July 18 〜 July 24 2016

”Why Celebrities Dislike Republican Party? ”
セレブリティは何故 民主党を支持して、共和党を嫌うのか?



今週のアメリカでは、全米各州を襲っていたヒート・ウェーブ、および それが引き金になったワイルド・ファイヤー(山火事)のニュースが大きく報じられていたけれど、 それよりも大きく報じられたと同時に、ソーシャル・メディアの関心が集中していたのが共和党党大会。
月曜から木曜の4日間に渡って行われたコンベンションは、通常ならばメジャー・ネットワークのライブ放映がスタートする 東部時間午後10時から 共和党の重鎮が登場して、党が擁立する大統領候補を称賛するスピーチを行い、 最終日に大統領候補がノミネーションの受諾スピーチで締めくくりをするのがお決まりのスケジュール。 ところが今回の共和党党大会は、ブッシュ・ファミリー、前大統領候補のミット・ロムニー、ジョン・マケインといった共和党の有力者に加えて、 党大会が行われたオハイオ州の州知事までもが 党大会に姿を見せない意向を明らかにしたため、 TVのライブ放映の時間帯に トランプ一族が6人もスピーチを行うという前代未聞の構成。

またメディアが初日から驚いたのは、党大会の会場の外で アンチ・トランプ派が抗議活動を繰り広げているのは折り込み済みであるものの、 会場内でも共和党党員同士の大喧嘩が勃発していたこと。そして まず初日から大ニュースになったのは、メラニア・トランプ夫人のスピーチの一部が、2008年の民主党党大会で ミシェル・オバマが行ったスピーチの複数のセンテンスと全く同じであったというスキャンダル。  メラニア夫人はこの日の朝のTVインタビューで、「スピーチを自分で書いた」と語っており、加えて トランプ陣営が オバマ夫人のスピーチをコピーした事実を認めるまで、36時間以上も疑惑を否定し続けたこともあり、 同スキャンダルは ”スピーチゲート(スピーチ疑惑)”というニックネームがついて、大報道になっていたのだった。
そのメラニア夫人のスピーチについてはソーシャル・メディア上では、内容だけでなく その英語の能力を疑問視する声も飛び交っており、 15年間アメリカ人と結婚して、20年以上アメリカ国籍を持つ、5か国語を話す夫人の割には、 その英語の発音が酷すぎるというのが その指摘。
メラニア夫人の”スピーチゲート”は、今回の党大会期間中、メディアが最も報道時間を割いたニュースとなったけれど、 次に大きく報じられたのはドナルド・トランプと予備選挙を戦った、テッド・クルーズが党大会の場でもトランプ支持を打ち出すことなく、 「よく考えて投票するように」という含みのあるスピーチをして、会場からブーイングをされたニュース。 多くのメディアは、彼のこのスピーチがトランプ支持よりも 彼自身の2020年の大統領選を目算に入れたものと指摘していたのだった。




3日目には、共和党副大統領候補に選ばれたマイク・ペンスが 「今一つ熱意や思い入れが感じられない」とメディアが評するスピーチを披露。 通常スピーチの後は、大統領候補者と副大統領候補者が一緒に、 ステージで観衆に長々とアピールするものであるけれど、 トランプはあっという間に姿を消してしまい、これもメディアを驚かせていたのだった。
実際、2人はあまり馬が合わないことは既に明らかで、マイク・ペンスは予備選挙ではテッド・クルーズを支持していたキリスト教保守派。 トランプはその彼を副大統領候補として紹介するイベントで、彼を差し置いて30分喋り続けたのに加え、 2人揃って出演した報道番組のインタビューでも歯車が合わない様子を披露。 それでもトランプがマイク・ペンスを選んだ理由は、彼が共和党の保守派にアピールする存在であるためなのだった、

