July 29 〜 Aug 4, 2013

” Frienvy ”




今週は、特に大きなニュースが無く過ぎたアメリカであるけれど、メディアの世界では メジャーリーグ、ボストン・レッドソックスのオーナー、ジョン・ヘンリーが ニューヨーク・タイムズ傘下のボストン・グローブ紙を買い取ったことが報じられたのに加えて、 ニューズウィーク誌がIBTメディアによって買い取られるという 動きが見られていたのだった。

7月半ば以来、猛暑が一段落しているニューヨークであるけれど、 全米でこの夏、例年にも増して問題視されているのが、親が幼い子供を 短時間なら大丈夫だろうと 駐車した車の中に置き去りにして 買い物等に出かけてしまうケース。 既にこの夏のアメリカでは 7月までに、19人の子供が 車内の熱中症で死亡していることが伝えられているのだった。
車の中が如何に短時間に高温に達してしまうかの実験結果によれば、 日中の気温が24度の場合、 車の中は 10分の停車時間で34度に達するとのこと。 日中気温が 30度の場合だと、車内の温度は10分後に49度、 外が34度の暑さの場合、15分後には 車内の温度が60度にまで上昇するという。
そんな暑さの中では、大人ほど体温の調節機能が発達していない幼い子供が 衰弱し、最悪の場合 死亡してしまうのは、 無理もないこと。
メディアでは 子供が駐車した車の中に置き去りにされているのを目撃した場合、猛暑と言えない程度の暑さでも 警察に通報するよう 呼びかけているけれど、 アメリカの法律では こうした状況で警察沙汰になった場合、親が Child Endangerment / チャイルド・エンデンジャーメント、 すなわち子供を危険にさらした罪で 逮捕されるのはもちろん、 状況次第では 子供の親権さえも失う結果になりかねないのだった。


子供がらみのニュースでもう1つ報じられていたのは、昨今のアメリカで、子供の肥満が増えるにしたがって 子供の高血圧が増えてきたというニュース。
高血圧の子供の割合は、過去20年間に39%も増えているとのことで、 その原因となっているのが塩分の過剰摂取。 とは言っても 子供に限らず、現代人にとって 塩分の主要なソースとなっているのは 料理に意識的に振り掛けている 食卓塩よりも、「こんな物に塩が入っているとは知らなかった」というような食品。 塩分がポップコーン、ポテトチップ等のスナック菓子類や、ソーセージ&ハム等の加工肉や ケチャップ、マスタード、マヨネーズに多分に含まれているのは 容易に想像が付くけれど、 それ以外にもヨーグルト、ソーダを含むソフトドリンク、デザートやパン類等にも含まれていて、 そんな日ごろ見落としている塩分によって 現代人が塩分過剰摂取になっているのは 頻繁に指摘されること。
そもそも1日に奨励される塩分の摂取量は1〜3歳が10グラム以下、4〜8歳で12グラム以下、9歳〜50歳が15グラム以下。 これはファースト・フードを1回食べただけでも オーバーしてしまう量なので、 そんなファースト・フードを主食にし、 水よりソーダを飲む傾向が強い低所得家庭の子供達が、 肥満と共に 高血圧の問題を抱えがちであることが指摘されているのだった。



話は変わって、今から4年前、 2009年3月のこのコラムで ”フレネミー ”について 書いたことがあるけれど、これと似た言葉で つい最近 友達と話題にしていたのが、”Frienvy / フレンヴィー”。
フレンヴィーは、”Friendship Envy / フレンドシップ・エンヴィー” を短く縮めたスラングで、 自分より幸せな友達に対して感じる ジェラシーや羨む気持ちのこと。 「友達として心から喜んであげたいのに、何故かそれが出来ない」という複雑な心境もフレンヴィーと言えるのだった。

気をつけなければならないのは、フレンヴィーを抱く人物が、 ”友人の顔をしたエネミー(敵)”であるフレネミーとは 区別される存在であるということ。
フレネミーは、心の中では嫌っている、もしくは 敵視している人間でも、 自分にとって 何らかの利用価値がある限り 友達としてキープしながら、 その人物に対する裏切り行為を 平気でやってのける存在。 自分が有利になるように、事実を捻じ曲げて噂話を流したり、 人間関係の裏工作を頻繁に行うのがフレネミーで、 そんな勝気でジェラシーが強い野心家タイプが 友達のふりをして、人生に毒を盛ってくるのだった。
これに対してフレンヴィーは、親友同士など 本当に仲が良い間柄で生じるエモーション。 本来だったら 一緒に分かち合うべき友達の幸せを 心から祝福できないために、 フレンヴィーを抱く人物が 同時に罪悪感を感じるケースも非常に多いのだった。

