Jan. 19 〜 Jan. 25 2004




Men & Looks


先日、友人とキャブに乗り込んだら、運転席から振り向いたドライバーがあまりに グッド・ルッキングだったのでビックリしてしまった。
通常タクシーのドライバーというとアクセントの強い英語を話して、見るからに移民という感じの エスニック色の強いルックスをしたオジサン達が多いけれど、 そのドライバーは、コケイジャン(白人)のダーク・ヘアで、 年齢も27〜29歳くらいに見えて、自分の魅力が分かっているのか、 行く先を聞いて、こちらにニッコリ微笑んだりする。(そんなことをするキャブ・ドライバーは NYには先ず居ない!)
当然、私たちは彼に興味を持って「あなた、タクシー・ドライバーにしてはハンサム過ぎない?」とか、 「仕事 間違えてない?」などと話し掛けていたけれど、彼は12月からこの仕事を始めたばかりで、 運転が大好きだから、マンハッタン中を車で走る仕事は悪くないと思っている事などを、 ユーモアのセンスを交えて話してくれた。 そして私達は降りる時には、日頃よりも多めのチップを渡し、 「何をやるにもルックスが良いに越したことは無いのかもね」と話し合うことになった。

ふと考えると、2年半ほど前まで5番街のハリー・ウィンストンの入り口に立っていた 長身、ハンサム、ブロンドのドアマンも、そのあまりのルックスの良さが有名で、 彼と写真を撮って帰る人や、彼に話し掛ける通行人は絶えなかったけれど、 何時の間にか居なくなったかと思ったら、どうやら大金持ちのご夫人達への絶大なるアピール度が認められて、 別のビジネスに引き抜かれたとのことだった。
また現在、裁判にさしかかろうとしているマーサ・スチュアートのインサイダー取引疑惑にしても、 彼女のブローカー、ピーター・バカノヴィックは、 フランス語を流暢に話し、アートに造詣も深く、「ティファニーで朝食を」でオードリー・ヘップバーンの アパートになったアッパー・イーストのタウン・ハウスに暮らし、社交マナーも完璧であることが伝えられるけれど、 彼がマーサ・スチュアートに限らず、NYの社交界の女性の間でペット・ボーイ的存在であったのは 何と言ってもそのブロンド、ブルー・アイ、ボーイッシュ・フェイスというルックスの良さ、 すなわちアーム・キャンディ(連れて歩くのにご自慢のエスコート)としての価値が認められていたからである。



私は個人的には、ルックスが良い人は女性でも、男性でも、往々にして人柄的にチャーミングな場合が多いと思っていたりする。 ルックスが良ければ、幼い頃から可愛がられたり、それなりの扱いを受けているので、 ある程度の自信を持って他人に接するマナーが身に付いている場合が多いのである。 また、ルックスが良いことにより、他人から好印象を持たれたり、 好待遇を受けることを常としているので、周囲に対して常にポジティブかつ、オープンで居られる訳で、 これは人間としては非常にチャーミングと言えるキャラクターである。
別にルックスが良くなくても、誰に対してもポジティブでオープンに振る舞える人は 十分にチャーミングではあるけれど、多くの人々は何処かにコンプレックスがあると、 常にこのようには振る舞えないもので、「整形手術によって人生が変わった」などと信じている人は、 「自分の顔がきれいになったことで周囲が受け入れてくれている」と思っているけれど、 実際のところは「自分に自信がついて、他人に接するアティテュードが変わっただけ」であったりするのである。
特に男性の場合、お金を手に入れることでこの自信を身につける人も少なくないけれど、 こうしたケースでは、お金をひけらかさないと自分に自信を持てないという、 チャーミングには程遠いキャラクターになる場合も多いようである。


