Aug. 16 〜 Aug. 22 2010




” I dreamed a dream ”


今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのが、イラクに駐留するアメリカ軍が 今月末の期限を待たずして 撤退を始めたというニュース。
8月末には、最後の6000人の兵士が撤退予定であるけれど、 その後も実戦部隊以外のアメリカ軍はトレーニング目的でイラクに居残ることになっているという。
これによって、長きに渡って イラクに派兵されていたアメリカ軍兵士が やっと故郷に帰ることが出来る訳だけれど、 彼らが帰還して 仕事探しを始めることにより、 9月以降のアメリカの失業率が再びアップすることが予測されているのだった。
また帰還兵を待ち受けているのは、そう簡単にもとの生活には戻れないという厳しい現実。 発表されているデータによれば、兵士の30%は帰還後3〜4ヶ月以内に 深刻な健康上、精神上の問題を抱えるとのこと。 実際、イラクとアフガニスタンで戦死した兵士の総数以上のアメリカ軍帰還兵が、 戻った後の生活に馴染めずに 自殺を遂げていることが問題視されているのだった。

今や国民の65%が「間違いだった、するべきではなかった」とアンケートに答えているイラク戦争であるけれど、 アメリカ軍撤退に踏み切らざるを得なかった最大の要因と指摘されるのは、嵩む一方の戦費を支払いきれなくなったため。
イラクに米軍兵士1人を1年間配置するコストは何と39万ドル(約3345万円)。
2008年にイラク戦争に使われた戦費は1秒で5000ドル(約43万円)、1ヶ月では120億ドル(約1兆260億円)と言われ、 翌年2009円の1ヶ月の戦費は平均で73億ドル(約6240億円)。 そして開戦から 来月2010年9月までにイラク戦争に使われた戦費=国民の税金の総額は 9000億ドル(約76兆9500億円) という とんでもない金額になっているのだった。
したがって、こんなやっても仕方が無い戦争は一刻も早く切り上げて、 国内の経済や失業問題に目を向けるべきというのが、 ことにリセッション入りしてからのアメリカ世論。そして、 それはアフガニスタンについても同様なのである。


さて、今 ニューヨークではベッドバグ(ダニ)が個人宅から公共施設、小売店にまで発生して、 毎日のようにニュースになっているけれど、中でも 映画館はベッドバグに噛まれたり、ベッドバグを知らないうちに連れて帰ってしまう可能性が 最も高いといわれる場所。
それを知りながら、私が2回も映画館に足を運ぶことになったのが、レオナルド・ディカプリオ主演のサスペンス「インセプション」を観るため。
同作品は公開から3週間連続でボックスオフィスのNo.1を記録した映画で、 知的スリラーとしては極めて珍しいと言われる大ヒット。 多くのアメリカ人が1度観ただけでは 完全にストーリーが把握出来ないため、2回、3回と映画館に足を運ぶ例が 少なくなかったと言われる映画なのだった。
私が2回映画館に足を運ぶことになったのも、1回観て 面白いとは思ったものの、やはり理解できない部分があったためで、 2回目を見終わった後は 1度しか観ていない人に随分細かい意味合いを説明してあげられるようになったのだった。

映画「インセプション」は、 ”夢” という潜在意識の世界に入り込んで、 企業秘密を盗み出すスペシャリストが主人公。そして 夢の世界で ”秘密を盗み出す(=アウトセプション)” のではなく、 ”特定の思想/アイデアを植え込む(=インセプション)” ことを 彼に依頼するのが 渡辺謙 扮するクライアント。
そしてそれを実現するために、レオナルド・ディカプリオ扮する主人公とそのチームは、 夢の中で見ている夢の中で、さらに夢を見ているという ”3段階の夢の世界” をデザインし、ターゲットをそこに導いていくことになるけれど、 私がこの作品を2度も観ることになったのは、かなり以前から 「夢」というものにとても興味を持っていて、 自分自身、かなり不思議な夢を見る傾向にあったため。

私はニューヨーク住み始めて、現在のアパートが5つ目になるけれど、全ての物件を 事前に夢で見ていて、 ニューヨークで最初に住んだアパートのインテリアは、未だ日本に居た頃、ニューヨークに発つ数ヶ月前に夢に見ていたのだった。 もちろん、夢から覚めた時はそこが何処だか分からず、あまりに鮮明な夢だったので 「一体ここは何処なんだろう・・・」と 不思議に思った程度なのだった。
NYに来てその物件を最初に見た時も 直ぐにはピンと来なかったけれど、私が入居する直前に ランドロード(家主)が 部屋全体にグレーのカーペットを敷き詰めて、部屋のコーナーにプラントを置いて、リヴィングの家具を買い換えてくれたのだった。 そしてその状態の部屋に荷物を運び入れた途端、「この部屋は、あの時の夢に見た部屋!」と はっきり思い出すことになったのだった。

