Aug. 6 〜 Aug. 12 , 2012

” Image of Body”

今週もオリンピック1色だったアメリカであるけれど、 週末のNYで大報道となったのが、タイムズ・スクエアで男性が射殺されたニュース。
これは今年に入ってから、ブルックリンやブロンクスで増えているギャング団の発砲ではなく、 警官による発砲で、マリファナを吸っていた男性を警官が職務質問したのが事のきっかけ。 男性はどんどん反抗的な態度になって、ナイフを抜き出し、それを振り回しながらタイムズ・スクエアから7番街を下っていき、 その間 「Shoot Me! (俺を打ってみろ!)」と叫んでいたというけれど、ほどなく10発以上の銃弾を受けて射殺されたのだった。
この様子は、スマートフォンで捉えたと思しきビデオがYouTubeで公開されているけれど、 ショッキングなのは、射殺された男性はナイフしか持たない身。一方の警察は複数の警官が銃を構えて彼を追跡しているにも関わらず、 あまりに簡単に、それも凄まじい発砲で男性を射殺してしまったこと。
ニューヨーク市警察は、射殺された男性が何度にも渡る警告を聞かず、ナイフを振り回す危険な状態で、正当な射殺であったと説明しており、 射殺された男性には、数々の前科があったことも報じられているけれど、男性の家族は「発砲する以前に別の解決策があったはず」 と、悲しみと不満のコメントを発表しているのだった。

もう1つ、週末の大きなニュースは 共和党大統領候補、ミット・ロムニーがその副大統領候補として、下院の予算委員長であるポール・ライリー(写真上右、左側、42歳)を 指名したというもの。ポール・ライリーは、ロムニーの息子と同じ年齢とのことで、 もし当選した場合、史上最年少の副大統領になるのだった。
多くのメディアは 土曜の朝、支持者を前に ライリーを紹介する際、ミット・ロムニーが誤って「次期アメリカ大統領、ポール・ライリー」と言ってしまい、 後から「副大統領」と訂正したビデオを流していたけれど、同じ間違いは4年前にオバマ大統領もジョー・バイデン副大統領を紹介する際にやっていたことなのだった。



さて、今日8月12日でロンドン・オリンピックも閉会式を迎えたけれど、今回のオリンピックは、世界新記録が44、オリンピック新記録が117も生まれた大会で、 4000回にも及ぶドーピング・テストで、ポジティブが出たのは僅か1回。 したがって、史上最もクリーンな(=ドーピングの不正が無い)オリンピックとも言われているのだった。
それでも、物議を醸す審判や問題が多々発生していたのも事実で、 アメリカのオリンピック放映局であるNBCが ”ロンドン大会で最大のスキャンダル” と見解付けたのは、 バトミントンの無気力試合で、4チーム、8選手が失格になった事態。NBCのコメンテーターは、 「バトミントンという言葉とスキャンダルという言葉が、同じニュースの中で報道されたのは、この2つの言葉が人類に存在してから初めてのこと」 と冗談交じりに語っていたけれど、そう言われて納得するほど これまで物議を醸したことが無いスポーツであったのがバドミントン。
そもそも地味で、オリンピックとは言えTV放映される機会に恵まれなかったバドミントンであるけれど、 一躍脚光を浴びて 世界中のメディアで報じられたのが、白熱したゲームの誰もがうなるような名プレーではなく、 ダラダラした無気力試合だったというのは非常に残念なことと言えるのだった。

さて 今年は「イヤー・オブ・ジ・ウィメン」と言われ、アメリカ選手団では女子の参加アスリート数が史上初めて男子を上回ったことは、 以前お知らせしたけれど、メダル獲得数も然りで、今回アメリカが獲得した104個のメダルのうち、約3分の2は女性アスリートによって獲得されたもの。 金メダルについては、アメリカが獲得した46個中、29個を女性アスリートが勝ち取っているのだった。

