Aug. 20 〜 Aug. 26 , 2012

” Vengeance & Negative Energy ”

今週のアメリカでは、大きな報道が4つあったけれど、 まず週明けに最大の報道になったのはミズーリ州の共和党上院議員候補、トッド・エイキン(写真上)が 「女性は本当にレイプされた場合、身体のシステムが閉鎖するので、妊娠しないことは医学的見地から証明されている」という、 非常識なコメントを報道番組のインタビューで語ったニュース。
共和党といえば、妊娠中絶に反対する政党であるけれど、レイプによる妊娠に関しては、 各議員が異なる意見を持っており、同発言は、それについて尋ねられたトッド・エイキンが語ったもの。
実際の医学的なデータでは、レイプでも、合意のセックスでも、女性が妊娠する可能性は5%で、全く同じ確率。 でも、彼の発言が問題視されたのは、誤ったデータを語ったことよりも、「本当にレイプされた場合」と、いかにも 「レイプには本当のケースと、そうでないものがある」と取れる発言をした点。
このため今週は、オバマ大統領も、共和党大統領候補のミット・ロムニーも、「(本当もウソもなく)レイプはレイプ」と語り。 トッド・エイキンのコメントに反発していたけれど、 そのトッド・エイキンは さらに火に油を注ぐかのように 「レイプは憎むべき犯罪であるけれど、女性は 時に中絶を受けるためにレイプされたとウソを付く」と レイプの被害者女性を侮辱するかのような弁明のコメントを展開し、さらにその墓穴を深くしていたのだった。
これを受けてトッド・エイキンは、共和党のありとあらゆる上層部から、立候補の取り消しの圧力を掛けられたものの、それに応じず、 その一方で、保守的で中絶反対派が多いミズーリ州では、民主党の対立候補が中絶合法を掲げているだけに、 エイキンが選挙運動を続けることを支持する声が少なくないことが指摘されているのだった。



週半ばに最大の報道となったのは、英国のプリンス・ヘンリーのラスヴェガスで撮影されたヌード写真がインターネットで公開されたニュース。
先週、休暇でラスヴェガスを訪れ、オリンピックのゴールド・メダリスト、ライアン・ラッティらとパーティーを楽しんだことが伝えられていた プリンス・ヘンリーであるけれど、ネット上で大きく広まった写真は、ホテルのスウィート・ルームでストリップ・ビリヤードをして、 全裸になったプリンスを捉えたもので、ゴシップ・メディア、TMZのウェブサイトが まずこれを独占で掲載したのだった。
本国イギリスでも ”パーティー・プリンス” として知られるヘンリー王子であるけれど、 本人はこんな写真を撮影されていることには全く気付いて居らず、一緒に写真に写っている女性とは この夜初めて出会っているので、誰だか分からない状態。
プリンスが日ごろ彼が遊び仲間にしているお取り巻きであれば、オフレコで済むパーティー三昧ぶりも、 一度国境を越えて アメリカに来てしまえば、セレブリティから一般人まで、誰彼構わず ソーシャル・メディアを通じて、プライバシーが暴かれる社会。
それだけに、アメリカではこの写真が出回ったことにはさほど驚いたリアクションはなく、 それよりも、「一体彼のシークレット・サービスは何をしていたのか?」という疑問が投げかけられていたのが1つ。 さらにバッキンガム・パレスが「写真の掲載はプライバシーの侵害」として、 掲載の自粛を呼びかけたのに対して、ある事、無い事を分け隔てなく何でも記事にする悪名高きイギリス・メディアが、大人しく応じていたことに対しても 驚きのリアクションを見せていたのだった。

掲載自粛のお達しを受けて 「The Sun」が試みたのが、写真上右、スタッフにプリンスと同じポーズをさせた 全裸写真を掲載するという苦し紛れの案。 この表紙は、アメリカのメディアではジョークのネタになっていたけれど、 結局、同紙は 「既に散々ネット上に写真が出回っている」ことを理由に、イギリス・メディアで初めて、問題の写真の掲載に踏み切っているのだった。



でも今週末の最大の報道になったのは、金曜日 午前9時過ぎに起こったエンパイア・ステート・ビル付近での発砲事件。
事件の犯人、ジェフリー・ジョンソン(58歳、写真上中央)は、エンパイア・ステート・ビル向かいにあるファッション・アパレル企業を2年前に解雇されており、 射殺されたのは その会社の副社長で、元同僚のスティーブ・アーコリーノ(41歳、写真上右)。
出社したアーコリーノを車の陰で待ち伏せていたジョンソンは、彼に向けて5発を発砲。でもそれを目撃していた工事現場の作業員が彼を尾行し、 テロ警戒のためにエンパイア・ステート・ビルに常駐している警官に通報。警官2人が彼に尋問しようとしたところ、ジョンソンは ブリーフケースを開けて銃に手を掛けたために、警官が発砲し、ジョンソンは7発の銃弾を受けて死亡。 しかしながら、警官が発砲した合計16発の銃弾の残り、9発は周囲の歩行者を負傷させており、 女性5人と男性4人の計9人が病院に運び込まれることになったのだった。

