけれど、 美味しいパンを食べずして死にたくないという願望もあって、最後の晩餐メニューが支離滅裂なものになっていたのだった。

でも普通の人生を送っている人々にとっては、「これを食べ終わったら、死ぬ」という状況が訪れることは まず無いので、 自ら「最後の晩餐」メニューを選ぶというのは、頭で想像するのがせいぜい。
「最後の晩餐」を自ら選べる存在として、私が唯一思いつくのはアメリカの死刑囚なのだった。

死刑というのは、アメリカでは最も税金が掛かる刑罰なので、その上に税金によって 死刑囚の「最後の晩餐」が賄われることを不満に思う アメリカ市民は少なくないというけれど、アメリカの刑務所では死刑囚が刑の執行前に、 自分が望んだメニューを味わえるというのがしきたり。
特に本人がリクエストをしない場合は、州や地方自治区が定めた 「最後の晩餐メニュー」があてがわれることになっているのだった。

それがどんなものかと言うと、写真上右側が フロリダ州の「あてがいぶちの 最後の晩餐メニュー」。 ミディアム・レアのステーキに、卵3つを使った卵料理、ハッシュブラウン、バター・トースト、ジャム、ミルク、オレンジ・ジュース というのがそのメニューなのだった。






上の写真4枚は実際に死刑前に死刑囚本人によってリクエストされた「最後の晩餐」メニュー。
写真上、上段左は 連続レイプと殺人の罪で 52歳で死刑になった有名な犯罪者、 ジョン・ウェイン・ゲーシーがリクエストした食事。 KFCのフライド・チキン・バケットと、フライド・シュリンプ、フライド・ポテト。そして1パウンドのイチゴ というのがそのメニューの内訳。 ジョン・ウェイン・ゲイシーは、逮捕される前にはKFCの3店舗でマネージャーを務めており、 明らかに同チェーンのフライド・チキンを好んでいたようなのだった。

写真上、上段右は、強盗、窃盗、殺人の罪で49歳で死刑になったロニー・リー・ガードナーの 最後の晩餐メニューで、 ロブスター、ステーキ、バニラ・アイスクリームを添えたアップルパイ。 彼は、これを何故か映画「ロード・オブ・ザ・リングス」を見ながら 味わうことをリクエストしたという。

写真上、下段左は、強盗、脱獄、殺人罪で49歳で死刑になったスティーブン・アンダーソンの 最後の晩餐。グリルしたチーズ・サンドウィッチ 2切れと、コーン&赤カブ、カッテージ・チーズ、 チョコレート・チップ・アイスクリームを添えたアップル・パイというのがそのメニュー。 彼が死刑になったのはカリフォルニア州で、やはり他の州の死刑囚に比べると、彼のメニューはヘルシーな 内容になっているのだった。

そして写真上、下段右は、 1995年に起こったオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件のテロリスト、ティモシー・マクベイが 2001年6月11日に死刑になる前に味わった最後の晩餐。 彼がリクエストしたのは、チョコレート・チップ入りのミント・アイスクリームを2パイントのみ。

やはり個人がリクエストしたフードは、個人の生活や好みを反映したものになっているけれど、 概してメニューに加わるのがステーキ。 南部の死刑囚については、土地柄を反映して圧倒的にフライドチキンをリクエストする傾向にあって、 デザートは写真上でも登場している通り、アイスクリームとアップルパイというリクエストがやはり非常に多いようなのだった。


日本人の多くは、最後の晩餐が選べるとしたら、ご飯とお味噌汁、もしくはお寿司、ラーメンという意見が非常に多いといわれているけれど、 アメリカの死刑囚の中には、最後の食事をすること自体を拒むケースも少なくないとのこと。
かく言う私も、自分の人生があと数時間だと分かっていたら、「死ぬ前にこれを食べよう」と思うよりも、 食欲が失せていると思うのだった。 そして、残された時間は家族や親しい友人に手紙を書くなどして過ごすと思うのだった。

実際に死に直面した人々が、真っ先にするのが家族など 愛する人に何とか最後のメッセージを伝えようとする努力。 たとえ、目の前に特上のお寿司が並んでいたとしても、誰もそれに手を出さないと思うのだった。
そう考えると、食事によって食欲は満たせたとしても、人生を満たすのはやはり人間関係。 食事にしても一緒に味わう親しい友人や家族が居るからこそ、美味しく感じられると思うのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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