July 18 〜 July 24 2005




1日100ドル、21日間で肌は若返るか?



6月末にいきなりバーグドルフ・グッドマンから メッセンジャー・サービスで送りつけられてきたのが写真右の重箱を一回り小さくしたサイズのボックス。
見ると箱にはラ・メールのロゴが入っていたし、めっぽう重たいボックスなので、きっとラ・メールがサンプルでも送りつけてきたのだと思って 中を開けてみたところ、入っていたのは箱のサイズと同じ分厚い2枚のカード。 1枚目のカードには、「バイ・インヴィテーション・オンリー。ザ・ファースト・21デイ・スキンケア・フェノメノン・イン・ザ・ワールド。ラ・メール イントロデューシス・ジ・エッセンス」 と書かれており、新しいプロダクトのプロモーションであることは直ぐに分かったけれど、 この2枚のカードが入っただけの立派なボックスは、測ってみると重さが何と464グラム。だから、これを製作するだけでも かなりのお金が掛かっていると 思われるけれど、それをよりによってメッセンジャーで送りつけてくるというのは、同じニューヨーク市内とは言え、約15ドルは送料に掛けているということになるのである。
2枚目のカードには、プロダクトの説明が若干されており、既にプロダクトが私の名前でリザーブされていること、 そしてプライベート・アポイントメントをアレンジするため、後日バーグドルフ・グッドマン側からコンタクトがあることが記載されていた。

こうまでされると、否応にもプロダクトへの興味が湧いてくるというものだけれど、実際3日後には、 バーグドルフ・グッドマンで私のショッピングを担当している女性から電話があり、私は「一体いくらのプロダクトを売りつけられるんだろう」という思いを 抱きながら、その翌週にプライベート・アポイントメントを入れることになった。
当日バーグドルフのラ・メール セクションに出掛けてみると、ラ・メールのマネージャーと、私の担当者が2人揃って 迎えてくれて、 売り場の奥にある、日ごろはトリートメントのために使用している個室に通されることになった。 部屋に入ってみると、テーブルの上には大きなラ・メールの箱があり、その前にはプティ・フールとシャンペンが用意されており、 途端に私の頭をよぎったのは 「これはかなりの大散財をさせられる!」という予感だった。

椅子に座った途端に、ラ・メールのマネージャーが 先ず説明を始めたのが、クリーム・ドゥ・ラ・メールのミラクル・ブロスについて。 これについては、私は自分のサイトで商品を売っているくらいだから、今更説明をしてもらうことも無いので 流して聞いていたけれど、 彼女によれば、「これまでのラ・メールのラインで、このミラクル・ブロスが最も多く含まれていたプロダクトは、ザ・コンセントレートで60%」なのだそうで、 それについては、「ザ・コンセントレートってそんなに濃厚なプロダクトだったの?」と思わず反応してしまうことになった。
すると、マネージャー女史は意味ありげにニッコリ微笑んで、「でもこれから貴女に紹介するこのジ・エッセンスには、ミラクル・ブロスが90%以上 の濃度で含まれている上に、フェイスリフトと同じくらいの更なる効用があるのよ」と言いながら、仰々しく箱を開けて見せてくれたのが、 核兵器保存容器のような物体。(写真左)
マネージャー女史によれば、この楕円形のプラスティック容器の値段だけで数百ドルはするのだそうで、これに納められている3本のアンプルには、 それぞれ容器から磁気が送り込まれており、常にジ・エッセンスの成分がフレッシュで活性化された状態に保たれるというハイテク容器であるという。
アンプルは1本が1週間分で、ジ・エッセンスは3週間、すなわち21日間のトリートメント・プログラムとしてデザインされたものである。 それぞれのアンプル用にスポイトが3本、箱の引き出しにセットされており、箱にはアンプルを携帯するためのスウェードの袋、 プラスティック容器ごと旅行に持参するためのバッグ、そしてシャネルやプラダのバッグのようにオーセンティシティを証明するカードまでが添えられ、 さらに、英語、フランス語、日本語、アラビア語、韓国語、中国語を含む11ヶ国語で商品説明を記載した小さなブックも化粧箱のポケットにセットされている。

ここまで見事にお金が掛かったプロダクトを見せられれば、その効用も特別で、お値段もとんでもなく高いことは容易に想像がつくけれど、 まず効用については、クリーム・ドゥ・ラ・メールのミラクル・ブロスが最もピュアな状態で含まれたプロダクトであるので保湿力、保護力に優れているのは言うまでも無いけれど、 このミラクル・ブロスの他にジ・エッセンスに特別に含まれているのが、メイン州の海でだけ取れる特殊な海藻からの栄養分で、 これによってジ・エッセンスを使用している21日間、肌は、私が起きていようと、寝ていようと、眠った状態に保たれ続けるのだという。
肌にとって睡眠がどれだけ大切であるか?は今更説明する必要も無いと思うけれど、 21日間、ぶっ続けの状態で肌が眠り続けることにより、肌は若さをどんどん取り戻し、新陳代謝を続け、細胞はどんどん活性化され、 3週間後には、生まれ変わったような肌、フェイス・リフトされたような肌になるというのがこのジ・エッセンスのセールス・ピッチである。 加えてラ・メール側の調査によれば、ジ・エッセンスの使用後も3ヶ月の間、肌は改善を続けることが明らかになっているという。

