July 23 〜 July 29, 2012

” Olympic Village Sex Fest? ”

今週は、周知の通り金曜日にロンドン・オリンピックが開幕したため、週末からの報道はオリンピックが中心になったけれど、 週明けにスポーツ・メディアで大きく取り上げられていたのが、シアトル・マリナーズからヤンキーズに移籍したイチロー選手のニュース。
今年、打率が低迷しているイチロー選手なだけに、トレード翌日のニューヨーク・ポスト紙には、 ピークを過ぎたビッグ・ネームの選手ばかりを獲得するヤンキーズのフロントを批判するスポーツ・ライターの 意見も掲載されていたけれど、それ以外のニューヨーク・メディアは 一様にこのトレードを歓迎する雰囲気になっているのだった。
ニューヨーク・タイムズ紙の今日、7月29日付けのスポーツ欄では、「イチローは ピークを過ぎ、肩が衰えた今でもベスト・ディフェンダーである」という 記事を掲載していたけれど、ヤンキー・ファンとしては、「どうせ来るなら、もっと早く来て欲しかった」というのが本音。
トレードが発表された月曜の夜には、既にヤンキーズのユニフォームを着て、マリナーズのホーム・スタジアムでプレーをしたイチローであるけれど、 バッター・ボックスに入った彼を、マリナーズのファンがスタンディング・オーベーションで迎えた様子は、ニューヨーク・メディアはもちろん、 CNNやESPNでも報じられ、「People Love Him、Respect Him」とイチローがシアトルのファンに敬愛されてきたことをコメンテーターが強調していたのだった。

スポーツ以外のニュースでは、引き続きコロラド州オーロラの映画館で起こった射殺事件が大きく報じられていたアメリカであるけれど、 銃乱射事件が起こる度に、アメリカで何が起こるかと言えば、銃の売り上げが伸びるということ。
これは銃愛好家が規制を恐れて、その前に銃を買い込もうとして起こる現象。 とは言っても、実際には共和党の政治家を中心に、政界はアメリカン・ライフル・アソシエーションと繋がりが深いため、 何人犠牲者が出たところで、一向に規制されることが無いのが アメリカにおける銃の流通。
今回のコロラドの事件でも、政治家がよってたかって規制しようとしているのは 銃ではなく 、映画館でのコスチューム着用。 容疑者が犠牲者を殺傷した銃よりも、彼が着用していたコスチュームを規制することが重要だ と真顔で語る政治家の姿は、 夜のトークショーでジョークのネタになっていたのだった。
その一方で、ビジネスの世界では 木曜に株式公開以来、初めて四半期の業績を発表したフェイスブックが、その不振ぶりから 株価を約12%下げて、週末の終値は23ドル71セント。金曜には一時22ドル台という最安値をつけていたのだった。



さて、話をオリンピックに移せば、金曜に行なわれたロンドン・オリンピックの開会式は、アメリカ国内で約4100万人の視聴者が チャンネルを合わせ、史上最高視聴率のオープニング・セレモニーになっていたのだった。
3億ドル(約240億円) を投じた北京オリンピックの開会式に比べると、圧巻の迫力こそは無かったものの、 歴史とカルチャーにフォーカスを当てて、いかにもイギリス的なユーモアを盛り込んだ今回の開会式のコストは4200万ドル(約34億円)。 でも水泳など、翌日に競技を控えた選手達が「立ち時間が長過ぎる」ことを理由に開会式に参加出来なかった一方で、 イギリスの男子体操のルイス・スミスが「(開会式)の花火までは、ぐっすり眠っていたのに・・・」と、翌日土曜に行なわれる予選を控えた状態で、 開会式のノイズに眠りを妨げられたと苦情をもらす様子も見られていたのだった。

ところで、アメリカでは、2012年が「イヤー・オブ・ウィメン」、すなわち”女性の年”になるだろうと言われているけれど、 先週には、歴史上初めて女性のIQが男性を上回ったことが報じられたばかり。 これは、より多くの女性が高等教育を受ける機会に恵まれるようになったことを思えば納得できるけれど、 オリンピックにおいても、史上初めて アメリカの女子の参加選手が男子を上回ったのが今回のロンドン大会。
今回アメリカは総勢529人の選手団を送り込んでいるけれど、そのうち女性オリンピアンは268人、男性が261人となっているのだった。


