Sep. 12 〜 Sep. 18 2005




8時間睡眠とダイエット



昨今、私を悩ませていたものと言えば、原因不明の発疹である。
毎日ではないものの、夜になると蚊に刺された跡のような発疹がお腹や背中に出来始め、薬を飲むと、1〜2時間程度で収まるというもので、 最初は突発的な蕁麻疹かと思っていたけれど、8月に入ってからというもの、これが頻繁に出るようになったので、過去の数週間の私は、 その原因の究明と、対策に追われる状態だったのである。
発疹といって先ず疑われるのは、食べ物アレルギーであるけれど、どう考えてもこの可能性はゼロ。
次に、「ダニが原因なのでは?」と言われて、私は自宅のソファーを消毒し、オフィスの椅子もベッドのマットレスも買い換えることになったけれど、 散々ダニ対策を施してから、ダニについてよく調べてみたところ、どうも私の症状はダニとは無関係のものだった。
なので、発疹がダニのせいだと思い込んで、パラノイア状態で、買い換えた椅子やベッドは、一見 無駄な投資のようにも思えたけれど、 実際には 決してそのような事はなく、特にベッドに関しては、「こんなものでも進化するものなんだ」と、それまで使ってきたマットレスとの違いを実感することになってしまった。

というのも、私はニューヨークに来てからというものマットレスは1度しか購入したことがなく、 最初の10ヶ月間を家具付きアパートで暮らした後、引っ越して 初めて購入したマットレスを過去15年間使い続けて来たのである。 通常、マットレスの寿命は10年と言われているけれど、私がそれを承知でマットレスを買い替えなかったのは、私の過去15年間の平均的な睡眠時間が、 4〜5時間であったためで、8時間睡眠で10年の寿命と計算されているのだとしたら、その半分程度しか寝ていない私のマットレスは、 もっともつに違いない、と勝手な憶測をしていたのだった。
でも1度マットレスを購入するとなると、少なくとも向こう10年は同じマットレスの上で眠る可能性がある訳で、このために私はかなり真剣なリサーチをすることになっってしまった。 その結果、現在のアメリカでは、マットレスといえば 分厚いヨーロピアン・スタイルのものが主流で、 マットレス自体は非常に硬めでも、その上に厚さ4〜5cmのクッション部分が 装着されているものがラグジュアリアスとされていること、さらにマットレスの中に何本のコイルがあるかが重要なポイントであること、 マットレスの下に敷くベースも同じ会社の製品で揃えた方が、マットレスのベスト・パフォーマンスが期待出来ることなど、 私にとって、未開のエリアの知識をいろいろ仕入れることになったのだった。
でも、それだけでは未だ心配だったので、マットレス会社のカストマー・サービスのコンサルテーションも受けて、 「もう絶対後悔しない」と思うほどに吟味して、マットレスをオーダーしたところ、その翌日に届いたのが これまで見たことも無いほど 超分厚いベースとマットレスのセットだった。 実際にベッド・フレームの上に重ねてみると、身長157cmの私は、ベッドに寄りかかる事は出来ても、飛び跳ねても 座る事など とても出来ない高さで、 寝るためにはベッドによじ登らなければならないような状態だったため、その場でカストマー・サービスに電話をして、ベースを10cm低いものに取り替えてもらうことになったけれど、 それでも、ベッドは私には高すぎると思えるものだった。
でも配達人は、騙されたと思って1晩寝てみるようにと、マットレスの寝心地に絶対の自信を持っているので、 「どうせ15日以内なら返品が出来るのだから・・・」と自分に言い聞かせて、眠ってみたところ、正直なところ、初日はそれほどマットレスの威力は感じなかったのである。 ところが、何日が経つうちに、「確かにこのマットレスは悪くない」と真剣に思うようになってしまい、ちょっと高さは高くても、 危ないほどではないので、マットレスを返品せずにキープすることにしたのだった。
新しいマットレスになっての最大の違いは、寝返りを打たなくなったことで、確かにマットレス会社のセールス・ピッチの通り、 背骨がサポートされている気分がするのは、本当に驚くべきことで、「こんな事なら、もっと早くマットレスを買い換えていれば良かった」 と思ったほどだったのである。

