Jan. 20 〜 Jan. 26 2003




マノーロ・マニア


ニューヨークは連日、日中でも零下の寒さが10日以上続いているけれど、そんな中、今週月曜から スタートしたのがマノーロ・ブラーニックのブティックが年に2回行なうセールである。
そしてその翌日のニューヨーク・ポストにはそのセールに訪れた女性達のマニアックぶりが 紙面1ページ分の記事になっていた。
昨今のニューヨークは日中の気温は零下3〜5度程度であるけれど、風が強いので、 体感温度は零下12〜15度と言われるほどで、外に5分立っているだけでも顔が痛くなってくるし、 手足が凍りのように冷えきって、10分も立っていれば足の指先の感覚がなくなってくるような寒さである。
そんな厳寒の中、この月曜から始まったセールには大勢の女性達が2時間待ちは当たり前で行列を作り、 時々コーヒーを買いに行ったり、近くのヘンリ・ベンデルにトイレに出掛ける以外は、 ただひたすら文句も言わずにじっと並び続けていた訳である。
ではこのセールでマノーロがどの程度安くなるかと言えば、50%オフ、すなわち半額であるが、 それがマノーロであるだけに半額になったと言っても決して安い訳では無い。 マノーロの通常価格はロング・ブーツなら1000ドル以上は当たり前、イヴニング・シューズなら450〜700ドル、 スリングバックやパンプス、メアリージェーン等で約450〜500ドルであるから、半額になったとしても課税後の価格は 300ドル近いシューズということになる。
それでも女性達は仕事を休んだりして このセールにやって来て、2〜3時間を喜んで行列する訳だから 確かに執念ともいえる熱心さである。
私の友人もこのセールに午前11時頃出掛けて行ったそうであるが、あまりの行列の長さと、 その行列の進まなさ、そして何より寒さに嫌気が差して30分ほどで帰ってきてしまったと言っていた。 彼女があっさり帰ってきたのには他にも理由があって、セールになっているシューズのセレクションが良いとは思えなかったこと、 そして彼女の傍で並んでいた女性達が、あまりにマノーロを履くタイプの女性像とかけ離れていたことにゲンナリしてしまったためだという。
シューズのセレクションに期待が出来ないと悟った理由は、彼女が並んでいる最中、 恐らく開店直後に入店したと思われる女性が どんなシューズを買ってきたか?を見せてもらったからで、 このように先に買い物をした人が、並んでいる人にその戦利品を見せてあげるというのは デザイナー物のサンプル・セールではよくありがちな行事である。
そして彼女が一緒に行列をしていた女性達にゲンナリした理由は、 いかにも「1足でもマノーロというものを買ってみたい」という感じの、アグリーなシューズを履いた人ばかりだったからだそうで、 「セールでマノーロを一足買う前に、まずナイン・ウエストを5足買って、足元をグレード・アップさせるべき」と 思えるような女性が彼女の周りに何人も並んでいたためであったという。

