July 11 〜 July 17 2016

” Digital Nomad = NYC Homeless ”
今NYで増える 新しいタイプのホームレス



今週も、7月14日のバスチーユ・デイに フランスのニースでトラックによるテロが起こり、80人以上の死者を出し、世界を騒然とさせていたけれど、 その翌日の15日にはトルコ軍によるクーデターが起こり、あっという間に失敗しているのだった。
このクーデターが 少なからず今後のアメリカに影響を与えると見込まれるのは、米国に病気治療を兼ねて亡命中のイスラム教指導者、ギュレン師が 今回のクーデターを遠隔操作していたという疑いとともに、これに米国政府も関与していたという見方が聞かれているため。 そのトルコは、アメリカにとってISISとの戦いにおける重要なパートナーであると同時に、最も重要な米軍拠点。 だからと言って トルコ政府からレギュン師引渡しの要請が来た場合、アメリカ政府は人道的な理由から それを易々と受け入れることはできないとあって、 今後のトルコ情勢がアメリカの対ISIS戦略に多大な影響を及ぼすことが予測されているのだった。

今週ニューヨークで最もショッキングに報じられたのは、7月12日の火曜日にブルックリンのブッシュウィックで、33人が合成マリファナ ”K2”の使用で 病院に運び込まれたというニュース。
K2は過去数年で急速にユーザーを増やしており、 その理由は1パッケージ 10ドルという安価で 街中の店で簡単に手に入るため。 これまでは成分とパッケージを変えては、法の網を潜り抜けて合法的に販売されてきたのがK2。 でも ”簡単に購入出来る合成のマリファナ” という軽いドラッグのイメージとは裏腹に、 たった1回の使用でも死に至るケースが報告されており、ニューヨークではその販売が禁止になっていたのだった。
しかしながら 取扱店にとっては重要な収入源であることから その販売は続いており、 今やK2のグラウンド・ゼロと言われるのがブルックリンのブッシュウィック。
K2でハイになった人々が、ストリートや住宅の敷地内で吐いたり、放尿をするだけでなく、 錯乱して歩行者に絡んだり、電柱や壁に寄り掛かったまま意識不明になるなど、 このところ その状況は益々悪化の一途を辿っているのだった。 今週火曜日を含む1週間にK2が原因で病院に収容された人々の数は 100人を超えており、これは6月1カ月間の収容人数に匹敵するもの。 このため、今週にはNYPDが K2販売店の摘発に乗り出したけれど、購入者の証言を元に取り調べをしたストアを含む、全ての店から 一切K2が押収されることはなく、捜査の難しさだけを印象付けていたのだった。




ブルックリンでK2使用者がゾンビのように徘徊していた今週、アメリカ中のゲーマーをスマートフォンを眺めるゾンビのように 徘徊させていたのがポケモンGo。その 記録破りのヒットぶりは既にCube New Yorkでもお伝えしているけれど、 ポケモンを追いかけるあまり、他人の民家から、動物園のトラの檻にまで入り込んだ人々が不法侵入で逮捕されている一方で、 電柱に激突したり、地下鉄のプラットフォームから落ちそうになる人々が続出。 またプレーヤーをターゲットにした窃盗事件も全米各地で起こっているけれど、 それらの事件は必ずしもポケモンGoのアプリを使ってプレーヤーを誘き出ている訳ではなく、 ポケモンGoをプレーしながら歩いている人は ゲームに集中して注意力散漫になっているため 恰好の犯罪ターゲット。
このため、NYPDを始めとする全米各地の警察は、ポケモンGoを夢中でプレーすることが事故や犯罪を招くことをゲーマーに警告しているのだった。

今後200カ国で展開が見込まれるポケモンGoはこのところ業績が停滞していた任天堂の救世主になると言われているけれど、 アメリカのビジネス業界が注目しているのは、実際にゲームのテクノロジー面をクリエイトしたナイアティック社が ポケモンGoのようなオーグメント・リアリティ・ゲームで どんな経済インパクトや今後の展開を狙っているのかということ。  ナイアティックはグーグルの親会社アルファベットからスピンオフした企業で、グーグル・マップ部門の精鋭を集めたオーグメント・リアリティの最強チーム。
任天堂のような企業は”業績=お金儲け”が目的であるけれど、ナイアティック=アルファベット(グーグル)は、 10年後、20年後の社会や経済のブループリントを描いて、プロダクトやサービスだけでなく、そのニーズを世の中に生み出している企業。 同様の事はゴールドマン・サックスなどの企業も投資を通じて行っていることで、 ゴールドマンの場合は、特定の金属を買い占めて市場価格を操作したり、 犯罪が増えることを見越して刑務所管理会社に投資をするなど、世の中の動向が企業が描くブループリント通りになることによって、 単なる利益や業績以上のものを手に入れているのだった。
したがって、グーグル(=アルファベット)ほどのリソースを持たない企業は、グーグルが向かう方向に常に関心を払っているのが実情なのだった。

