Aug 25 〜 Aug. 31 2008




” 女性のシェルフ・ライフ ”


今週のアメリカの最大の話題と言えば、月曜から木曜までコロラド州デンバーで行われていた民主党の党大会であったけれど、 今回の大会は月曜にミシェル・オバマ夫人、火曜にヒラリー・クリントン、水曜にビル・クリントンと副大統領候補のジョー・バイデン、 そして木曜にバラック・オバマがメインのスピーカーとなり、4日間とも高視聴率を記録したことが報じられている。
ことにバラック・オバマのスピーチには北京オリンピックの開会式よりも 遥かに多い4000万人がチャンネルを合わせたと言われているのだった。
私もこの日のスピーチはTVで見ていたけれど、時々退屈になるので 現在ニューヨークで行われているU.S. オープン・テニスのラファエル・ナダル VS. ライラー・デハート の試合の生中継と交互に画面のサイズを大きくしたり、小さくしたりしていたのだった。 なので、完璧に集中してスピーチを聞いていた訳ではなかったけれど、 結果的にオバマ氏のスピーチは支持者は喜ばせても、マケイン支持者の冷めたリアクションは変えることは出来ないものだったし、 無党派層をなびかせるに十分なものであったかも定かではないのが実情である。 でもフットボール・スタジアムという これまでに無い大きな舞台で、 ファーギー、アン・ハサウェイ、オプラ・ウィンフリーなど数多くのセレブリティが客席に姿を見せたスピーチが エキサイティングなイベントであったのは紛れも無い事実なのだった。

そのオバマ・スピーチの翌日、金曜朝の10時代のTV番組に割り込んできた臨時ニュースというのが、 共和党の大統領候補、ジョン・マケインが副大統領候補として 誰も予想をしなかったアラスカ州の女性知事、サラー・ペイランを選んだという報道。
これはヒラリー・クリントン支持者の女性票を狙った人選なのは明らかであるけれど、 私はまず サラー・ペイランンの 1960年代のコーラス・ガールのような髪型を見て、 「未だに こんなヘア・スタイルの女性がアメリカに存在している」 ということにビックリしてしまったのだった。
ちょうど金曜の夜は女友達(20〜30代前半)と食事をすることになっていたけれど、 私のアメリカ人の友達は一様にこのセレクションに対して腹を立てていて、 「She is a dinosaur!(直訳すれば ”彼女は恐竜よ!” であるけれど、恐竜と同じくらい 古臭い存在 という意味。日本語の表現なら ”生ける化石” といったところ)」 などと言って、女性でありながら妊娠中絶に反対するなど、ウルトラ・コンサバティブで 現代のフェミニズムとは正反対のタイプを毛嫌いしていたのだった。

さて、先述のように今週月曜から2週間のスケジュールで 現在 ニューヨークで開催されているのがU.S.オープン・テニス。
今年はU.S.オープン・テニスの40周年ということもあるけれど、ラファエル・ナダルVS.ロジャー・フェデラーが ウィンブルドンで壮絶なマッチを見せたこともあって、かつてのボルグ VS. マッケンロー並みのセンセーションを巻き起こしており、 例年以上の盛り上がりを見せていたりする。 それが証拠に、昨年のU.S.オープンでは過去最高の71万5,587枚のチケットを販売し、全世界で最も観客を動員した アニュアル・スポーツ・イベントの記録を打ち立てているけれど、今年はトーナメントがスタートする以前に既に66万枚以上のチケットが売れており、 昨年の記録を楽に更新することが見込まれているのである。
中国でも現在、バスケット・ボールに次いで愛好者が増えているスポーツがテニスだと言われているけれど、 アメリカでは昨今、テニス人気が再上昇しており、アメリカ国内でのテニス関連プロダクトの売り上げは 昨年 2007年の時点で11億ドル(約1200億円)にも達していることが報じられているのだった。

