Aug 5 〜 Aug 11, 2013

” Benefits of Self Improvement ”


週明けに報じられて、今週のアメリカで最大のニュースになったのが、”WaPo” の愛称で知られる ワシントン・ポスト紙が、 アマゾン・ドット・コムの創設者である、ジェフ・ベゾスによって 2億5,000万ドル(約240億円)で買収されたニュース。
ワシントン・ポスト紙といえば、1970年代にはニクソン大統領のウォーターゲート事件を暴いたことで知られる 由緒あるメディア。ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルと並んで、最も影響力のあるペーパー・メディアと 言われてきた存在であるけれど、ニューヨーク・タイムズ紙がリベラル派の知的富裕層にアピールし、 ウォールストリート・ジャーナルが金融業界を中心としたビジネスマンにアピールする一方で、特定の読者層を掴むアイデンティティが確立出来ないまま、 経営不振に陥っていたのが同紙。
かつては、ワシントンの政界を最も的確に報じていたのがワシントン・ポストであったけれど、今では そのワシントン政界内部の最新ニュースのお株を、元同紙のジャーナリスト、ジムヴァンデヘイ&ジョン・ハリスが設立した インターネット・メディア、” Politico / ポリティコ ” に奪われて久しい状態になっていたのだった。

同紙のスタッフは 買収のニュースに大ショックを受けると同時に、メディア未経験のオーナーに対する不安で かなり落ち込んだことも伝えられていたけれど、 時間が経つにつれて社内のムードは、ジェフ・べゾス対する期待感に替わりつつあるとのこと。
それというのも、 ジェフ・ベゾスは低迷していた書籍の売り上げを、Eブックスで盛り上げた実績があると同時に、 インターネット・ショッピングの歴史を変えた張本人。 したがって、ネット時代をリードしてきたジェフ・ベゾスの新しい視点が、オールド・ファッションなワシントン・ポスト紙の経営に 加わることは 歓迎されるべきと解釈され始めたことが伝えられているのだった。

そのジェフ・ベゾスは 個人資産、約2兆4000億円のマルチ・ビリオネアであるけれど、 このところ増えているのが、ビリオネアによるメディアの買収。 先週のこのコラムで、ボストン・レッドソックスのオーナー、ジョン・ヘンリーがボストン・グローブ紙を買収したことをお伝えしたけれど、 ビル・ゲイツに続く、アメリカ第2位の富豪で 投資家のウォーレン・バフェットも複数のローカル・メディアを買収していて、 昨今、ビリオネアのステータス・シンボルになりつつあるのがメディアを所有すること。
昨年の選挙の際には、共和党を支持するビリオネア達が多額の政治献金をする一方で、政治団体を作り、 自分達のビジネスに有利な候補者を支援するという、「お金で買う政治」が問題視されていたけれど、 昨今の ビリオネアによるメディア買収についても、「お金で買う世論 になるのでは?」と 危惧する声も無きにしもあらずなのだった。


今週、もう1つ大きな報道になっていたのが、オバマ大統領が夏のバケーション入り前に予定されていたロシア訪問、及びプーチン大統領との会談を、 ロシア側が米国家安全保障局(NSA)の極秘プロジェクトをメディアに告発したエドワード・スノーデンの身柄引き渡しに非協力的であることを理由に キャンセルしたニュース。
金曜にプレス・カンファレンスを行なった大統領は、「エドワード・スノーデンが愛国者だとは思わない」としながらも、 NSAのモニター・プログラムの見直しを約束するコメントをしているのだった。 これを受けて、多くのメディアや政治批評家は 「事実上、エドワード・スノーデンの勝利」という見解を明らかにしているけれど、 アメリカ国内の一部では スノーデン身柄引き渡しに応じなかったことを理由に、来年 ロシアのソチで行われる冬季オリンピックをボイコットするべき との声が聞かれているのも事実。
でもソチ・オリンピックについては、別の理由でも 世界各国でボイコット運動が起こっていて、それはロシアにおける ゲイ・ピープルに対する虐待が極めて激しいのに加えて、今年6月にロシアで制定された 公にゲイであると語ることを違法とする法律に抗議してのこと。 フェイスブック上にも 「ボイコット・ソチ2014」というページが登場しており、今週土曜日には、ロンドンで ソチ・オリンピック・ボイコットの デモンストレーションが行なわれているのだった。
今週、プーチン大統領との会談をキャンセルして、決して穏やかではない米露関係を露呈したオバマ大統領については、 週末の会見でオリンピックをボイコットするべきではないことを明言。 またイギリスのデヴィッド・キャメロン首相も オリンピック・ボイコットの選択肢が無いことを早々と明らかにしているのだった。