確かに私も本当の「マノーロ・マニア」と言える女性というのはマノーロのブティック・セールに2時間以上 行列をして半額のシューズを買うことに執着はしないと思う。
実際、「マノーロ・マニア」と呼ばれる女性達は、マノーロのブティックよりも もっぱらバーグドルフ・グッドマンやバーニーズで同ブランドを買うものである。 ことにバーグドルフ・グッドマンはニューヨークで最もマノーロを売り上げているショップであり、 マノーロ・ブラーニック氏本人が年に一度は必ずパーソナル・アピアランスを行なって、 シューズの裏にサインを入れるパーティーを行なうほど、同ブランドにとって大切なストアである。
また、個人的に言わせてもらうならばバーグドルフ・グッドマンの2階のシューズ・セクションの方が、 マノーロ・ブラーニックのブティックよりもずっとサービスも椅子も良くて、 気持ち良く買い物が出来るスペースでもある。 もちろんバーグドルフ・グッドマンのシューズ・セクションで扱っているのはマノーロだけではないけれど、 マノーロの数はバーニーズよりも豊富で、ブティックとほぼ同じ品揃えである。
セールにしてもバーグドルフ・グッドマンでマノーロを始めとする殆どのシューズの値段が 下がるのは12月の初旬から中旬に掛けてで、マノーロのセールより1ヵ月早い上に、道に行列する必要も無く、 押し合いながらシューズを奪い合うことなく、ゆったり座っていればサイズを出してきてもらえるという状況でショッピングが出来るのである。 さらにマノーロのブティックではセール品は交換や返品が出来ないけれど、 バーグドルフ・グッドマンやバーニーズといったデパートで買えば、 一度も履いていない限りはセール品でも返品や交換が可能である。 このことはマノーロのシューズに限ったことではなく、バッグでも服でもデザイナー・ブティックで買ったセール品は、 一切交換・返品が出来ないけれど、同じグッチでもシャネルでもサンローランでも、セール品はデパートから購入すれば、 返品や交換が可能である。だから買ってしまってから「失敗!」と思っても取り返しがつくのである。
マノーロのシューズに話を戻すと、たった1つマノーロ・ブティックのセールの方がバーグドルフのセールより良い点は割引率で、 ブティックは50%オフにするのに対して、バーグドルフ・グッドマンでは40%オフにしかならないのである。 ちなみにバーグドルフ・グッドマンも1月に入るとマノーロ以外のグッチ、クリスチャン・ディオール、シャネル、 セリーヌといったブランドは50%オフにしており、40%止まりなのはマノーロ・ブラーニックのみである。
バーニーズのマノーロ・セールはさらに厳しく、ほんの一部のスタイルしか40%オフのセールにならないので、 同店ではマノーロよりも、むしろプラダやクリスチャン・ルブタン、ミシェル・ペリーを安く買うことを心掛ける方が正解である。
同じくプラダがセールで狙い易いのはサックス・フィフス・アベニューで、 ここはジミー・チュー、グッチ、セルジオ・ロッシ、フェラガモがセールで探せるスポットである。
でも入っているブランドの数やシューズ・セクションの広さはバーグドルフ・グッドマンがニューヨーク、 そしてアメリカでNo.1と言われており、ここではテロの直後でさえシューズが良く売れていたのを覚えているし、 不況といわれる今も、お金の心配をする必要の無い女性達が競って最新のスタイルの マノーロを購入している場所である。

では何故マノーロ・ブラーニックが数あるシューズ・ブランドの中でこれほどまでに女性達を夢中にしているかと言えば、 先ずその靴全体の美しさ、特に圧倒的に美しいヒールのシェイプが挙げられるけれど、 あれだけ細いスティレットにも関わらず、履き心地が良く、脚をキレイに見せるのもマノーロの魅力である。
マノーロ以外にもジミー・チューやクリスチャン・ルブタンのように優秀なシューズを作るブランドは多いし、 プラダやグッチ、サンローラン、ドルチェ&ガッバーナのシューズの方が、そのファッション・トレンドに ぴったりマッチしたニートなシューズが探せたりするけれど、 それでもマノーロが良く売れる、マノーロを収集する「マノーロ・マニア」なるものが 存在するというのは、言葉では説明できないブランドのマジック・パワーがあるからに他ならなかったりする。
そしてこのパワーが女性だけにアピールするものかと言えば大間違いで、 少なくともここニューヨークではマノーロに反応する男性は非常に多いのが実情である。 実際にインベストメント・バンカーやストック・ブローカーとデートするなら 「マノーロはマスト!」と言われており、かつて「リムジン・シューズ(リムジンに乗って移動する女性のためのシューズ。 値段もヒールも高いことからついたネーミング)」とあだ名されたマノーロは、 「シリアス・デート・シューズ」、「ファック・ミー・シューズ」等と呼ばれていたりする。

さてアメリカ、特にニューヨークには自称「シュー・マニア」というほど 靴が好きな女性が多いけれど、「シュー・マニア」と「マノーロ・マニア」とは別物と言わなければならない。
「シュー・マニア」は靴が好きで、靴を沢山持っていればなれるものだけれど、 「マノーロ・マニア」になるには、1足500ドルのシューズをジャンジャン購入して、惜しげも無く履ける経済力が必要である。
何足のマノーロを持っていれば「マノーロ・マニア」と呼べるかは人によって意見が異なるけれど、 10足や20足では決して「マノーロ・マニア」とは呼べないのは事実である。 最低で50足という人も居れば、100足前後という人も居るけれど、 傑作ヴィンテージをどれだけ良いコンディションで保存しているかでも そのマニアぶりは測れるようである。
「セックス・アンド・ザ・シティ」のシーズンNo.4で、サラー・ジェシカ・パーカー扮するキャリーが ボーイフレンド、エイデンの愛犬にマノーロのヴィンテージ・サンダルを食いちぎられて パニックになるシーンがあったけれど、「マノーロ・マニア」はまるでシューズをワインのように 「1993年のエナメルのスティレット」と年代とスタイルで覚えている場合が少なくない。
実際「マノーロ・マニア」にとってはマノーロのシューズはワイン同様、当たり年というものがあるようで、 当たり年には気に入ったスタイルを纏め買いして、徐々にそれを履き下ろしていくというのは、 ワイン通が当たり年の名門シャトーのワインをケースで購入して、じっくり楽しむのに似ていたりする。
さてこれまで私が喋った「マノーロ・マニア」達の意見を総合すると、 2003年春夏は、残念ながら「当たり年」とはいえないシーズンのようである。





