Jan. 5 〜 Jan. 11 2004




Work Out Slowly


毎年1月になると感じるのは、「ジムが混んでいるなぁ」ということ。 先週のこのコーナーで、「アメリカ人は元旦を年の始めの特別な日とは考えない人が多い」と書いたけれど、 年明けを境にニュー・イヤー・レゾルーション、すなわち新年の目標(直訳すれば決心)を決めて、 それを実行しようと試みる人は多かったりする。
今年もアメリカ人のニュー・イヤー・レゾルーションは、 「タバコをやめる」、「健康的な食生活をする」、「エクササイズをする」という健康&フィットネス関連のもの が圧倒的に多く、これを反映してか、毎年1月になるとジムが非常に混み合うのである。 大体1年のうちでジムが混み合う時期というのは1月、5月末のメモリアル・デイの休暇が終わって、 ビーチに出かけるシーズンが近付いて来る6月、 そして秋を迎える9月〜10月に掛けてで、この時期は着る物が薄い夏物から厚手の服に変わるので、 「鏡に映った自分の姿が着膨れして見えるからジムに通う」とも言われていたりする。
すなわち6月と9〜10月は、自分の外観を良く見せたいと思う人がジムに通う季節と言えるけれど、 1月については多くの人々がニュー・イヤー・レゾルーションに加えて、 必要に迫られてジムに足を運ぶ季節である。 往々にしてアメリカ人は、年末のホリデイ・シーズンに 「来年からエクササイズとダイエットを始めるから、年内のうちに食べたいだけ食べておこう」 などと考えて、食べ過ぎ、飲み過ぎの不摂生をしているから、 11月のサンクスギビングから年末までの間に、1〜3キロ体重が増えるものと言われている。
3キロ体重が増えるということは、大体、服のサイズが1サイズアップすることであるから、 サンクスギビングから食べ続けていたアメリカ人は、年末を迎える頃になると、 服のきつさからもダイエットの必要性を感じるようになるのである。

でもホリデイ・ファットを落とすために来ている人が多いはずの1月でも、 不思議なことにジムという場所は、非常に太った人をまずは見かけない場所である。
よく私の友人でも、「ジムに通う前に、先ずダイエットしないと…」等と言う人が居るけれど、 自分が太っていると思う人にとってのジムという場所は「ある程度痩せてから行く場所」であったりするようである。 こうした人々にとって、壁中が鏡という環境の中で、スタイルの良い人に囲まれて、エクササイズ・ウェアを着て、 ワークアウトをするということは、考えただけで恥ずかしいとか、居心地が悪いものだそうで、 それをモチベーション(やる気)にして頑張ろうという気持ちにはならないようである。
かく言う私も、時々モデルのようなプロポーションの女性が、 身体にピッタリ フィットしたタイツを身につけてワークアウトをしているのを見ると、 「どんなに頑張っても、絶対あんな身体にはなれない!」と圧倒されてしまうけれど、 でもロッカー・ルームでそうした女性が エクササイズ・ウェアを脱いだ姿を見ると、意外に貧弱な身体をしていて、骨が目立って魅力的でなかったりするのも事実で、 「痩せていれば良いという訳ではない」ことを感じさせてくれる場もジムであったりする。

以前もこのコラムで書いた通り、私が定期的にジムでワークアウトを始めたのは今から10年以上前のことで、 やはり最初はトレーナーについて、ボディ・パーツごとにエクササイズのプログラムを 組んでもらって、それを忠実に実行しながら、ウエイトを重くしていったり、 カーディオ・バスキュラー(エアロビック・エクササイズ)の時間を長くしていくようにしていった。
この当時は 丁度フリーランスになりたてで、時間にも余裕があったし、 自分にどの程度の体力があるのかを見極めたり、ダイエットとエクササイズで自分の身体が変わっていくのが面白くて、 最低週5回のワークアウトで、1日3時間ジムに居ることも珍しくない状態だった。 3時間ジムに居る時は、ステアーマスター(階段を上るモーションのマシーン)を1時間半、 残りの1時間半でウエイト・トレーニングとストレッチをしていて、 腹筋だけでも1日に500回はしていたから、今から思えば完璧にオーバー・エクササイズであった。
これだけハードにワークアウトした時期は3年程度で、その後は エクササイズというものに飽きてしまい、 水泳をしたり、ヨガやピラーテを始めたりと、いろいろなものにトライすることになった。 でも結局は、カーディオ・バスキュラー&ウエイト・トレーニングというプログラムに戻る結果になり、 ことにエクササイズに長い時間を割けない現在では、このプログラムが1番効率良く、 達成感のあるワークアウトが出来るとも思っていたりする。
実際、私は以前、プロのエクササイズ・コンサルタントに 自分に1番適したワークアウトを見つけるためのセッションというのをしてもらったことがあるけれど、 その時に受けたパーソナリティ・テストでも、英語で言う「No Pain, No Gain(ノーペイン・ノー・ゲイン)」タイプ、 すなわち「痛みや苦しみが伴わずして、成果が得られないと考えるタイプ」と分析され、 カーディオ・バスキュラー&ウエイト・トレーニングが最も私に適したエクササイズであるという結果が出ていたのである。
考えてみると、私はある程度汗をかいたり、苦しいという思いをしないと、 エクササイズをした気になれないし、日頃使わない筋肉を使って、翌日筋肉痛になったりすると、 何となく嬉しかったりもするので、この「No Pain, No Gain」という分析は非常に当たっているのである。