ところで、U.S.オープンが他のグランド・スラム大会に比べてユニークな点といえば、眠らない街、ニューヨークで開催されるだけあって、 メイン・コートであるアーサー・アッシュ・スタジアムを始め、全てのコートにナイト・ゲーム用の照明設備が整っていること。 なので各日のメイン・イベントとなるゲームは、TVのプライム・タイムの生中継に合わせて、 夜の7時から女子のシングルズが、そしてそれが終了した夜9時前後から男子シングルスのゲームがスタートするスケジュールである。
今年のウィンブルドンではナダルVS.フェデラーのゲームが長引いて、日が落ちてしまったため、 試合の終了間際には両者ともボールが殆ど見えない状態で打っていたことが伝えられていたけれど、 実際ウィンブルドンは どんなに試合が長引いても、夜の9時半には必ずプレーを終了することになっているという。 でもU.S.オープンの場合は、夜の9時半が試合開始時間というケースは珍しくなく、午前1時に試合が終了することもしばしばである。
世界最大のテニス・スタジアムであるアーサー・アッシュ・スタジアムでテニス観戦をする場合、 日焼けを気にしてサン・ブロックを塗り直さなければならない昼間よりも、夜の方が 風が涼しくて気持ちが良い上に、 野球場の外野席並みの高さまで設けられた観客席からもボールの行方が分るナイター施設の中で ニューヨークならではの独特の雰囲気が楽しめるもの。 なので私は 日本からやって来るテニス好きな友人には、「1度はU.S.オープンに行ってみるべき!」と 薦めているのだった。

そのU.S.オープンの昨日の「Upset / アプセット」、すなわち ”番狂わせ” として大きく報じられていたのが、 日本のティーンエイジ・プレーヤー、ケイ・ニシコリ(錦織 圭)選手 が男子第4シードのデヴィッド・フェラー(スペイン)を破ったというニュース。 このことは 写真こそは小さかったけれど、今日8月31日付けのニューヨーク・タイムズ紙のスポーツ欄の1面で、 「Victory by Japanese Teenager Highlights Day of Upsets」 というヘッドラインで報じられていたのだった。
日本は、 テニス関係者から見れば テニスというスポーツの市場がまだまだ未開の国。 それだけに、今日のナイト・ゲーム前の解説ではケイ・ニシコリの出現で、日本にテニス・ブームが起こることを望む声が 聞かれていたけれど、事実、ドイツではボリス・ベッカー、ステフィ・グラフといった世界的なスーパースター・プレーヤーが現れたことで、 テニス人気に大きく火が点いたことが指摘されていたのだった。

さて今週のアメリカで、昼、夜のトークショーに始まってU.S.オープンの観客席にまで姿を見せていたのが、 オリンピックが終了して帰国したメダリスト達。
中でも最も注目が集まっているのは、水泳で8つのゴールド・メダルを獲得したマイケル・フェルプスであるけれど、 彼はマーク・スピッツがミュンヘン・オリンピックで獲得した7つのゴールド・メダルの記録を破ったことで、 スピード社から$1ミリオン(約1億800万円)のボーナスを受け取るだけでなく、その自叙伝出版の契約金として$1.6ミリオン(約1億7300万円)、さらに 多額のCM出演料も受け取っており、 「金(メダル)が金を産む」状態になっているようである。
さらに彼は 人気番組「サタデー・ナイト・ライヴ」のシーズン・プレミアのホストも務めることになっているけれど、 かつてアスリートで同番組のホストを務めたのは、マイケル・ジョーダン、名クォーターバックのジョー・モンタナ、 デレク・ジーター、殴打事件で一躍有名になったフィギュア・スケーターのナンシー・キャリガンなど錚々たる顔ぶれ。
そのマイケル・フェルプスが北京オリンピックで着用していたスピード社のスウィム・スーツ、LZR レーサーは どこの誰が何の目的で着用するのかは 不明であるものの、スピード社が正式に発売することになり 現在はウェブサイトで先行オーダーを受け付けているという。 でもそのお値段は550ドル(約6万円)であるから、シャレで着用するには少々高額と言えるものとなっている。

