July 23 〜 July 29 2007




” 犯罪のルーツ ”



今週のアメリカは、リンジー・ローハンの飲酒運転とコカイン所持による逮捕のニュースで幕を開け、 ニコル・リッチー有罪判決で終わり、その間にはブリットニー・スピアーズがOKマガジンのフォト撮影で見せた 奇行ぶりが大きくレポートされるという、セレブリティの程度の悪さが何時に無く 強く感じられた1週間だった。
こうした リハビリ入りや逮捕を繰り返しているセレブリティ報道で、昨今フォーカスが当てられているのが その母親の子育ての過ちや、母親が与える悪影響。 というのも、シンガーの ライオネル・リッチー夫妻に養子縁組で 引き取られた二コル・リッチーは別として、 リンジー・ローハンとブリットニー・スピアーズは共に子供の頃から芸能活動を始め、 母親がそのキャリアの仕掛け人といっても過言ではない状態。
ブリットニーは現在、母親とは絶縁状態にあるものの、 リンジー・ローハンについては 母親のデイナがマネジャーを勤めており、 彼女は娘と一緒に夜な夜なパーティーを楽しみ、 ハーパーズ・バザーのファッション・グラビアにもスター気取りで登場するなど、 娘のスターダムを利用して 人生を楽しんでいると非難されて久しかったりする。
デイナ・ローハンは、時に同じく 出たがりの軽薄な母親として知られる キャシー・ヒルトン(パリス・ヒルトンの母親) とも比較されるけれど、そのキャシー・ヒルトンはかつてモデルで、ヒルトン家の一員である リッキー・ヒルトン(パリスの父親)と結婚してからというもの、夫婦揃って派手な生活を好んでおり、 パリス&ニッキーのヒルトン・シスターズがメディアで取り上げられるようになる以前から 、 ニューヨーク郊外の高級リゾート地、ハンプトンなどでは ”スポットライトを好むミーハー・カップル” として 知られてきた存在である。
私がこれを書いている7月29日付けのニューヨーク・タイムズ紙のスタイル・セクションでは、 昨今、こうしたトラブルを抱えるセレブリティの母親達にフォーカスが当てられるのは、 以前からハリウッドに やり手の ”ステージ・ママ” を非難する傾向があった一方で、 子供を実際に育てているのは ”母親” という社会的概念があるからと指摘されている。
とは言え、父親の存在とて褒められたものではないのが 問題を起こすセレブリティにありがちのプロファイルで、 ブリットニー・スピアーズの父親は 妻と離婚し、アルコール中毒であったというし、 リンジー・ローハンの父親もアル中の上に逮捕&禁固刑歴を持つ人物。 リンジーは 子供の頃のドメスティック・バイオレンス体験を、自らが監督したミュージック・ビデオに描いていたほどである。
またリッキー・ヒルトンにしても、普通なら娘が刑務所入りすれば、父親は世間に見せる顔が無いとばかりに、 大人しくふるまうものであるけれど、彼はパリスが出所した際のパーティー・プランをヴェガスのホテルと交渉して 断られたことが報道されたり、パリス出所後のインタビューを高額で売り込もうとするなど、刑務所に入るという コンセプトを全く理解していない 行動をしていた訳である。 加えて、娘(パリス)を 高校中退になるほど 野放しに遊ばせていたという事実も、 過度な放任主義と指摘されても仕方が無いもの。
したがってメディアや一般の人々の間には、こういった親たちに囲まれて育ったセレブリティ側も 気の毒だという 見方があるのは事実なである。

その一方で、今週のニューヨークで大きく報じられたのが、先週日曜にニューヨーク近郊の コネチカット州の裕福な住宅街、チェスシャイアで起こった惨劇。
事件が起こったのは先週月曜の午前3時のことで、地元で医師を営むウィリアム・ぺティット氏(50歳)宅の 地下室から2人の男が押し入り、様子を見に来たぺティット医師をバットで殴るなどの暴行をして 縛りあげ、地下室に放置した後、 自宅に居たジェニファー夫人、娘のヘイリー(17歳)、ミカエラ(11歳)の3人(写真左)を同様に縛りつけ、 午前9時に 犯人は夫人を連れて銀行へ行き、現金1万5千ドルを引き出させたという。
夫人は、車の中から見張る犯人の目を盗んで、銀行職員に「SOS」のシグナルを送ったものの、 警官がぺティット家に駆けつけた時点では、既に同家に火が放たれた後。ぺティット医師のみが 地下から脱出して一命を取りとめたものの、ジェニファー夫人は放火前に既に死亡していたことが確認され、 ヘイリー、ミカエラの2人の娘たちは、犯人にそれぞれレイプされた上に ベッドに縛り付けられた状態で 付近に ガソリンを撒かれて放火されたと見られており、2人の遺体は痛々しいほどに焼け焦げていたという。
犯人は、ぺティット家の自家用車である真っ白なメルセデスのSUVで逃亡を試みたものの、駆けつけた警察のパトカーによって 道を塞がれ、その場で逮捕されている。

