Jan. 12 〜 Jan. 18 2004




Cold Weather, Cold Shoulder


今週のニューヨーク・エリアが50年来と言われる歴史的な寒波に襲われていたことは 日本でも報道されていた通り。
外に20分以上立っていると、軽度の凍傷になるほどの寒さだったけれど、 中でも最も寒かった木曜に私が向ったのが、CUBE New Yorkで新たに扱おうと思っていた商品の買い付けであった。
この商品とはC&CカリフォルニアというTシャツのラインで、 ジェニファー・アニストンやソフィア・コッポラ、サラー・ジェシカ・パーカー等、セレブリティに愛用者が多く、 ヘンリ・ベンデルやバーグドルフ・グッドマン等では、既に大人気を博しているもの。 後染めのTシャツは色が抜群にきれいな上に、デザインのディテールにユニークさが感じられて、 肌触りや着心地も抜群だし、レイヤーで着こなすアイデアもすごく気に入っていたので、 私は秋口から同ブランドのニューヨーク・ショールームにコンタクトを試みていた。
でも一向にコールバックが来ない上に、こちらも忙しくバタバタしているうちに12月になってしまい、 「これではいけないと」と、今度はC&Cのカリフォルニアの本社に対して、CUBE New Yorkのビジネスやニューヨーク・ショールームにコンタクトが取れないことを 説明するEメールを出すことにした。 すると、C&Cのパートナーの1人であるクレアから、その翌日に 「是非商品を卸したいから、とにかく1度電話して欲しい」という返事をもらい、 結局私達は30分程 電話を通じて極めてフレンドリーな会話をしただけでなく、 クレアからは その後 直ぐにFedExで数枚のサンプルや、直ぐに仕入れ可能な商品のリストが送られて来ることになった。
でもスプリング・ラインを仕入れるには、やはりニューヨークのショールームでサンプルを 見なければならない訳で、私は気乗りがしないまま再びニューヨークのショールームにコンタクトをすることになった。 でも今度はクレアの名前を出したので、ショールームのオーナーと話すことが出来、 担当者とのアポイントメントも簡単に取ることが出来た。
そうして向ったのが木曜の買い付けであったが、私は「何度電話をしてもコールバックをして来ない」 という態度が気になっており、何となく嫌な予感を抱きながら訪れたショールームではあったけれど、 その予感はまさに的中であった。

アパレルやアクセサリーのショールームには、2種類があって、1つはメーカーやブランドが 直営のもの。例えばCUBE New Yorkで扱っているランジェリーのコサベラは、 コサベラが経営するショールームに商品を買いつけに行くことになる。
もう1つは、ショールームが持てないデザイナーや、ニューヨークにオフィスが無いブランドのための レップ(レプリゼンタティブ)として経営されているショールームで、 こうしたショールームは、通常、数ブランドの商品を扱って、 バイヤーに対するセールスを代行することになる。 有名なショールームほど、バーグドルフ・グッドマンやニーマン・マーカスのような ステイタスのある大口のバイヤーとのコネクションが強く、 その取り扱いブランドも慎重に選びぶので、依頼すればどんなブランドでも扱ってもらえるという訳ではない。 こうしたショールームは、売り上げから高率のコミッションを請求するので、デザイナーやブランドは ある程度ビジネスが成長すると、ショールームを離れ、自らショールームをオープンすることになる。
ショールーム側は、ドル箱ブランドを失っても、他の新しいブランドを探しては 有名店に売り込み、売り上げコミッションをはね続けることになる訳で、 言わば、芸能プロダクションとタレントと同じ関係である。
私の経験上、買い付けがし易いのは断然自社経営のショールームで、レップの場合、連絡事項1つにしても レップを通じて2工程で伝わるので、レスポンスが遅れることは珍しくないし、 最悪の場合、レップを通じてオーダーが間違って通ってしまうことさえある。 またレップ・ショールームだと、そこが扱う別ブランドの 商品も売り込んで来るので、「商品を見に来て欲しい」としつこくせがまれて面倒な事も多かったりするのである。