スーパーボウルがスポーツイベントではなくなった日

今週日曜はスーパー・サンデーであったけれど、 私はアメリカに住む日本人女性としてはかなりフットボールを見ている方だと思っている。
スーパーボウルについては90年から欠かさずに見ているから、今回で37回目を数えるスーパーボウルの 3分の1は見ていたことになる。
個人的には今年のゲームはエキサイトメントが感じられなくて、一昨年のNYジャイアンツVS.ボルティモア・レイベンズ戦に 匹敵するほどつまらないと思って見ていた。 そして、それよりも強く感じたのがスーパーボウルというスポーツのイベントが、すっかりエンターテイメント・イベントに なり変わっているいることで、例えばミュージック・パフォーマンスにしても プレ・ゲーム、ハーフ・タイム、ポスト・ゲームにそれぞれにミュージシャンが登場して ライブを披露するというのはちょっとトゥー・マッチという感じだった。
ほんの数年前までは、スーパーボウルのミュージック・パフォーマンスと言えば、 先ず国歌である「スター/スパングルド・バナー」を歌うのが非常に名誉なことで、 その他にハーフタイムに15分ほどのパフォーマンスをするミュージシャンが1組というのがお決まりだった。 以前はハーフタイム・ショーと言えばゲーム・タイムに比べて視聴率が下がることで知られていて、 時間潰し程度のパフォーマンスしか見られなかったけれど、 90年代半ばに、今よりずっと人間らしかったマイケル・ジャクソンがパフォーマンスを見せて、 当時にして過去最高のハーフタイム視聴率を記録して以来、ハーフタイム・ショーの解釈が徐々に様変わりを見せてきた。
さらにハーフタイム・ショーを大きく変えたのは2001年、スーパーボウル史上初めて MTVがそのプロデュースに参加した年で、エアロスミス、インシンクをメインに ブリットニー・スピアーズ、ネリー、メリー・J・ブライジ等が登場し、 退屈を極めたジャイアンツVS.レイベンズ戦を上回る視聴率を見せた際だった。
今年はプレ・ゲームがサンタナのパフォーマンスで、ビヨンセ・ノールズ、ミシェル・ブランチが ゲスト・パフォーマンスを見せており、ハーフ・タイムはシャナイア・トゥエイン、ノー・ダウト、スティング、 そしてポスト・ゲームにボン・ジョビがそれぞれパフォーマンスを見せていた。
また国歌にしても「スター/スパングルド・バナー」をディキシー・チックス(写真)が歌う前に、 「ゴッド・ブレス・アメリカ」をセリーヌ・ディオンが歌うというダブル・パフォーマンスで、 ライブ・ミュージック・イベントとしては質の高いものであったけれど、 スーパーボウルというスポーツ・イベントがすっかりエンターテイメントに侵略されているといった印象は否めなかった。
おまけにCMにしても「チャーリーズ・エンジェル」や「マトリックス」等、これから封切られる映画のCMが多かったり、 アーノルド・シュワルツネッガーが「ターミネーター3」の広告を兼ねてゲーム前のオープニングに登場したりと、 スーパーボウルを絶好の広告塔として利用するハリウッドの戦略も色濃く感じられていた。
でもミュージック・パフォーマンスに関して言えば、スーパーボウル史上、最も圧巻だったのは、 湾岸戦争の真っ最中の91年、ホイットニー・ヒューストンが歌った「スター/スパングルド・バナー」で、 これは当時TVで見ていただけでも鳥肌が立つような凄いパフォーマンスだったのを今でもはっきり覚えている。 この時のホイットニーのパフォーマンスは当時も大評判になったけれど、2001年のテロの直後にも この「スター/スパングルド・バナー」はCDシングルとして発売されて大ヒットとなったのは記憶に新しいところ。
昨年末にABCテレビで放映されたホイットニー・ヒューストンのインタビューでも 彼女が自らのキャリアのピークとして、91年のスーパーボウルでのパフォーマンスを挙げていたけれど、 ホイットニー自身あのパフォーマンスを超えるものはもう出来ないと思うし、 今後のスーパーボウルでも例え誰が出てきても、やはりあのパフォーマンスは超えられないと思う。





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