Aug. 21 〜 Aug, 27
”ウェイターの告白”
今週のアメリカは、先週のジョンベネ事件のカー容疑者の身柄拘束のような大きなニュースは無かったけれど、
一般の関心事となるニュースには事欠かない週だった。
まず、女性を中心に大きな話題となったのは、性交渉後の避妊薬「プラン B」の 処方箋無しでの購入が認可されたこと。
アメリカでは女性が望まない妊娠が、年間30万件にも上っていると言われ、もちろんこの中にはレイプによる妊娠から、
”酔った勢い”のセックスによる妊娠までが含まれているけれど、「アボーション/中絶」 というオプションを選ばずして、
妊娠を回避できるのがこの「プランB」である。
同薬は、性交渉から72時間以内に服用しなければならず、これまでのように購入に処方箋が必要である場合、
医師とのアポイントメントが取れないなどの理由で 服用時間に間に合わないケースが出てくるため、
「18歳以上」という年齢制限を設けて、処方箋無しでの購入が認可されている。
もちろん、中絶反対派はこれに対しては猛反対であるのに加えて、一部の女性保護団体も、
「同薬に頼って コンドームを使用しないセックスが行われると、性病が広まる恐れがある」として懸念を表明しているけれど、
多くの女性にとっては、妊娠をコントロールする手段が増えたことで歓迎されていたニュースである。
その一方で、今週パラマウント映画から「クビ」を宣告されたのが、俳優のトム・クルーズ。
トムとパートナーのポーラ・ワグナーが経営するプロダクションは、パラマウント映画と過去14年間に渡ってパートナー契約を結び、
映画の製作とリサーチのためにパラマウントから年間12億円を受け取ってきたけれど、
当初は この額が3億円程度に減らされるものの「契約は続行」という噂が流れていたのだった。
しかしながら8月21日の報道では一転して、「契約更新はナシ」という、トムに対する 事実上の解雇がパラマウント側から発表されたのである。
パラマウントの会長、サムナー・レッドストーン氏は、トム解雇の理由として「昨今の目に余る奇行ぶり」を挙げ、
彼のスター・パワーが衰えてきたことを指摘していたけれど、今週、トム・クルーズが「もはや ドル箱スターではない」と
宣告されたのと同様に、「もはや惑星ではない」 と宣告されたのが、英語でPluto / プルートと呼ばれる冥王星である。
1930年に発見されて以来、第9の惑星と言われてきた冥王星は、今週行われた国際天文学連合で惑星の定義が採択された結果、
その性質が定義に掛け離れているために、「惑星ではない」として、惑星の分類から外されることになってしまったのである。
これに対しては、アメリカでは一部で「プルートの惑星としてのポジションを守ろう!」という運動が起こっているけれど、
占星術のスペシャリストによれば、冥王星が、今後最も大きな影響を与えるのは いて座の人々に対してで、
残念ながら冥王星がもたらすのは「人々の別れ」や「破局、損失がもたらす変化」とのこと。
なので、冥王星は少なくとも いて座の人々にとっては、歓迎すべき存在ではなかったようである。
さて、私が昨今このコーナーにブログからのコメント引用することがあるので、つい最近、知人に「ブログなんて読むの?」と
訊かれてしまったけれど、私はいわゆる「アマチュア・ブロガーによるブログ」は 全くと言って良いほど読まない傾向にあったりする。
これは、ある程度 数を読まない限り 書いている人のテイストが分からないため、
ブロガーの視点や批評をどの程度信用したら良いのかが分からないのに加えて、やはりブログという性格上、書いている人の個人的な
状況説明が多いので、文章の量の割に情報量が少なく、時に情報内容が間違っていることもあるためである。
私が読むのは、もっぱらファッション、レストラン&フード等の業界インサイダーのブログで、これは同じブログでも 書いている人間の
プロフィールがバレないようにする理由もあって、ブロガーのプライベートな情報は殆どゼロ。
書いてあるのは業界の噂話や、インサイダーのみが知る最新情報であるけれど、こちらも
情報がニッチ過ぎることもあれば、早過ぎて何の形にもなっていない場合などもあり、誰もが読んで楽しめるとか、役に立つようなものとは
言えないものであったりする。
さらに私が愛読するのは、レストランでバーテンダーやウェイト・スタッフとして働く人々の書き込みサイトで、
ここにはマナーの悪い来店客の悪口や、働くべきでない待遇のレストランのことなどが書かれている。
これを読むと、そのうち閉店するレストランというのが分かる上に、ニューヨークのレストランにおけるタブーなども
分かるようになるけれど、何より、笑顔で振舞うウェイター達が辛らつな目で来店客を見ているのが とても興味深かったりする。
こうした書き込みサイトによれば、高額レストランでウェイターに嫌われる筆頭は、金融業界の男性5〜6人のテーブル。
昨今、ウォールストリートも接待費が制限されているので、かつてのようにワイン代だけで1万ドル(約116万円)というような
ディナーは減ってきているけれど、それでもブローカーが5〜6人で高額レストランにやって来れば、最低でも合計2500ドルくらいは
落としていくもの。
そんな彼らが嫌われるのは、「態度が横柄」で、「下らない文句を言う 嫌な客」だからだそうで、あるサイトでは、
金融関係の男性客を「人間として最悪の分類」などと記載していたりする。
通常、レストランはチップを全て店側が集めて、スタッフに分配するので、金融ブローカーがどんなに多額のディナーをしても、
それに対して支払われた多額チップはウェイト・スタッフの給与には反映されないもの。
