Aug 1 〜 Aug 7 2011

” DNA VS. Lifestyle ”


今週のアメリカで最大のニュースになっていたのは、8月2日のデフォルトを回避したアメリカが直面する 今後の経済不安。
それを立証するかのように、8月4日の木曜にはダウが 2008年12月以来という 512ポイントの下げ幅を見せ、その翌日金曜の夜には、 S&P(スタンダード&プアー)がアメリカの国債をAAA(トリプルA)から1段階下のAA+(ダブルAプラス)に格下げ。 アメリカの国債が最高のレーティングを失ったのは、史上初のことで、 金融業界、及び政界にショックを与えていたのだった。
ホワイト・ハウス側は、デフォルトを防いだにも関わらず、格下げをしたS&Pの判断に猛反発して、そのレーティングが大きな間違いであり、 裏に政治の駆け引きが絡んでいるという批判を展開。 日曜にはS&P側がそのリアクションに対して反発し、 同社のレーティングが規定通りに行なわれていること、そして数ヶ月以内に更なるアメリカの国債の格下げもあり得ることを コメントをしているのだった。

短い歴史を遡れば、今回のリセッション発端となった住宅ローン問題で、本来なら家など買えない人々の住宅ローンを買い上げては、 それをCDO (Collateralized Debt Obligation / 資産担保証券の1種)に商品化して、大儲けをしていたのがウォールストリート。 そして、そのジャンク同然の証券化商品に対して、本来ならば警鐘を鳴らさなければならないにも関わらず、 ウォールストリートからの利益を増やすために、その80%に対して 最高のトリプルAの レーティングをしていたのが S&Pやムーディーズといったレーティング会社。
かつてはウォールストリートと並んで、サブプライム問題の共犯とまで言われた存在であるけれど、 それだけに、アメリカの経済評論家の中には、散々サブプライム問題でいい加減なレーティングをしてきたS&Pの格下げなど、アメリカ経済に対する何の指標にもならないと いう 声も聞かれているのだった。

アメリカの政府関係者や金融関係者が この格付けに対して反発しているのは、本来、格付けというのはデフォルト・リスクを基準にされるべきで、彼らはアメリカの国債は決してデフォルトにはならないと確信しているため。 実際のところ、今週、上下院で債務上限の引き上げが可決されなかったとしても、アメリカは2010年度の税収で十分にデフォルトを防ぐことが出来る状態であったことが 指摘されているのだった。
とは言っても、今回の債務上限引き上げの際、”ティー・パーティー”と呼ばれる共和党の一部勢力の間では、「政府の支出を抑えさせるためは デフォルトも止むを得ない」という意見が出ており、これを受けて民主党議員の間では、「今回の格下げを招いたのは ティー・パーティーである」という 批判が飛び出しているのだった。
S&Pのレーティングにさほど馴染みが無いアメリカ国民の間では、$14トリリオンもの借金を抱えたアメリカの国債に、 これまでトリプルAのレーティングがされてきた方が不思議なこと。
アメリカの国債を最も多く所有する中国では、アメリカがいい加減に借金カルチャーを改めて、持っているものでやり繰りするべきとの声が 高まっているとのこともレポートされているのだった。
その一方で、8月2日火曜日に報じられたのが、この日をもって米国財務省よりもアップル社の方が所有するキャッシュが多くなったというニュース。 米国財務省のキャッシュが$74ビリオン(約5兆7861億円)なのに対し、アップル社には$76ビリオン(約5兆9425億円)の キャッシュがあるとのことで、アップルがアメリカを「敵対買収したらどうなるか?」といったジョークが聞かれていたのだった。



