Aug. 17 〜 Aug. 23 2015

” Sex Scandal Week ”
セックス・スキャンダル・ウィーク


今週のアメリカでは、まず週明けに ”女性用ヴァイアグラ”、”ピンク・ヴァイアグラ”として知られる 女性のセクシャル・ディスファンクションの治療薬、”Addyi / アーディ” が 連邦食品医薬品局によって認可されたことが大きなニュースになったけれど、 そこから始まって セックス・スキャンダルが次から次へと報じられたのがこの一週間。

まず女性用ヴァイアグラについては、男性版のように血流に影響を及ぼすことはなく、 脳に性的衝動や性欲を駆り立てるフェイク・シグナルを送るのが この処方箋薬。 対象となるのは閉経前で性欲が衰えてきた女性とされているけれど、同薬品のプロモーションに関与している医師によれば、 閉経後の女性にも処方されるであろうとのこと。
男性版ヴァイアグラとは異なり、アーディは毎晩、就寝前に摂取する必要があり、 副作用としては、低血圧、めまい、眠気、吐き気、失神 等が挙げられているけれど、 服用にあたっては、飲酒を控える必要があるという。
2002年の調べによれば、成人女性の3分の1が”ハイポアクティブ・セクシャル・ディザイア・ディスオーダー”、 すなわちセックス・ドライブの低下に陥っているとのことで、 アーディの服用によって 37%がその改善を実感したことが 臨床トライアルで明らかになっているのだった。
とは言っても、アーディは 何らかの病やその治療薬による性欲低下や、夫婦間のストレスや不仲が原因によるセックスレスには 効果は無く、その発売について 「女性のセックスにおける避妊ピル以来の大革命」と絶賛する声が聞かれる中、 大半のリアクションは 「アーディが女性のセックス・ライフに大きなインパクトも もたらすことは無いだろう」といった冷めたもの。
そのアーディの発売は今年10月。 1998年に登場した男性版のヴァイアグラについては、シアリスのような競合プロダクトが発売されて久しいものの、 昨年2014年には 16億ドル(約1.750億円)の売上げを発売元のファイザー社にもたらしているのだった。




さて今週ショッキングに報じられた セックス・スキャンダルの1つは、2000年以来、サブウェイ・サンドウィッチのスポークスマンとして 知られてきたジェアード・フォーグル(写真上)が、青少年への性的虐待及び 青少年ポルノの製作&流通の容疑で逮捕されたというニュース。
ジェアード・フォーグルは、サブウェイ・サンドウィッチだけを食べ続けて 体重を100キロ以上落としたことで、サブウェイのスポークス・パーソンとなり、 そのオタクっぽいルックスで親しみ易さを演出して、モチベーショナル・スピーカーとして活躍する一方で、子供のためのチャリティ基金を設立。 総資産1,500万ドル(約18億6000万円)を稼ぎ上げた一般人セレブの走りのような存在。
しかし、彼は2007年から青少年の性的虐待を行い、その犯行の一部がニューヨークのホテルで行われていたことから、 今週ニューヨークで起訴されているのだった。 サブウェイ側は、7月に彼の自宅にFBIの捜査が入った時点で ジェアード・フォーグルを解雇しているけれど、 彼は その人畜無害なルックスとは裏腹に、大学時代からのチャイルド・ポルノ中毒。 サブウェイのスポークスマンとしてセレブになってからは、同じくポルノ中毒であるチャリティ基金のパートナーと、 虐待の様子をビデオに収めては コレクションに加えて、その流通もしていたとのこと。 ジェアード・フォーグルに対する容疑は 14歳〜15歳のティーンエイジャーに対する虐待であったけれど、 「若ければ 若いほど良い」という彼の理想は11歳の少年少女。
そのジェアード・フォーグルと2010年に結婚し、2人の子供を設けた妻は、この逮捕を受けて離婚を申請したことが伝えられており、 彼の有罪が確定した場合は 最高12年半までの禁固刑と、被害者に対して1人当り10万ドル(約1250万円)、合計140万ドル(約1億7500万円)の慰謝料の支払いが 科せられる状況。これに加えて、離婚の財産分与と養育費の支払いで、彼がほぼ破産状態になるであろうことが指摘されているのだった。
ジェアード・フォーグルの青少年性的虐待をFBIに通報した女性によれば、 彼は罪の意識など全く無しに 虐待を続けていたそうで、友人に対してもオープンに虐待について語っていたことが明らかになっているのだった。