さて、前置きが長くなったけれど、C&Cのショールームというのは、同ブランドが 未だ誕生して間もないこともあり、当然 自社経営ではない レップ・ショールームであった。 だから、こちらのコンタクトに対してコールバックしてこない理由も、何となく想像がついていた。
現在C&Cは生産が追いつかないほど人気のブランドで、 先述のヘンリ・ベンデルやバーグドルフ・グッドマンに加えて、ニーマン・マーカス、バーニーズ等、 アメリカ小売業界のトップが在庫を奪い合っている状態で、 これ以上売り先を増やしても、得意先に売る商品の 生産スケジュールがタイトになるだけであるし、取扱店が少ないほど エクスクルーシブなイメージも高まる訳で、ショールームのセールスの 鼻息が最も荒くなるのが このようにブランドが「旬」を迎えている時期である。
でも例えそうであっても、ブランドのオーナーが「うちとビジネスをしたい」と言っているのだから、 それなりの対応があろうかと思われるけれど、 現れた若い女性セールスの態度は、非常に不親切かつ、失礼なもので、 私はすっかり気分が悪くなってしまった。
彼女によれば、日本から既に某有名店、2軒が買い付けに来たそうで、 「日本のバイヤーは中途半端にしか買っていかないのよ。あんなので売れるのかしらね。」等と ボヤいていたけれど、もし彼女が日本からのバイヤーにも私と同じような態度を取っていたのなら、 買っていかないのも当然と思えるものだった。
何がそんなに失礼だったのかと言えば、細かいことを言い出したらキリが無いけれど、 例えば、10分も待たせて現れたかと思ったら、挨拶もそっちのけで「このアポイントは何時入れたの?」などと聞いてくるし、 2色のグリーンで迷っていた私に対して、「どちらも貴女には似合わないから、 いっそグリーンはやめちゃったら」などと言ったり、 見せた商品をさっさと片付けたりと、まるで「売りたくない」とでも言わんばかりの態度だった。
私は商品は好きであったけれど、セールスの女性の態度が気に入らないまま、 結局この日に、アーリー・スプリング・ラインから、日本円にして40万円程度のオーダーを発注することになった。 そして、今後もスプリング・ライン、サマー・ラインで、それぞれ数十万円分のオーダーを 発注することになる訳だけれど、こう考えているうちに「どうして自分がこんなに不愉快な思いをしながら、 大金を支払わなければならないのか」が段々分からなくなってきてしまった。
もちろんこのオーダーの額は大手の小売業よりも遥かに低いものであろうけれど、 小売業でも、卸売りでもセールスというビジネスをしている限りは、 小口でも大口でもカストマーはカストマーな訳で、お金を払って物を買ってくれる人には 分け隔てなく誠意と感謝を示すのは当然である。 だから私はショールームを出てからというもの、 頭の中が悶々としてしまい、その思いは翌日まで続くことになってしまった。

さらに私が考えたのは、ショールームとのやり取りは決して商品の買い付けだけに止まらないことで、 オーダーの到着が遅れていたり、着いた商品が間違っていたり、追加発注をしたり等、 卸売りで商品を買うということはショールームの人間と連絡を密にしていかなければならないのである。 でもその際に、自分の担当者が信頼出来ない人間であることは 後々の自分の首を締めることになる訳で、私は自分の会社をスタートして以来、 「友達になれるほど信頼している人とでなければ ビジネスはしない」というのをポリシーにしていたのである。
そもそも小売り業というのは、生産者、小売業、消費者という3者の間で お金と物だけが流通しているというイメージがあるけれど、 実際にビジネスを左右するのは、その根底にある人間関係や、心情というものである。
私は1999年の7月からパシュミーナを売り始めたけれど、当時アメリカはパシュミーナの大ブームで、 私が商品を仕入れていたのはニーマン・マーカス、バーグドルフ・グッドマンにも商品を卸す業者であった。 パシュミーナはCUBE New Yorkでも大ヒット商品だったので、私は小口バイヤーとは 見なされてはいなかったけれど、それでも もっと沢山の商品を売っているニーマンやバーグドルフよりも、 業者がうちに対して先に商品を回してくれていたのは、私が彼らと極めて友好的な関係にあったからで、 彼らは大手小売店バイヤーの高飛車な態度を非常に嫌っていた。
だから私もその後、もっと安価なパシュミーナの卸売りのオファーを 沢山受けたけれど、業者に対してロイヤルであり続けたし、 今もパシュミーナを売り続けているのは、パシュミーナが流行に無関係に優れたプロダクトであると信じているからだけでなく、 自分のビジネスを助けてくれた業者とのビジネスを続けたいと思っているからである。
ダイヤモンド・ディストリクトのジュエリー業者にしても、 コサベラやナチュラ・ビセーにしても、先ずはそのプロダクトに惚れ込むことがとても大切であるけれど、 ビジネスを始めるに当たっては、担当者やオーナーと上手くやって行けるかは物凄く大切なことで、 彼らのことが個人的に好きであるから、「この人に儲けさせてあげなければ」とか 「良くしてもらった分の恩返し」と思って頑張ろうという気になるのである。
業者と小売りの関係だけでなく、消費者と小売店にしても、自分の好きな店で、好きな店員に接客されていれば、 特に必要の無いものまで 気持ち良く買ってしまう場合が多い訳で、 良好な人間関係が、良好なセールスを生み出すというのが、私のビジネス信条なのである。

