Sep. 14 〜 Sep. 20 2015

” Mercury Retrograde Affeect You? ”
マーキュリー・レトログレードは、本当に生活に影響を与えるか !?


今週のアメリカのメディアで最も報道時間が割かれていたのは、水曜に行われた第2回目の共和党大統領候補者のディベートのニュース。 そしてこの場で 自らをアピールして 支持率を大きく上げたのが、共和党唯一の女性大統領候補であり、 元ヒューレット・パッカードのCEO、カイリー・フィオリーナ。
2,300万人がチャンネルを合わせた今回のディベートは、放映局であるCNNに同局史上最高視聴率をもたらしたけれど、 3時間にも及ぶ長さのせいで、ドナルド・トランプを始めとする一部の候補者は、後半でガス欠状態。 その長過ぎたディベートの中で 最も話題と注目を集めたやり取りが、先週発売されたローリング・ストーン誌のインタビューで、 カイリー・フィオリーナのルックスについて「あの顔を見てみろ、あの顔に投票する奴が居るのか?」と発言したドナルド・トランプについて、 カイリー・フィオリーナが意見を求められた際。
ここでカイリー・フィオリーナが賢かったのは、自分に言われたルックス批判に反応して ”女性のヒステリー”扱いをされないように、 トランプがこれまで特定、及び一般の女性に対して繰り広げてきた暴言全般を示唆しながら、 「アメリカ中の女性が、トランプ氏の(女性に対する)意見をしっかり聞き留めています」と答えたことで、 この毅然としたリアクションに、会場内はその後13秒間、拍手が続いていたのだった。
当然のことながら、この拍手はドナルド・トランプに対する批判と受け止められるものなので、さすがのトランプも ここで居心地の悪そうな表情を見せながら、 フィオリーナと視線を合わせようとしていたけれど、フィオリーナは真っ直ぐ客席を向いて、壇上の並びに居るトランプの視線を完全に無視。 これに対してトランプは「カイリー・フィオリーナは、美しい女性だ」と2回繰り返したものの、会場はその言葉には極めて冷めた反応を示していたのだった。

また今回のディベートでは、ドナルド・トランプ、ベン・カーソンという 支持率トップを走っていた非政治家の2人が、 それぞれに政治知識や政策の具体性における稚拙さを露呈していたのに対して、 しっかり理論武装をして臨んでいたのがカイリー・フィオリーナ。 共和党メディアであるニューヨーク・ポスト紙は、ディベート翌日の同紙で「大統領候補のスターが誕生した」と、 フィオリーナの健闘ぶりを大絶賛。 彼女の支持率もディベート後に大きくアップしたけれど、逆にドナルド・トランプは、 今も支持率トップを走ってはいるものの その数字を落としており、多くのメディアが 今後トランプの支持率が徐々に下降線を辿るであろうと予測しているのだった。

今回のディベートはあまりに長過ぎた上に、CNNのホストの仕切り方が下手だったこともあり、 ディベート中に視聴者の関心が集中していたのが、ホストの斜め後ろに座っていた ルックスの良い若い男性(写真上右)。ディベート放映中から、ツイッター上では 「#HotDebateGuy (ハッシュタグ・ホット・ディベート・ガイ)」が トレンディングになっていたけれど、この男性は ビリオネア不動産デベロッパー、リック・クルーソーの24歳の息子、グレッグ・クルーソー。 彼は翌日には メディアのインタビューを受けるほどの ”時の人”になっており、 このことはフィルム・メーカーである彼にとって、自ら撮影したドキュメンタリー映画を売り込む 格好のチャンスになっていたのだった。




その一方で今週木曜日、9月17日には、アメリカン航空のフライトがコンピューターの問題で数時間遅れるというトラブルが起こっていたけれど、 ちょうどこの日から始まって10月9日まで続くのが、”Mercury Retrograde / マーキュリー・レトログレード (水星逆行)”。
マーキュリー・レトログレードとは、太陽系の惑星の中で 最も太陽に近く、軌道の円周が地球より遥かに短い水星が、 年に3回ほど、地球を追い越す際の 3週間半程度を指す言葉。 一部には本当に水星の動きが逆行すると思い込んでいる人も居るようだけれど、 これは水星が地球を追い越す過程で、水星が止まったり、逆行しているかのように見えるだけの話。 写真上左は、それを分かり易く説明した図で、日付は今年のものではないけれど、この図で 10月3日、4日頃から、水星が地球に追いついて、25日に完全に抜くまでの状態がレトログレード。
これを”逆行”と呼んだのは、天動説の時代の影響とも言われているけれど、 いずれにしても水星も地球も、常に同じ方向に動いていることには変わりないのだった。

マーキュリー・レトログレードの期間中に起こり易いと言われるのは、 通信やコミュニケーションのトラブル、コンピューターや電話など通信機器のトラブル、渋滞や交通機関の遅れ、精神的な混乱や不安定、 エネルギー不足、判断の誤りや、小さなアクシデント。 このため、今週木曜にアメリカン航空のフライトがコンピューターの問題で遅れた原因が、 マーキュリー・レトログレードにあると考える人々は 決して少なくなかったのだった。




マーキュリー・レトログレードに着眼する人々が増えたのは 今から5年ほど前と言われるけれど、 昨今、占星術関連のサーチ・ワードで最も検索されるのが”マーキュリー・レトログレード”。 また占星学のウェブサイトでも、最もアクセス数が多く、質問が寄せられるのが マーキュリー・レトログレードについて記述されたページであるという。