でも今週、マグニチュード規模の激震をアメリカ社会に与えたセックス・スキャンダルと言えば、 既婚者対象の不倫サイト、”アシュレー・マディソン”のユーザー・プロファイルがハッカーによって公開されたこと。
アシュレー・マディソンのサイトがハッキングされたニュースは数週間前に報じられており、 ハッカー・グループが 入手したユーザー情報を非公開にする交換条件として、アシュレー・マディソンの親会社、ALMに要求していたのが、 期限までのサイトの閉鎖。しかしALMがこれに応じなかったことを受けて、今週インターネット上で公開されたのが10ギガ・バイト、3600万人分の ユーザー情報。
その中には ユーザーの名前、Eメール・アドレス、アシュレー・マディソンにクレジット・カードで料金を支払った日付と金額の記録、 サイトに掲載されていたプロファイル情報が含まれているのだった。 アシュレー・マディソンのユーザーとして登録されているというだけでも、かなり社会的に体裁が悪いけれど、 プロファイルには、身長、体重 といったルックスの情報に加えて、SMのプレーを好むか 等のセクシャル・ファンタジーが 記載されており、それが誰にでも閲覧できる状態で公開されていたのだった。

そのユーザーの内訳を分析したメディアによれば、ホワイトハウス関係者 44人、NASA職員 28人、アメリカ軍関係者 1万3078人、 政府職員 2,223人、ヴァチカン関係者 218人に加えて、ハーバード(136人)、イエール(21人)といった大学関係者、ニューヨーク市の教育委員(27人)、 国連(UN)職員など、お堅い職業のユーザーが目立っていたのに加えて、 アマゾン(79人)、バンク・オブ・アメリカ (76人)、IBM(175人)など大企業従業員の利用者も多く、 実名やEメール・アドレスで検索可能であることから、自分の伴侶や友人が登録されているかを簡単に調べられるようになっていたのだった。




これを受けて 直ぐに謝罪をしたのが、ティーンエイジャー時代に自分の妹2人を含む、数人の少女を 性的虐待したことが、今年の春先に報じられたリアリティTVスター、ジョシュ・ダガード。
彼は、敬虔なクリスチャンの子沢山一家を描くリアリティTVに出演しており、少女虐待のスキャンダルを 「過去の過ち」として謝罪し、番組のファンに対して理解を求めていた存在。 その彼が、事もあろうに複数のアカウントをアシュレー・マディソンに開いて、2年間のサービスに 1000ドル近くを支払っていたことは、 このハッキング情報の公開後、真っ先に報じられたニュースの1つなのだった。
彼以外にも敬虔なクリスチャンのYouTuber/ユーチューバーとして、多数のサブスクライバーを獲得していた男性なども、 同様にアシュレー・マディソンへの登録を認めて謝罪をしていたけれど、 既婚者ならば 誰もが気になるのが 自分の伴侶が ユーザー登録されているかということ。 これを恐る恐る突き止めた人々は多かったようで、今週はインターネット上に、夫のEメールアドレスとユーザー・プロファイルを見つけて 愕然とした妻の告白や、数年前に自分が登録したことを忘れていて、それが妻に見つかった夫のパニックなどが ブログやソーシャル・メディア上に見られていたのだった。

複数のウェブサイトに掲載されていた アシュレー・マディソンのユーザー登録がバレた夫の 妻に対する言い訳は、 「ポップアップをクリックしてしまった」、「周囲が話題にしていたのでアクセスしてみた」と、サイトに行き着くまでのプロセスには 若干のバラエティが見られるものの、そこから先は「興味本位で登録してみただけ」という、判でついたように同じ言い訳。
「浮気がしたかったわけでもなく、実際に浮気をしたわけでもない」、「誰ともチャットさえしていない」という パニック状態の夫の言い訳を信じるか、信じないかは、それ以前の夫の素行に因るところが大きいようだけれど、 いずれにしても、私がざっとネット上を閲覧した限りでは、妻がアシュレー・マディソンで浮気をしていたというケースは たった1件で、残りは全て夫側の不貞。

それもそのはずで、ハッカー・グループによれば、アシュレー・マディソンのユーザーの90〜95%が男性。 クレジット・カードで料金を支払っているユーザーもほぼ全員と言える割合で男性。 ハッカー・グループは、その声明文書で「世界最大の不倫サイトに登録したところで、 誰とも浮気なんて出来ない」と、あざ笑うかのようなコメントをしているけれど、 それだけ男女の割合に差があるのにユーザーが気付かないのは、 女性プロファイルの70〜90%が、捏造されたフェイクであるため。
事実、アシュレー・マディソンは2011年に このフェイク・プロファイルが理由で訴えられたことがあって、 これを訴えたのはユーザーではなく、フェイク・プロファイルを書かされていた女性スタッフ。 あまりに沢山のフェイク・プロファイルをタイプしなければならないために、手首を傷めたという労災の補償を求めた裁判なのだった。
ちなみにこの女性スタッフは、最初は「プロファイルを捏造するなんて…」と良心が咎めたというけれど、 やがて オンライン・デートサイトでは、それが当たり前であることが分かって 罪悪感を感じなくなったとのことで、 フェイク・プロファイルは 決してアシュレー・マディソンに限ったことでは無いのだった。


