July 20 〜 July 26 2015

” Girl Power of Taylor Swift ”
テイラー・スウィフトのガール・パワー


今週のアメリカで最大の報道になっていたのは、火曜日にルイジアナの映画館で起こった 銃乱射事件のニュース。
ちょうど今週は、2012年にコロラド州オーロラの映画館での銃乱射事件で、12人の死者と70人の負傷者を出したジェームス・ホルト(写真上左、左側)に 有罪判決が出ていたこともあり、この「またか!」の事件の犯人像にメディアの関心が集っていたのだった。 犯人のジョン・ハウザー(写真上左、右側、59歳)は、過去に何度も精神異常が認められ、施設に強制収容されたこともある人物。 彼の家族は危険を感じて、彼が所有していた銃を全て破棄し、警察にも通報していたというけれど、 今回の犯行に使われた銃は、昨年ハウザーがアラバマ州で合法的に入手したもの。 これを受けて、現在の銃購入の際のバックグラウンド・チェック・システムに疑問を投げかける声が聞かれたと同時に、 オバマ大統領は 「9・11以来、テロで死亡したアメリカ人は約100人なのに対して、 銃乱射事件では、何千人もの人々が命を落としている」として、 銃規制を最優先課題に掲げながらも、一向に進まない状況にフラストレーションを 露わにしていたのだった。
でもアメリカ国内では、こうした銃乱射事件が起こる度に、 特にこの類の事件が頻繁に起こる南部や中西部を中心に、 銃規制を緩める意見が高まる傾向にあると伝えられているのだった。

ビジネスの世界に目を向ければ、今週火曜日、7月21日の株式取引終了後に発表されたのが、アップルの第3四半期決算。 そして その直後のアフター・アワー・トレーディング3分間に、130.75ドルから 119.96ドルへと 大きく8.3%の下落を見せたのが同社株式。
この3分間で、アップルは620億ドル分の企業価値を失った計算になり、この金額は コルゲート歯磨きやヒルズのペットフードで知られる 日常用品企業、コルゲート・パーモリーブ社の企業価値に匹敵するもの。 それだけの価値を失っても、アップル社はS&P500社の中では 2位のグーグル(4,275億ドル:約52兆9,061億円)を 大きく引き離して、ダントツでNo.1のマーケット・バリュー(7,100億ドル:約87兆677億円)を保っている企業。 またアップル社が計上 したのは、第1、第2四半期に続く過去最高業績なのだった。
にも関わらず、株価が大下落した要因と指摘されていたのが、アップル・ウォッチの売り上げ不振。 アメリカ国内ではその売上数が販売開始直後の4月に比 べて、 6月末の時点で90%落ち込んだことが報じられ、アナリストも売り上げ見込みを下方修正している状況。 同社CEOのティム・クックは、「アップル・ウォッチが今年のクリスマス商戦の 人気ギフト・アイテムになる」と強気の読みを見せているけれど、 アップル社は そのアップル・ウォッチに加えて、アイパッド、アイポッド、マック・ブック、アイ・チューン等、 様々なプロダクトを持つものの、同社売上の 60%を支えているのがアイフォン。 このため、アップルの企業ビジョンの将来に疑問を抱く声も聞かれているのだった。