天文学や天体物理学の専門家の間では、マーキュリー・レトログレードが人々の生活に与える影響は、 13日の金曜日を縁起が悪いと考えるのと同様程度に見なされているけれど、 年々 ソーシャル・メディア上で増えているのが、マーキュリー・レトログレードの期間中に 見舞われたトラブルについての投稿。 ニューヨーク・ポスト紙によれば、賢い人ほどマーキュリー・レトログレードの影響力を信じる傾向にあるという。
実際、占星学の専門家によれば、マーキュリー・レトログレードで水星が地球を追い抜く際には、電車が高速ですれ違う時のような 圧力が生じて、それが地球の大気上に影響を及ぼすとのこと。 そうだとすれば帆船で旅をした時代や、通信に伝書鳩を使った時代には マーキュリー・レトログレードが旅や通信に影響を及ぼしたことは 説明がつくけれど、加えて人間は空気の流れを敏感に読み取る生き物なので、 それによって不安を覚えたり、集中力を奪われるというセオリーが 展開されているのだった。

でもマーキュリー・レトログレードを意識し始めることで、逆に「不運を呼び込んでしまう」、「日常の小さなトラブルが起こる度に、 マーキュリー・レトログレードのせいだと思い込んで、恐怖心を高めてしまう」というのもまた事実で、 これは典型的な「病も気から」のセオリー。 例えば、後進国の女性はPMS(月経前症候群)が何であるかを知らない時は、その症状を自覚していたのは5人中1人以下。 ところがPMSが何たるかを説明された途端に、79%がその症状を覚えるようになったというデータがあるけれど、 これが示す通り、暗示や先入観は人間の体調や精神状態に大きな影響を与えるのだった。

したがって、「縁起が悪い」、「不運に見舞われる」と信じるものが増えると、 それだけ生活に不運をもたらす要素が増えることになるけれど、 例えば 9・11のテロ以降、アメリカ人にとって不運の番号になったのが「911」。 2009年には、クレジット・カード会社が 2011年9月が有効期限のカードを発行したところ、 「縁起が悪い」、「オンライン・ショッピングをする度に、09/11の数字を入力したくない」という人々から、 別の有効期限のカードの再発行を求めるリクエストが殺到していたのだった。

このように何かが原因で不運を予感した場合には、その心の不安を早めに取り除くこともまた大切。 例えば私は、昨年日本に一時帰国をした際、滞在したホテルの部屋番号が ”911”で、 その数字を見た途端に脳裏に走ったのが嫌な予感。 でも ニューヨーク在住者が どれほどまでに”911”という数字を嫌っているかを 説明して 部屋を替えてもらうのは何となく気が引けた上に、たった一泊の予定だったので、 我慢して滞在したところ、長年大切にして、ずっと身につけていた指輪が忽然と消えてしまい、 部屋中ひっくり返して探したものの、神隠しにあったように出てこなかったという思いをしたのだった。




2015年には、今回の前に2回マーキュリー・レトログレードがあって、最初が1月21日〜2月11日、 2度目が5月17日〜6月11日。 このうち2度目のマーキュリー・レトログレードの時には、私はマイアミに出掛けていて、 ニューヨークに戻る日の飛行機が大幅に遅れたのを はっきり覚えているのだった。 この時は、一度搭乗した後に 飛行機から降ろされてしまい、遅れの原因が”天候”と説明されたけれど、 乗客はタブレットやスマートフォンでNYの天気をチェックして、 口々に「ニューヨークは晴天で、風も無いのにおかしい!」と文句を言っていたのだった。
でもその遅れの原因はマーキュリー・レトログレードではなく、当時ニューヨークを正式訪問していた英国王室のプリンス・ウィリアム。 彼が民間機でワシントンに向かったために、その離陸時間前後にNYのラガーディア空港に到着予定だった 全ての国内便が、 セキュリティ目的で全て遅れる羽目になったのだった。

同様のことは今回のマーキュリー・レトログレードでも見込まれていて、来週からニューヨークで 国連総会が始まると同時に、それに合わせてローマ法王フランシスコがニューヨーク入りするため。 毎年、国連総会期間中のマンハッタンは、悪夢のような渋滞と交通閉鎖が見られるけれど、 今年はさらにそれに拍車が掛かることになっているのだった。

その一方で マーキュリー・レトログレードの期間中は、契約事や書類へのサインを避けるべきと言われるけれど、 歴史を遡ると、アメリカ合衆国の独立宣言や、第二次世界大戦の日本の無条件降伏状、Voting Rights Act (米国の投票権法)などは、 全てマーキュリー・レトログレードの期間内にサインされているという。

2015年のマーキュリー・レトログレードは今回が最後であるけれど、 2016年のマーキュリー・レトログレードは、1月5日〜25日、4月28日〜5月22日、8月30日〜9月22日、12月19日〜2017年1月8日までの 合計4回。これを意識するか否かは、個人の選択であるけれど、 渋滞に巻き込まれて「マーキュリー・レトログレードだから仕方ない」と割り切ったり、 期間中に いつもより時間にゆとりを持って外出するなど、何らかのプラスの対処が出来る人にとっては、意識した方が良いもの。
でもマーキュリー・レトログレードの期間中、何となく不安を抱いてしまう人にとっては、 1年のうちの70日以上をそんな風に過ごすよりも、知らない間に過ぎてくれた方が良いもの。
とは言っても、これだけソーシャル・メディア上で騒がれ始めると、 マーキュリー・レトログレードを知らずに過ごすのは どんどん難しくなっていることも事実なのだった。

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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