Aug. 8 〜 Aug. 13 2016

”Improving Image of Japan”
アメリカにおける日本のイメージは向上している !?



今週のニューヨーク・エリアはヒート・ウェーブの影響で、とんでもない猛暑になっていたけれど、 気温もさることながら 湿度が高いため、体感温度が40度以上の日が続いていたような有り様。
フィラデルフィアでは熱中症で2人の女性が死亡しており、冷房を持たない人々のためのクーリング・センターがオープンしていた一方で、 冷房による電力消費が嵩んで、一部の地区で停電が起こったことから、ニューヨーク・エリアの電力会社、コン・エディソンでは ブロンクス、クイーンズ、ブルックリンの一部のエリアの電力削減を発表していたのだった。

アメリカでのメディア報道の中心となっていたのは やはりオリンピックで、中でも関心が集中していたのは水泳と女子体操。 特に水泳は 16個の金メダルを含む33個のメダルを獲得する大健闘ぶりで、言うまでもなく視聴率に最も貢献していたのは マイケル・フェルプス。 彼の地元メリーランド州ボルティモアでは、NFLのプレシーズンの試合がマイケル・フェルプスが出場するレースの時間に中断され、 観衆がスタジアムのビッグ・スクリーンで彼の金メダル獲得の瞬間を見守ったエピソードも聞かれているのだった。

そんなアメリカ国民の関心がオリンピックに集っていた今週も、メディアが報道せずにはいられない暴言を吐き続けたのが共和党大統領候補のドナルド・トランプ。 ヒラリー・クリントンが取り組もうとしている銃規制に反対する支持者に対し、それを阻む手段としてヒラリー・クリントン暗殺をほのめかしたかと思えば、 「ISISを生み出したのはオバマ大統領とヒラリー・クリントンだ」と、常軌を逸した発言を展開。 後にそれを「皮肉で言っただけ」と弁明したものの、今週は共和党内からもトランプ不支持を打ち出す声が続出していたのだった。
また、世論調査でヒラリー・クリントンにどんどん差を広げられていることを受けて、「自分が選挙に負けたら、それはインチキ・ヒラリーと不正な選挙制度のせいだ」と、 選挙に敗れた場合に備えての言い分を展開。そのドナルド・トランプの選挙キャンペーン関係者は、彼が日に日に クレージーになってきて、選挙参謀とも口論が絶えない様子を匿名でメディアに語っているのだった。




さて、リオ・オリンピックのメディア報道やソーシャル・メディアのリアクションを見ていると、アメリカが抱く各国のイメージが伝わってくるけれど、 目下最もイメージが悪い国の1つになっているのは、国家がらみのドーピング・スキャンダルで批判を浴びたロシア。 ロシア選手団は、オリンピック会場でもたびたびブーイングの対象になっており、その会場のブーイングを マイクが拾っていなくても、アメリカのアナウンサーが必ずコメントするのがそのブーイングの様子。
逆にアナウンサーやコメンテーターが好意的なのは、ホスト・カントリーであるブラジルの選手であるけれど、 ニューヨークに長く暮らす友達の間で今週話題になっていたのが、日本のイメージの向上がオリンピックの報道からも感じられるということ。 今回のリオ・オリンピックは、私がニューヨークに住み始めてから7回目のサマー・オリンピックであるけれど、 客観的に見て、今大会はこれまでで 最も日本が好意的に報道されていると思うのだった。
そう感じられる背景には、通常アメリカ選手のメダル・セレモニーで締めくくられる NBCのオリンピック放映が、11日木曜は 男子体操個人総合で2大会連続の金メダルに輝いた内村航平選手のメダル・セレモニーで締めくくられたことなどがあるけれど、 まさかアメリカのメジャー・ネットワークで「君が代」を聞けるとは思わなかった私は、少々このプログラミングには驚いてしまったのだった。
また今週は多くのアメリカのメディアで 水泳のリレーの最中、コメンテーターの松岡修造氏がスーツ姿でクロールをしながら日本チームを応援する様子が 微笑ましく報じられていたけれど、そんな実際の競技に関係が無いクリップの放映などにおいても、 90年代前半に見られたような「また日本人が変なことをしている」的な視点ではない、好意的なものになっていたのだった。




アメリカにおいて日本のイメージが最も悪かったのは、おそらく1980年代後半から 日本のバブルが弾けるまでの時代だったと思うけれど、 特に90年代前半は「ジャパン・バッシング」という言葉が頻繁に聞かれて、アメリカ・メディアでは日本人として悔しいと思うような報道が少なくなかったし、 クライスラー社がジャパン・バッシングのCMをTVで流して話題になっていたのもこの頃。 トークショーのホストのジョークも 日本に対して意地悪なものが多かったのに加えて、 この時期に日本から友達が遊びに来ると 必ず尋ねられたのが「日本人だからって、差別されたことある?」といった質問。
また90年代前半の時点では、ニューヨーク・タイムズ紙の記事でさえ、日本を全然知らない人が書いたとしか思えないものが多くて、 何度も 読んでいてストレスが溜まる思いをしたのを覚えているのだった。