2人の警官が、事件現場で発砲したのは今回が初めてとのことで、 メディアは、その発砲については「正当な判断であることは疑いの余地は無い」と見ているものの、打った回数と、その狙いの悪さを問題視する声も聞かれており、 流れ弾で負傷した歩行者がニューヨーク市、及び市警察が訴えるのは必至。その場合、1人当たり数千万円の賠償金を受取るというのが弁護士の見積もりで、 ニューヨークの納税者にとっては、極めて高くついた発砲事件と言えるのだった。

その後の捜査によれば、ジェフリー・ジョンソンとスティーブ・アーコリーノは、同僚として働いていた時代から犬猿の仲で、 デザイナーであったジョンソンは、セールスを担当していたアーコリーノが彼を嫌って、彼の作品を熱心に売り込まないことを不満に感じていたとのことで、 自分の解雇も彼の責任だと思い込んでいたという。
2人は昨年、それぞれに 相手からハラスメントを受けている として、警察に通報していた事実もあるけれど、ジェフリー・ジョンソンが この日、犯行に踏み切った背景と言われるのが、彼が暮らしていたアッパー・イーストサイドのアパートからの立ち退きを 家主に言い渡されていたということ。解雇以来、ずっと失業中だったジョンソンは、近隣のマクドナルドで毎朝のように朝食を買っていたとのことで、 交友関係は殆どなく、孤独な生活をしていたと隣人が証言しているのだった。



この事件で、ジェフリー・ジョンソンが 如何にアーコリーノを恨み続けてきたかが窺い知れるけれど、 実際に、世の中には怒りや恨みなどのネガティブ・エナジーで自分を駆り立てて生きている人というのが意外に少なくないもの。
復讐心やネガティブ・エナジーというのは、特定の人間に対して怒りや復讐心が注がれ続けるケースもあれば、 見ず知らずの人間に対する怒りがインスタントに頂点に達して、猛然と復讐のパワーが湧いてくるケースもあって、その典型例と言えるのが 「ロード・レイジ」、「パーキング・レイジ」と呼ばれる車の運転絡みのもの。 「ロード・レイジ」は、危険な割り込みや追い越しなどをされて 腹を立てたドライバーが、その車を追いかけて過激な仕返しをすることで、これは 特にカリフォルニアのような車社会では、過去数年大きな問題になっていたもの。
「パーキング・レイジ」は、ニューヨークのように車の駐車スペースが限られた街で起こる争いで、 自分が停めようと思っていた駐車スペースを横取りされたことに腹を立てて、暴力的な報復行為に出ること。

車が絡まなくても、私は今年の春にセントラル・パークの貯水池の周りを走っていて、ロード・レイジに似た体験をすることになったのだった。 この時 私は 年配の女性を かなり距離をおいて、しかもランニングのマナー通り、外側から追い抜いたけれど、その年配女性は何が気に入らなかったのか、 私のことを追いかけてきて、コースの外側から追い抜けばスペースは一杯余っているにも関わらず、 わざわざ貯水池の柵と 私の間の、幅40cm程度しか空いて居ないスペースに割り込んで来たのだった。 そして、私を追い抜く瞬間に 肘を思い切り外側に突き出して、決して偶然とは言えない 暴力的な勢いで 私の腕を突いて来たので、ビックリしてしまったのだった。
セントラル・パークには、マナーの悪い自転車は多いけれど、ランナーにこんな酷いことをされたのは初めてだったので、 本当にショックだったし、気分も悪くなったけれど、その女性はかなり無理をして私を追い抜いたせいで、直ぐにスピードが落ちてきたので、 私は 女性が追いつけないほどに 早く走ってその場を逃げることにしたのだった。

このように見ず知らずの人間を怒りの矛先にするケースでも、特定の人間を恨み続けるケースでも、ネガティブ・エナジーを 使って自分を駆り立てる人というのは、事実関係で善悪を判断せずに、自分の思い込み もしくは、自分が嫌いな人間だから 怒りや恨みの対象にするというケースが少なくないもの。
例えば、周囲が皆同じことをしていても、特定の人間に対してだけ 腹を立てるのはよくあるケース。 また、周囲がどんなに「あれは、あの人の責任ではないから・・・」と説明しても、それに聞く耳を持たずに、 自分が思い込んだ人間だけを責める というのも、ネガティブ・エナジーを好む人間がよくすることなのだった。

