June 21〜 July 27,  2014

”Don't Be a Glasshole!”
プライバシー&エチケットで賛否両論!
今、ニューヨークでユーザーを増やし続けるグーグル・グラス


今週のアメリカのメディアでは、世界情勢は 引き続きパレスチナのガザ地区におけるイスラエル軍による攻撃のニュースに加えて、 先週 撃墜されたマレーシア航空17便、およびロシア&ウクライナ情勢のニュースが中心。
ニューヨークのローカル・ニュースに目を向ければ、水曜に大きく報じられたのが、ブルックリン・ブリッジに掲げてあった巨大な アメリカ国旗が、セキュリティの目をかいくぐって、あっという間に真っ白にブリーチされたというニュース(写真上左)。
監視カメラには、スケートボーダーを含む若者の数人グループが捉えられていたというけれど、 これに何らかの政治的がメッセージがあるのか等、その動機や、どうやって国旗をブリーチしたかについては全く不明。

また週末に大きく報じられていたのは、このところ何度も問題を起こしている タイムズ・スクエアの着ぐるみキャラクターが逮捕されたというニュース。 ここ数年のタイムズ・スクエアでは、セサミ・ストリートや 映画『トイ・ストーリー』のキャラクター、 スパイダーマン、バットマンといった子供達を喜ばせるキャラクターが徘徊して、旅行者との撮影に応じては、 チップと称してフィーを請求して ビジネスにしているけれど、そんなキャラクターの数が増えるに連れて、 報じられるようになってきたのが 彼らが引き起こす問題の数々。
一番最初に大きく報じられたのは、外国からの旅行者がチップを払おうとしたものの、手持ちの現金がなく、 銀行のATMからキャッシュを引き出そうと思っていたところ、着ぐるみキャラクターが 子供に八つ当たりをしたというトラブル。 以来、着ぐるみキャラクターによって痴漢行為をされたという女性のレポートや、チップを払わないといって顔を殴れた女性旅行者の 被害がレポートされ、昨今評判を落としていたのがタイムズ・スクエアの着ぐるみキャラクター達。
これを受けてニューヨーク市が着ぐるみのライセンス化、すなわち身分を登録して、市がライセンスを与えた人々のみが ビジネスを続けられるように乗り出すと言われた矢先のこと。今度はスパイダーマンに扮した男性が チップを1ドルしか払わない女性旅行者と口論になり、そこに割って入った警官を殴って 逮捕されたというのが今週末の事件。

私が、いつも不思議に思うのは こうした着ぐるみキャラクターと自分の子供の写真を撮影している親達は、ほぼ100%旅行者。 旅行者と言えば、ニューヨークを今も「危険な街」と捉える傾向にあるというけれど、 にも関わらず、タイムズ・スクエアの着ぐるみにはあっさり心を許して、子供を抱っこさせて のんびり写真を撮っているということ。
着ぐるみの下は 前科者かもしれないし、子供を抱っこしたまま走り去って、子供が誘拐されてしまうかも知れないのに、 着ぐるみキャラクターの人格がセサミ・キャラクターのエルモや、スパイダーマンと同じだと思い込んで、 すっかり信じきっている様子は あまりに無防備というか、短絡的というか、とにかく危なっかしくて見ていられないと思うのが常なのだった。




さて、昨今セントラル・パークをランニングしている最中や、レストラン、オフィス・ビルのエレベーターなどで 時折見かけるようになったのが、グーグル・グラスを掛けたニューヨーカー。
グーグル・グラスは、当初はグーグル関係者、ハイテク業界の人々、様々な関連プロジェクトの関係者を 中心に流通したものだけれど、今年4月に 初めて一般に向けての限定発売がスタート。 グーグル側が用意したユニットが、24時間で完売したのは記憶に新しいところ。
グーグルでは、現在何ユニットが出回っているといった情報は一切公開していないものの、 メディア&ハイテク業界関係者と思しき人々が グーグル・グラスを掛けて歩く姿は、 昨今では珍しくなくなっているのだった。

でもその一方で、ロサンジェルスのバーではグーグル・グラスを掛けていた人が、バーの来店客に殴られたり、 ニューヨークでもイースト・ヴィレッジのレストランがグーグル・グラスを掛けた人の来店を断るなど、 ”プライバシーの侵害”、”エチケット”という観点で、嫌われたり、物議をかもしているのがグーグル・グラスなのだった。