調べによれば、ロンドン・オリンピックのメダル・セレモニーにおいて、ゴールド・メダリストが国家を歌う割合は44%。泣く確率は16%。 泣くのは女性アスリートの方が数的には多いものの、男性アスリートの方が泣き方が激しいケースが多いことがレポートされているのだった。
最も泣かないのは中国の選手、逆に最も泣く傾向にあったのはホスト・カントリーのプレッシャーからか、英国のアスリート。
興味深いのは、伝統的にオリンピックでは、シルバー・メダリストよりもブロンズ・メダリストの方がハッピーなケースが多いという分析。
初めてこれが正式にリサーチされたのは、1992年のバルセロナ・オリンピックの際で、 リサーチャーが、表彰台のアスリート達の表情や、試合後のコメントなどを分析した結果、 ブロンズ・メダリストの方が、シルバーメダリストよりも遥かにハッピーであったという。


この理由として指摘されるのは、 シルバー・メダリストは自分をゴールド・メダリストと比較して ”敗者”だと考えるのに対して、 ブロンズ・メダリストは、メダルを逃した他のアスリート達と自分を比較して、「自分はメダルを獲得した勝者」だと考える傾向があるため。
またトーナメント式のスポーツでは、銀メダル獲得は決勝に敗れることを意味するけれど、銅メダルは 3位決定戦で勝利して獲得するものであり、 その点でも後味が全く違うことが指摘されているのだった。
もちろん、ウサイン・ボルトのようなダントツの金メダル候補が、予想通り他のアスリートを引き離して勝利を収めたようなケースでは、シルバー・メダリストも ブロンズ・メダリストも、その幸福感に大差は無いと思われるけれど、 最悪なのは、ゴールド・メダルを確実視されていたアスリートが 僅少差、もしくは「まさか!」のミスで銀メダルに甘んじること。


ロンドン・オリンピックでその好例と言えたのが、女子体操のマッケイラ・マロニー (写真上)。世界選手権で跳馬のチャンピオンになっている彼女は、 種目別の跳馬の金メダル最有力候補であったけれど、2本目の着地で尻餅をついて 銀メダル。 表彰台で銀メダルを首に掛けて 不満そうに唇を横に歪めた彼女の様子は、アメリカのありとあらゆるメディアが大きくフィーチャーしたのだった。
中には、その不服そうな表情があまりに大きく報道されたせいで、オリンピック後に マッケイラ・マロニーに広告スポンサーが付かないのでは?と 見る声もあったけれど、今週火曜に登場したのが その彼女の姿をフォトショップでパロディにしたウェブサイト。
http://mckaylaisnotimpressed.tumblr.com/(マッケイラ・イズ・ノット・インプレスト.thmblr.com:) には、彼女が表彰台で見せた不満そうな姿が、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグやスパイス・ガールズと一緒に写真に納まっていたり、 昨年のロイヤル・ウェディング、月面着陸、映画「スター・トレック」から「ザ・ハンガー・ゲーム」までのシーンに登場。
前回、同様のパロディが インターネット上で大センセーションを巻き起こしたのは、 オスカーの際にアンジェリーナ・ジョリーが見せた右脚であったけれど、 マッケイラ・マロニーは このパロディがツイッターでトレンディングになったお陰で、一気に不満顔のネガティブ・イメージを払拭させているのだった。



余談ではあるけれど、今回のオリンピックはアメリカがNBAのプロバスケットボール・プレーヤーを「ドリーム・チーム」として オリンピックに参加させて20周年目の大会。バルセロナ・オリンピックに出場した初のドリーム・チームは、 マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソンを始めとするNBAのスーパースターで構成され、 チーム12人中11人が殿堂入りプレーヤーという本当に夢のような顔ぶれ。 もちろん、当時のドリーム・チームは圧勝に次ぐ圧勝で金メダルに輝いており、大手企業スポンサーが競って 資金を注ぎ込んだドル箱チームだったのは言うまでもないこと。
その20周年の特番で マジック・ジョンソンが語っていたのが、マイケル・ジョーダンが朝5時までチームメイト達とカード・ゲームを楽しみ、 その後、早朝からゴルフで36ホールを回って、1時間程度昼寝をしてから試合に臨んでいたというエピソード。 しかもジョーダンは、それを毎日のように続けていたというタフさで、現在のNBAプレーヤー達とは格が違っていたことを 窺わせているのだった。
現在NBAでは80人の外人選手がプレーをしているけれど、その全てが元祖ドリーム・チームに憧れて NBAを目指したと言われており、当時ドリーム・チームが宿泊していたバルセロナの一流ホテル前には、 彼らが移動のバスから降りるほんの数秒を 一目見ようという世界中のファンが毎日数千人訪れていたという。