昨日土曜日には、この凶悪犯罪の犠牲者となった3人の追悼式がチェスシャイアで行われ、 額の傷や青あざが痛々しい姿で現れたぺティット医師(写真右)は、壇上で 妻と将来を嘱望された子供たちの思い出を 涙ながらに語り、厚い同情が寄せられていたけれど、このおぞましい犯行に及んだ2人の犯人の プロファイルも また地元の人々を驚かせたのだった。
犯人の2人組みのうちの1人は強盗や武器の違法所持などを含む前科26犯、44歳のスティーブン・ヘイズ。 そしてもう1人は26歳のジョシュア・コミサージェウスキー(写真左)で、彼は14歳の時に既に強盗で逮捕された経歴の持ち主で 2002年から5年間を刑務所で過ごし、昨年夏に仮釈放された身。 2人が知り合ったのはハーフウェイ・ハウス(麻薬犯罪者や性犯罪者が監視を受けながらも、普通の暮らしが出来る施設)で、 ここで2人は約6ヶ月間 ルームメイトであったという。
チェスシャイアの人々にとって、ジョシュア・コミサージェウスキーは馴染みのある存在で、 それというのも彼は 地元名士の夫妻が 子供を育てられないティーンエイジのカップルから 養子縁組で引き取った子供であり、彼は子供の頃、 夏になると チェスシャイアの邸宅の芝生を刈るアルバイトを していたという。 コミサージェウスキー家は英語で 「ブルー・ブラッド」 と呼ばれる歴史ある名家で、 かつては地元に広大な土地を所有していたものの、90年代にはその大半を住宅開発業者に売却。 しかし、コミサージェウスキー家の 200年以上の歴史を持つ邸宅は、今回の事件の被害者となった ぺティット家から数マイルのところに今も存在しており、事件後は多くのレポーターが押しかける大騒ぎになっていたという。
彼を養子として育てたベン&ジュード・コミサージェウスキー夫妻は、「ハードワーカーであった」と友人は証言しているものの、 ジョシュア・コミサージェウスキー本人は 名家のファミリー・メンバーの誰とも親しくはなく、彼に連絡を取る家族は居なかったという。 ティーンエイジャーの頃からトラブルが耐えなかったジョシュア・コミサージェウスキーの犯罪手口は、 ターゲットに狙いを定めて、準備を整えるという計画犯罪。すなわち凶悪かつ 残忍なもので、 とても ”出来心” などと弁護が出来るようなものではなかったという。
そのジョシュア・コミサージェウスキーとスティーブン・ヘイズが、ぺティット・ファミリーに 犯罪の狙いを定めたのは、ショッピング・センターで買い物をするジェニファー夫人と11歳のヘイリーという ブロンドの母娘を目撃した際。 2人はジェニファー夫人が運転する車の後をつけ、その後近隣にあったウォルマートでロープなど、 今回の犯罪に使われた小道具を購入していたという。

ジョシュア・コミサージェウスキーが裕福な家庭に引き取られ、裕福なエリアで一体どのような育ち方をしたのかまでは メディアは報じていないものの、親の愛情に恵まれた幸せなティーンエイジャーが 14歳で強盗を働くというのは信じがたいもの。 また14歳で強盗を働いた息子が、犯罪を繰り返しても成す術を持たない親というのも 情けないとしか言い様がなく、こうした人間が犯罪 や 事故を起こした場合、 必ずといって良いほど犠牲者になるのは 善良な人々。 前科26犯のレイピストが 犯罪の犠牲になるというようなことは まずは起こらないものである。
こうした事実を考えると子供を育てるという行為は、1つ間違えると世の中に犯罪者を送り出すということにも なりかねない訳で、勝手に1人だけで逮捕されてくれるのならば まだマシな方で、 善良な他人の人生までメチャクチャにしたとあれば、犠牲者やその家族が そんな風に子供を育てた親の責任を 問いたくなる気持ちは 痛いほど理解できるというのが 私の偽らざる気持ちである。

さて、アメリカには、例え親が留守中でも子供が家で未成年飲酒をした場合、親が逮捕されるという 一見厳し過ぎるとも言える法律がある。 親の旅行中に友人を集めて、飲酒パーティーをしたティーンエイジャーよりも、 その親の方が懲役3ヶ月の実刑判決のような 厳しい処罰を受けるというのがこの法律であり、 一見 筋が通らないようにも思える 法律である。
しかしながら 青少年犯罪の多くや、リハビリ入りしているセレブリティの愚行の数々の ルーツとなっているのが未成年飲酒。ドラッグの常習や犯罪の殆どが、まずはここからスタートしているのである。
そう考えると やはり親には 子供が犯罪や違法行為に手を染めないように プロテクトする義務 がある訳で、 今回のような事件が起こるにつけ、「このくらい厳しい法律が必要なのかもしれない」 と 思えてくるのが実際のところである。





Catch of the Week No.4 July : 7 月 第 4 週


Catch of the Week No.3 July : 7 月 第 3 週


Catch of the Week No.2 July : 7 月 第 2 週


Catch of the Week No.1 July : 7 月 第 1 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。