それ以外にも、私は未来に起こる出来事の1シーンを夢に見ているケースはすごく多くて、一時は ベッドサイド・テーブルにペンとメモ帳を置いて、夢を書き留めるようにしていたことさえあったのだった。
それと同時に多いのは、一般の人々が夢に見るのと同様、自分の潜在意識の中にある人や出来事等を夢に見るということ。 そしてそんな夢によって 思わぬ出来事が精神的にひっかかっていたり、ストレスになっているのに気付いた経験は非常に多いのだった。
通常、潜在意識を夢に見る場合はその状況がドンピシャで出てくるのではなく、 別の潜在意識と入り混じっている場合が非常に多くて、オフィスという設定なのに登場人物に学生時代の友達が混じっていたり、 知人があり得ない服装や、あり得ない行動をしているのが当たり前という状況であったりする。
それ以外に、人間は潜在的な恐怖を夢に見る場合が多いと言われていて、 高いところから落ちる夢や、気付くと人前で裸で立っている夢、勉強をしていないのに試験を受ける夢などは その典型例。私の場合、家にやってきた知り合いに物を盗まれて、終にはアパートが空っぽになってしまう夢を 何度となく見ているのだった。 

心理学者に言わせれば、夢というのは、新しいアイデアが得られたり、未来が予知できたりするだけでなく、霊界と交信できる 不思議なメディア。
事実、死んでしまった友人、知人、家族を夢に見る例は非常に多いというけれど、 霊感が強い人になると 確かに ”交信” と言えるほどのレベルに達するコミュニケーションが可能になるのだった。

私は母親が強い霊感の持ち主なので、母の夢に関しては様々なエピソードがあるけれど、 そのうちの1つをご紹介すると、ある時、父が夜中の2時に咳が止まらない状態が2〜3日続いたことがあったのだった。
母は占いをすることもあり、父が咳をする時間帯から察して、これは病気ではなくて何かのサインだと感じて、 その答えを得られるように念じながら眠ったところ、ご先祖様が出てきて「お墓にツタが絡まっていて不愉快」とのこと。 翌日、母がお墓に行って見ると 本当にお墓にツタの葉が絡まっていて、それをきれいに掃除をして戻ってきたところ、 それ以来 父の咳がピッタリ止まったのだった。

母の場合、こうした霊界との交信もさることながら、隠された事実までもを夢に見てしまうことがあって、 その好例と言えたのが私が高校時代の出来事。
朝起きてくると、母がいきなり「今年はギターの形をしたスカートが流行るの?」などと訳が分からないことを訊いてくるので、 何かと思ったら、 私がギターの形をしたスカートを着ている夢を鮮明に見たのだそうで、その時の私は「まさか!」などと 一笑にふしていたのだった。
ところがその数週間後、自宅の電話がパンク状態になるほどに鳴り続けて、掛けてくるのは全て面識の無い男性で 私宛て。 事情を訊いてみると、某音楽誌に 私の名前で 当時40万円以上もした新品のギターを3万円で売るという 広告が出ていたという。 当時はEメールなど 存在しない時代で、早朝から夜中まで 毎日のように電話が鳴り続けたために、 家族一同ノイローゼ気味になってしまったのだった。
なので、雑誌の編集部に問い合わせて苦情を申し立てたけれど、当時は 確認などせずに 読者から送られてきた広告掲載依頼をそのまま雑誌に載せてしまうという非常識がまかり通っていた時代。 しかも 雑誌はインターネットとは異なり、一度印刷されてしまうと直ぐに訂正など出来ないので、 次の号が出るまで その悪夢が続くことになったのだった。
私も、母も、これが単なる悪戯とは思えなかっただけに 誰がこんな事をしたのかをつきとめたくて 雑誌の編集者に投稿された手紙を 送ってもらったけれど、 左手で書いたような汚い字の文面で、それ自体はさほど手がかりにならなかったのだった。