その傾向はアップルも然りで、同社が次なるポケモンGoを発掘するために製作を決定したのが、「Planet of Apps / プラネット・オブ・アプス」というリアリティTV。 (日本語で言う”アプリ”は、英語では”アプ”で ”アプス”はその複数)
このタイトルは「Planet of Apes / プラネット・オブ・エイプス(猿の惑星)」を真似たもので、 元メジャーネットワークのエグゼクティブをプロデューサーに迎え、参加者がクリエイトしたアプリを競い合うコンテスト・スタイルの番組になるとのこと。 現在はオープン・キャスティングの真っ最中で、既に完成したアプリを8月のデッドラインまでにアップルに提示するのが条件。
今や世の中を征するための最も有効な手段は、メディアでもソーシャル・メディアでもなく、アプリになってきているのだった。




奇しくも今、ニューヨークで増えていると言われるのが、そんなアプリを駆使したサイバーサヴィー、デジタルサヴィーなホームレス。
今やニューヨーク市のホームレス・シェルターは6万6000人を収容し、史上最高のホームレス人口と言われるけれど、 以前このコーナーでもお伝えしたと通り、昨今のホームレスは家は無くても仕事があり、携帯電話を所有し、 子供を学校に連れて行くなど、家が無い以外は普通の人と同じような生活をしているケースは少なくないのが実情。 すなわちブルーカラーの給与が減って、レントがアップした結果、レントだけが払えないという人々が ホームレスになっているケースが決して少なくないのだった。
でも、昨今増えつつあるホームレスは 基本的にはジョブレス。すなわち定職が無い人々で、 シェルターに出向くのを拒み、アプリを駆使しながら生き延びている人々なのだった。

彼らは自らを”Digital Nomad / デジタルノマド”と呼ぶ傾向にあるけれど、 デジタルノマドとは オフィスを持たず世界中を自由に旅行しながら インターネットを使って仕事をする”デジタル時代の遊牧民”を 意味する言葉。 この本来の”デジタルノマド”と 昨今のホームレスとの共通点は、スターバックス等の フリーのWifiと、 スマートフォン、もしくはラップトップ・コンピューターを駆使して生計を立てていること。
デジタルサヴィーなホームレスたちは、デート・アプリのティンダーで、一晩、もしくはそれ以上の期間、アパートに転がり込める相手を探したり、 フェイスブックで昔の友人を探して、その家を訪ねて宿泊させてもらう一方で、 新しい友人を作りながら、近い将来の宿泊先を増やす努力を惜しまないとのこと。 またそんなフェイスブック・フレンドに働きかけて、クラウド・ファンディングのサイト、”Gofundme / ゴーファンドミー”に作った、 自分の生活を支えるための基金に対して寄付を仰ぎながら、直ぐにキャッシュが必要な時は 単発の仕事をインターネット上で見つけており、 ありとあらゆる収入源と、宿泊先をネット上で模索しているのだった。
もちろん、Airbnbの激安の宿も 彼らにとっては大切な滞在先であるけれど、 部屋より遥かに安く借りられるのがカウチ。 ネット上には 個人宅のカウチ(=ソファー)を寝床として提供するサービスも存在しているのだった。





中には、処方箋薬を常用するホームレスも居るけれど、インターネット上で低所得者用の割引クーポンを入手することによって、 普通の人より遥かに安価にドラッグを入手しているとのこと。
また こうした薬物の使用者に対しては 往々にして友人や家族は、ドラッグにつぎ込むことを危惧して あえてお金を与えない傾向にあるけれど、その対策としてフード・デリバリーのウェブサイトにアカウントを作り、 そこにお金を入金してもらうようにすると、自分の払ったお金が食べ物に使われても、ドラッグの購入資金にはならないことが分かっているため、 友人・家族が比較的ためらわずに お金を入れてくれる傾向にあるという。

要するにこうしたサイバーサヴィーなホームレスは、通常のホームレスがストリートで行っている 物乞いの行為を インターネット上で行っていることになるけれど、ストリートのホームレスが見ず知らずの人々に対して物乞いをするのに対して、 彼らは、知り合いやフェイスブック・フレンド、クラウド・ファンディングを通じて 自分の状況に共鳴や同情をしてくれた人々をターゲットとしたもの。
一見気楽そうに見えるものの、彼らのフラストレーションになっているのは 生活のコントロールができないこと。 こうしたサイバーサヴィーなホームレスは、かつてはアイヴィーリーグの名門校を卒業していたり、ある程度の収入がある仕事をしていた人々。 そんな本来能力や魅力がある人々だからこそ、ティンダーのようなデート・アプリで相手が見つかったり、 クラウド・ファンディングを通じて、彼らを助けたいという人々が居る訳だけれど、 そんな彼らがホームレスになってしまったきっかけは、病気を患ったり、仕事を解雇されて、時にドラッグに手を出して、解決策が見出せないまま、 家賃を滞納してアパートから追い出されるというシナリオが殆ど。
さらには、自分が借りているアパートをAirbnbで旅行者に貸し出して生計を立てて、自分は友達の家や ティンダーで知り合った相手の家を 泊まり歩くという、家があるホームレスまで出現しているのが現在。
こんな状態なので、ホームレスの定義はどんどん広まる一方なのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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