Aug 29 〜 Sep 4 2011

” It's Cooking Time! ”


今週アメリカで最も大きく報じられていたのが、先週末に東海岸を襲った ハリケーン・アイリーンの被害のニュース。
幸い、マンハッタンには大きな被害が無かったものの、ニューヨーク郊外のロングアイランド、お隣のニュージャージーやコネチカット州では、 洪水や倒れた木によるケーブルの切断が原因の停電世帯が数十万にも及び、1週間が経過した今週末の時点でも、 ニューヨーク近郊だけで停電世帯が3万軒以上あることが報じられているのだった。

このハリケーン・アイリーンの被害総額は、ノースキャロライナ州のコットンやタバコといった農作物の被害や、洪水の被害などを含めて、 総額$10ビリオン(約7,700億円)と見積もられており、アメリカ史上、最も被害額が大きい自然災害のトップ10に入るとのこと。
2011年は、竜巻、山火事など、国が救済しなければならない規模の自然災害が、アメリカ国内で既に60も発生していることが伝えられているけれど、 当然のことながら、保険会社にとっては厳しいビジネスを強いられている年。
通常、こうした自然災害が起こった場合、その被害の半分を被ることになるのが保険会社であるけれど、 アイリーンのケースについては、保険会社の負担は、約40%程度に軽減される見込みであるという。 これは、今回のアイリーンの被害の殆どが 洪水によるもので、 スタンダードな住宅保険は 洪水の被害をカバーしないため。 アメリカでは、洪水保険に入っている世帯は、全体の20%以下と言われているのだった。
また洪水保険に入っていた場合でも、 「ハリケーンによる洪水」と提議付けられていた場合、 ニューヨーク・エリアを襲った際のアイリーンは、既にハリケーンからトロピカル・ストームにダウン・グレードされており、 「ハリケーンでは無い」という理由で、支払いを受けられないケースも出てくることが指摘されているのだった。

このように、2011年は アメリカにとって 自然災害の当たり年になっているだけに、 FEMA / フィーマ (Federal Emergency Management Agency / 連邦緊急事態管理庁)の財源は既に底を尽きており、 オバマ大統領は、議会にFEMAの予算を増やすよう要請するとのこと。 とは言ってもも債務上限の引き上げで、大幅なバジェット・カットを強いられている状況なだけに、 これはそう簡単なことでは無いのが実情なのだった。
FEMAでは、十分な財源が無い場合、緊急を要する災害を優先して救済するというポリシー。 その結果、春に竜巻の恐ろしさを世界中に見せ付ける大被害を受けたミズーリ州のジョプリンの町への 救済金がカットされることになるというから、ハリケーン・アイリーンの被害者も たとえ今は連邦基金による救済の対象になっていたとしても、今後の状況によっては、何時救済金がストップするか 分からないと言えるのだった。



週末になってから大きく報じられたのは、金曜に発表された雇用統計で、8月にアメリカで 1つも新しい仕事が生まれなかったという、経済の先行きに不安をもたらすニュース。
8月にはプライベート・セクターで1万7000の仕事がクリエイトされたものの、政府関連の仕事で 1万7000人のレイオフが行なわれたため、差し引きゼロで、1つも新しい仕事が増えなかったという計算。 ちなみに、これはアメリカでは 1945年2月以来のこと。

失業率は引き続き9.1%であるけれど、気になるのは 新たに生み出される仕事の数がどんどん減り続けていること。
2011年は1月〜3月に新たに増えた仕事の数が 16万6000、4月〜6月までの間にクリエイトされた職の数は9万7000。 そして7月〜9月の数字は、8月が終わった現時点で4万3000で、第1四半期から大きく下がった第2四半期の数字をさらに下回ることが見込まれているのだった。
現時点で、職を失った人々の平均的な失業期間は 22週間と言われており、レイオフから1ヶ月以内に新しい仕事が探せるのは約30%の人々。 失業期間が1年を過ぎた人々と、年齢が55歳以上の人々は、再就職が特に難しいといわれており、 55歳以上の人々の平均失業期間は、通常の平均の約2倍に当たる43週間。
近年のアメリカで、最も顕著に失業者が増えたのは製造業で、1998年以降、300万の仕事が海外に流出するなどして失われたことが指摘されているのだった。
また、数字に表れない厳しい現実と言えるのが、再就職した人々が必ずしも以前の仕事と同じレベルの賃金を受け取っていないということ。 年収5〜6万ドルの仕事をしていた人が、時給7ドル程度のファストフード・チェーンでパートタイムで働くのも 再就職と見なされる訳で、 現時点で、アメリカでは 全労働者のうちフルタイムの職員は 47%程度に過ぎないと言われているのだった。(ビジネス・インサイダー調べ)