さて、そのマイケル・フェルプス絡みで北京オリンピック開催中にちょっとした物議を醸していたのが、 アメリカの女子水泳チームの一員で、今回のオリンピックとタイミングを合わせて毛皮に反対する動物愛護団体、PETAの ポスターでヌードになったアマンダ・ビアード(写真左)が マイケル・フェルプスと付き合っているのでは?という噂に対して、 「Ew!(英語で言う ”オエ〜” のような表現) 私はもっと(男性の)テイストが良いわよ!」 とコメントしたということ。
フェルプス側も「彼女には別にボーイフレンドが居ると思う」と、噂をあっさり否定しているけれど、 アマンダ・ビアードのコメントはメディアで大きく報じられ、彼女は インターネットの書き込みや新聞の投書欄などで大バッシングを受けることになったのだった。
そもそもアマンダ・ビアードは オリンピック開会式前日に PETAのヌード・ポスターの発表記者会見をホテルで行おうとしたところ 中国政府にキャンセルされ、 肝心のオリンピックでは一度も決勝で泳ぐことが無かった存在。かつてはプレイボーイ誌でもヌードになっている彼女が 世界記録によるゴールドメダル・ラッシュで国民的英雄となっていたフェルプスのことを、 「自分がデートするレベルに値しない」かのようにコメントしたのだから バッシングを受けるのは当然と言えば当然のこと。 そのバッシング・コメントの内容を見てみると、 スポーツ選手にも関わらず 本業そっちのけでヌード写真で自分を売り込もうとする アマンダ・ビアードの姿勢を批判するものから、 「相手がアマンダ・ビアードだったら、マイケル・フェルプスが勿体無い」 というものまで様々だったけれど、 ネット上と私を含む友達の間の共通した意見というのが 「マイケル・フェルプスほどの成功を収めたら、アマンダ・ビアードよりずっと美人な女性が 何人でも 簡単に手に入る」というもの。
フェルプスは好青年ではあっても「ハンサム」とか「キュート」と表現されるようなグッド・ルッキングではないタイプ。 でも彼よりずっとアグリーな54歳でも、お金があってサクセスを収めていたら25歳の美女とデート出来てしまえるのがこの世の中なのである。

かく言う私もデートという訳ではないけれど、ニューヨークに暮らし始めたばかりの若かりし頃、 どう見ても60歳くらいにしか見えない自称52歳の男性と2回ほど食事をしたことがある。 出会ったきっかけは、私が大きな荷物を抱えて歩いていたところ、彼がそれを自宅のアパートまで運んでくれたことで、 その後、男性から私宛で カタカナで書かれたメッセージがドアマンのところに届いていたので、 お礼の電話をしたところ、「一度 食事でも・・・」ということになったのだった。
彼は高い調度品が並ぶ自宅アパートを 見せびらかしたかったようで、次に彼に会ったのは 私の友達を誘って 彼のアパートで ディナー という オケージョンであったけれど、その日が彼に会った最後となったのだった。
その時に彼が熱っぽく語っていたのが 「若い女性はお金目当てで年上の男性と付き合うと言われているけれど、 自分は決してそれだけが理由だとは思わない」ということ。 それに対して 「お金が目当てに決まってるじゃない!」 と頭の中で考えていた友人と私は 適当な返事をしていたけれど、 男性の熱弁はさらに続いて 「自分は精神的に 若い男よりもずっと包容力がある上に、体力的にも若い男には決して引けを取らないんだ 」 と言って、いきなりペルシャ絨毯の上で 腕立て伏せを始めたので、私と友人はその場で凍り付いてしまったのだった。
そんな姿を見せられると、もう一刻でも早くその場を立ち去りたくなるのが まともな神経というもので、 何て言い訳したかは覚えていないけれど、私達はデザートとコーヒーをスキップして逃げてきて、 彼のアパートのビルを出た途端に、地面で転げ回るほどに大笑いをしたのをとてもよく覚えていたりする。

