Sep. 12 〜 Sep. 18 2016

” What Does Being Healthy Mean? ”
”超肥満”のドナルド・トランプによって書き換えられた”ヘルシー”の意味 !?


先週日曜の9・11テロ15周年のセレモニーの最中に中座し、倒れそうになりながら車に乗り込んだヒラリー・クリントンの映像が ショッキングに報道されたこともあり、今週のアメリカではヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプの大統領選両候補の健康状態に これまでにないフォーカスが注がれた週。
ドナルド・トランプはかねてから、ヒラリー・クリントンの健康問題を指摘し続けてきた一方で、彼自身の健康状態については その主治医が 「歴代の大統領候補の中で最も健康な、稀に見る健康体」と宣言したレターをかざして、 70歳にして史上最年長の大統領候補である自分が いかにヘルシーであるかを強調し続けてきたことは、米国大統領選をフォローしてきた人々にとっては周知の事実。
ところがこのレターが、実は彼の主治医が健康診断をすることもなく、リムジンで乗り付けたトランプ選挙関係者のために、 彼らを満足させる内容で、僅か数分で書かれた 信ぴょう性に乏しいものであることが判明したのが2週間ほど前のこと。
また、これまでのドナルド・トランプは、自分が言い続けてきたことがその通りになると「それ見た事か!」的な発言をして顰蹙を買っていたけれど、 先週末のヒラリー・クリントンの病状については、何一つ攻撃することが無かったことから、 逆にメディアに怪しまれていたのがトランプ自身の健康状態なのだった。

これを受けて今週にはヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプが共にそのメディカル・レコードをメディアに公開したけれど、 過去の病歴や現在の常用薬など、詳細まで明らかにしたヒラリー・クリントンのメディカル・レコードに対して、 ドナルド・トランプは、「最新の健康診断の全内容を公開する」という当初の宣言を覆して、 「健康問題はプライバシー」と言い訳しながら、デイタイムの健康関連のトークショー、「ドクター・オズ」に出演。 身長、体重、血圧、心拍数、コレステロール値、常用薬の一部など 大統領候補のメディカル・レコードとしては「具体性が無い」と医療関係者が指摘する、異例の手抜き内容を堂々と発表していたのだった。




それによれば、ドナルド・トランプは身長188p、体重107キロ。でも発表当初はニューヨーク・タイムス紙を含む 幾つものメディアが121キロ(267パウンド)と報じており、彼の体型を見る限りでは後に訂正された数値よりも、 最初に報じられた数値の方が正しいのでは?という憶測が飛び交っていたのが実情。 でも軽い方の数値を信頼したとしても トランプのBMI(ボディ・マス・インデックス)は30を超えて、 政府のスタンダードでは”オーバーウェイト(肥満)”を通り越して”オビース(超肥満)”。
70歳で超肥満であるということは糖尿病、心臓病、そして脂肪肝のリスクが極めて高い状態を示す訳で、 今年春の血糖値検査でも、トランプは糖尿病の一歩手前であることが医師に指摘されていた状況。 そんな超肥満で 糖尿病に片足を突っ込んだ状態にもかかわらず、主治医のボーステイン医師は トランプの健康状態を”Excellent / エクセレント” と表現。これは昨年12月に同医師がチェックアップもせずに書いた手紙の中の ”Extraordinary” とか “Astonishingly Excellent” という表現に比べれば控えめであるものの、普通の人とは明らかに異なるスタンダードで診断がされている様子が伺えるのだった。
そのトランプの血圧は上が116、下が70。コレステロール値はトータルが169で、善玉コレステロールであるHDLが63、悪玉と言われるLDLが94であることが 発表されたけれど、健康的と言えるこれらの数値は薬で調整しているものなので、医療が発達してから高齢期を迎えたベビー・ブーマーとしては 特に珍しくない数字。