最終日は共和党関係者が、トランプの右腕であり、副大統領候補に最も相応しいとコメントした娘のイヴァンカ・トランプ(写真上左)が 父親を紹介するスピーチを行ったけれど、このスピーチは ドナルド・トランプ本人のスピーチも含めて、トランプ一族の中ではベストと言えたもの。 でも何故か 壇上に上がった彼女の髪の毛が なびくようにウインド・マシーンが使われており、 ソーシャル・メディア上ではビヨンセのコンサートか?シャンプーのコマーシャルか?とからかう声が聞かれていたのだった。
そのイヴァンカは、自らのブランドの157ドルのドレスでステージ上に登場したけれど、 それよりもメディア&ソーシャル・メディアが着眼したのは、壇上に登場したトランプが、イヴァンカとキスをした後に、 その両手を彼女のヒップの両サイドに滑らせたジェスチャー。 かつてトランプは、「もしイヴァンカが自分の娘でなかったら、もちろんイヴァンカとデートする」と語り、同コメントには トランプ支持者でさえ難色を示していただけに、このステージ上のジェスチャーは、少なからず波紋を呼んでいたのだった。

さらに共和党党大会はそのBGMでも物議を醸しており、初日にメラニア夫人を紹介するためにステージに上がったドナルド・トランプのBGMとして、 クイーンの「We Are the Champions」が流れていたことについて、クイーン側が「楽曲の使用を許可した覚えはない」と抗議。 ちなみにトランプに対するこの抗議は2度目のことで、今年春にも トランプのキャンペーンで同楽曲が使用されたことを受けて、 クイーンのギタリスト、ブライアン・メイが 「クイーンの楽曲を一切使わないように」と抗議したばかり。
また最終日には イヴァンカ・トランプが壇上に上がる際に、ビートルズの「Here Comes the Sun」が流れたけれど、 翌朝には やはり曲の作詞&作曲を担当したジョージ・ハリソンが 楽曲の無断使用に厳しく抗議していた他、 アース・ウィンド&ファイヤーも、そのヒット曲「セプテンバー」を勝手に使用されたことにクレームをしていたのだった。




トランプ・キャンペーンは春先にも アデルの楽曲を無断使用して、アデル側から抗議を受けているけれど、 これらの事はドナルド・トランプに限ったことではなく、 伝統的にミュージシャンは 共和党大統領候補が自分の楽曲をキャンペーンで使用するのを嫌う傾向にあるのだった。
前回の選挙で、オバマ大統領の対立候補であったミット・ロムニーが、1980年代のサバイバーの大ヒット曲、「Eye of the Tiger」をキャンペーンで使用した際も、 既に解散していたサバイバーのメンバーが「使用を止めなければ訴える」と抗議。 そうかと思えばジョージ・W・ブッシュ元大統領は、ブルース・スプリングスティーンの代表曲「Born To Run」を選挙キャンペーンで使用し、 ブルース本人から猛然と抗議されていたのだった。 ちなみにRunという動詞には、選挙に出馬するという意味もあって、同楽曲はアメリカの選挙の際には必ずといって流れるものなのだった。

逆に民主党大統領候補者は、どのアーティストの楽曲を使用しても文句を言われない傾向にあり、ビル・クリントン大統領が誕生した1992年の大統領選挙の際には、 フリートウッド・マックの「Don't Stop (Thinking About Tomorrow)」をキャンペーンのテーマ・ソングにしていたけれど、 これは当時解散状態だったフリートウッド・マック側の許可を得ずに使用したもの。 しかしながらフリートウッド・マック側は これについて文句を言うどころか、 翌年、1993年1月に行われたクリントン大統領の就任式のガラで、オリジナル・メンバーが全員顔を揃えて、今は亡きマイケル・ジャクソンらとステージに上がり、 同曲の再結成パフォーマンスを行ったほど(写真上左)。
今回のヒラリー・クリントンのキャンペーンでも、ケイティ・ペリーがそのヒット曲「Roar」をステージで披露したり、 レイチェル・プラッテンが イベントでヒラリーが登場する度に 彼女のヒット曲「Fight Song」が流れることを「名誉に思う」と語るなど、 全く異なるリアクションが見られているのだった。