このジ・エッセンスによるトリートメントは年齢や肌質に応じて、年に1回〜2回行えば肌の若さが保てるとのことであるけれど、 メイン州の特殊な海藻が大量に取れない上に、これをエキスにするまでに数ヶ月の時間を要するため、 ラ・メール側で初回に生産したプロダクトの数は僅か300ユニット。このうちメジャーなメディアのために確保された分や アメリカ以外の各国への配給分があるため、 バーグドルフ・グッドマンのような有力なデパートでさえ、確保したプロダクトの数は35ユニット。 この35ユニットをバーグドルフのベスト・カストマーからオファーを始めているというけれど、同プロダクトについての記事が6月号のヴォーグ誌に 記載されたため、これを見て問い合わせをしてきたカストマーが既にウェイティング・リストに名前を連ねているという。
私がバーグドルフ・グッドマンの35人のベスト・カストマーに入るかどうかはかなり疑わしいものがあるけれど、 要するにマネージャー女史は、如何にジ・エッセンスが希少なプロダクトであるか、そして私が買わなくても、買いたがっている人は沢山居ることを説明してくれた訳である。

ここまで言われれば、もう試してみたくてたまらなくなるのが人情というものであるけれど、問題はそのお値段。
最初に私の頭をよぎった値段は2400ドル程度というもの。これはマネージャー女史がフェイス・リフトという言葉を口にしたからで、 フェイスリフトの効果を謳う商品がフェイスリフトの半額以上するはずが無いと思ったのと、容器とパッケージ、インヴィテーション等に400ドル掛かったとして、 商品本体はその約5倍の価格をつけると思ったので、400 x 5 + 400 = $2400.00 程度と見積もったのである。
でも実際に言われたお値段は2100ドルと、私の見込みを若干下回るもので、簡単に割り算をすれば1日100ドルのトリートメントということになる。
「2000ドル以上だったら、バッグを買った方が良いから、どんなに薦められても買うのは止めよう」と心に決めて出掛けた私であるけれど、 今月は私の誕生日があることに加えて、「記事を書けば会社の経費で落とせるかも・・・」ということが、0.3秒くらいの間に頭の中を 駆け巡って、気付いたときにはもうクレジット・カードを担当者に渡しているような有り様だった。

こうして入手したジ・エッセンス(ちなみに、日本では「ザ・エッセンス」が正式名称になるようです)であるけれど、 難しいのは何時から使いはじめるか?である。
本来ならば季節の変わり目が望ましいと説明されたけれど、早く使いたくてウズウズしているから、「秋までなんて待っていられない」 という気持ちで 一杯であるけれど、夏は、オイリー・スキンの私にとっては、1日に3回は洗顔をする季節なので、ジ・エッセンスの成分を洗い流してしまうかもしれない・・・と思うと うかつにスタートできないのである。
ちなみに、ジ・エッセンスの試用期間は、朝晩の洗顔後は直ぐにジ・エッセンスをつけて、その後クリーム・ドゥ・ラ・メールを使用するだけで、化粧水も 美容液も使用の必要はなく、アイ・クリームさえつけなくて良いという。 だからスキンケアは、いつもよりもずっとシンプルになる訳だけれど、クリーム・ドゥ・ラ・メールを真夏のデイ・クリームに使用するというのは、 オイリー・スキンの私にとっては少々気が重いことでもあり、今、私の心の中では、2100ドルも掛けている超高額プロダクトを、万全のタイミングで 使うか?、早く使いたい欲望を優先させるかの葛藤が繰り広げられているのである。
既に一足先に、このプロダクトを使い始めている美容関係者によれば、使い心地は最高に良いのだそうで、容器を見るたびに私も胸の期待が 高鳴る思いであるけれど、未だアンプルにスポイトを入れる勇気(?) が湧かないのである。
でも、使い始めた暁には、毎日のように肌をチェックして、21日後にはこのセクションでご報告する予定なので、 1日100ドルのトリートメントに興味がおありの方はお楽しみに!

ふと思い出してみると、プライベート・アポイントメントの際に、1回分の使用量を手に取らせてもらったけれど、考えてみるとあれは50ドル分に匹敵した訳で、 しかも1人の顧客に1つのプロダクトを売るために、個室で30分を掛けて説明をしている訳であるから、2100ドルのスキンケア・プロダクトを売るというのは、 いくら優れたプロダクトでも 楽ではないのだろうというのが私の察するところである。
もしそれが、バッグやジャケット等、形になって残るものならば黙っていても買いに来るお客は居ると思うけれど、 「21日で使い切ってしまうスキンケア」と思うと、どんなに薦められても、やはりもったいないと思う人が居るのは当然のことである。
ちなみに1日100ドルがあれば、ここマンハッタンで何が出来るか?と考えると、高いサロンでなければ、フェイシャルやヘア・カット、マッサージが受けられるし、 高いワインさえオーダーしなければ、そこそこのレストランでディナーが出来るし、安いレストランなら人にディナーをご馳走してあげられるお値段である。
いずれにしても、ジ・エッセンスを使い終えて 「別のお金の使い方をしていれば良かった」と思うか、 「やってみて良かった」と思うかは、21日後にジャッジされる訳であるし、後悔した人は2度と使わないどころか、 2100ドルを支払った腹いせに、思い切り不評を撒き散らすであろうから、このプロダクトは、ラ・メールにとって 勝算がなければ ここまでして売る価値の無いプロダクトなはずである。そして、そう考えるからこそ、 私の期待は益々膨らんでしまうのである。


Catch of the Week No.3 July : 7月 第3週


Catch of the Week No.2 July : 7月 第2週


Catch of the Week No.1 July : 7月 第1週


Catch of the Week No.4 June : 6月 第4週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。