July 22 〜 July 28, 2013

” Hook Up Culture ”


今週のアメリカのメディアでは、7月22日 月曜の現地時間、午後4時42分に生まれた 英国王室のロイヤル・ベイビー、 プリンス・ジョージ・オブ・ケンブリッジの報道が大きく行なわれていたけれど、 キャサリン妃は 妊娠中スリムなボディだったにかかわらず、 生まれてきたのは、過去100年のイギリス王室史上、最も体重が重たいベイビーで、 生まれながらにしてビリオネア(10億ドル=1,000億円長者)。
それと同時に話題になっていたのが、セント・メアリー病院から出てきた際にキャサリン妃が着用していた ジェニー・パッカムのドレスで、これは ウィリアム王子誕生の際にダイアナ妃が着用していた水玉のドレスにインスパイアされたもの。
病院からは自らが運転するレンジ・ローバーで、自宅であるケンジントン・パレスに向かった ウィリアム王子ファミリーであるけれど、厳しいメディアからは そのベビー用のカーシートの使い方が 間違っていたことも指摘されているのだった。

その一方で、引き続き 物議を醸しているのがトレイヴォン・マーティン事件。
ワシントン・ポストとABCニュースが共同で行なった世論調査によれば、トレイヴォン・マーティン事件判決のリアクションは 人種によって大きく分かれており、86%の黒人層がこれを不服としているのに対して、白人層は51%がその判決を支持。 政党支持者別に見ると、マイノリティが多い民主党支持者の判決支持率は22%、これに対して白人層が圧倒的に多い共和党支持者は 65%が判決を支持しているのだった。

そんな中、判決に抗議するミュージシャンの間で 今週始まったのが、事件が起こったフロリダ州をボイコットするという動き。
これをスタートしたのは、ベテラン・シンガーのスティーヴィー・ワンダーで、 フロリダだけでなく、「Stand Your Ground / スタンド・ユア・グラウンド」と呼ばれる正当防衛の法律を 導入している州を 全てをボイコットするというのがこのムーブメント。
この法律は、危険に直面した人間がそれを回避する努力無しに、武器を使用することを認めた法律で、 本来、正当防衛とは「自分の命が狙われていて、武器を使用する以外に自分を守る方法が無かった」場合に認められるものであるけれど、 この法律が導入されている州では、相手が武器を持っている確証が無くても武器の使用が許され、 過剰防衛で相手を殺害した場合でも まかり通るのが正当防衛。 トレイヴォン・マーティンを殺害したジョージ・ジマーマンが無罪放免となったのも、この法律が 彼の行為を正当化しているためなのだった。
そのボイコットのムーブメントに名を連ねていると言われているのは、ジェイZ、リアーナ、ジャスティン・ティンバーレイク、マドンナ、アッシャー、カニエ・ウエスト、 アリシア・キーズ等。 ローリング・ストーンズもこのリストに加わっているとの報道が一時されたものの、ストーンズのスポークス・パーソンは ボイコットについて全く聞いたことが無いと語っているのだった。
またボイコットが確認されているジェイZとジャスティン・ティンバーレイクにしても、8月16日にフロリダで予定されていた2人の ジョイント・コンサートは予定通り行うとのことで、高らかにボイコットを謳っているものの、 そのボイコットが何であるかは、あまり明確になっていないのが実情なのだった。



さて、今週一児の両親となった プリンス・ウィリアムとキャサリン妃の出会いといえば、 セントアンドリュース大学在学中であるけれど、 2週間前のニューヨーク・タイムズ紙、スタイル・セクションに大きくフィーチャーされて、 大きな話題になったのが アメリカのカレッジにおける 女子学生の恋愛・セックス感についての記事。
アメリカでは、数年前から女子学生の大学進学率、卒業率が共に男子学生を上回っているだけでなく、 未来の企業CEO、ドクター、弁護士、政治家を目指す、野心的な女子学生が増えていることが報じられて久しい状況。 そんな野心的な女子学生達は、キャンパス・ライフを 未来の輝かしいキャリアのための 貴重な準備期間と考える傾向にあり、 勉学や就職に有利なレジュメ(履歴書)のための課外活動には幾らでも時間を割くことを厭わない反面、 恋愛やデート等、未来の目標達成からフォーカスを奪うものには時間とエネルギーを使いたがらないという。
このため、アメリカのキャンパスからは トラディショナルなデートや、 恋愛関係が消えようとしていることが指摘されているけれど、 その一方で大きく浮上してきているのが ”フックアップ・カルチャー”。

”Hook Up / フックアップ” という言葉は、非常に曖昧な言葉で、 例えば ”I'll hook you up with my friend” と 言えば、「友達を紹介する」というオファーであるけれど、これはビジネス目的の紹介等ではなく、 あくまでデート相手としての紹介を指す言葉。
「I hooked up last night 」と言った場合、カジュアル・セックスを意味する場合もあれば、 英語のスラングで「Make out / メイクアウト」と表現される ディープ・キスやお互いの身体に触れるといった行為全般を指す場合もあって、 大学生に対するアンケートを行なった結果でも、その言葉の解釈には かなりのバラツキがあるのだった。
でも 「Hook Up」がどんなレベルの行為であれ、確実に言えるのは 恋愛感情が介入しない 性欲の発散行為であるということ。