そんな中、今週報じられたのが、ライフスタイル・リサーチを基に割り出した 「イギリス人女性がセルフ・インプルーブメントに生涯費やす平均的な費用と時間」の予測。
セルフ・インプルーブメントとは、直訳すれば自己改善。これには外観の改善に加えて、内面の向上も含まれているけれど、 リサーチによれば イギリス人女性が、セルフ・インプルーブメントに 生涯で費やす出費は 16万6,495ポンド(約2,480万円)。 時間にして244日分、すなわち人生のうちの 5,856時間をセルフ・インプルーブメントに当てているとのことなのだった。

そのデータの内訳を見てみると、イギリス人女性が生涯に所有する衣類の数の平均は 298枚で、 アメリカ人女性に比べて かなり少なめ。 でも一生のうちに トライするメークとヘアのパターンは合計で 572スタイル。生涯にトライするダイエットの数は228と 非常に多く、 ダイエットについては、10歳〜69歳までの60年間ダイエットを続けたとして、年に3.8回のペース、 約3.2ヶ月に1回の割合でダイエットをしている計算になるのだった。
したがって この数字に どの程度信憑性があるかは定かではないけれど、 このリサーチ結果から割り出された、イギリス人女性が最もお金と時間を費やす セルフ・インプルーブメントのトップ5は 以下の通り。

  1. フィットネス&ダイエット (出費 : 38,825ポンド=約579万円、所要時間: 101日)

  2. ワードローブ(衣類) (出費 : 22,726ポンド=約339万円、所要時間: 29 日)

  3. 矯正、ホワイトニングを含む 歯の改善 (出費 : 17,290ポンド=約258万円、所要時間: 15 日)

  4. ヘア&メーク (出費 : 16,332ポンド=約243万円、所要時間: 21 日)

  5. 知的教養を高める (出費 : 6,146ポンド=約92万円、所要時間: 26 日)

第5位の「知的教養を高める」は 具体的には、習い事をしたり、美術館に出掛けるといったもの。
アメリカ人から見た このリストの 意外な結果 と言えるのは、「世界で最も歯に関心を払わない国の1つ」といわれているイギリスにもかかわらず、 歯への出費が第3位になっていること。
トップ5に入らなかった中で 特筆すべきは、イギリス人女性が 平均で3,402ポンド=約 51万円と15日間を費やして 自己啓発本を読んでいるということなのだった。

女性達が、セルフ・インプルーブメントに取り組むモチベーションとなるのは、 新しい恋愛や、30歳、40歳という年齢の区切りを迎えた時、そして新しい職場で働き出す等、環境が変わるケースがトップ3。
さらにセルフ・インプルーブメントは、自分自身が決心して取り組む以外に、 友人や家族に促されるケースや、職場の同僚に励まされたり、その影響を受けてスタートする場合があるようなのだった。



でも基本的にヨーロッパ諸国は、アメリカやアジアの先進国に比べると、 女性達がさほどファッションやビューティーにお金と時間を掛けない傾向が顕著。
したがって 数字の信憑性もさることながら、イギリスというお国柄を考えると、 この数値がアメリカやアジア先進国にも当てはまるとは言えないのが実情なのだった。
実際のところ、イギリス人女性のセルフ・インプルーブメントの生涯出費である25万ドルは、 アメリカのソーシャライトが一年でファッション&ビューティーで使ってしまう金額より低い数字。