そうやって考えてみると、このC&Cの買い付けは明らかに私のポリシーに反することであるだけでなく、 嫌な予感というか、胸騒ぎに似た不快感が翌日になっても頭から離れることはなかった。
そこで、いろいろ考えた挙げ句、私は 最悪の買い付け体験の説明と、 「ニューヨーク・ショールームを通じたビジネスをしなければならないのなら、 オーダーはキャンセルしたい」という私の意思を書いたメールを C&Cのクレアに直接送ることにした。 メーカーやデザイナーに、彼らのショールームの言わば「悪口」を書いて送るというのは、 先方にとっては雇っているスタッフをけなされるようなものだから、 クレアが気分を害するかと思ったけれど、 電話で話した時の印象から、彼女ならば分かってくれそうな気がしたので、 思い切ってメールをしてみたけれど、驚いたことには、私がメールを送付したのが金曜の午後5時半で、 その2時間後の7時半に、私がコンピューターを落とす前にメールをチェックしたところ、 もうクレアから返事が届いていた。
彼女はショールームの態度を心から謝ってくれて、「以前にも、ショールームの悪い評判を聞いたことがあったけれど、 実際に事情を説明してくれたのは貴女が初めてだった」として、それについては 「ありがとう」とも言ってきてくれた。 彼女は既に私のメールをプリントアウトして、パートナーにも見せたそうで、 私を担当したセールスの女性だけでなく、ショールームのオーナーとも話しあうことを約束してくれた。 でも私がニューヨークに居る以上、私のオーダーはニューヨークのショールームを通じて行わなければ ならない契約になっており、「担当者も変えるから、何とか思い直して欲しい」と、 本当に丁寧な文面でのオファーをして来てくれた。
私はこのメールを受け取って本当に心が動かされたけれど、 反面リアリスティックに考えてみれば、例え担当者を変えてくれようとしたところで、 こんな風にクレームをつけたバイヤーのアカウントを引き受けたがるセールス・レップが 居るとは思えないし、そういうきっかけで巡り合ったレップとは、 お互いに警戒しあう仲にしかなれないと思うので、 こちらが無理を聞いてもらったり、そのレップのコミッションが増えるように こちらも売り上げを増やそうという気持ちには とてもなれないだろうと考えてしまった。
だから、私を始めとするCUBE New Yorkのスタッフ一同、C&Cの商品を ディスカウントで買えるのをとても楽しみにしていたけれど、 同ブランドの取り扱いは少なくとも現時点では見送ることにしてしまった。
クレアには、ショールームの態度で、私のC&Cの商品に対する見解が変わることはないこと、 そして彼女のビジネスの益々の発展を祈っていることをこれからメールで伝えようと思っているところである。

さて、この週末に私がもう1つ向った買い付けが、 個人的にも以前から楽しみにしていたキュイアのウォッチ・バンドである。 キュイアについては、既にパートナーの1人、ダニエルと夏の終わりに 電話で話していて、商談も彼女とすることになっていたので、全く心配はしていなかった。
ダニエルもクレア同様、とっても良い人で、私達は商品についてだけでなく、 日本のことや、私の「悪夢の買い付け体験」にも話題が及んだけれど、 お互いにビジネスが上手くいきそうな感触を持ったと思っている。
キュイアについては、既に多数の御問合せを頂いていて「是非扱わなければ」という 義務感を感じていただけに、ホッとしたところもあるけれど、 御問合せを頂いていた皆さんには この場を借りて、 2月中には予約の受け付けをスタートすることをお知らせさせていただきます。 カラーは6色程度、素材はレザーに加えて、高級時計をつけるのに相応しいアリゲーター、 リザード(トカゲ革)が登場の予定です。
個人的に狙っているのはやはりアリゲーターで、未だはっきりお値段はでていないけれど、 500ドル程度になる予定。サイトで写真をご紹介していたレザー製(写真左)は240ドル前後になります。
お楽しみに!






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