ニューヨークは物価やレントが高いので、未だ十分な収入が得られない20代の若い女性が ディナーをご馳走してもらうため、高いシューズを買ってもらうために 年上の男性とデートするのは珍しくないようだけれど、 年齢が違うと話も合わないし、やはり若い女性側にとっては 自分より ずっと年上の男性が退屈に感じられるので こうした関係は2〜3回のデートで終わる事が少なくないようである。 長続きする場合というのは、相手の男性の金銭的な羽振りが良い場合で、 お金があるだけでなく ハンプトンでウィークエンドを過ごせてくれたり、有名人が集まるパーティーに連れて行ってくれるといった 自分の力では得られないライフスタイルを提供してくれるような男性の場合、30歳以上 年齢が離れていても 結婚してしまうケースは非常に多いのが実情である。
でも殆どのケースが2〜3回のデートで終わったとしても、とりあえず20代の若い女性が食事に付き合ってくれるというのは 40代、50代アップの男性にしてみれば彼らのエゴを満たすのには十分な訳で、 彼らはデート相手がコールバックしてこなくなれば、また懲りずに別の若い女性に声を掛けることになるのである。 したがってニューヨークに暮らしている若い女性だったら、自分の父親よりも老けている男性から デートに誘われる経験をしているものだけれど、 声を掛けられた側の女性の内心のリアクションというのは、 「いい年をして何を勘違いしているの?」 というものが殆どで、 今回のマイケル・フェルプスに対するアマンダ・ビアードのコメントと大差が無かったりする。

でも中にはこうした男性達を利用して生きていこうと思っている女性も居る訳で、 そういう女性は往々にして 「自分が40歳になっても、その年齢を若いと思ってくれるもっと年上の男性を捕まえれば良い」という 楽観的なストラテジーを持っていたりする。 でも私が知る限りアメリカでは、40代の男性でも、50代、60代、70代でも若い女性が好きな男性は 20代、もしくは20代に見える30代の女性に惹かれるもの。 しかも 財力のある男性を見つけて 頼りたい若い女性は 後から 後から 出てくる訳である。
よくモデル、ストリッパー、愛人など若さと美しさをウリにしていた女性がエイジングを痛感させられるのが、 自分よりずっと若くて したたかな女性が、かつての自分のポジションを奪い取っていくのを目の当たりにする時だと言うけれど、 確かに美人でチヤホヤされていた女性ほど エイジングによる精神的な落ち込みも大きいという。

ところで、昨今発表された調査によれば、女性と男性の幸福度を比較した場合、30代までは女性の方が男性より幸福度が高いというけれど、 40を過ぎてから女性の幸福度は低下して行き、逆に男性の幸福度は高まって行くので、この時点で男女の幸福度は逆転してしまうという。
40代と言えば、女性が若さの限界と老化の進行を痛感し、男性が経済力をが増していく時期であるから、 幸福度が逆転するのはある意味で理にかなっていると言えること。
要するに財力で若くて美しい女性を手に入れられる男性の方が、若さと美しさで財力のある男性を引き寄せる女性よりも遥かに シェルフ・ライフ(商品として棚に置いておける時期)が長い訳である。 これは男性が40代でサクセスを納めていれば 「若い」 と見なされるのに対して、女性の40代は 最高裁の判事にでも任命されない限りは 決して若いとは見なされないことからも分ること。
でも、そこは男女平等社会を謳うアメリカ。 ニューヨークのエグゼクティブ・マッチメーキングのビジネスには、近年、金持ちの男性を若くて美しい女性と引き合わせるだけでなく、 リッチでサクセスフルな女性と若くてルックスの良い男性を引き合わせるサービスも 登場しているという。
でも、相手がどんなに若くてハンサムな男性でも、サクセスフルな女性は「デート代を負担してあげるのは構わないけれど、 養ってあげるのはまっぴら」 と思っているというから、例え社会を平等にしても、男女は決して 同じにはならないようである。





Catch of the Week No. 4 Aug. : 8 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Aug. : 8 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Aug. : 8 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Aug. : 8 月 第 1 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。