グーグル・グラスで何故プライバシーが侵害されるかと言えば、右目でウィンクしたり、言葉のコマンドで、 人知れず ビデオや写真が撮影出来るため。 撮影時にはグラスに装着されているライトが点灯するとは言え、 人に悟られることなく、写真やビデオがいとも簡単に撮影出来ることは、ユーザーがこぞって認めていること。
アメリカでは、バーで酔っ払っている写真がフェイスブックにアップされて解雇された学校教師も居れば、 ソーシャル・メディア上の写真が仕事の採用を左右する要因になるのはもちろん、 自分が知らない間に撮影された写真で浮気がバレるケース、 ウソをついて仕事や約束をすっぽかしたことがバレるケース等もあるだけに、 特にバーやレストランといった場所では、グーグル・グラスは全く歓迎されない存在になっているのだった。







グーグル・グラスの愛用者の中には、公衆トイレや仕事のミーティング、 ドクターズ・オフィスの待合室など、プライバシーやマナーが問われる場所では グラスを外すと語る人は多いけれど、 それほどまでに周囲の人々に 「監視されている」、「自分の行動、言動がモニターされている」というプレッシャーを与えるのがグーグル・グラス。
それを省みずに、何処でも構わずグラスを着用して、 人が不快感や、怒りを表せば、その様子さえも撮影するようなマナーの悪いユーザー、 グラスをかけたまま、薄気味悪いほど周囲を見回すユーザーが嫌われるのは言うまでもないこと。 こうしたバッド・マナーなユーザーのことは、 GlassとAsshole(英語のスラングで ”馬鹿”、”人でなし”といった意味)を掛け合わせた造語、 ”Glasshole / グラスホール” という言葉で表現されているのだった。

もちろんグーグル社でも このことを熟知して、”Glasshole / グラスホール” にならないための マナー・マニュアルを作成しているような状態。
そのグーグル・グラスは、「OK Glass!」という言葉のコマンド、もしくはグラスの右サイドを指でタップすることによって アクティベートされて、Eメールを読んだり、簡単なEメールを送ったり、 マップで行き先をチェックしたり、必要な情報をグーグルしたりと、 様々なことがハンド・フリーで行えるガジェット。

でもヘビー・ユーズの場合、バッテリー・ライフは僅か3時間程度。 さらに目の焦点をスクリーンに合わせると、寄り目になったり、目つきが悪くなったりするので、 特に男性の場合、その目付きのせいで悪印象を与える場合があることが指摘されていたのだった。

グーグル・グラスを掛けると、その視線が不思議になるのは、同グラスを初めてファッション・ショーのランウェイでフィーチャーした ダイアン・フォン・ファーステンバーグのモデル達の顔写真にも現れている様子。 グーグル・グラスがランウェイに登場したのは、2012年9月に行われた2013年春夏コレクションの際であったけれど、 今シーズンからは、そのダイアン・フォン・ファーステンバーグ・ヴァージョンのグーグル・グラスも登場しているのだった。


ダイアン・フォン・ファーステンバーグがデザインしたグーグル・グラスは、 通常の眼鏡タイプのデザイン、サングラス・スタイルのデザインが、現在ネッタ・ポルテで販売されていてこちらは、 通常のグーグル・グラスより300ドルお値段が高い1800ドル。
私は未だ ダイアン・フォン・ファーステンバーグ・バージョンをつけている人は見たことが無いけれど、 眼鏡タイプのグーグル・グラス(写真上、左側)は英語で言うギーキー/Geeky、日本語で言う オタク風な印象で、 セクシーさはゼロと指摘されるもの。これを掛けて 目付きが悪かったりしたら、 デート相手は よほどのテック・フリークでない限りは逃げていきそうな感じなのだった。

グーグル・グラス以外にも、アップルが製品化を進めているスマート・ウォッチなど、 昨今では、ありとあらゆるスマート・ガジェットが登場しているけれど、 今週話題を集めたものの1つが、スマート・シューズ(写真上、右側)。
これはインドのレシャル社の製品で、シューズと靴の中底がブルートゥースでスマートフォンに コネクトしていて、独自に開発されたアプリとグーグル・マップを駆使して、 道に迷わないように誘導してくれるというもの。 誘導はシューズのバイブレーションによって行われるとのことで、右に進む際は右側のシューズがバイブレートするという至って シンプルなシステム。
スマート・シューズは、道案内だけでなく、万歩計の役割やカロリー計算も行ってくれるとのことで、 アイフォン、アンドロイド、ウィンドウズ・フォンで使用が可能。 発売は9月で、お値段は約100ドルになっているのだった。

でもスマート・フォン、スマート・ウォッチ、スマート・シューズと、様々なガジェットがどんどんスマートになっていく一方で、 どんどん馬鹿になっていくと思われるのが、それを使う人間。
ガジェットを使うと、脳を使わなくなるので、以前なら簡単にできた暗算や 様々なタスクがガジェット無しでは出来なくなって行くのは自然の成り行き。
グーグル・グラスにしても、本来記憶にとどめるべきことを、 ビデオや写真に収めるようになるので、記憶力の低下を招くことは必至と言われて居るのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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