「ドクター・オズ」に出演したトランプは、減量の必要性を認めながらも、時折ゴルフをする程度でエクササイズはしないと語り、 演説のジェスチャーで身体を動かしていることや、スピーチ会場が蒸し暑いので汗をかくとして、その運動量を強調。 食生活は日頃からファストフードを好んでおり、理由は「(食材に)何が使われているか分かっているから」と コメントしたけれど、実際にはファストフードほど 通常の食材の替わりにケミカルを多量に使用した 加工品が用いられている食べ物は無いことは周知の事実。 さらにトランプはかなり以前から毎日4時間睡眠で、その短い睡眠が時折ツイッターで遮られると語ってきており、ライフスタイルとしても 極めて不健康。
これが他の誰かであれば、”超肥満”、”不健康” で片付けられるところが、 ドナルド・トランプであると 何故か主治医の ”エクセレント・ヘルス” と評したコメントだけにフォーカスされて、 それをメディアとトランプ支持者が鵜呑みにする状況で、 トランプが ”超肥満”、”ヘルシー”のコンセプトまで 彼のスタンダードで書き換えてしまったのが今週のアメリカなのだった。





私は、ヒラリー・クリントンについては昨年の大統領選出馬宣言あたりから その健康管理がきちんとされていない様子がかなり気になっていて、 それというのも国務長官時代に比べて遥かに腹部に脂肪がついて、見るからに身体のキレが悪く、不健康なオーラが出ていたためで、 そのことは随分 知人&友人には指摘してきたこと。 一方のトランプについてはあまりに毒気が強すぎて、健康やモラルなどを 世の中のスタンダードに照らし合わせて語るべき存在ではないと思って見ているのだった。
でもビリオネアの割に肌が汚い理由は、日焼けスプレーの成分にケミカルが入り過ぎているためかと思ってきたけれど、 今週の報道で ファストフードを常食にしているためではないかと思い始めたところで、 たとえコレステロール値や血圧は薬で調整できても、身体に溜まった毒素は彼の首回りについた脂肪と、 くすんだ肌のトーンに如実に現れていると思うのだった。

日本の友人の中には、「ドナルド・トランプの70歳は若い」という人が居たけれど、アメリカ社会では彼が年齢の割に若いという認識はなくて、 それというのはアメリカで70歳と言えば、俳優ではシルヴェスター・スタローン、トミー・リー・ジョーンズ、 スーザン・サランドン、シャーロット・ランプリング、ダイアン・キートン、シンガーのシェール、ドリー・パートン。 映画監督のスティーブン・スピルバーグ、デヴィッド・リンチ、オリバー・ストーンなど、まだまだ第一線で活躍している顔ぶれが多く、 彼らに比べると、トランプは取り立てて若いとは言えない存在。
例えば 今週には、最新映画「スノーデン」のプロモーションでオリバー・ストーン監督がメディアに登場していたけれど、 彼はベビー・ブーマー時代の平均的なエイジングのケース。その彼の方が トランプに比べて 身体の印象が若く、しかもオリバー・ストーンはボトックスやフィラー、ヘアダイや植毛をしてないことを考慮すると、 トランプの老化はセレブリティとしては早い方とも言えるのだった。

トランプの家系は、心臓病、糖尿病、がんで亡くなっている親族が多く、母親は80代、父親は93歳で亡くなっているので、 短命な家系ではないと言えるものの、父親が亡くなる前の6年間 患っていたのがアルツハイマー病。 そのトランプの父親、フレッド・トランプは写真上、下段右、ドナルド・トランプが1993年に2人目の夫人、 マーラ・メイプルと結婚した際(当時86歳)のスナップを見る限りでは、その体型が 不自然な頭髪同様、 現在のトランプに極めて近いと言えるのだった。




ところで、私は過去にこのコラムに何度か書いた通り、125歳以上まで五体五感満足に生きることを目標にしているので、 エイジングと健康についてのリサーチがライフワークになって久しいけれど、 その結果言えるのは、長生きと健康、若さの維持は全く別物であるということ。 健康で若々しく見える人は、平均以上には長生きする傾向にはあるものの、100歳を超えるほどの長寿の人々になると、 必ずしも50歳、60歳の時に若々しかった人々ではなく、取り立てて健康だったり、特別な健康管理をしてきた人々でもなく、 単に生きることに執着している人が圧倒的に多いのだった。
若々しく見えるという人は、美容整形で外観だけをごまかしていられるのは60歳くらいまで。 それ以降は摂生したライフスタイルなくしては、身体の中から老いがにじみ出てくるけれど、年齢より若く見えたとしても それが必ずしも健康を意味する訳でも、長生きを保証するものでもないのだった。
同様に医師の診断で身体が健康と言われたところで、それが必ずしも外観の若さに現れる訳ではなく、それが人並み外れた長寿に繋がる訳でもないのだった。

