Sep. 7 〜 Sep. 13 2015

” English Problem with Asian Trashed by Trump ”
ドナルド・トランプが馬鹿にしたアジア人英語の問題点


今週のニューヨークでは、USオープン絡みのニュースが多かったけれど、そのうちの1つで 今後も物議を醸しそうなのが、元世界ランキング4位のプロテニス・プレーヤー、ジェームス・ブレークが クレジットカード詐欺の容疑者と間違えられて、ミッドタウンのグランド・ハイヤット・ホテルの正面玄関で、 覆面警官に突如地面に押さえつけられ、手錠を掛けられたという事件。
USオープンのイベントに出演するために、迎えの車を待ちながらスマートフォンでテキスト・メッセージを打っていた彼に いきなり飛び掛ったのは、過去にも暴力的な逮捕&誤認逮捕で何件もの苦情が寄せられ、2件の訴訟を抱えているジェームス・フレスカトーリ。 NYPD(NY市警察)側はこの誤認逮捕について、「ジェームス・ブレークが容疑者と双子のように良く似ていた」として 写真(写真上中央)を公開して、 言い訳していたけれど、ブレーク側の弁護士によれば、 ジェームス・フレスカトーリは逮捕時に自分が警官であることを明らかにしなかった上に、 ジェームス・ブレークのIDの確認もせず、容疑の説明や逮捕者の権利の読み上げも無しに、いきなり押し倒して手錠を掛けたとのことで、 その様子は金曜にNYPDによって公開されたホテルの監視カメラの映像で確認されているのだった。
ハーバード大学出身でテニスでもオリンピック・アメリカ代表に選ばれるエリートであったジェームス・ブレークは、 終始警察に対して協力的で、手錠を掛けられてから10分後には釈放されたものの、 NYPD及び、ビル・デブラジオNY市長からの謝罪だけでは満足せず、 自らのセレブリティ・ステータスを使って、同様の事件で被害者になっている人々を助けたいと語っているのだった。






そのUSオープンでは、カレンダー・イヤーでグランドスラム4大会を制するという27年ぶりの快挙を達成しようとしていたセリーナ・ウィリアムスが、 準決勝で、全く無名のロベルタ・ヴィンチの敗れたことが金曜日の大きなニュースになっていたけれど、 決勝カードがほぼ無名のイタリア人プレーヤーの対戦となったことで、リセール・チケット価格は大幅下落。今年はセリーナ・ウィリアムスの歴史的勝利を 見届けようと、女子決勝のチケットが男子決勝よりも早く完売したけれど、275ドルで売られていたスタンド席のリセール・チケット価格は25ドルに下がり、 コートサイドのチケット価格は 何と25分の1になったことが伝えられているのだった。
同様のチケット価格の下落は、昨年のUSオープン男子決勝の 錦織 vs チリッチ戦でも見られていたけれど、 今年の男子ファイナルについては、ノヴァック・ジョコヴィッチ VS. ロジャー・フェデラーという世界ランキング1位と2位の対決で、 文句なしの”マーキー・カード(看板スターの対戦)”。 雨のせいで試合開始が遅れたけれど、来年からはアーサー・アッシュスタジアムに折りたたみ式の屋根が設置されるので、 悪天候による遅れや試合中止が減って、スケジュール通りにトーナメントが行われることが見込まれているのだった。

その今回のUSオープンで、最大の話題とメディアの注目を集めたのが、火曜日に行われたヴィーナスVS.セリーナのウィリアム姉妹対決。
この試合には 多くのセレブリティが観客席に姿を見せたけれど、そのうちの1人が共和党の大統領候補に立候補しているドナルド・トランプ。 彼は、USオープンの常連セレブリティの1人として知られるけれど、その彼がアーサー・アッシュ・スタジアムのジャンボ・スクリーンに映し出された途端に 起こったのが猛烈なブーイング。それだけでなく、彼と夫人のメラニアがスタジアムに到着し、 リムジンから出てきた際にも 起こっていたのがブーイング。 アイオワやニュー・ハンプシャーでは、支持者に囲まれ、握手攻め、サイン攻めになっているドナルド・トランプが、 彼のお膝元であるはずのニューヨークでブーイングされる理由については、 「メディア・サヴィなニューヨーカーにとっては、彼の選挙キャンペーンが茶番でしかないから」といった説明が聞かれていたのだった。