するとその2〜3日後の朝、起きて来ると母がとても興奮していて、 犯人を夢に見たというのである。 その犯人というのは、母の知人で私と同じ年の一人娘が居る女性。
私が幼稚園の頃に その一人娘に向かって 考えようによっては 中傷と取れる言葉を言ったことを 何時までも根に持っていて、娘以上に私のことをライバル視していたのだった。 そして その女性と、母の夢に出てきた ギターの形をしたスカートの ”スカート”というキーワードがぴったり結びつくのだった。
なので、母にその犯人と思しき存在を明かされた私は、 最初は あまりに意外な存在で、しかも昨今は全く付き合いも無かっただけに 「そんな馬鹿な!」という思いであったけれど、その女性の敵意に近い競争心や執着心を思い出すうちに だんだんと彼女に違いないという思いが高まってきたのだった。

母は偶然その女性が転職した噂話を数ヶ月前に聞いていて、夢の中では女性が手紙を投函するだけのために 電車を降りた様子が出てきたという。 しかもその降りた駅というのは 女性の自宅と新しい職場の間で、 その駅と 封筒の消印の局名は ぴったり一致していたのだった。
さらに それを裏付けるかのように、事件が落ち着いた頃になって、突然その女性が うちに ご機嫌伺いを装って 電話を掛けて来ており、その電話の時間帯をチェックした母は 絶対その女性が犯人だと ますます確信を強めたのだった。

この事件はここで終わった訳ではなくて、その後 警察から電話があり、逮捕した連続レイプ犯の電話帳に私の名前が書いてあったとのこと。 その電話があった時、 私は自宅に居なかったけれど、刑事は私本人と話したい と電話口でねばり、 母が「娘は今居りません」と言っているのを、レイプされた娘をかばっているかのように疑って掛ってきたという。
しかも最後には「隠したって、調べればいずれは分かるんだから」と脅しめいたことまで言われて、 母がカンカンに怒っていたのを 私は今でもはっきり覚えているのだった。
でも、警察からの電話は結局それ1本のみだったので、恐らく私がそれとは無関係だということが 調べて分かったのだろうと判断していたのだった。


私は どうして その女性が 5歳、6歳の子供が言った言葉を根に持って、10年後にそんな復讐に出たのか、今でも 理解に苦しむけれど、 そんなことが何時までも頭に引っかかっているほど、その女性が幸せな思いをせずに生きていたのに違いないと思って、 本当に酷い目にあったけれど 彼女のことは許してあげることにしたのだった。
でも、レイプ犯に狙われたかもしれないことを思うと、一体この女性は何処まで私が不幸になることを意図して復讐しようとしたのか?、 それを考えると恐ろしくなるのだった。

もちろん、このストーリーは本人の自供や状況証拠はゼロな訳で、刑事的に立証できる要素は全く無いもの。 母の予知夢から始まり、起こった事実と、その後の夢から判断された仮説に過ぎないと言ってしまえばそれまでであるけれど、 母の夢が当たることを熟知している私としては、それが単なる偶然や潜在意識がでっち上げたものとは思えないのだった。
加えて、たとえ夢であっても 事件の真相を知って、その背景を理解するチャンスに恵まれたのは、 私の精神面にとっては非常に大きなプラス。そうでなければ、この事件がきっかけで 日ごろ仲良くしている友達などを 事あるごとに疑うような性格になってしまっていたかも知れなかったのである。

こんな経験もあって、私は夢というものは 決して軽視できないものと考えていて、 ことに証拠を一切残さない完全犯罪や、完全な嫌がらせを達成したと思い込んでいる人間は、 こんな形で人に悟られる可能性があることを知っておくべきだと思うのだった。


一般的に人間というのは7〜8時間の睡眠の間に4本程度の夢を見ていて、夢を見ていないと 思っている人は 往々にして、REM睡眠が取れていないか、そうでなければ見た夢を忘れているという。
夢にはカラーとモノクロがあって、夢の中で突然状況が変わるのは 別の夢にスウィッチしているため。 また明け方の夢は正夢になると言われるけれど、これはもっぱら明け方の夢は その後 直ぐ目が覚めて 記憶に残り易いために、それが現実になったかをチェックし易いことが指摘されているのだった。
そして、夢の専門家 や 私の友人が異口同音に語るのが、 夢がきっかけになった 現実の世界の恋愛は絶対ダメになるということ。

ところで映画「インセプション」では、レオナルド・ディカプリオ、エレン・ペイジが夢の中で大きな鏡の中に映った自分の姿を見るシーンが出てきたけれど、 実際の夢の世界ではこれはあり得ないこと。
夢の中ではたとえ鏡の反射であっても 自分の姿を見ることは決して無いのである。





Catch of the Week No. 3 Aug. : 8月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Aug. : 8月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Aug. : 8月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 July : 7月 第 4 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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