例えばクイズ番組を見ていれば、誰もが 多額の賞金が懸かった問題に取り組む挑戦者を応援し、 それに正解して、大喜びをする挑戦者を見て、一緒に喜んであげられるもの。
そんな赤の他人の幸せは、素直に喜んであげられるのに、どうして仲の良い友達の幸せを 心から喜ぶことが出来ず、フレンヴィーを抱くのかとと言えば、 赤の他人の幸せが自分とは無関係であるのに対して、友達の幸せは 少なからず自分の生活や精神状態に影響を与えるため。

では、フレンヴィーというものは どういったケースで抱くエモーションかと言えば…


すなわち、友達と比較して”不幸” もしくは ”それほど幸せではない” 自分の状況を自覚させられたり、自分1人が取り残される思いをたり、 幸せの先を越されたような状況、自分抜きで友達が楽しんでいる様子に対して 抱くのがフレンヴィー。
でも相手がどんなに幸せでも、自分がそれより幸せだと思っている場合には 抱くことが無いのがフレンヴィーで、 その点はジェラシーと全く同じコンセプト。  したがって、フレンヴィーはジェラシーのカテゴリーに属することは間違いないけれど、 単なるジェラシーと異なる点は、前述のように 本来ならば 祝福すべき立場にある自分を悟って、 罪悪感や疑問を感じることなのだった。


フレンヴィーを抱いている友達を見分るポイントとして挙げられるのは以下のようなもの。


これらは、友達の幸せを目の当たりにして、取り残される自分のことを咄嗟に考えたり、 ジェラシーや不安等、様々な感情を抱く中で、 相手を祝福しなければならないために起こる現象。
会話が単調になったり、リアクションにタイムラグが生じるのは、頭の中が別のことを考えている典型的な状況。 そんな状況下では、俳優並みに演技に慣れた人でも 口で微笑む表情は出来ても、目で微笑むことは出来ないのだった。

そこで生まれてくる疑問は、「フレンヴィーを抱く友達が、フレネミーになる場合があるか?」ということ。
これについては圧倒的に「No」という見方が多いけれど、 フレンヴィーが 消化されるまで、一時的に 友達がフレネミーのように振舞うことは 珍しくないもの。
例えば、幸せに水を差すようなことを言ったり、楽しそうなプランを潰しに掛かるようなことは ごくごく一般的。 このためフレンヴィーが一段落するまで、交友関係がストップしてしまうケースも少なくないのだった。

交友関係を続けながら、フレンヴィーが収まるのを望む場合は、 相手の気持を考えて、あまり幸せをひけらかさないようにして、相手の話し相手になってあげることが とても大切なこと。フレンヴィーはジェラシーであると同時に、「自分1人が取り残されたくない」という 気持の表れでもあるので、その不安を払拭してあげることが有効なフレンヴィー対策になるのだった。

そんなフレンヴィーにはポジティブな要素もあって、「彼女に出来たのだから、私にも出来るはず」、 「彼女がサクセスを収めたのだから、私にもサクセスのチャンスがあるはず」という希望や、 モチベーションとなる ケースが多いこと。
これはジェラシーや競争心を抱いていても、相手のことを身近な友達だと思うからこそ 湧いてくるポジティブな感情と説明されているのだった。

またフレンヴィーを 自分を幸せにするモチベーションに転化した場合、 既に幸運を掴んでいる友人のサポートが得易いのも事実。
そもそも幸運に恵まれた側というものは、往々にして友だちに対して ”Happy Guilt / ハッピー・ギルト” を抱いている場合が殆ど。 ハッピー・ギルトとは、周囲よりも幸福な自分に対して「私だけがこんなに幸せで申し訳ない」と 感じる罪悪感のことであるけれど、 これを抱いている人物は、友人の幸福追求に非常に協力的な場合が多いのだった。
したがって、フレンヴィーはポジティブに生かせば、自分も幸福追求の努力をするようになり、 それに対する友達のサポートも得られるという、一石二鳥の状況を生み出すことが出来るのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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