このため、金融関係の男性グループのテーブルを担当して、嫌な思いをしたところで、そのウェイターにとっては何も得することは無いのである。
でも金融関係の男性グループより もっと”性質が悪い” のは、その妻を同伴したディナーだそうで、
「夫にお金があるから愛の無い結婚生活を続けている妻に、”ご主人は先週も若い女性と一緒にご来店下さいました” と 囁いてやりたい!」
などと、怒りの書き込みがされている。
金融関係者以外に 往々にして、ウェイト・スタッフに嫌われるものと言ったら、
- 子供連れ
- バースデー客
- キャンパー(会計を済ませてから長居をする客)
- 挨拶をしない客
- 「オーダーがなかなか決まらない客
- 「携帯やブラックべリーで、喋ったり、テキスト・メッセージを送り続けている客
- 未だにチップは15%で十分と思い続けている客
- 複数のクレジット・カードで支払う客
なのだそうで、まず、「子供連れ」については、「子供が来るべきでないレストランに 子供連れで来る来店客というのは
そもそも非常識であるけれど、それに育てられている子供はさらに酷いので、
スタッフや他の来店客に迷惑を掛ける」と指摘されている。
2.の「バースデー客」については、「一番忙しい時間帯にやってきて、スタッフに”ハッピー・バースデー”を歌わせる」などとあったけれど、
私が先日 出掛けた某高額レストランは、デザートにキャンドルを灯して持ってきてくれたものの、
スタッフによる「ハッピー・バースデー」の”斉唱”は無くて、逆にこちらがホッとしたのだった。
3.の「キャンパー」の指摘については、私は耳が痛い部分があるけれど、ウェイターが「キャンパー」を嫌うのは、
テーブルが回ってくれないと、チップで稼げないため。すなわち、空きテーブルがある場合や、「パー・セ」、「アラン・デュカス」のように
1晩にテーブルは1回店のみのレストランでは、キャンパーでも嫌われないことになる。
4.の 挨拶をしない客というのは、日本ではあまり無い習慣であるけれど、欧米のレストランでは、ウェイターがやってきて
「How are you this evening?」などという挨拶から会話がスタートする訳で、これに対して何も言わないのはやはり失礼である。
5.の「オーダーがなかなか決まらない」というのは、それ自体は悪いことではないけれど、
ウェイターをその場に待たせているのに 決めないというは、当然のことながら嫌われる行為。
「もうちょっと時間を下さい」と言うだけで、解決することである。
次に 携帯やブラックベリー(通信機能を備えた携帯端末) の使用であるけれど、例えテキストを送るだけでも、
料理を目の前にしてこれをやられると、「まるで料理が不味いみたいに思われる」と懸念する声もあれば、
「料理を一皿食べ終わってから、返事のテキストを送ったところで、遅すぎることはないはず・・・」と、
料理が冷めるのも気にせずにテキストを送っている姿は、やはり歓迎されないものである。
7.のチップについては、現在のニューヨークの常識は18%だそうで、一般にチップの額と言われる15%は20世紀までとのこと。
昨今では、6人以上のテーブルになると自動的に20%のチップを乗せて会計を持ってくるレストランが増えてきたけれど、
人数が少なくても、長居をした時や、サービスが良かった場合などは、やはり20%が昨今の常識になりつつあるのは事実である。
でも特定のウェイト・スタッフが良くしてくれて、その人にお礼をしたかったら、本人にさりげなくキャッシュでチップを渡してあげるのが一番で、
会計の一部としてチップを払ってしまえば、先述のように店側が回収して振り分けてしまうだけである。
逆に言えば、「スタッフに特別に良くしてもらいたい場合は、キャッシュを握らせるのが一番」ということであったりもする。
「最後の複数のクレジット・カードで支払う客」というのは、4人でやって来て、ディナーの総額が140ドルだった場合、これを「35ドルずつ
4枚のクレジット・カードにチャージして欲しい」とリクエストするお客のことで、
カード社会のアメリカには少なくないケースである。
でも忙しい時間帯のウェイターには、かなり面倒のようで、額が低く、カードの枚数が増えるほど、腹立たしいようである。
もちろん高額レストランで、1人の会計が200ドルというケースは例外。
この他、ウェイターは自分が調理をしていないだけに、「料理のクレームを言われるのは筋違い」だと考えており、
「料理に対する文句はマネージャーを呼んで言うべき」としている。
また、ドギー・バッグ(残った食事の持ち帰り)については、客側の当然の権利としているけれど、
何度にも分けてドギー・バッグのリクエストを受けると、「料理をパッキングする手間が増える」ので好まれないようである。
こうしたウェイト・スタッフは態度の悪い客に対してどうやって「リベンジ」をしているかと言えば、
「スープに指を突っ込んだ」、「料理にツバを吐きかけた」、「雑巾で拭いたフォークを出した」など、
考えたくもない ”復讐劇” が舞台裏で繰り広げられているという。
でも、実際に 「ウェイターいびり」 を兼ねてレストランにやって来るような性格の悪い来店客というのは存在するようで、
こうした人々に対して終始礼儀正しく振舞うには、「裏でその程度の事をしていないと、とてもじゃないけれど やっていられない」
というのがウェイター達の本音のようである。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。
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