では、女性のフェイク・プロファイルを多数投入して、あたかも女性メンバーが沢山居るかのように見せかけていた アシュレー・マディソンをユーザーが訴えることが出来るかと言えば、それは不可能。 というのもアシュレー・マディソン側が登録の際の合意書で、サイト上の一部のプロファイルがフェイクである可能性があることを謳っているのに加えて、 同社は悪質なメンバーを取り締まるため、そしてサイト上のコミュニケーションを活発にするために、 スタッフが女性ユーザーに扮して 男性とチャットやメッセージのやり取りをするケースがあることをオープンに謳っているため。
では、ユーザーの登録情報の安全性を謳っておきながら、そのセキュリティが守れなかったことについて、 ユーザーが企業を訴えることが出来るかについては、これもやはり無理。 その理由は、通常 サイト側が謳う安全性は、セキュア・サーバーであることと、そのユーザー情報を企業が他社に 売却、譲渡しないという意味。ハッキングは犯罪であり、防ごうとしても防げないことは、 昨年顧客情報が大量に盗まれた大手小売店、ターゲットやホーム・デポの前例、 今年になって明らかになった中国人ハッカーによるアメリカ政府職員の個人情報流出などでも立証済み。
このため 今回のハッキングを受けて、IT関係者が警告しているのが「ネット上にはプライバシーなど存在しない」ということなのだった。

ところで、写真上の世界地図はアシュレー・マディソンの3,600万人のユーザー・マップ。 アメリカのイースト・コーストや、イタリアの国全体が、多数のユーザーを意味するレッド・ドット(赤丸)で塗りつぶされているけれど、 日本も東京と思しき位置についているのが赤丸。
でも日本とは比べ物にならないほど、浮気に対して厳しいのがアメリカ社会。 たとえ夫が「登録しただけで、浮気はしていない」と言い訳したところで、浮気の意思があったというだけで裏切り行為と見なされたり、 離婚の原因となりうるのがアメリカ。 加えて、妻とは絶対にしないような 凄い内容のファンタジーがプロファイルに書かれていた場合、 セックス・アディクト(中毒)扱いをされることもあるけれど、男性の中には浮気をガミガミ責められるより、 治療が必要な症状として扱われる方を好んで、セックス・アディクトでなくても、そのふりをするケースが増えつつあると指摘されるのだった。

さて信じていた伴侶の浮気、もしくは浮気をした可能性が明らかになった人々が、ハッカーの行為をどう思っているかについては、 「知らない方が良かった=余計な事をしてくれた」というリアクションは 私が読んだサイトのストーリーでは皆無。 「本当のことが分かって 感謝している」、「良くやってくれた」というリアクションで占められているのだった。
今回のアシュレー・マディソンのハッキングや、同級生を自殺に追い込んだネット上のいじめの犯人を突き止めるハッキングなどを行う 世直しハッカーのことは、英語でハッカーとアクティビスト(活動家、運動家)をくっつけた ”ハクティビスト”という言葉で呼ばれ始めている状況。 でも今や銀行強盗から自動車泥棒まで、全てが遠隔からのハッキングで行われる時代であるだけに、 ハッカーが世の中を牛耳るパワーを持つことを懸念する声も少なくないのだった。

ところでアシュレー・マディソンは、女性でも男性と同じように結婚後も浮気が出来るサイトとして登場し、 アシュレー・マディソン側は その女性メンバーの少なさをカモフラージュするために、 「母の日に夫や子供に何もしてもらえなかった女性が、その失望や腹いせでサイトに登録するので、母の日の直後にメンバーが増える」 などと謳って パブリシティを獲得していたにも関わらず、女性メンバーは僅か5〜10%。 この事実を受けて、「女性は男性ほどはセックスに飢えていない」という指摘がメディアに見られたのが今週。
それが本当かどうかは別として、 私個人の意見では、そんな女性達の性欲を高める女性用ヴァイアグラより 遥かに効果的と言えるのは、女性側が魅力を感じて、心から惹かれる男性像。 加えてセックスのためのエネルギーやエモーションが温存出来る程度に 仕事や日常生活をサポートしてくれる アシスタントやメイド&ベビー・シッターの存在だと思うのだった。

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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