来年の大統領選挙で再選されるためにも、オバマ大統領は雇用を増やすカンフル剤を投与しなければならない状況であるけれど、 その方策として検討されているのが、給与税のカット。 でも債務上限引き上げを議会で可決するために、富裕層に対する増税を行なわないことが共和党との取引条件になっていただけに、 給与税もカットすれば、益々財源が減る一方で、自然災害の復旧費用がどんどん嵩むという財政難の更なる悪化が見込まれるのだった。

ふと考えると、現在アメリカという国が直面している状況は、アメリカ国民が個人レベルで体験してきたことと非常に似ていると思うのだった。 好況時に家を買って、ローンを組んで、クレジット・カードでどんどん借金をしながら買い物をしていたところ、 リセッションで まず仕事を失い、さほど蓄えが無いため、生活費を失業手当やクレジット・カードで賄っているうちに、 本人や家族が予期せぬ病気になり、医療費が嵩んで ローンが支払えず、家を失うというのが、リセッション以来 多くのアメリカ人が体験してきた破産のシナリオ。
国民の仕事が無くなり、政府は膨らんだ借金を払わなければならないのに、予期せぬ自然災害が起こり続けて、その復旧費用が嵩んでしまう というのは、私から見ると、個人の破産のシナリオを政府規模にしたような筋書きに感じられてしまうのだった。


こんな状況なので、昨今は 友達に会っても、必ず経済問題が話題に上るけれど、 それと関係ある、無いは別として、私の周囲のアメリカ人の友達が、偶然にも揃って最近凝り始めているのがクッキング。
日本人の友達であれば、自宅に居るときは 自分で料理をする場合は多いもの。 でも、アメリカ人は家庭科というクラスが無いせいもあって、料理をしない人は、外食しない日はデリバリーかテイクアウト専門。 自宅で お湯さえ沸かしたことが無いというケースも少なくないのだった。
ところが、そんなキッチンをろくに使ったことも無かったような友達が、クッキングのクラスに通い始めたり、 以前からパスタ程度は作っていた友達が、ベーキングに懲りだしたりして、 それぞれ レベルは異なるものの、揃いも揃って クッキングを楽しみ始めているのだった。


かく言う私も、今まであまりの重たさに、購入を見合わせてきたル・クルーゼのダッチ・オーブン(写真左)をオーダーしたばかり。
料理の腕の50%は鍋が決めると料理の専門家が言っているのを聞いたことがあるけれど、確かに私も肉を焼くために特別にデザインされた鍋で ステーキを焼くと、凄く上手く焼けるので ”鍋に投資をするというのは大切” だと思うのだった。
私は、過去にも料理に凝ったことは何度もあって、数週間前にキッチンの大掃除をしていたら、 ケーキやマフィンを焼くためのパンが幾つも出てきて、もう10年以上前にベーキングに凝っていたことを思い出したような状態。 そして久々にベーキングを試みたら、思いのほか上手く行ったので、私の友達がベーキングに凝りだした気持ちが良く理解できるのだった。

私の友達に言わせると、ベーキングは昔ながらのカメラで写真を撮って、フィルムの現像を待っているような楽しみがあるから好きなのだそうで、 焼き上がりを待ちながら、別のことをしている時間も楽しいと言っていたのだった。 彼女がベーキングに凝りだした理由は、友達がレイオフされて、今流行のグルテン・フリーのスウィーツを 焼きながら、細々と、でも楽しげに生計を立てている様子を見てからとのこと。
そのレイオフされた友達は、知人の子供のバースデーのために グルテン・フリーのバースデー・ケーキやカップケーキ等を焼いて、届けているのだそうで、 最初はレイオフの不安な気持ちを癒すために、 以前凝っていたベーキングを再び始めたというのだった。

