July 25 〜 July 31 2005




最悪の浮気パターン



先週の欧米のタブロイド誌を大いに賑わせたのが、ジュード・ロウの浮気発覚事件である。
ジュード・ロウは、昨年公開された映画、「アルフィー」(写真右)で共演した女優のシエナ・ミラー (23歳) と昨年12月に婚約しており、 そのニューヨークでのロマンティックなプロポーズは、当時 やはり タブロイド誌を賑わせた話題だった。
ジュード・ロウの浮気相手というのは、26歳のナニー(子供の世話役)、デイジー・ライト嬢。 彼女は、ニューヨーク・ポスト誌に言わせれば、 「非常にアヴェレージなルックス」で、 「 若く、美しい シエナというフィアンセが居ながら何故?」 と周囲も、メディアも首を傾げるような存在だったのである。

浮気というのには様々なパターンがあるけれど、 既婚者男性にとって 離婚に発展する典型的パターンと言えるのが、妻が子育てと家事、そして時にこれらに加えてキャリアに追われて、 大忙しの毎日を送り、夫とのコミュニケーションが薄れている間に、 夫が若い愛人を作るというもので、離婚後は夫は愛人と再婚、妻は子供を引き取り、養育費を夫に支払ってもらうというのが、欧米での ありがちなシナリオである。
この場合、夫は「口うるさく、いつも疲れていて、自分のやることに批判的、もしくは関心を払わない妻」という結婚生活の現実的な部分から逃避して、 自分のつまらないジョークにも笑ってくれたり、自分の話を感心しながら聞いてくれたり、何処へ連れて行っても、何をプレゼントしても 単純に喜んでくれて、快くセックスに応じてくれる 若い女性との関係に、自分が失いかけていた若さやエキサイトメント、人生のピュアな喜びを見出して、 深みにはまって行く訳である。

でも似たようなパターンでも離婚に及ばないケースというのは、 ある程度夫婦関係が上手くいっているものの、夫が若い女性、妻以外の女性と一緒に過ごす時間を人生におけるエキサイトメント、もしくは潤滑油と考えて 浮気をしている場合で、このケースでの浮気は、言わば趣味のような存在である。 この手の浮気をする男性にとって、安らぎの場は常に家庭であり、大切なのは家族であるから、浮気相手と深い関係になろうという気は 最初から毛頭ない訳で、結婚を迫るような女性からは直ぐ手を引くのはもちろん、自分が「相手を幸せにする存在ではなく、 今を楽しく過ごすだけの存在」であることを常に確認しながら関係を続ける「用心深さ=逃げ腰」の姿勢を保っているものである。

でも、いかなるパターンの浮気においても、共通に言えるのは、「浮気をされた女性が傷つく」ということで、 例え「彼(夫)が浮気をしても平気」などと豪語していた女性でも、 実際に浮気をされてみると、自分の気持ちやプライドが様々な形で傷つけられていることに気が付くことになるものである。
周囲が浮気を知っている場合には、「好きな男性を繋ぎ止めておくことも出来ない女」とジャッジされることになるし、 時には浮気相手と比較されて批判されるケースも出てくることになる。 年明け早々、ブラッド・ピットに離婚されたジェニファー・アニストンなどは、事あるごとに彼女の「ガールズ・ネクスト・ドア」の クリーンで庶民的なイメージが、2人の離婚の原因と言われるアンジェリーナ・ジョリーのエキゾティックなセクシーさと 比較されては、彼女には何の罪も無いにも関わらず、「退屈な存在」などとバッシングを受けてきた訳である。
私の女友達の中には 「スゴイ美人でスタイル抜群の人と浮気されたなら諦める」とか、 「浮気されるなら キレイな人として欲しい」などと言う人が居るけれど、 ひと度浮気をされてみれば、「浮気相手が美人で良かった」と 納得したり、諦められる女性など そうそう居ないと思うし、 自分のボーイフレンドや夫がスタイル抜群の美女 と ただならぬ関係であるところを目撃すれば、 どんな女性でも少なからず傷つくものである。
そして、ジェニファー・アニストンのようにメディアによって浮気相手との比較をされるような事はなくても、 自分で 相手と自分を比較して、「私にはあんな風になれない」と自己嫌悪に陥ったり、蔑まれた気分になって落ち込んだりするものである。