日本の報道の質が明らかに向上したのは90年代後半からで、今ではアメリカに住む日本人の多くが アメリカのメディアにおける日本の報道の方が、 日本のメディアにおけるアメリカの報道よりも正確だという印象を抱くようになったほど。 でも日本のイメージが向上してきたのが何時頃からか?については、こちらに暮らす日本人の間でも意見が異なるようなのだった。
90年代半ばまでは、日本人ビジネスマンのズルくて、セックス好きなイメージが強烈であったけれど、 それでもニューヨーク等、日本人が比較的多く暮らす街では、個人的な交友関係を通じて日本人の善良さや 高潔さを理解してくれるアメリカ人が少なくなかったのが実情。 私が知る限り 90年代にアメリカに暮らしていた日本人は、日本のイメージを高めようと日々心掛けている人が非常に多かったので、 現在、日本のイメージが向上してきた要因の一端は、そんな外国に暮らす日本人が担っていると言って間違いないと私は思うのだった。

でも先日、アメリカに長く住む友人達とこの話題をしていた際、 その場に居た誰もが認めた日本のイメージ向上の要因は、 中国が経済力とパワーを増してきた一方で、 日本の経済力がアメリカにとっての脅威でなくなり、単なる友好国になったこと。 そして中国が日本に替わって ”ズルいアジア人のイメージ” を引き継いでくれたこと。
このことはハリウッド映画に登場するアジア系の悪玉が、ここ数年こぞって中国人になっていることからも窺えることなのだった。




更には、日本食のアメリカにおける普及も、日本文化や日本人、日本社会のイメージに貢献しているのは紛れもない事実。
マイアミに住む私のアメリカ人の親友の息子は、「すべての料理のカテゴリーの中で日本食が一番好き」というので、 「どうせスシしか食べたことが無いに違いない」と思いながら、「日本食って どんなものを食べているの?」と尋ねたところ 「この前食べたのは、グリルドフィッシュ(焼き魚)と、味噌スープと、ライスと、シーウィードとキューカンバのピックルス(わかめとキュウリの酢の物)と…」と、 まるで焼き魚定食のようなメニューを言い出したので 驚いてしまったけれど、 マイアミというのは、私が何回出かけても 一度もアジア人を見かけたことが無いくらいアジア系が少ないエリア。 にもかかわらず、そこに住むティーンエイジャーが お箸を正しく持って日本食を食べているというのは 不思議にさえ思えること。
また少し前にはニューヨーク・タイムズに餅のレシピが掲載されていたけれど、かつてはアメリカ人が嫌ったお餅も 今ではミレニアル世代を中心に人気が高いフード。 私の友達がコーネル大学のプログラムで日本に出掛けた際にも、「日本に行ったらモチをお腹一杯食べたい」と言っていたけれど、 その言葉通り、彼女が本当にありとあらゆるお餅を日本でトライしていた様子はこちらが呆れたほど。 過去数年、ニューヨークで大ブームになっていたラーメンにしても、20ドルという日本人からは高すぎると思える値段を支払っても、 ニューヨーカーは「安くて美味しい」と行列してまで食べていたけれど、日本の食材にしても 普通にアメリカのスーパーで手に入る品数は年々増え続ける一方なのだった。

そう考えると、日本はアメリカを胃袋で落としたという感じがしなくもないけれど、 それと同時に、日本を訪れたアメリカ人が日本に対して抱いた好印象を知人に話したり、ソーシャル・メディア上で広めてくれていることも とても大きいと言える部分。それでも日本を訪れる外国人旅行者の数は、中国に遥かに及ばないだだけでなく、韓国よりも少ないのだった。

それとは別に 3・11の震災の際の 避難所におけるモラルの高さや、津波で流された金庫が持ち主に戻ったエピソードなどは、 「日本だから有り得ること」と報じられていたし、薬物テロの危険がアメリカで危惧されていた2000年代半ばには、 地下鉄サリン事件を例に挙げたアメリカのメディアが、 「この規模の事件が、この被害で済んだのは日本だからこそ」といった指摘も聞かれていたので、 天災や人災に見舞われた際の日本の対応も、今から振り返ると日本のイメージを高めていたと言えるのだった。

ところで、前述のアメリカ人の友達の息子と話していた時、私が日本人の仕事相手のマナーの悪さを愚痴ったところ、 「日本人でマナーが悪い人なんて居るの?」と言われてしまい、 私は「そんなに日本人に良いイメージを抱いてくれているんだ」と、内心嬉しかったけれど、 やっと ここまで日本のイメージが向上してきたのに、 日本人がどんどんドメスティックになって、若い世代が留学さえしなくなってきているのは本当に残念なこと。
外国で名が売れている日本人の存在が居ないのも寂しい限りで、 リオ・オリンピックの開幕式では、スーパーモデル、ジゼル・ブンチェンがステージを闊歩し、 ブラジルが世界に誇る最高の輸出品であり、ワールド・クラスのセレブリティ・ステータスをアピールした様子は 先週世界が見守ったばかり。
果たして2020年の東京オリンピックでは、その役割を果たせる人物は居るのだろうか?と心配になってしまうのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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