さて、先述にように、今回のオリンピックは特にアメリカ・チームで女性アスリートの活躍が目立ったけれど、 大会全体を見ても、参加国全てが女性アスリートを送り込んだ史上初めての大会。
でもその一方で、メディア及び、ソーシャル・メディアでは、スポーツとは全く関係の無いルックスという見地から、 女性アスリートを批判したり、セックス・オブジェクトとして扱う傾向が強かったことも指摘されているのだった。
女子体操の個人総合で、黒人アスリートとして初の金メダルに輝いたガビー・ダグラスは、そのメダル獲得の翌日には、 ツイッターを始めとするソーシャル・メディアで彼女のヘアスタイルが批判の的にされているのに驚いたというけれど、 彼女が着用していたピンクのレオタードについても「レッド、ホワイト&ブルーの愛国心カラーを着るべき!」 と、FOXニュースのコメンテーターが批判を展開。
でもその程度ならまだ良い方で、水泳で金メダルを獲得したアリソン・シュミット(写真上、左側)は 「知恵遅れみたいなルックスで、知恵遅れみたいに喋る」と ソーシャル・メディア上で叩かれ、女子重量上げのホリー・マンゴールド(写真上、右側)にしても夜のトークショーや、ソーシャル・メディアで そのルックスをからかわれていたのだった。

それとは別に、トルコでは新聞の男性ジャーナリストが オリンピックの女子アスリートのボディに対して 「肩幅が広く、胸がペタンコで、ヒップもない。オリンピック・トレーニングは 女性本来の体型を台無しにして、男のようにしてしまっている。母性の象徴であるバストの膨らみは何処へ行った?」という批判を展開。 これに対しては、彼と同じメディアで働く女性ジャーナリストから 「だったら、オリンピックなど見ずに、ランジェリー・ショーを見るべき」という反論が展開され、 世界中からも批判のツイートが殺到。彼の名前は、世界中のツイッターのトレンディングになっていたことが伝えられていたのだった。


その一方で、今回アメリカのオリンピック放映局、NBCが大きな非難を浴びたのが 女性アスリートがプレーする姿を編集した 「Image of Body / イメージ・オブ・ボディ」というビデオを製作・公開したこと (写真上左)。
この中にはビーチ・バレーボール、テニス、陸上などの女性アスリートがフィーチャーされていたけれど、競技ビデオとは言え、 ボディ・パーツを強調したスローモーションと、2流ポルノ映画のようなBGMのせいで、非常にいかがわしく仕上がっていたのがこのビデオ。 こんなビデオをNBCが公開したことにメディアは驚いていたけれど、これに対しては女性からはもちろん、 男性ビューワーからも「オリンピックというイベントを勘違いしている」という批判が寄せられていたのだった。

そうかと思えば、女子ウォーターポロ(水球)のアメリカ対スペイン戦では、今回のオリンピックから導入された水中カメラが、 スペイン選手の水着が引っ張られて、胸が露出したシーンを捉え(写真上右)、それが NBCのライブ・ストリーミングで放映されたことから、 競技そっちのけで ソーシャル・メディア上で大センセーションを巻き起こしてしまったのだった。
このため、女子ウォーターポロ選手は試合後に 「どの程度水着が引っ張られるのか?」、「水着の強度は?」と いった メディアからの質問に応えなければならない状況で、この胸露出事件のせいで 女子ウォーター・ポロが突如、思わぬ脚光を浴びることになったのだった。