こうなるのはハリウッドの俳優、ミュージシャン、アーティストが伝統的に民主党を支持しているためで、 歴代の共和党大統領の中にはロナルド・レーガンのように ハリウッド・スターと良好な関係を保った存在も居るけれど、 基本的に保守的で、ゲイの権利を認めず、銃規制や中絶に反対する一方で、環境問題や気候変動を無視するのが共和党。 女性の社会進出を奨励せず、母親が働かない子沢山の家庭を理想とする 熱心なキリスト教信者が多く、 それがキリスト教右派になると ダーウィンの進化論を否定して 教科書から削除させるほど、科学よりも 神の教えが優先されると考えるのが共和党支持者。 移民政策に厳しく、白人至上主義とは切っても切れない深い関わりがあるのも共和党。 したがって、アメリカでネオナチと言えば 共和党支持者と相場が決まっているのだった。

かつては”共和党支持者=裕福で、高学歴な白人”というイメージが強かったけれど、2000年代に入ってからは、”地方の信心深い 低学歴&低所得者層”の数が増えており、特にトランプ支持者は 地方のトレーラー住宅に住み、 銃を片手に 偏ったメディアから情報を得ている高齢の白人貧困層が多いことがレポートされているのだった。




これに対して民主党は、支持者の宗教や人種にバラエティがある政党で、同性婚や人工中絶を認め、銃規制を支持するポジション。 過去20年ほどでリベラル派の方が高学歴&高収入になってきたので、80年代までの労働者階級の政党というイメージはどんどん薄れてきているのだった。
時にGOP(Grand Old Partyの略)という名称でも呼ばれる共和党の政党マスコットは象で、政党カラーは赤。 民主党のマスコットはロバで、カラーはブルー。このため、アメリカでは民主党支持の州をブルー・ステート、 共和党支持の州をレッド・ステートと呼ぶけれど、 写真上右は2012年の大統領選挙時の州別の支持政党をカラーで塗り分けたもの。 共和党が南部、中部を中心に支持されているのに対して、 民主党はカリフォルニア、ニューヨークを含むアメリカ大陸の両側の海沿いの州で圧倒的に支持されているのが見て取れるのだった。

したがって、ゲイ・カルチャーがサポートされ、リベラル派が多いエンターテイメント界&音楽界で 共和党がサポートされないのは 当然と言えば当然であるけれど、その例外と言えるのはカントリー・ミュージック。 今もテネシー州、ナッシュビルが拠点となっているカントリー・ミュージックのシンガーはキリスト教保守派の共和党支持者が圧倒的。 したがってカントリー・ミュージックをBGMに使用すればトランプ陣営はクレームを受けることは無い訳だけれど、 トランプを含む歴代の大統領候補は、何故か民主党を支持するミュージシャンの楽曲を使っては、文句を言われる方を好んでいるのだった。

月曜からは舞台をフィラデルフィアに移して 民主党大会がスタートするけれど、初日のメイン・スピーカーは 予備選挙で最後までヒラリー・クリントンと戦ったバーニー・サンダースとミシェル・オバマ夫人。 2日目のメイン・スピーカーはビル・クリントン元大統領。 3日目のメイン・イベントとしてはオバマ大統領、ジョー・バイデン副大統領、そして副大統領候補のティム・ケインのスピーチ。 そして最終日に、チェルシー・クリントンがヒラリー・クリントンをステージに迎えるイントロダクションのスピーチをした後、 正式に民主党候補者となったヒラリー氏がそのノミネーションを受諾するスピーチを行うけれど、今週末には その顔ぶれに元ニューヨーク市長でビリオネアのマイケル・ブルームバーグが加わり、ヒラリー・クリントンに対する支持を表明するとのこと。

また民主党でも共和党でも、党大会にはセレブリティ・スピーカーが付き物であるけれど、共和党党大会のセレブリティ・スピーカーは、 グーグルで調べても 誰だか分からないようなセレブリティばかりだったのに対して、 民主党党大会では TV俳優を中心に グーグルで検索する必要が無い、本当のセレブリティが ヒラリー・クリントンのサポート・スピーチを行うことになっているのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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