さて、株が大暴落した今週木曜、8月4日は奇しくもオバマ大統領の50歳のバースデー。
ニューヨーク・タイムズ紙では、それに先駆けて先週日曜の同紙の中で、大統領の顔のエイジングについての記事を掲載していたのだった。
写真上は、左が大統領就任直前、2008年1月15日のオバマ氏、そして左側が債務上限引き下げで、散々議会が揉めていた最中の今年7月31日の オバマ氏。大統領に選出された直後のオバマ氏に比べると、昨今では白髪とシワが増えているのは 誰もが気付くことだけれど、 アメリカ人のスタンダードからすれば、オバマ大統領は50歳という年齢にしては 若いルッキング。
そもそもアフリカ系アメリカ人やアジア人は、コケイジャン(白人層)に比べて皮膚が厚いので、エイジングで頬がこけるスピードが遅いのに加えて、 大統領の肌の色が、白人層の白い肌よりもエイジングを目出たせない要素になっていることがニューヨーク・タイムズ紙の記事で指摘されているのだった。
そのオバマ大統領は喫煙というエイジングをスピードアップさせる習慣がある一方で、 仕事の合間にスタッフとバスケット・ボールをしたり、休日にはゴルフを楽しむなど、以前からスポーツ好きでも知られる存在。 でも、歴代の大統領のメディカル・レコードを1920年代から分析してきたマイケル・ロイゼン博士によれば、 アメリカ合衆国の大統領はその就任期間中に1年で2歳分の年をとるとのこと。
そのエイジングが人の2倍になる原因として挙げられるのは ”クロニック・ストレス (長期ストレス)” で、 ストレスが身体に様々なエイジングの症状をもたらすと同時に、それをスピードアップさせることが指摘されているのだった。

昨今のアメリカでは、未だにアメリカ史上で最もパワフルなジェネレーションであるベビー・ブーマー世代が、 外観における若さへの執着を見せる一方で、年齢に囚われないライフスタイルを送っているのを反映して、 「50 is the new 30 / フィフティー・イズ・ザ・ニュー・サーティー」すなわち、現在の50歳は以前の30歳の認識に値するとも 言われているけれど、自分の身体が本当は何歳に値するのかというバイオロジカル年齢は、少なくとも外観からは判断できないもの。
2〜3年ほど前には、ライフスタイルに関する100問以上の質問に答えて、何歳まで生きることが出来るかを診断するテストが流行ったことがあるけれど、 それをもっとずっと確実に、科学的根拠から診断するテストが一般の人々にも行なえるようになったのが今年の春のこと。
これは、僅か200〜400ドル程度の費用で出来る血液検査で、それで何を調べるのかと言えば、DNAのテロメアの長さ。 これを調べることによって、自分が何歳まで生きるのかがほぼ確実に分かると言われているのだった。

テロメアと、テロメアを修復する機能を持つテロメラーゼ による染色体(DNA)保護機構は、 2009年のノーベル医学生理学賞を受賞した発見で、 昨年5月のこのコラムの ”Run For Youth” で 詳しく説明しているけれど、テロメアは染色体の両端についているキャップのようなもので、 細胞分裂=老化と共に短くなっていくもの。したがって、テロメアの長さが平均より短いということは、老化が平均以上に進んでいるということ。 もちろん生まれつきテロメアが短いという人も居て、そういう人は往々にして短命であることが指摘されているのだった。
NBCのモーニング・ショー、「トゥデイ」では、同番組のメディカル・セクションを担当する女性医師が このテストを受けた様子を報じていたけれど、 私がビックリしたのは、このドクターはボトックスやフィラーなどで外観をかなり若く見せているものの、実際の年齢は60代。 でもスタイルも良いので、さぞやバイオロジカル年齢も若いかと思いきや、彼女のテロメアは 同じ年齢の平均よりずっと短く、 彼女はその原因として、若い頃からかなり長くタバコを吸っていたことや、かつてはそれほどエクササイズをしていなかったことなどを挙げていたのだった。