これまでは、キャンパスで フックアップを好むのは圧倒的に男子学生で、そんな恋愛感情の無い セックスの被害者、もしくは非積極的なパートナーと見なされてきたのが女子学生。 しかしながら今では、恋愛関係に陥って 学業や未来のキャリアの準備の妨げを作りたくないという女子学生が、 あえてフックアップを好む傾向が高まっているというのが ニューヨーク・タイムズ紙の記事。
事実、ニューヨーク・タイムズ紙とは別のアンケートでも、大学生の91%が 「キャンパスのデート・ライフ、セックス・ライフが フックアップ・カルチャーになっている」と回答しており、 これは 特定の恋愛感情を持つ相手とデートをするのではなく、自分がその気になった時に 出会った相手や、恋愛感情が沸かないパートナーとでもカジュアルに関係することを意味するのだった。


とは言っても、アメリカの女子大学生が不特定多数を相手に、頻繁にカジュアル・セックスを楽しんでいる訳ではなく、 4年間のキャンパス・ライフにおける 平均的フックアップ・パートナーの数は7人。 すなわち1年に2人以下のペース。
その中には 1人の相手を恋愛相手としてではなく、付かず離れずのカジュアル・セックス・パートナーとして キープしている場合も多く、ニューヨーク・タイムズ紙の記事に登場した女子学生が語っていたのが、 人肌恋しくなった時に特定のフックアップ・パートナーに連絡をして、 彼のアパートに出かけて 一緒にTVを観てから、セックスをして、朝まで一緒に過ごして戻ってくるという ルーティーン。
そのフックアップ・パートナーは 「単にルックスが良い」とか、「セックスが上手そう」といった 短絡的な基準で選ぶもの。 自分の好きなタイプ、人間的に好感が持てるタイプである必要はなく、 むしろ人間としては、信用できないとか、嫌いなタイプである場合が少なくないというのだった。

女子学生が特定の相手との恋愛を避けるのは、相手に夢中になると集中力が殺がれるのに加えて、 相手のために尽くしたり、相手に振り回されてたり、 自分をよりよく見せたいという気持から ブロードライやメークに時間を掛けたり、 服装にお金と気を遣うなどして、余分な時間、労力、金銭を使うことになるため。
そんなこともあって女子学生の中には「恋愛相手が出来るということは、 単位が落とせない必修科目が増えるようなもの」と解釈する声が少なくないという。
前述のニューヨーク・タイムズ紙の記事に登場した女子学生にしても、 フックアップ・パートナーのアパートを訪ねるようにしている理由は、 「シーツを洗濯する時間と手間を省くため」と語り、セックスに対する 徹底した“省エネ・モード”を披露しているのだった。

でも女性側が時間も労力も掛けたくないと思うような男性から、一方的に愛情や良い扱いを受けるということは そうそうあり得ないこと。
アンケート調査では、男性側は女性のフックアップ・パートナーに対しては、 自分本位の身勝手なセックスをする傾向が強く、恋愛関係にある女性とは 一線を画する扱いをしていることが明らかになっているのだった。
このために、フックアップによって空虚な後味を何度も経験した女学生ほど、 結婚に繋がるような真剣な恋愛相手しか望まないケースも増えているとのこと。 そうでない場合は 恋愛、セックスというオプションを キャンパス・ライフから一切消去してしまう 女子学生が多く、事実女子大学生10人中3人は キャンパス・ライフで恋愛はおろか、フックアップさえ経験せずに 卒業していくと言われるのだった。


キャンパス・ライフで 積極的にフックアップ・カルチャーに興じる傾向にあるのは、 男子学生も 女子学生も 圧倒的に裕福な白人層。 4年間の大学生活で 10人以上のフックアップ・パートナーが居る学生は、全体の14%というけれど、 その共通したプロフィールは 白人、裕福、ヘテロセクシャル、そしてルックスが良いということ。
逆に 学生ローンで授業料を支払い、卒業と共に多額の借金を抱えることになるような ミドル・クラス以下の学生は、 キャンパス・ライフを シリアスに捉える傾向が顕著で、 学業の傍ら アルバイトをしているケースも多いだけに、 フックアップを楽しむ時間や余裕が無いと指摘されているのだった。

でも大学生活で フックアップ・カルチャーに興じる場合、男子学生と女子学生で 大きく異なるのは それに走る動機。
男子学生がフックアップ・カルチャーに興じるのは、恋愛とセックスを気軽に楽しむためで、 性欲が赴くままの自由な振る舞い。 これに対して女子学生は、自分の目標を達成するために、本来求めているロマンスをギブアップして選ぶ手段が フックアップなのだった。
現在 カレッジに通う女子学生と言えば、キャリア・チョイスにおいても、恋愛においても、 過去に無いほどに古い社会概念に囚われず、自由が謳歌できると言われる世代。 しかしながら実際のところは、キャリア達成願望に縛られて、 恋愛をギブアップしている訳で、 こうした女子学生を見ていると、時代や世代が変わっても 「やはり女性は男性と同じようには、 恋愛やセックスを楽しむことは出来ない」ということを改めて思い知らされてしまうのだった。

そもそも男性にとっては 恋愛やセックスは、デザートのようなもの。 本業で手一杯でも、常に入っていく別腹が用意されているのだった。 これに対して、男性と同じようにアペタイザーやメイン・コースを 詰め込むと、デザートが入っていく場所が無くなってしまうのが 現在のアメリカの女子大学生達の現状。
このため、本業である学業や将来のキャリアの準備に野心的に取り組むために、 彼女らはデザートを諦める道を選択している訳であるけれど、 結果的にそれが、不完全燃焼のディナー・コースのようなキャンパス・ライフを 送っているような印象を与えているのは、紛れも無い事実なのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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