でも昨今の私にとって、エクササイズのネックになっているのは、何と言っても時間が無いことで、 これは大半のアメリカ人にとっても「エクササイズをしなければ」と思いつつも、実行せずにいる理由のNo.1である。
そこで、そんな時間に追われる忙しい人々にピッタリのワークアウトとして、 2年ほど前から信仰者を増やしているのが「スロー・ワークアウト」と呼ばれるものである。
この「スロー・ワークアウト」は、「8ミニッツ・ア・デイ」、「20ミニッツ・ア・ウィーク」等、 いろいろなタイトルの本で解説されているけれど、基本的には 通常のウエイト・トレーニングよりも重たいウエイトを使って、非常にゆっくりしたモーションで エクササイズを行うことによって 効率良く筋肉をデベロップし、脂肪を燃やし易い体質を作るという ワークアウトで、これにはカーディオ・バスキュラーの効果もあると謳われていたりする。
スロー・ワークアウトは90年代半ばにも、1度トレンドになりかけたことがあったけれど、 現在の方がエクササイズ・トレンドとして、より一般的にアピールするようになっているのは、 「短時間で効果が上がる」ことを明確に打ち出したプログラムとしてマーケティングがされているためである。
私自身も90年代半ばに、1度このスロー・ワークアウトを試したことがあるけれど、 あまりにモーションがスロー過ぎて、とてもやっていられないと思って止めてしまったのを覚えており、 その効果についても疑わしい印象しか持っていない状態だった。
ところが年末のパーティーで出会ったアメリカ人から、「本当に1日15分足らずのワークアウトで、 普通のワークアウトの1時間〜1時間半分の効果が得られる」と説得されて、 私は早速、彼がスロー・ワークアウトを習ったというトレーナーのセッションを受けることになった。
このセッションというのが、ただスロー・ワークアウトのやり方を教えてくれるだけなのかと思ったら大間違いで、 「まずは基本的な体力をチェックするから」と言って、非常に小さいモーションの腹筋、背筋、腕立て伏せを それぞれ1分間に何回出来るか?というテストをされ、ホリデイ・シーズン中にエクササイズをサボっていた上に、 食べ過ぎと飲みすぎを実践していた私は、それだけで息がゼイゼイしてしまった。
その後、ダンベルやマシーンを使ってのスロー・ワークアウトの実践に入ったけれど、 私が想像していたよりもさらにスローなモーションで、通常のワークアウトならばワン・モーションが 1呼吸で、筋肉に力が入る段階で息を吐くものだけれど、あまりにスローなのでワン・モーションで1呼吸では 到底間に合わず、何処で息を吸って、吐いたら良いのかが分からないまま、息苦しくさえなってしまった。 トレーナーによれば呼吸はモーションに関係なく吸ったり吐いたりして良いのだそうだけれど、 動きと呼吸が一体化したワークアウトを10年以上続けてきた私としては、 いきなりそう言われてもなかなか思うようにはいかなかった。
また、通常 私がしているウエイト・トレーニングだと、1つの動きを12回で1セットとして、 3セット行うけれど、大体1セットの所要時間は30秒程度である。 これに対してスローワークアウトでは1セット10〜12回の動きを2セット行うのみであるけれど、 1セットの所要時間として90秒は掛かるので、1セットをこなしただけで通常のワークアウトの3セット分の時間が掛かることになり、 その間、あっという間に汗もかけば、心臓の鼓動も早くなって、「ウエイト・トレーニングでありながら、カーディオ・バスキュラー の効果も兼ねている」という説は、紛れもない事実だと思ってしまった。
しかも使っているウエイトは、通常よりも重たいもので、 それを非常にゆっくりしたモーションで動かすのはかなり辛いものだった。だから1セット目は 8回目くらいからウエイトが上がらなくなってくるし、2セット目は5回目くらいから 筋肉が痛くなって、腕や脚が「ウエイトを持ち上げなければ」という自分の意志に反して、 本当に動かなくなってしまうのにはビックリしてしまった。
トレーナーの話によれば、女性は30歳を過ぎると毎年1%ずつ筋肉を失っているのだそうで、 言われてみれば、私も6年ほど前には25〜30パウンドのダンベルを使ってショルダー・プレスをしていたのに、 今では12〜15パウンドと半分程度の重さになってしまった。 でもこのスロー・ワークアウトを1日10〜15分程度行い、蛋白質中心のダイエットをしていれば、 年齢と共に失われていく筋肉が再びデベロップされ、 体内の脂肪が燃やせるだけでなく、脂肪を燃やし易い、新陳代謝の活発な身体になれるのだそうで、 引き締まった、若々しいボディ・ラインが保てるというのがトレーナーの説明であった。
週に30分程度のスロー・ワークアウトが、週に4〜5時間の通常のワークアウト以上の 効果に匹敵することは、既に3大ネットワークの1つ、NBCの報道番組「デイト・ライン」が行った実験でも立証されているとのことだったけれど、 正直言って、これを体験する前は私も「そんな旨い話があるはずが無い」という半信半疑であった。 ところが実際にやってみたスロー・ワークアウトは「旨い話」どころか、 今までで1番キツイとも言えるエクササイズで、私は筋肉に力を入れ過ぎたせいで セッションの最中に軽い頭痛がしてきて、セッション後は手の筋肉がブルブルと震えていたし、 その翌日には筋肉痛を味わうことになってしまった。 だから「あんな短時間の運動で、こんなにインパクトがあるとは…」と、驚いてしまったし、 パーティーで私にこのエクササイズを勧めてくれた男性が、 「15 Munites Of Hell(15分間の地獄)」と表現していたのにも、妙に納得してしまった。
私はビジネスでもダイエットでも「旨い話」というのは 信じない主義であるけれど、 「辛さを凝縮すれば、短時間でも効果が上がる」というのは信じるに価する理論に思えるだけに、 ここ数ヶ月は続けてみようと思っているのが、スロー・ワークアウトである。