なので、外観の若さはお金で買うことが出来ても、それがバイオロジカル年齢の若さには反映されないことは明らかであるけれど、 昨年5月のコラムに書いている通り、テロメアはテロメラーゼによって修復されるもの。したがって、ランニングなどのエクササイズをして、 テロメラーゼを活発にすれば、 テロメアが短くなるのを防ぐことが出来、その結果、寿命が延びるので、このテストの結果は、あくまで その時点で何歳まで生きることが出来るかの予測に過ぎないもの。
また、テロメアでは交通事故などによる死亡、もしくは大怪我をした状態までは予測できないので、このテストが余生の長さをはっきり予言するものではないのは明らか。 でも、そのままのライフスタイルを続けていた場合、大体何歳までの寿命かは、かなり正確に予測することが出来るのは事実で、 それを把握して、たとえ結果が悪くても自暴自棄になるのではなく、その後のライフスタイルを改めるきっかけや、参考にすることが奨励されているのだった。


こうしたテストが広まると、健康保険や生命保険などの値段がそれによって変わってきたり、企業の採用データに使われるなど、DNA差別の原因となることも 危惧されているけれど、こうしたDNA検査の結果は個人レベルでは結婚相手を決める要因にもなりうるものなのだった。
その結婚相手を決めるポイントになるのは、女性から見た場合は男性の経済力が最も大きなポイント。一方の男性にとっては、女性の美しさの基準は別として、 外観で惹かれるものが無いと、結婚はおろか、交際するのも難しいのが実情。
でも若い時に美しくても、年齢を重ねて、ストレスなどの老化原因がどんどん増えていった場合、そのルックスがどうなるかは予測できないもの。
写真左は、スーパーモデル時代の立役者、リンダ・エヴァンジェリスタの20年を隔てた写真であるけれど、若い頃があまりに美しかった上に、 プロのメークアップ・アーティストがその美しさをさらに引き立てていただけに、そのエイジングによるギャップの大きさは一般人を遥かに上回るもの。 20代の頃は、メタボリズムのスピードを自慢して、撮影の合間にメガ・カロリーのケーキを食べていたことで知られる彼女であるけれど、 ここ数年はフィットした服を着用できないほどにウエストラインが太めになって、 身長の高さと服のシルエットでごまかしていることが指摘されているのだった。
加えて、リンダは長年喫煙もしていたので、果たして今年46歳の彼女のバイオロジカル年齢は一体何歳くらいなんだろう?と思ってしまうけれど、 エイジングのスピードを決めるのはDNAに加えてライフスタイル。 でも、ヘルシーな食生活や、メディテーション(瞑想)などのストレスを緩和する努力、そしてエクササイズによって、テロメアを長く保つことが出来ることが立証されているので、 最終的には人間の日々の生活こそが、生まれ持ったDNAよりも 長寿や老化のプロセスに大きく影響すると言うことが出来るのだった。

まだ研究が始まってから日が浅いテロメアであるけれど、テロメアの長さはコレステロール・レベル同様に心臓病になる確率の指標になると言われ、 遺伝による骨髄の疾患がある人は テロメアが短いこと、さらに興味深いのは、 高学歴の人々の方が テロメアが長いというデータが得られているのだった。
低学歴の人々というのは、往々にして低所得になる傾向が強いけれど、 低所得者の方が、栄養のバランスが取れた食事や、エクササイズの機会に恵まれないこともあり、 老化が早く、また成人病に掛る確率も高いことが指摘されているのだった。

ところで、ルックスの老化はさておき、長寿という点では、以前何回かこのコラムで書いた通り、 100歳以上まで長生きした人々の共通点は、皆揃って「自分は長生きする」、「100歳以上まで生きる」と 決めていた人、信じていた人。そのライフスタイルは 肉食も居れば、菜食主義者や喫煙者、 一切エクササイズをしない人まで、様々であったというけれど、100歳以上まで生きた人々は、皆 生きることに執着していた人たち。
もちろんその中には、健康な人、病気を患って長生きしている人、見た目が年齢より若い人、年相応の人も居る訳だけれど、 精神力というのも、長寿というポイントにおいては大きなパワーを発揮すると言えるようである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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