Aug 15 〜 Aug 21 2011

” Suger Daddy & Suger Baby ”


今週も、ヨーロッパ経済の不安を理由にニューヨークの株式市場は不安定な動きを見せていたけれど、 オバマ大統領が10日間の夏休みに入っているだけあって、政治・経済の世界では 報道が集中するような大きなニュースが無かったのが実情。
でも支持率が大きく下がり続けているオバマ大統領が、一向に改善されない失業問題や、ダブルディップ・リセッションの不安がアメリカ国民に 圧し掛かっている中で、10日間のヴァケーションを楽しんでいることについては、 一部で批判の声も聞かれているのだった。 とは言っても、ジョージ・W・ブッシュ前大統領は、2001年の9・11テロの直前に、8月の1ヶ月間をサマー・ヴァケーションに当てており、 それに比べれば、遥かに短い夏休み。

ちなみにオバマ大統領の支持率の内訳は、大統領の経済政策を支持すると答えた人々は、5月中旬の35%から 11%下がって僅か26%。債務削減についての支持率は それより低い24%。 失業問題については29%、教育問題に関しては41%。唯一50%を超える支持率を獲得していたのは、 テロ政策についてで53%の支持を国民から得ているのだった。

ここへきてオバマ大統領の支持率が大きく低下している理由は、債務上限引き上げ問題をきっかけに、 大統領のリーダーシップの欠落が大きく取り沙汰されるようになったため。
多くの政治評論家が指摘するのは、アメリカがデフォルトに直面することが、ある程度分かっていながら、何故昨年の選挙前、 すなわち、共和党に下院での過半数を奪われる前に、大統領がこの問題に取り組まなかったのか?ということ。 債務上限引き上げは、昨年11月の中間選挙で、オバマ大統領率いる民主党が敗北する以前に 議案として何度も上っていたにも関わらず、それを放置したために 上限は引き上げるものの債務削減の方針が固まらないという、アメリカ国民にとって 最も不安と不満がつのる中途半端な決着を強いられることになったのは、周知の通り。
なので、オバマ政権は「先手を打つのではなく、周囲の出方を見てギリギリの段階で 最悪の道を選ぶ」、「はっきりした政策を持たず、周囲の意見を聞いているうちに出遅れる」という イメージが国民の間で定着しつつあり、今では大統領の支持者でさえ、 彼が一体何をどうすることによって、失業問題や経済問題を立て直そうとしているのか 全く分からない状態だと言われているのだった。
このため、昨今のオバマ大統領は、1任期で大統領の職を去った同じく民主党のジミー・カーター大統領(任期1977〜1982年)と 頻繁に比較されているけれど、当時、”カーター・スマイル”と呼ばれた笑顔と好感度で当選したカーター大統領が、 4年後に 後のレーガン大統領に選挙で敗れる結果になったのも、 その政策が全く功を奏さなかったために、国民の支持が得られなかったことが指摘されているのだった。



さて、私は今週末、久々に女友達とブランチをしたけれど、その席で、話題に上ったと同時に、 友達の怒りを買っていたのが、写真上の2つのニューヨーク・ポストの記事。
「Are You My New Sugar Daddy?」というタイトルの左側の記事は、いわゆる”援助交際”のマッチメーキングをする イベントが今週月曜にニューヨークで行なわれたというレポート。このイベントは、報道番組でも取り上げられており、 女性のコメンテーターからは、”売春をプロモートするイベント”とのレッテルを貼られていたけれど、 要するに 若い女性と過ごす時間を男性がお金で手に入れるための 交渉の場を提供するイベント。
主催者の男性によれば、売春やエスコート・サービスと異なるのは、男性と女性の間に精神的な結びつきがある点だそうで、 お互いに合意した関係の中で、何をするかは当人同士が決めることであり、特にお金とセックスの交換に限った 取引では無いことを強調しているのだった。

写真上右の記事は「I'm a Hamptons House Ho!」というタイトルであるけれど、これはハンプトンのビーチハウスで、 ウィークエンドを過ごすために、どんな男性とでも寝てしまう女性を意味するタイトル。
ニューヨークの夏のウィークエンドと言えば、「ハンプトンで過ごす」というのがプレステージになって久しいけれど、 ハンプトンはホテルが殆ど無いので、そこで毎週のようにウィークエンドを過ごすためには、億円単位を支払ってビーチハウスを購入するか、もしくは 多額のレントを支払ってビーチ・ハウスを借りるしか手段がないのだった。この記事でフォーカスされていたのは、 実際にハンプトンにゴージャスなビーチハウスを持っていて、毎年のように、そこで夏のウィークエンドを過ごしたい若い女性が どんどん寄ってくるので、 結婚する気になれない という50歳の金融関係の男性。