でも殆どの女性にとって、最悪の浮気と見なされるのが、自分より劣る存在、すなわち自分よりキレイでもなく、リッチなもなく、 知性がある訳でもない (と周囲から判断される)女性が、浮気相手に選ばれる場合、すなわち今回のジュード・ロウのケースである。
先述のジェニファー・アニストンとブラッド・ピットのケースだと、周囲は「相手がアンジェリーナじゃ、ジェニファーも歯が立たない」とジャッジはするものの、 アンジェリーナと比べさえしなければ、ジェニファーとて決して魅力が無い訳ではないことは折込済みの事実な訳である。 ところが今回のジュード・ロウ&シエナ・ミラーのケースは、若く、ファッショナブルで魅力あるシエナと婚約しておきながら、 ジュードがアヴェレージなルックスのデイジー・ライト嬢と情事を重ねていたという、いわば「ダウン・グレードの浮気」な訳で、 こういった場合、周囲からは「シエナは見た目には若くて、キレイだけれど、女性としては物足りない存在なのかもしれない」とか、 「男に安らぎが与えられない存在」、「若すぎて精神的に未熟」、もしくは「気位が高いのかもしれない」など、彼女のルックスに問題が無いだけに、 「その性格や人間性に何か問題があるに違いない」 的な憶測を呼ぶことになるのである。
これがセレブリティでなく、一般の女性の場合でも、自分の夫やボーイフレンドの浮気相手、それも ワンナイト・スタンド(一晩の関係)ではなく、一定期間の情事を重ねた相手が、 外観に構わない地味な女性だったり、センスの無い垢抜けない女性だったり、顔もスタイルも自分より劣ると判断される場合、 女性がまず感じるのは「侮辱された」という思いである。 すなわち、自分より下だと判断する女性に、例え一時的にも自分の夫やボーイフレンドを奪われることによって、 自分はその女性より劣ると位置づけられたと解釈する訳で、 自分に厳しく、努力を重ねている女性であれば あるほど、これによって打ちのめされるし、 そうした完璧主義、もしくは上昇志向の強い女性ほど、男性を「平凡で飾り気の無い女性との癒しの浮気」に追い込む傾向があるのは事実である。

さて、私は以前、既婚の男友達に 「どうして浮気ってバレるんだろう?」と、半ば馬鹿げた質問を受けたことがあるけれど、 これに対して 「未だ奥さんに愛されてる証拠じゃない」と妙な励ましをしたことがある。
事実、女性というのは感性の生き物な訳で、例え物的証拠などなくても、相手が否定し続けても、 自分が相手を思っている限りは、ほんの小さな事から相手の浮気を察知してしまうものなのである。 そして、浮気を察知した女性は、その疑いと頭の中で戦うことになるけれど、 初期段階では、疑いをかき消そうと、様々な想定を繰り広げるものである。 しかしながら、疑いが深まってくると、今度はその疑いが事実であることを立証しようと躍起になるもので、 それが立証された時、やはり深く傷つくのが女性であり、 以前から憶測していたからといって、「心の準備が出来ている」などということは決して無いのである。
女性は疑いで傷つくことは無くても、事実には打ちのめされる訳で、 だからこそ、男性は妻やガールフレンドとの関係を続けたいと思ったら、例え証拠が山積みになっていようと、 言い訳に全く筋が通らなくても、 「決して浮気を認めるべきではない」というのは、 浮気経験者が口を揃えて認める超基本事項である。

その意味で、今回 ジュード・ロウは、浮気がメディアで報じられた翌日、 スポークスマンを通じたパブリック・ステートメントとして、浮気を認め、シエナに謝罪をしたけれど、 彼は個人的にでも するべきでない事を、よりによってメディアを通じて行ったのだから、 シエナに婚約を破棄され、彼に非難が集中し、シエナに同情が集まったとしても、決して文句は言えないのである。


Catch of the Week No.4 July : 7月 第4週


Catch of the Week No.3 July : 7月 第3週


Catch of the Week No.2 July : 7月 第2週


Catch of the Week No.1 July : 7月 第1週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。