その一方で、アメリカのウェブサイト、”ミントライフ・ドット・コム”では、アメリカ人女性が一生を通じて コスメティックに費やすバジェットについて もっと信憑性のあるレポートをしているのだった。
それによれば、アメリカ人女性が平均的にコスメティック・プロダクトに費やすお金は、 一生で、1万5,000ドル(約144万円)。 最も女性達がお金を使っているアイテムは、リップスティックかと思いきやマスカラで、 次いでお金を使っているのはアイシャドウ、第3位がリップスティック。
アメリカではノーメーク派の女性は約20%。女性の5人中4人はメークをすると回答していて、 毎日のメークの所要時間は約20分。 50%の女性が 「メークをすることによって自分に自信が得られると同時に、対人関係が向上すると 感じている」と回答しているのだった。

アメリカ女性が生涯に費やす1万5,000ドルの中には、スキンケア・プロダクトやネール・サロンの費用、スパでのフェイシャルやマッサージ、 ヘア・サロン、及びヘア・プロダクトの費用、レーザー脱毛やワックス、 ボトックスやケミカル・ピールのような美容施術の代金は含まれて居ないので、 これらが加わると 女性達が外観向上のために かなりの出費をしていることは 容易に想像がつくというもの。
では、女性達がこれだけの努力と出費をして外観を向上させた場合、どんな恩恵を受けるかといえば、 職場においては、平均的なルックスの女性が 生まれながらの美女と対等、もしくはそれ以上の 待遇に恵まれるチャンスがあるということ。

基本的に、ルックスが良い女性は 就職の可能性が高まると同時に、高給の仕事に就ける可能性も高いと言われるけれど、 未だに世の中で根強いと言われるのが、 「美女=さほど頭脳が明晰ではない」という偏見。 また美女を優遇することによって、ルックスの悪い人間を差別していると周囲に思われるのを危惧する風潮も根強いため、 アべレージなルックスで、ヘアやメーク、ファッションでセンスを感じさせる女性の方が、 キャリアにおいては 「生まれながらの美女よりも有利に立ち回れる」というのが一般的な見解。
もちろん生まれながらの美女がメークや身なりに気を遣った場合は、大富豪に見初められる可能性が大であるけれど、 オーストラリアとイギリスの調査結果によれば、美女は 美男ほどは職場において ルックスの恩恵を受けないことが レポートされているのだった。


要するに、アベレージなルックスの女性ほど、ヘアやメーク、ファッションの努力で 人生を変えられるということになるけれど、それはルックスがアベレージの男性も然り。 グルーミングとファッションで、女性のウケが大きく変わってくるのは言うまでもないけれど、 男性の場合、これにスタイリッシュな車や、高給の仕事が加わると、大きくセックス・アピールを増すことになるのだった。
でも前述のように 職場で恩恵を受けるのはルックスが良い男性。 ルックスが良い男性は、アベレージなルックスの男性よりも 平均で22%収入が多いことがレポートされており、 これはブルー・カラーの職種でも、ホワイト・カラーの職種でも同様の傾向。
最もルックスで収入の差が出る職種は、男性の場合も、女性の場合も アートや不動産など高額なアイテムのセールスで、 金融業のセールス業務も然り。

すなわち、ルックスには財布の口を開かせるパワーがあると言えるけれど、 ルックスを向上させるメリットは 外観によって人を魅了出来ることよりも、むしろ自分に対する自信が身につくこと。 そのことは 美男、美女が必ずしもポピュラーな存在とは限らず、アヴェレージなルックスの人でも 自信に満ちた 自分らしい振る舞いで、十分に魅力的な存在になれることからも分かる通り。
生まれながらの美男、美女の強みと言えるのは、 その外観で 対人関係をジャンプ・スタートさせるパワーがあることで、確かにセールスのような短期的な人間関係には それが非常に有利に働くのだった。 しかしながら 時間が経過するにしたがって 徐々に慣れてくるのが 美しさと 醜さ。

  ココ・シャネルの語録の中に「醜さには慣れるが、だらしなさには我慢ならない」というものがあるけれど、 その言葉どおり、どんな容姿に生まれても、結局はその容姿のメンテナンスや、より良く見せようとする努力の方が 人生に違いをもたらすもの。
そして、人々がそれを認識しているからこそ、ビューティー業界やダイエット業界が数十兆円の市場規模になっていると言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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