前者の記事のタイトルの”シュガー・ダディ” というのは、女性に金銭的なサポートをする年上の男性のことで、 通常はリッチであるはずだけれど、記事のイベントの主催者によれば、年収6〜7万ドル程度でも、1ヶ月1000ドル程度を女性に支払えるのであれば、 シュガー・ダディになれるとのこと。
このイベントは、アメリカ版援助交際をプロモートするウェブサイト、シーキング・アレンジメント・ドットコムが行なったもので、 会場では女性が「月に6000ドル以上で、2ヶ月の交際」という条件を提示したのに対して、 男性側は「ディナーやその他のアクティビティを含むデートで、月1000ドル」という オファーで折り合いが付かなかった様子が記事に書かれていたのだった。中には月2万ドル、すなわち 円高の現在でも月に約150万円を条件にしている女性も居たというけれど、若い女性がお金を必要とする理由の筆頭として挙げられているのは、 学費ローンの支払い。でもそれが表向きの理由であるのは、言わずと知れたことなのだった。

この記事を読んで、 写真を見た人なら誰もが感じるのが、同イベントに来ている男性達がどう見てもリッチに見えないこと。 記事には、次回イベントの会場になる予定のクラブのオーナーが「ここに来ている男性達は、どう考えても資産50セント程度にしか 見えない」とコメントしていたことが書かれていたけれど、それはまさに言いえて妙。
一方の女性側も 月に6000ドル、2万ドルの支払いを条件に出来るほどルックスが良いとは決して言えないのだった。 すなわち お互いに、「リッチなふりをして引っかかってくれる女性が居たらラッキー」、「高額な条件を設定して、少しでも多く払ってくれる男性に 巡り会えればラッキー」と思っている程度のイベントでしかないのだった。
同イベントは、男性が80ドルを支払い、女性が40ドルを支払って参加するという、この手のイベントにしては、極めて庶民的なお値段。 それからも分かるように、参加者の男性のコメントによれば、「1ヶ月2万ドルを提示していた女性でも、酔いが回ってきたら、 1晩300ドルでOKになってしまった」のだそうで、男性側が同イベントに期待しているのはまさにそういう取引。
女性の側にしても、1ヶ月6000ドルは取れなくても、300ドルでも貰えれば、とりあえず それはそれで良かったりする訳で、 狸と狐のばかし合いという印象が否めないのだった。
さすがに”シュガー・ダディ”を探すイベントとあって、会場の男性達は、女性達の父親のように見える50代前後が殆ど。 男性は生え際が上がってきているか、禿げているか、白髪頭が殆どであったけれど、 女性側もお金のためと割り切っている部分があって 「自分のおじいちゃんのように見える男性は困るけれど、父親くらいだったら構わない」などと 語っているのだった。

一方のハンプトンのハウス・ホー(Ho/ホーは売春婦のスラング)の記事は、”シュガー・ダディ”のイベント同様、 男性が若い女性とのセックスを求めて、暗黙の”取引”をすることになるけれど、ここで女性が求めると同時に、男性がオファーするのは、 お金ではなく、ハンプトンのビーチ・ハウスで過ごすウィークエンド。
したがって、男性側は80ドルを支払ってイベントに参加する男性達よりも、遥かにリッチであるのは言うまでも無いこと。 そしてその男性達のビーチハウスを目当てに寄ってくる女性達も、40ドルを支払ってシュガー・ダディを探すイベントに参加する女性達より、 遥かにルックスが良い上に、自分でもある程度の収入を得ている場合が殆どなのだった。
記事によれば、女性達はハンプトンで夏の週末を過ごすために、春に入った頃からハウス・ハンティング、すなわちハンプトンに家を持つ男性、 もしくはビーチ・ハウスのサマー・レンタルをする男性を見つけて、交際を始めるとのこと。 中には、毎週のように違うビーチハウスのゲストになる女性も居るようだけれど、そうした女性達は、 ハンプトンで過ごす夏の週末のために、誰とでも寝てしまうのだそうで、記事に登場した50歳の男性も、そうした若い女性達を相手に楽しんでいると 語っていたのだった。
そんな女性達も20代半ばになると、かなり不動産の目が肥えてきて、ビーチハウスの質まで選ぶようになってくるというけれど、 記事の男性によれば 女性は30歳になれば、”賞味期限が過ぎてしまう”ので、”商品の質=若さと美貌”が衰える という 厳しい指摘をしているのだった。

ちなみに、ハンプトンにビーチハウスを持っているような30代〜50代の男性でも、さすがに自力ではそう沢山の20代前半の若い女性と知り合うことが出来ないのは 当然のこと。そこで彼らが利用するのが ハンプトンに夏の期間だけオープンするラウンジやナイトクラブのプロモーター。
プロモーターというのは、ナイトライフの世界ではグッドルッキングな若い女性と、彼女らとの出会いを求めるリッチな男性をクラブに 呼んでくる仕事。プロモーターは ルックスの良い来店客で 1テーブルを埋めることによって 500ドルを支払われるのが相場だけど、 そのテーブルに座った客は、 ボトルサービスなどで 平均3000ドルは支払うことになるので、クラブ側は十分元が取れるのだった。
こうしたプロモーターは、マンハッタンのクラブのテーブルを埋めるのはもちろん、夏になればハンプトンのクラブのプロモーターも 担当するけれど、彼らはニューヨークのナイトライフで、既にハンプトンにビーチハウスを持つような男性達とは 頻繁に連絡を取り合う関係。なので、そのプロモーターを使えば、若い女性を沢山招いて ビーチハウスでパーティーをしたり、自分と友達のために少数の女性をアレンジしてもらうということは 極めて簡単なことなのだった。