料理に凝り始めた友達の共通の意見は、自分で料理をすることが 必ずしもお金の節約に繋がるわけではないということ。
というのも、新しいことを始めようとすると、どうしても必要なのが道具。幸いアメリカはキッチン・グッズが非常に安価なので、 料理に必要なグッズやスパイスを買い揃えても、物凄くお金が掛る訳ではないけれど、 テイクアウトよりは高くつくし、時間も掛るもの。それは食材にお金を掛ければ尚のこと。
でも今や外食は、 食材の値上がりを受けて どんどん高額になっているので、どんなに食材にお金を掛けても、 自分で料理をする限りは 外食よりは安く上がるのだった。

例えばミシュラン3つ星レストラン、タイム・ワーナーセンター内のパー・セで、 ディナーをすれば、1人400ドル以上の出費。昨今評判が落ちている かつてのニューヨークのNo.1レストラン、ブーレーでも 138ドルのディナー・コースを2人でそれぞれオーダーすると、ドリンク、タックス、チップを含めて 600ドル以上になってしまうと言われているのだった。
これらは、一流レストランなので、高いのは当たり前と言えば当たり前。 でも 私は数週間前に、テニスのパートナーに連れられて、アッパー・ウエストサイドのカジュアル・レストランに行ったけれど、 彼がオーダーしたのがギリシャ風サラダと、フライド・カラマリ(イカのフライ)。 私はいかにも料理が不味そうな店だと思ったので、絶対に当たり外れの無いペストのパスタをオーダー。 テニスの後で、喉が渇いていたこともあり、彼がビールを3本、私がワインを2杯飲んだけれど、 それ以外、コーヒーもデザートもオーダーせず、チップとタックスを含めて 2人で支払ったのが100ドル。
テニスの後、テニスウェアのまま出掛けたような カジュアル・レストランで、 私は、1本7ドルもしないようなホワイト・ワインを小さなグラスに2杯と、あまりの不味さに2口食べて止めてしまったパスタに、 50ドルも支払ったことになる訳で、 「この手のカジュアル・レストランには、たとえ誘われても、もう絶対に行かない!」と心に決めてしまったのだった。

クッキングに凝りだした友達も、同様の思いをしているケースが多くて、揃って言うのが 「外食の回数が減った」ということ。 そして中途半端なレストランに行くなら、その分のお金を食材に掛けて 自分でクッキングをした方が満足できるということなのだった。
でも、料理は精神状態が反映されるものなので、クリエイティブな心が沸かない時は、 自己陶酔するような出来は望めないもの。 また、必要なプロセスを省いたら、決して美味しいものは出来ないけれど、 あっという間に作ったものが、手間隙を掛けた料理より美味しく仕上がるのは決して珍しくないこと。

でも1つだけ確実に言えるのは、外食の日や仕事のスケジュールを考慮して、 事前に1週間のメニューを決めて、それに向けて食材のショッピングをしたり、時間がある時にプレ・クックをしておく方が、 その日、その日で、冷蔵庫にある材料で料理するよりも、確実に、そして無駄なく美味しい食事が楽しめるということ。
これはワークアウトも同様で、週間天気予報を見てセントラル・パークを走る日、ヨガの日、テニスをする日、ジムでウェイト・トレーニングをする日を決めておいた方が、 そのスケジュールに合わせて行動するので、きちんとルーティーンがこなせるのだった。

ところで、私は母が占いをすることもあって、その母から教わった四柱推命の暗示を料理に反映させるようにしていて、 四緑の日は麺類、五黄の日は生物は食べない、六白の日は高い食材を選び、二黒の日は庶民的な料理、というように 暦を見ながらメニューを検討するようにしているのだった。
かなり前のこのコラムで、レストランを選ぶ時に 四柱推命の暗示通りにすると書いたことがあるけれど、 それに従っていると レストラン選びではそうそう失敗はしないもの。 このことはクッキングにしても然りで、四柱推命の星の暗示通りのものを作っている場合、 予想したより上手く出来たり、材料の一部を入れ忘れたのに大勢に影響が無かったり、 適当に時間を見計らっただけでも 焼き具合が絶妙であったりして、何となくお守りがついているような気分が味わえるのだった。
なので 特に友達を招待した場合など、自分だけが食べる訳ではない料理をするオケージョンでは、この占いの知識は非常に心強い味方と言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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