さて、エクササイズにトレンドがあるように、ダイエットにもトレンドが存在するのは 言うまでも無いけれど、アメリカでは引き続きアトキンズ・ダイエットやサウスビーチ・ダイエットのような プロテイン中心のダイエットがメイン・ストリームである。
そうしたプロテイン・ダイエットを実践する人々にとって、大きなダメージと思えたのが、 年末に報道されたアメリカ初の狂牛病発生のニュースであった。 というのも、プロテイン・ダイエットを行っている人の殆どが、その主食として 牛肉を食べているためであったけれど、アメリカ国内においては 当初懸念されたような狂牛病のインパクトは見られないのが実際のところである。 パーム、モートンズといったステーキ・チェーンやハンバーガーを扱うファスト・フード・チェーンの 売り上げは狂牛病発生前と殆ど変わらないそうで、マクドナルドについては 狂牛病発生前よりもその株価が高くなっていることが伝えられている。
また、ピーター・ルーガーや、オールド・ホームステッドといった ニューヨークの老舗のステーキ・レストランでも、予約がキャンセルされることはなく、 年末のパーティーのケータリング・メニューにも 牛肉はそのままフィーチャーされていたことが伝えられている。
ちなみに私にスロー・ワークアウトを薦めてくれた男性に会ったのも、 高級牛肉店のステーキがメインのディナー・パーティーで、 ホスト自らが開き直って「マッド・カウ(狂牛)パーティー」などと呼んでいる状態だった。 狂牛病は火を通しても菌が死ぬことは無いそうなので、私を含めるゲストは皆、 ためらう事無く レアのステーキを食べていたけれど、その場に居た12人中8人は アトキンズ、もしくはサウスビーチ・ダイエットのプロテイン・ダイエットを実行している人たちだった。
だからアメリカ国内で狂牛病のインパクトがそれほど感じられないのは、 低所得者層が狂牛病に全く関心を払っていないことに加えて、 ミドルクラス以上は、プロテイン・ダイエットをしている人たちが 狂牛病の存在を知りつつも 牛肉を食べ続けているからなのでは?とさえ思えてしまった。






Catch of the Week No.1 Jan. : 1月 第1週


Catch of the Week No.4 Dec. : 12月 第4週


Catch of the Week No.3 Dec. : 12月 第3週


Catch of the Week No.2 Dec. : 12月 第2週