私の女友達の怒りを買っていたのは、前者の記事のお金があるふりをして、自分の娘の年頃の女性を引っ掛けに来る男性と、 事実上の売春をプロモートするイベントに、お金を払ってまで参加する女性達の愚かさ。
そして後者の記事では、若い女性達がビーチハウス目当てだと分かっていて、ビーチハウスが無かったら女性が引っかからないと 知りつつも、「女性は30歳を過ぎたら賞味期限が切れる」などと、勝手なことを言っている50歳の男性が怒りの対象になっていたけれど、 残念ながら、財産さえあれば男性には賞味期限が無いのは紛れも無い事実。
年老いた裕福な男性と若くて美しい女性のカップルというのは、今に始まったことではないので、 私は友達が腹を立てるほど、これについては腹立たしくは思わないのだった。

むしろ私が面白くなく思う部分は、女性の得るものが時代と共にどんどん減って来ている部分。
かつては、当時の言葉で「トロフィー・ワイフ」と呼ばれる若く、美しい妻と再婚できる年配の男性は、本当に財産があって、 若くて美しい妻に、本当に贅沢をさせていたもの。 なので、女性は若さと美しさと引き換えに、 得るものも大きかったのである。
でも今では、23歳の若さとモデルのようなルックスがあっても、ハンプトンのビーチハウスで1夏が過ごせるだけ。 男性側はビーチハウスを切り札に、次の夏が来れば、もっと若い別の女性に乗り換えることが出来る訳である。
そうは言ってもビーチハウスを所有している男性は、未だ良い方で、前者の記事のシュガー・ダディのパーティーにやってくる男性などは、 財産があるかも定かではない状態で 若い女性を求めていて、「1ヶ月のデートに1000ドルを支払う」と男性がオファーしたとしても、 1000ドルでデート費用が賄われることになっていたりするので、そこそこのレストランに2人で4〜5回出かけたら、 女性は一銭も受け取れない計算。
中には自分をリッチに偽って、「適当な口約束で、女性と1晩だけ関係しよう」などと考えている男性も居る訳で、 かつては本当にリッチな年配男性のみに与えられた 若くてルックスが良い女性との関係という ステータス・シンボルが、 今では その気がある中年以降の男性が小額のエクスペンスで得られるようになってしまっているのである。

こんな時代になると、押しも押されもしないメガ・リッチのビリオネアと交際しても、 かつてのマルチ・ミリオネアのトロフィー・ワイフやガールフレンドのような思いは出来ないようで、 それを象徴していたのが先週報じられた、金融業会のマルチ・ビリオネア、ジョージ・ソロスが、元ガールフレンドに訴えられたというニュース(写真左)。
今年81歳のジョージ・ソロスは、日本円にして資産が1兆円を超えるウルトラ・メガ・リッチ。 彼を訴えた元ガールフレンドは、ブラジル出身の元女優で、現在はコロンビア大学に通うアドリアナ・ファーレイー、28歳。 親子どころか、孫娘ほどに歳が離れた2人が出会ったのは、2006年にハンプトンで行なわれたランチ・パーティー。
以来、アドリアナはジョージ・ソロスと交際を続けていたというけれど、ソロスは 彼女に買い与えると約束したアッパー・イーストサイドのコンドミニアムを 購入する直前に、彼女を振ってしまったとのこと。 その後、一時的に復縁した際に ソロスが彼女に告げたのが、彼女のために購入したアパートを 別の女性にプレゼントしたということ。ソロスは、彼女に別のもっと高いアパートを購入すると約束したものの、 その約束も再び破ったとのことで、アドリアナはソロスに暴力を振るわれた被害と併せて、$50ミリオン(約38.3億円)の 訴訟を起こしたのだった。

この報道も、私の周囲ではちょっとした話題になっていて、財産がある年配男性ほど、昨今では 離婚によって女性に財産を奪われることを 防ぐために、なかなか再婚しなくなっただけでなく、ガールフレンドとして複数の女性をキープしたり、女性を手玉に取って、適当に乗り換えるようになってきて、 20代、30代のプレーヤー並みに女性を扱うようになっているのだった。
総じてこうした若い女性を追いかける男性達による 「釣った魚=女性達」の扱いというのは、アメリカの雇用状況の悪化の歴史を見るようなもの。
かつては大企業ほど終身雇用で、リタイア後の生活も保障されていたけれど、今では、理由をつけて直ぐにレイオフされてしまうし、 パートタイムの低賃金労働者が増え続けて、リタイア後の保障もなし。
すなわち、今、年配の男性と付き合う若い女性達は、かつてのトロフィー・ワイフに比べると、 パートタイムの低賃金労働者に見えてしまう訳だけれど、リセッションで買い手市場のうちは 最低賃金のファストフードの仕事にも志望者が行列してしまうのが実情。
20代のうちは何とか頑張れても、30歳になって期限切れ扱いされてしまえば、当然 待っているのは”失業”。 このケースの”失業”では、国から手当てが支払われることも無いのである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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