そのオリンピックは 初日から水泳がスタートし、北京オリンピックで8つゴールド・メダルを獲得したマイケル・フェルプスと、 北京オリンピックではマイケル・フェルプスの影にかすんでいたと言われるライアン・ロッティの国内ライバル対決を、 アメリカでは2800万人が見守ったのだった。
ちなみに日本のメディアでは「ライアン・ロクテ」と報じられているけれど、 Ryan Lochteというスペルで、chは殆ど発音せず 「ライアン・ロッティ」というのが 正式な発音。
そのロッティは、400メートル個人メドレーで予想通りゴールド・メダルを獲得。しかし、 あわや予選落ちのタイムで決勝に臨んだマイケル・フェルプスは、メダルに手が届かず、ブラジルのティアゴ・ペレイラ、日本の萩野公介に次ぐ4位。 今日、日曜のペーパー・メディアはロッティの金メダルよりも、 マイケル・フェルプスが2000年のシドニー大会以来、初めてメダルを逃したというニュースを大きく報じていたのだった。

既に金メダル14個を含む、16個のオリンピック・メダルを獲得しているフェルプスは、史上最多ゴールド・メダルの記録を持っているけれど、 現時点で 最多オリンピック・メダル獲得の記録を持つのは、3回のオリンピックで計18個のメダル(金メダル9個、銀メダル5個、銅メダル4個)を獲得した ソビエトの女子体操選手、ラリッサ・ラティ二ア。 フェルプスが今回、3つメダルを獲得すれば この記録が破れるということで、 その記録達成が アメリカのメディアが大きく注目するポイントになっていたのだった。

さて、マイケル・フェルプスは、オリンピック史上初の400メートル個人メドレー3大会連続金メダルの記録達成を逃したことになるけれど、 同じ史上初の3大会連続金メダルの記録が掛っていたのが100メートル平泳ぎの 日本の北島康介選手。
アメリカの放映でも史上ベストのブレスト・ストローカー(平泳ぎ選手)と評され、 解説者が レース中にその名前を連呼していた北島選手であるけれど、結果は5位。 北島選手の5位はマイケル・フェルプスの個人メドレー4位と類似したレース結果としてアメリカでは報じられていたのだった。



今大会では、もう1つ日本とアメリカで共通した”悲劇”が起こっているけれど、それはアメリカの女子体操で、過去3年連続世界選手権の個人総合でチャンピオンに輝いているジョーダン・ウィーバーと、日本の男子体操で過去3年連続世界選手権個人総合でチャンピオンに輝いている内村航平選手が、 共に予選で、大崩れを見せたこと。 共に、「個人総合の金メダル確実」と言われてきた存在であるけれど、ジョーダン・ウィーバーは個人総合の予選落ちという悲惨な状況。 彼女が悔し泣きする姿が予選の段階で放映されることなど、オリンピック前には考えられなかったことなのだった。
内村選手もミスが相次ぎ、そのビデオ放映中にアメリカの解説者が「こんなウチムラは見たことが無い」とコメントしたほど。
ちなみに内村選手は、アメリカのオリンピック放映局、NBCが開会式前に流した オリンピック参加選手のダイジェスト・ビデオの中で、 ウサイン・ボルトなどと共にフィーチャーされた 数少ない アメリカ代表以外のアスリート。 それほどまでにアメリカ・メディアが注目していた内村選手だけあって、本来の雄姿の替わりに、あん馬で転落した様子などが アメリカのプライム・タイムで放映されることになったのは残念な限りなのだった。

また、アメリカは ライアン・ロッティ&マイケル・フェルプス擁して臨んだ 400メートル・フリースタイル・リレーで、ロッティが フランスのアンカーに大逆転され、銀メダルに終わっており、これもまさかの番狂わせとして報じられていたけれど、 アメリカだけなく、世界中のメディアが驚いたのが 水泳における中国の大躍進。
男子400メートル・フリースタイルでは、孫楊 / Sun Yang が金メダルを獲得し、 女子400メートル個人メドレーでは、葉詩文 / Ye Shiwen が4分28秒43の世界記録で金メダルを獲得しているけれど、 驚くべきは、未だ16歳の葉のラスト50メートルのフリースタイルが、男子個人メドレーのチャンピオン、ライアン・ロッティのラスト50メートルよりも 早かったという事実。
これはもちろん史上初の快挙になっているのだった。