そのアップル社は、目下同社のミュージック・ストリーミング配信サービスであるアップル・ミュージックの 無料3ヶ月トライアルを行っている真最中。そのアメリカでのレビューは、可も無く、不可も無くという印象で、 10ドルの月間サブスクリプション料金を高いと思うか、安いと思うかが ユーザーになるかならないかのポイントと指摘されるもの。
アップル社がミュージック・ストリーミングの世界に進出したことで、 一部の市場関係者は、同社が MP3プレーヤーであるアイポッドや、音楽、映画、TV、アプリのダウンロード・ビジネスを展開してきたアイチューンに 未来が無いことを察知したと見ているけれど、 実際のところ昨今では、若い世代を中心に音楽、映画、TV番組についてはストリーミング・サービスを利用するのが ごく一般的。
その音楽の分野で、ストリーミング配信サービスのパイオニアとなっているのは ”Spotify / スポティファイ”。 同社は、2006年にスウェーデンで設立され、ヨーロッパでサービスを開始したのは2008年のこと。 2011年からはアメリカでも展開がスタートし、現在 世界13カ国で 7,000万人以上のユーザー抱える同分野の最大手。 その多くは無料で サービスを利用しているものの、 月間フィーを支払う有料サブスクライバーの数も約2,000万人に達したと発表されているのだった。

今年春には、ビヨンセ、カニエ・ウエスト、リアーナ、マドンナ、ニッキー・ミナージといった 錚々たるアーティストを擁する、ジェイZのミュージック・ストリーミング配信サービス、”Tidal / タイダル”が TVCMをも放映する華々しいデビューを飾ったのは、アメリカのミュージック・ファンにとっては記憶に新しいところ。 でもそのタイダルは、6月に2人目のCEOが 就任後僅か3ヶ月でクビになったばかりで、 ユーザー数も100万人に程遠いという不人気ぶり。
それというのもサービスが使い難い上に、月間のフィーが20ドルという高額ぶりで、ソーシャル・メディア上では、 「どうしてジェイZやビヨンセのようなミリオネアのために、庶民が毎月20ドルも支払う必要があるのか?」という バッシングの声が聞かれる有り様。 今後、ミュージック・ストリーミング配信サービスにはグーグルも参入してくることから、早くもタイダルの生き残りが難しいという 憶測さえ飛び交っているのだった。





さて、そんなミュージック・ストリーミング配信サービス最王手のスポティファイに対して、 「アーティストに対するロイヤルティが少ない」と抗議して、スポティファイから全ての楽曲を削除したのが テイラー・スウィフト。
彼女は、6月にはアップル・ミュージックに対しても「無料トライアル期間中は、アーティストに対してロイヤルティを支払わない」とした 同社ポリシーにソーシャル・メディアを通じて公の抗議を展開。 「私達はアイフォンやアイパッドを無料で要求したりしないのに…」というテイラーのメッセージにファンが 賛同した結果、その翌日にはアップル社がポリシーを撤回。 無料トライアル期間中でも アーティストに対してロイヤルティを支払うことを公約したのだった。

たった1人の25歳の女性アーティストの主張が、世界最大企業のポリシーを1日で覆したというニュースは、 エンターテイメント・メディアのみならず、通常のニュース・メディアでも大きく報じられたけれど、 それに対するリアクションは、「今のテイラー・スウィフトのパワーなら当然」、 「ギリシャ問題もテイラー・スウィフトに解決してもらうべき」といったものが大半を占めていたのだった。 それほどまでに、現在音楽を通じてパワーと財力を大きく拡大しているのがテイラー・スウィフト。
カントリー・シンガーとしてデビューした彼女は、かつては映画「トワイライト」シリーズに出演していたテイラー・ロートナー、ジョー・ジョナス、 ジョン・メイヤー、ワンディレクションのハリー・スタイル、そしてケネディ家の御曹司などと、 次々と交際しては、その別れをヒット曲に書き上げて、カントリー・ミュージック・アウォードからグラミー賞まで、 ありとあらゆる音楽賞を受賞していた存在。
その後、2014年のアルバム「1989」でポップ・シンガーに転向して以来は、ソーシャル・メディアを巧みに使ったマーケティングや、 若さに似合わぬ正義感のある自己主張、献身的なファン・サービスで、ファン層のみならず、 音楽界やソーシャル・メディア上での発言力をどんどん増しているのは周知の事実。