そんなネガティブ・エナジーの源になっているのは 被害者意識。
私の知り合いは以前勤めていた職場でセクハラを受けたことを理由に、自ら会社を辞めて、 今はセクハラ被害者をサポートするボランティアになってしまったけれど、彼女が受けたセクハラというのは 共通の友人が皆 「それがセクハラ?」と 首を傾げてしまう程度の出来事。でも彼女は、ことあるごとに「彼女の人生を変えた出来事」として、そのセクハラ体験談を持ち出してきて、 それに対する怒りや、その時に全く自分をサポートしてくれなかった周囲への不満を 実に熱っぽく、エネルギッシュに語るのだった。

中には、酷い扱いを受けたり、侮辱されたり、恋愛相手にふられたりて、それに対して 「見返したい」的なネガティブ・エナジーで 自分を駆り立てるケースもあるけれど、私が知る限り、これにはさほど効果は無いのだった。 
例えば私の女友達は、 かなり前に ボーイフレンドに捨てられてしまったけれど、別れる少し前に彼に「体重が増えた」と指摘されたことに とても腹を立てていて、彼女の体重が別れの原因ではなかったものの、「今に痩せて、彼よりずっと素敵なボーイフレンドを見つけて、彼を 見返すつもり!」と宣言して、かなり過激なダイエットを始めたのだった。
ところが、ある時その ボーイフレンドと 新しいガールフレンドと思しき女性が、仲良く、しかもとても幸せそうに手を繋いで歩いているのを目撃して、 彼女は大ショックを受けてしまい、ダイエットの糸がプツンと切れて、毎晩 泣きながら過食に次ぐ過食を繰り返した結果、 以前よりずっと太ってしまったということがあったのだった。

私自身、もう何年も前に、日本人のかつての友達にCUBE New York の仕事を 「Yokoちゃんにさえ出来る、超簡単なビジネス」と陰で言われたのを伝え聞いて、 それに対する反発のネガティブ感情を仕事へのエネルギー源にしようと思ったことがあるけれど、 自分を被害者にしたところで、自分が弱くなるだけだということがよく分かったので、そういうことを言う友達とは付き合わないことにして、 ネガテイブ感情は、その友達と一緒に葬り去ってしまうことにしたのだった。

では、ポジティブなエネルギーというのは何処から得られるかといえば、真面目に言うと冗談のようなセンテンスであるけれど、 全てのポジティブなエネルギーの源は愛情。 自分の仕事や会社に愛情があるから、人に何を言われても続けて行けるのはもちろん、扱っている商品にも愛情を持っているし、 それを提供してくれる業者や、購入して、CUBE New York のビジネスを支えて下さるお客様にも愛情を持っているので、 仕事を続けても苦にならないだけでなく、常に楽しみながら、いろいろな事が学べるというのが 私が常々心から感じていること。
ダイエットにしても、私の友達は昨年、20キロのダイエットに成功して、彼女自身「生まれて初めて人並みの体型になった」と言っていたけれど、 子供の頃から体重で悩んできた彼女が、突如ダイエットに成功したのは、新しく出来たボーイフレンドが愛情をもって彼女のダイエットを サポートしてくれたため。彼が一緒にエクササイズをしてくれて、一緒に食材を買ってサラダを作るなど、健康的な食生活に協力してくれたお陰で、 彼女はそんな彼の愛情に応えるためのパワーが猛然と湧いてきたそうで、生涯で初めて楽しみながらダイエットに成功。
前述のネガティブなエネルギーを使って痩せようとしていた友人のダイエットの苦しみや、その挫折とは、 180度異なるストーリーなのだった。

ところで、ネガティブ・エナジーで元気になる人の中には、幸福な人と一緒に居ることを苦手として、自分より不幸な人と一緒に居ると 猛然とエネルギッシュになって、相手を助けたがる人が居るけれど、 時にこうした人々は、不幸だった人が立ち直って幸せそうにしていると、 突然憎らしく感じるケースがあるもの。
私の知人の男性は、辛い時に助けてくれて、自分の本当の友達だと思っていた相手に裏切られたことがあると言っていたけれど、 彼はその原因を、自分の方が相手よりは ビジネスで羽振りが良くなってしまったためだと分析していたのだった。

ネガティブ・エナジーで自分を駆り立てている人というのは、今回の発砲事件のジェフリー・ジョンソンのように、 見るからに孤独そうなタイプも居れば、日ごろは社交的に振舞っているものの、 ふとしたきっかけで、被害者意識や復讐心をむき出しにしてくるタイプがあるもの。 特に後者の場合は、識別に時間が掛る場合もあるけれど、何かネガティブな要素を感じた人物とは 距離を置くのが一番の得策。
どんなに自分がポジティブであっても、数学が立証する通り、プラス=ポジティブ と マイナス=ネガティブを掛け合わせた場合、 結果は 常にネガティブ になってしまうのである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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