ところで今回のオリンピックには、204の国と地域から約1万人のアスリートが参加しているけれど、 プロ・テニス・プレーヤーや、アメリカのNBAプレーヤーのようなリッチなアスリートは一流ホテルに滞在するものの、 それ以外の多くの選手達が滞在するのが オリンピック・ヴィレッジ、すなわち選手村。
開会式直前に物議を醸したのが、 その選手村でイギリス選手が滞在する建物以外で 冷房が効かないという事態。これには、 各国の選手が苦情のツイートを繰り広げていたのだった。

加えて開会式1週間前にアメリカ・メディアを賑わせたのが、選手村で各国のアスリート達が、その有り余る体力を駆使して セックスを繰り広げているという実態。
2000年のシドニー大会では、7万のコンドームが選手村で用意されたというけれど、それがあっという間に無くなったので、 開催側がさらに2万を追加オーダー。それ以来、 アテネ、北京大会ともに、 選手村に10万個のコンドームを支給するのがスタンダードになっていたのだった。
でも今回のロンドン大会では、その数が15万にアップしており、 相手が居なければセックスが出来ないことを考えて単純計算した場合、2人1組につき30個の割合でコンドームを消費することになるのだった。

実際、オリンピックでは選手村で約70%のアスリートが、恋愛関係もしくは、肉体関係に陥ると言われており、 それは同じ国の選手団の中の場合もあれば、他国の選手団というケースもあるようなのだった。
例えば、プロ・テニスのロジャー・フェデラーは、2000年のシドニー大会で 同じスイス代表の女子テニス・プレーヤーであった彼の妻、 ミルカ・バブリネックと出会っているけれど、選手村でセックスに興じるのは、もっぱら競技を終えたアスリートや、 シリアスなメダル争いに絡んでいないアスリート。 競技を終えたアスリートは、メダル獲得のセレブレーションの一環として性的発散を欲するケースと、敗れた悔しさや、失望、 もしくは競技が終了した安心感や脱力感のはけ口として、 セックスを利用している場合があるとのこと。
各アスリートはそれぞれに厳しいトレーニングと、競技のための万全の準備をして 選手村入りをしているけれど、 それと同時に、「オリンピックを楽しみたい」という気持があるとのことで、予め意図する、しないは別として、 選手村で仲良くなったアスリートと関係するケースが多いのは、コンドームの消費量が示していることなのだった。

US女子サッカー・チームのゴールキーパー、ホープ・ソロは、「北京オリンピックの選手村では、ビルの間や芝生の上など、ありとあらゆる場所で アスリート達がセックスしているのを目撃した」とESPNマガジンのインタビューでコメントしているけれど、 同様の様子は、過去のオリンピアンがこぞって認めていること。 選手村では、アルコールが禁止されているというけれど、アスリート達は まるで修学旅行中の高校生のように、こっそりアルコールを持ち込んでいるとのことで、 過去のオリンピアンの1人は「明け方までパーティーを楽しんで、 選手村にあるマクドナルドで朝の5時からサーブされるブレックファストを食べてから眠っていた」というパーティー三昧ぶりを告白しているのだった。

ロンドン・オリンピックにおける15万のコンドーム支給のニュースを受けて、 アメリカの夜のトークショーでは、「オリンピアンは、最高のアスリートのDNAを持っているのだから、 コンドームなど支給せずに 子供を生ませるべきだ!」というジョークも聞かれていたけれど、 事実、もしアメリカの女性陸上アスリートが、ウサイン・ボルトの子供を宿したとしたら、アメリカの陸上連盟が引き取ってでも英才教育をしたがると思われるのだった。
そんなニュースが報道されていただけに、開会式直前に、プレイボーイで知られるライアン・ロッティがオリンピック・プールでの練習の合間に、隣のレーンに居た オーストラリアの女子水泳選手と水中で 手を繋いでいた様子がメディアに捉えられ、「2人が北京オリンピックで 関係していたのでは?」という噂が飛び交っていたけれど、オーストラリアと言えば、水泳ではアメリカのライバル。 それだけに、そのオーストラリア女子選手が今大会のメダル最有力候補であるロッティの集中力を殺ぐために、送り込まれたのでは? という茶番まがいの憶測まで呼んでおり、今やオリンピック報道も ゴシップ・メディア並みになってきているのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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