そのドナルド・トランプが今週物議を醸したのは、ローリング・ストーン誌とのインタビューで、 彼を追い上げている共和党唯一の女性候補で、元ヒューレット・パッカードのCEO、カイリー・フィオリーナ(写真上、右)のルックスについて、 「あの顔を見てみろ、あの顔に投票したい奴が居るのか?」とコメントしたこと。
でも週末になってからは、翌週に2回目の共和党ディベートを控えていることもあって、トランプは カイリー・フィオリーナを含む 他の共和党候補者に対する攻撃をかなりトーンダウンしているのだった。




そのトランプは、既に世界中で報じられている通り メキシコ政府&メキシコ人移民、フォックス・ニュースの人気女性キャスター、ヒスパニック系TV局のジャーナリスト、 スーパーモデルのハイディ・クルムなど、様々な人々をその暴言のターゲットにしてきたけれど、 その矛先がアジア人に向けられたのが8月25日に彼がアイオワ州でスピーチを行った際。
中国と日本を相手にしたビジネスに言及したトランプが語ったのが以下のセンテンス。
“When these people walk in the room, they don’t say, ‘Oh, hello! How’s the weather? It’s so beautiful outside. Isn’t it lovely? How are the Yankees doing? Oh they’re doing wonderful. Great,’ They say, ‘We want deal!’”
これは簡単に訳すと、「中国人や日本人は、商談の際に挨拶や天気、ヤンキーズの話などはせず、部屋に入った途端に、 ‘We want deal!’と言ってくる」というような意味であるけれど、 アジア人コミュニティが眉を吊り上げたのは、中国人や日本人が ”何の愛想も無く商談に入る”と言われた部分ではなく、 トランプが「We want deal!」というブロークン・イングリッシュを使って アジア人を馬鹿にしたこと。

私は個人的にはドナルド・トランプは日本人と中国人の区別が付いていないと考えていて、それというのも日本人ビジネスマンは、 中国人ビジネスマンに比べれば、遥かに下手に出ながら 商談を進めると思うため。 でも、「We want deal!」という英語の問題点についてはアジア人に共通したもので、このセンテンスを聞いてネイティブ・スピーカーのアメリカ人ならば、 直ぐに気がつく問題点が 分からないアジア人が非常に多いのが実情なのだった。
では「We want deal!」のセンテンスの何が悪いかと言えば、冠詞の「a」が抜けていること。 すなわち、「We want a deal!」が正しいセンテンスなのだった。

そう言われても英語が堪能でないアジア人の多くは、「そんな事くらい…」と考えがちで、 実は私もアメリカに来て最初の2年くらいはそう考えいた1人。
でもその後付き合ったアメリカ人ボーイフレンドに、しつこいほど「The」、「a」が抜けていることを指摘されて、 「今 話しているセンテンスに ”The” と ”a”が加わるだけで、どれだけ英語らしく聞こえるか!」と言われた時に、 初めて英語を流暢に話すために、 冠詞がそれほど大切なものだということを悟ったのだった。 これは日本人の英語教師は決して教えてくれなかったことだし、日本で英会話を習っていたアメリカ人やイギリス人のインストラクターも 教えてくれなかったこと。
でも、アメリカ人の友達からのテキスト・メッセージやEメールを見ると、 確かに どんなにスラングや略語が使われていても、「The」、「a」はしっかり記載されているのだった。

フランス語やスペイン語、イタリア語などには冠詞があるため、ヨーロッパ人や南米人は どんなに英語が上手くなくても、自然に ”The” と ”a”を会話に入れて話すので、 「We want deal!」というようなブロークン・イングリッシュを話すのはもっぱらアジア人。 もちろん、ドナルド・トランプは商談の度に そんなアジア人特有のブロークン・イングリッシュを聞いてきたので、 アイオワでのスピーチで アジア人をからかうジョークとしてそれを引用した訳だけれど、 このことは 特に西海岸のアジアン・コミュニティを中心に顰蹙を買っていたのだった。

ちなみに”We want a deal!”というセンテンスは、単に取引を求めているというよりも、好条件の取引を求めているという意味のセンテンス。 「取引を纏めましょう = Let's make a deal!」、「それは良い(取引)話だ!= That sounds like a deal!」のように "Deal / ディール"という言葉は、単なる”取引”を意味する場合と、好条件の”バーゲン取引”を意味する場合があって、 その解釈はセンテンスによって異なるのだった。