私は、これまでにいろいろなダイエットやワークアウトをトライしてきたけれど、個人的にあまり信頼しないのは どんな体質やDNAの人にも同じアドバイスしか出来ない人のセオリーと、 自分より10歳以上若い人のアドバイス。 逆に参考になるのは、一度老け込んでから若返った人がどんなことをしたのかということや、年齢の割に老化が早い人が どんな食事やライフスタイル、精神状態をしているか。
また私は「若い」という言葉は、同じ年齢の人に言われた時以外は、褒め言葉と思わないポリシーの持ち主。 というのも自分より年上の人に「若い」と言われるのは当たり前であるし、 自分より若い人に言われた場合は 一体誰と比較して言われたかが分からないため。 私も20代の時には 40歳のことをすごく年寄りだと思っていたので、 当時43歳だった女性のことを「She doesn't look her age!」と褒めていたけれど、 それは私が思い描いていた老けた40歳のイメージより若いという意味で、 決して若々しいと思って褒めていた訳ではなかったことを思い出すと、自分の世代のエイジングを理解しない年齢の人に 闇雲に「若い」と言われたところで、喜べないと思うのだった。

さらに言えば 30代のヘルス&ビューティー・スペシャリストの中には、食生活やエクササイズを含む身体のメンテナンスをしっかりしていれば、 若さや健康が保てると信じている人は少なくないように思うけれど、 私に言わせれば、それはまだ人生経験に乏しい証拠。 人間を内側・外側から本当に老けさせるのは、 離婚や 愛する人との生別、死別、経済的な困窮や、突然の生活環境の変化、 家族や近しい友人の身体や精神の病、事故とその後始末、職場での継続的なストレスとプレッシャーなど、健康的な食生活やヨガなどでは とても救えないような人生の中の避けられない事態。 したがってそれを乗り越えたことが無い人のアドバイスというのは、広義的にはあまりあてにならないケースが多いように思うのだった。

最後に私がこのコラムを書いている9月18日、日曜日は、TV界のオスカーと言われるエミー賞の受賞式が行われていたけれど、 メディア&エンターテイメント関係者が指摘していたのが、今年のアカデミー賞の演技部門ノミネーションが すべて白人俳優で占められていたのに対して、 エミー賞は俳優部門の73人のノミネーション中 18人がマイノリティの俳優になっていること。 これは決してエミー賞が人種差別バッシングを避けるために行ったノミネーションではなく、 昨今では人気の高いプログラムのメイン・キャラクターがマイノリティ人種になってきていることがその背景。 そんなマイノリティ人種をメインにフィーチャーした番組はメジャー・ネットワークよりも、ケーブル局やストリーミングに多く、 その象徴的な存在がネット・フリックス。 僅か4年前からオリジナル・シリーズの製作をスタートしたばかりのネットフリックスは、今回のエミー賞で 3大ネットワーク全てを上回る54のノミネーションを獲得。 そのネット・フリックスを猛追しているのがアマゾンで、この秋には4つのシリーズがスタートすることになっており、 人々がTV番組を見るメディアが 従来のネットワークからストリーミングに移行していること、 そしてそのスピードの速さはメジャー・ネットワークのエグゼクティブに危機感を与えていると言われるほど。

これを受けてメジャー・ネットワークではプライムタイムの視聴率の低下が深刻な問題となっており、ニュース番組にまで視聴率の獲得を迫られるようになって久しい状況。 そのため毎日のように物議を醸し、ニュース性の高いドナルド・トランプのキャンペーンに 各局が長々とその報道時間を割く傾向が顕著になっていることは、 TV業界関係者でなくとも認識している状況。
したがって、ドナルド・トランプが大統領候補として まさかの支持を獲得する背景には、政治以外にも様々な社会要因が絡んでいると言えるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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