またテイラーは、2015年初頭から世界一高給取りのDJ、カルバン・ハリス(31歳)との交際をスタート。 2人は6月末にフォーブス誌が発表した2014年度 セレブリティ・カップル長者番付で、1億1050万ドル(約137億円)を稼ぎ出した ジェイZ&ビヨンセ夫妻を抑えて、 所得合計 1億4600万ドル(約181億円)で No.1に輝いているのだった。




現在 ワールド・ツアー中のテイラー・スウィフトであるけれど、そのコンサートでは エンディングに彼女の親友であるスーパーモデル、カイリー・クロスやケンドール・ジェナ、 カーラ・デルビーニュらが登場したり、ウィンブルドン前のロンドン・コンサートではテニス・プレーヤーの セリーナ・ウィリアムス、US女子サッカー・チームがワールド・カップで勝利を収めた直後のニュージャージーのコンサートでは その女子サッカー・チームがステージに登場。 その都度、ソーシャル・メディア&通常メディアで センセーションを巻き起こしている一方で、 今年4月には 母親が がんと診断されたことをファンへのオープン・レターで公表。 がん早期発見のためにも、両親に健康診断を受けさせるよう ファンに呼びかけているのだった。

そうかと思えば、ファンのウェディングやバースデーにサプライズの飛び入りゲストとして現れたり、 サプライズ・ギフトを送ったり、チャリティに寄付をしたりと、 ありとあらゆるファン・サービスにも余念が無い姿勢は、 メディアも高く評価するほど。
そんな彼女のファンは 「Swifties/スウィフティーズ」と呼ばれるけれど、 テイラー・スウィフト曰く、これからはソーシャル・メディア上でのファン・アピールで レコード会社が契約するか否か、どれだけの成功が収められるかが決まる時代。 それというのも、ソーシャル・メディア上でのアピールで ファンがその音楽に対してお財布を開くかが決まるためとのことで、 確かにテイラーの主張通り、音楽業界で昨今 女性アーティストがどんどんのし上がって来ているのは、 ビヨンセ、リアーナ、ケイティ・ペリー、ニッキー・ミナージ等、いずれもタンブラーやインスタグラム等の ソーシャル・メディアで頻繁にファンにアピールしている影響が非常に大きいと言えるのだった。

それ以外にソーシャル・メディアを駆使しているセレブリティと言えば、キム・カダーシアン に代表されるリアリティTVスターや コメディアン。すなわち、TVの視聴率や音楽のダウンロード数をアップさせたり、 パフォーマンス・チケットやライセンス・グッズを売らなければならないセレブリティほど、 ソーシャル・メディアを駆使して、どんどんファンの日常生活の中に入り込んでいるけれど、 中でもテイラー・スウィフトの巧みさは、自分の近況だけでなく、ファンとのコミュニケーションや 彼女の交友関係をオープンにして、 見たり、読んだりするだけで気分が良くなるフィールグッド・ストーリーにフォーカスしていること。
今週には、MTVビデオ・ミュージック・アウォードのノミネーションを巡って、彼女とニッキー・ミナージが ツイッター論争を繰り広げていたけれど、それも2日後にはテイラーからニッキーに電話で謝罪したことから、 2人がお互いにポジティブなメッセージで讃え合うという絵に描いたようなハッピーエンドを迎えて、パブリシティを見事に使いこなしていたのだった。

今や”スウィフティーズ”は男性よりも女性が多いとも言われるけれど、実際、私の女友達の間でも テイラー・スウィフトのファンは多く、その人気の理由は音楽もさることながら、彼女の 女性としての主張に筋が通っていることも大きな要因。 セレブリティというと、パブリシストやエージェントの意向がソーシャル・メディアに反映されるケースが多いけれど、 テイラー・スウィフトについては自らがチームを駆使して自分のイメージをコントロールしているのは一目瞭然。
それだけに 彼女のコメントどおり、これからはソーシャル・メディアを通じて自力でファンに深くアピールできるセレブリティの時代と言えるのだった。

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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