さて、今回のロンドン・オリンピックで最も入手が難しかったと言われるのが、女子のビーチ・バレーボールのチケット。
今ではビーチ・バレーボールの人気のせいで、本来のバレー・ボールが欧米では「インドア・バレーボール」と呼ばれるようになってしまったけれど、 男子のビーチ・バレー人気が今ひとつなのに対して、女子の人気が非常に高いのは、 女子がビキニでプレーをするため。
女子ビーチ・バレーは、今回のオリンピックから宗教上の理由で肌を露わに出来ない女性プレーヤーのために、 ビキニ以外の着用も許可されるようになり、気温が低い日の試合ではアスリート達が長袖のTシャツやレギンスを着用していたけれど、 それでも、天候が許す限りプレーヤーが着用していたのは、やはりビキニ。
今回のオリンピックで、3大会連続の金メダルに輝いたアメリカのミスティ・メイ&ケリー・ウォルシュ(写真上左)は、 「自分達はカリフォルニアで育っているから、ビキニを着用してのプレーに一番慣れている」とその理由を説明していたけれど、 それと同時に彼女らが強調していたのが、 「ビーチバレーは最もセクシーなスポーツであるから・・・」ということ。 幸い、ミスティ・メイ&ケリー・ウォルシュは、ビキニでプレーをしていても過度にセクシーに見えるタイプではないので、 スポーツという域で捉え易いけれど、このコメントは 本人達も ビキニを着用してのプレーが女子ビーチ・バレー人気の要因だということを 十分理解していることを立証しているのだった。

要するに、オリンピックでは女性アスリートはルックスが良いに越したことはないけれど、 ボディを露出したウェアで行う競技が注目を集めるということ。 事実、女子のUSバスケット・ボール・チームは今回のオリンピックで 5大会連続の優勝、オリンピック試合40連勝を記録しているけれど、 メディアの注目度は決して高いとは言えないもの。
US女子ボート・チームにしても、競技の時は髪の毛を束ねたスッピンでも、金メダル獲得後のインタビューにメークをして出てくると、ブロンド長身の美女揃い。 しかしながら タンクトップにショーツ姿で、座ったままボートを漕ぐというセックス・アピールが無い競技だと、せっかくの美貌も注目されずに終わってしまうのだった。


中にはルックスの良さを咎められる女性アスリートもいて、それが陸上ハードルのロロ・ジョーンズ (写真上左)。
今回のオリンピックで、4位に甘んじた彼女はヴァージンであることを公言し、 マクドナルドの広告に出演し、ツイッターで頻繁にファンと交流していることで知られる存在。 でも、ニューヨーク・タイムズ紙では、「そのルックスの良さとソーシャル・メディア受けの良さを武器に、 広告契約を取り付けて、競技の実力よりイメージ戦略で成功している」と批判されていたのだった。

そんな中、女子バスケットボールの決勝でアメリカに敗れた フランスの女子チームは、 全くメディアに注目されず、選手村でも存在感が無いことを嘆いて、そのコーチが「勝つことだけが存在感を示す手段」と 選手の闘争心を煽っていたことが伝えらているけれど、 オリンピック直前に、そんな地味なスポーツの女子アスリートが、注目を集めるために何をしたかと言えば、 ヌード写真の公開。
写真上、右はESPNマガジンの表紙にフィーチャーされた、US女子ウォーターポロ・チームであるけれど、 同様のヌードはUS女子インドア・バレーボール・チームのプレーヤーもを公開しているのだった。

もちろん、こうしたヌード写真は、トレーニングで鍛え抜かれたボディを 「プレイボーイ」のようなポルノ的な視点ではなく、 あくまで肉体美して捉えることをコンセプトとしたもの。とは言え、ウォーターポロ試合中に胸が露出した画像で 男性達が大興奮したり、競技ビデオがスローモーションとBGMで いかがわしい映像だと受け取られることからも分かる通り、 見る側の視点で、どうにでもイメージが変わってくるのが人間のボディ画像や映像と言えるのだった。

でも、古代オリンピックは全裸で競技が行なわれていたというから、アスリートがヌードになるのはオリンピックのルーツへの回帰とも言えるもの。
また、今回のオリンピックでは男性アスリートの肉体美の映像や画像も、一部の女性ファンやゲイ男性を喜ばせていたというから、 結局のところ、オリンピックというのはスポーツの祭典であると同時に、肉体の祭典と言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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