そうして ふと考えてみると、健康に気をつけているつもりでいる私が、これまで最も関心を払ってこなかったのが、「眠り」というものである。
子供の頃から、「自分は眠らなくても大丈夫」という自信がある一方で、一度 寝るとなれば、飛行機の中でも、何処でも、ぐっすり眠れてしまうので、 「眠る」という行為は、私にとって1日のうちの時間が余った時、身体にエネルギーが無くなった時にするものであり続けてきたのである。
ところが、最近では慢性的な寝不足からの、視力と集中力の低下というの症状が顕著になってきており、 加えて、毎年進むエイジングとストレスがそれに拍車を掛けて、さすがの私も眠りの重要性を認めざるを得ない状況になってしまったのである。 という訳で、手のひらを反したように 先週月曜からスタートしたのが、1日8時間睡眠である。
この8時間睡眠を宣言したところ、CUBEスタッフには笑われてしまったけれど、実際、4〜6時間しか寝ていなかった私が、どうやって8時間という睡眠を確保するか、 何をやっている時間を削るべきなのか等、本当にこれが実行できるかどうか、自分でも疑わしい状態だったのである。 そこで、考えたのが、翌朝 起きる時間の8時間前になったら、何が何でも眠るというやり方。 そのためには、家に居る時は 寝る時間の1時間前にはコンピューターを落とさなければならいし、出掛ける時は、ディナーの時間の予約は7時〜7時半に 入れるようにしなければならなくなってしまったけれど、 それでも自分でビックリしたのは、日ごろより2〜4時間も早く、夜中の12時にベッドに入って、まさか眠れないだろうと思っていると、 意外にあっという間に眠ってしまうということである。
その一方で、人間の習慣はそんなに簡単に変えられないと思うのは、朝の4時頃に理由も無く1度目が覚め、さらにその約2時間後にまた目が覚めることで、 私の身体は どうやら 4時間〜6時間の睡眠に慣らされてしまっているようなのである。
では、8時間も眠るようになって、すっかり寝覚めが良くなったかと言えば、決してそんな事はなくて、 逆に、妙な表現ではあるものの、「身体が眠りというものに目覚めてしまった」という感じで、 寝ても、寝ても眠いというのが、8時間睡眠を実施して1週間が経過した段階の私なのである。
8時間睡眠を実施してからというもの、昼間に眠気を感じることが多くなったし、 朝も眠いし、夜も眠くて、自分がこれまで4〜6時間睡眠でどうやって生きてきたのか、思い出せない状態に陥ってしまった訳だけれど、 ポジティブな変化と言えば、ワークアウトのペースを上げても身体が苦しくなくなったことで、 8時間睡眠に変えた途端に、ウェイト・トレーニングが以前より楽にこなせるようになったし、クロストレーニング・マシーンを使っている時に 心拍数を上げても、呼吸がゼイゼイすることなく 続けていられるのは なかなか気分の良い事だった。
今は身体が、 乾いたスポンジが水分を吸収するがごとく、今まで足りていなかった眠りを取り戻そうとしている時期だから 四六時中 眠たいのかもしれないけれど、身体にポジティブなサインが見られただけに、 この8時間睡眠は、暫く続けてみようと思っているものである。

ところで、私がこの8時間睡眠と同時にスタートしたのが、ダイエットである。 以前このコーナーに書いた通り、かねてからダイエットの必要性を感じてきた私であるけれど、 やっと踏み切ることにしたのが、約1600カロリーを1日5回に分けて食べるダイエットである。
これまでの私は、朝10時に朝食をとって、あとは夕食までほぼ何も食べず、深夜にスナックを食べるという、最も太ると言われる食生活だったのである。
確かに、1日に同じ1600カロリーを摂取する場合、2回の食事で摂取するのと、1日5回に分けて摂取するのとでは、 インシュリンの分泌、引いては脂肪の蓄積という点で大きな差が出てくる訳で、このダイエットでは 1回の食事を200〜450カロリーに抑えて、日に3度、加えて2回のスナックという、合計5回に分けて1600カロリーを摂取するというもの。 もちろん、たんぱく質、脂肪、炭水化物、植物繊維をバランスよく取らなければならず、 加えて、ワークアウトに出掛ける前の朝食は、エネルギーとして燃やしやすい炭水化物を取る等、 簡単なルールはあるけれど、あとは至ってシンプルな カロリー・ダイエットがこのコンセプトである。

ところが始めてみると、このダイエットというのは8時間睡眠よりもずっと難しいもので、ネックになっているのはカロリー計算よりも、 むしろ食べる回数である。
1日24時間のうち8時間眠っている現在の私にとって、16時間に5回食べるということは、大体3時間に1回の割合で食事かスナックを 食べることになるけれど、仕事をしていたり、特に外出している時の3時間というのはあっという間に過ぎてしまう訳で、 よほど、1日の食事のプランを綿密に立てないと、食間がくっつき過ぎたり、離れすぎたりで、 結局は1食飛ばしてしまうことになりがちなのである。
だから、過去1週間トライしているけれど、1日4回食べるのがやっとで、 未だに5回に食べられない状態が続いているのである。
よく、ニューヨーカーは、ダイエットに取り組みはじめると冷蔵庫の中が、ヘルシー・フードで満タンになり、ダイエットが緩むと外食が増えて、 冷蔵庫が空っぽに近い状態になると言われるけれど、私もご多分に漏れずで、 今は冷蔵庫がローファット・ヨーグルトや低脂肪のターキー・ハム、塩分の低い浅漬けのオリーブ等で、満杯状態である。 だから食べる物はあるのに、食べる時間が無かったのが、過去1週間の私であるけれど、このダイエットは、空腹感を覚える前に、次の食事やスナックを 摂取しなければ意味が無いだけに、今週以降は如何にあと1回の食事を増やすかが課題になる訳である。

この8時間睡眠とダイエットを1週間行って感じるのは、今まで仕事に振り回されてきた私が、 今度は時計にも振り回されているということ。
それまでは、「仕事が終わった時が1日の終わり」的な考えで、仕事が終わらなければ、遅くまで起きていたし、 仕事が早く終われば、別の事をして起きていて、睡眠時間は少なくても、自分の時間が持てていて、ある意味ではゆったりしていたのである。 ところが、今や就寝時間の1時間前にアラームが鳴るようになっているので、それまでに1日の仕事やら雑務を終えなければならないし、 それ以前に3〜4時間置きの食事やらスナックやらで、1日が寸断される訳で、 「8時間睡眠」という優雅な響きとは裏腹に、1日が本当にバタバタしているのである。
でも、今、これを始めておかなかったら、いつか何らかの体調不良を起こして、規則正しい食事と、 十分な睡眠を取らなければならない状況に陥るかもしれない訳で、 それに比べたら、自分の意思で健康管理に取り組む事が出来るというのは、たとえ時計に振り回されようと、 決して悪い事でないのである。



Catch of the Week No.2 Sep. : 9月 第2週


Catch of the Week No.1 Sep. : 9月 第1週


Catch of the Week No.4 Aug. : 8月 第4週


Catch of the Week No.3 Aug. : 8月 第3週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。