正直なところ、ドナルド・トランプに馬鹿にされたのは悔しいけれど、アジア人英語の冠詞の問題は、 否定できない事実。 冠詞が抜けると どのくらい英語が不自然に聞こえるかと言えば、 日本語が堪能なアメリカ人の説明では、例えば「I am a school teacher」というセンテンスの「a」が抜けていたとすると、 「私、学校教師」と外国人が日本語で喋っているのと同じようなニュアンスになるとのこと。

それ以外にアジア人の 不思議な英語の代表として アメリカ人に知られているものには”Chenglish / チェングリッシュ”があるけれど、 これは写真上左の看板のように 中国語を英語に訳すプロセスで間違える結果、変な英語になってしまうこと。 (ちなみに水辺に近寄らないようにと警告する場合は、”Please not close to”ではなくて ”Keep Out”か”Stay Out”が通常)

でもチェングリッシュに似た間違いは、日本人英語にも頻繁に見られるものなのだった。 例えば「英語が話せるようになりたい」と言おうとして 「I would like to be able to speak English」と言った人が居たけれど、 これはちょっと不思議なセンテンス。「I want to speak English fluently」とか、「I want to improve my English speaking (skills) 」などが普通。
その一方で、日本語の「英語が話せない」というセンテンスを 「I can't speak English」という人が多いけれど、実際は 「I don't speak English」の方が正解。 またお酒を飲まない主義の人が「I can't drink」と言ったりするけれど、こちらも「I don't drink」が正解。
もしそれが英語が苦手な日本人が 二日酔いなどで 頭が回転しなくて、日頃よりも英語のセンテンスが纏まらない状況だったら、 「I can't speak English today」と言うのはOK。 またお酒を飲まない事についても、抗生物質を飲んでいるとか、肝臓が悪くてドクターストップが掛かっているので、 お酒が好きだけれど 飲めないというケースであれば 「I can't drink」が適切。 「もう飲み過ぎたので、これ以上飲めない」という場合は「I can't drink any more」となるのだった。
すなわち、何かの都合や肉体的なコンディションで出来ない状況にある場合は 「Can't」を使うべきだけれど、 単に英語をさほど勉強していないから話せない場合、お酒を飲まない主義だから飲まない場合は 「Don't」を使うべき状況。
同様に日本語の「私、ピアノが弾けないから…」というセンテンスを英語にする場合、 指の骨が折れているなど 肉体的に不可能な場合だったら 「I can't play the piano (for now=今は弾けません)、(for a while=しばらく弾けません)」。 でも、単にピアノを習ったことが無いとか、ピアノに興味がなくて弾けないのであれば、「I don't play the piano」が正しいセンテンスになるのだった。

冠詞に話を戻せば、自分の結婚相手を探している女性が 「I am looking for my husband」と言ったりするけれど、正解は「I am looking for a husband」。 既に結婚している女性が はぐれてしまった夫を探している場合であれば、「I am looking for my husband」でOKなのだった。

ところで写真上右側2枚は、アジア人が如何に意味を解さないで 英語のTシャツを着用しているかの例として頻繁に登場する写真。
右側の子供のTシャツに書かれている「ファック・ユー」は放送禁止用語であるのは知られているけれど、 Tシャツにフィーチャーされているミッキー・マウスと思しきキャラクターが中指を立てているジェスチャーも同じく「ファック・ユー」を意味するもの。 つまりこのジェスチャーも英語圏では放映出来ないもので、言葉だけでなく中指のジェスチャーまでもがフィーチャーされている Tシャツを子供に着せるというのは、英語圏の国では考えられないこと。
ちなみに、中指を使って物を指差すのも非常に失礼なジェスチャーで、日本から旅行でやってきた人が メニューを中指で指してウェイターに質問をしたりすると、それを見ているアメリカ在住者は ハラハラしてしまうのだった。

その左側の写真の女性が着用しているTシャツの「I am a whore」の ”Whore” は ”Prostitute (売春婦)”を下品にしたスラングで、 日本語では何に当たるのか 思いつかないけれど、 これを着ていたら、夜道でレイプされても文句が言えないような代物。
でも 少なくとも冠詞は正しく入っているので、文法的には全く問題ないセンテンスではあるのだった。

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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