90年代後半、アメリカが歴史的な好況を迎えていた頃から、女性達も男性並みに稼ぐようになり、 時を同じくして 「セックス・アンド・ザ・シティ」 がセンセーションを巻き起こしたこともあり、 それまで「早くリッチな男性を見つけて結婚したい」と思っていた女性達が、 こぞって「リッチな男性と結婚する前にルックスの良い男性と遊んでおきたい」モードに変わったのは、 記憶に新しいところである。
昨今では、ルックスにこだわってボーイフレンドを探している女性は私の周囲にも非常に多く、 この週末に友人から受け取ったEメールにも、 「xxxちゃんが若くて白人の美形を探しているから 紹介してあげて」とか、「ルックスには妥協しないことに決めたから、 今度こそ背が高くて、顔が良くて、なで肩で無い人を探すのを新年の目標に決めました」などと 書いてあったりする。
私の知人によれば、結婚さえ考えなければ、ボーイフレンドは「お金」より「ルックス」なのだそうで、 そんな彼女も、かつてはお腹の出たボーイフレンドに無理矢理 似合わないプラダを着せて、 友達に紹介する時には 彼がリッチであることを証明するために、名前より先に職業を言ったりしていたのだという。 でも今となっては、「自分がグッチのアウトフィットを一式買い与えることになっても、 それが似合うグッドルッキングな男の子を連れて、トレンディなレストランで 良いテーブルに座らせてもらう方が、人生が楽しい」というのが彼女の言い分である。
彼女も「ルックスの良い男性の方が、社交的でチャーミング」という考えの持ち主で、 「その分 浮気が心配だけれど、姿を見ているだけで幸せだから、愛情が注ぎ易い」とも語っている。

そうかと思うと別の理由で「お金」より「ルックス」と語る人も居て、これは 仕事で知り合った27歳のアメリカ人の女の子。 彼女はかつてインベストメント・バンクに務めていて、金持ちなだけで鼻持ちならない 男性を沢山見てきてしまい、「どんなにお金があっても、こんな男どもは沢山!」と思ってしまったという。
リブ・タイラーにそっくりの美人の彼女は、そもそも学生時代から、クラスの女の子が憧れるような 男の子とデートするチャンスに恵まれていたので、既に若くしてルックスのハイスタンダードが身に付いてしまったらしく、 お金に関係なく自分が好きになれる人としかデートしないし、 好きになる人は結果的に皆グッドルッキングなのだと語っていた。

さらに「お金」より「ルックス」を選ぶアメリカ女性の姿を垣間見たのは、 昨年末にNBCで放送されていたリアリティTV「アベレージ・ジョー/Average Joe」で、 メイン・キャラクターの美女が、多数の候補者を毎週絞り込み、最後に残った2人は、 1人が年収にして億円単位を稼ぐウォール・ストリートのバンカーで、ルックスは普通より若干落ちる程度の30代の男性、 そしてもう1人が26歳くらいの、モデル兼ウェイターで、未だに両親の家で暮らしているという経済力の 無さであるけれど、顔も身体も整ったグッドルッキングな男性。 前者の男性は、見た目はパッとしないけれど、いかにも誠実そうだったのに対して、 後者のモデル兼ウェイターは、番組に出ることによって自分のキャリア・チャンスを見出そうとしているような 雰囲気が漂っていた。
ちなみに、この番組では、女性は選んだ男性と婚約する必要も、結婚する必要もなく、 単に男性と交際を始めることを前提に、一緒に南の島へ ご褒美のヴァケーションに出掛けるだけの企画だった。 結果的に女性が選んだのは モデル兼ウェイターの方で、確かに結婚とか真剣な交際を考えず、 数日間のヴァケーションを過ごすだけなら、ハンサムで、日に焼けた鍛えられたボディの男性と 出掛けた方が楽しいであろうことは、容易に想像が付くものだった。


では、昨今の女性がまずはルックスだけで男性をジャッジしているかと言えば、 大間違いで、ファッションというポイントも 非常に大切になっているのが実際のところである。ことに昨年のメトロ・セクシャル・ムーブメントで、 「ストレート男性もファッショナブルかつ、グルーミングされていて当たり前」の時代になってしまっただけに、 ファッションが、男性をジャッジするポイントになってしまっているのは、女性の間だけでなく、 社会全体に言えることである。
それを立証するかのように、現在行われている民主党大統領候補を決める予備選挙の報道では、 1月13日付けのニューヨーク・タイムズ紙のファッション・セクションが、 各候補の遊説ファッションをチェックする記事を掲載されているし、 1月23日付けのニューヨーク・ポストでも、ニュー・ハンプシャーの予備選で トップ争いをしているジョン・ケリー、ハワード・ディーンの2人の候補のスーツ姿を並べ、 その値踏みと、センス比べを行っていたりする。
NYポストの記事では、カスタム・メイドのシャツにデザイナー・スーツのケリー候補に比べ、 いかにも量販店で20ドルで売られているようなシャツと安っぽいタイ、既製のスーツを身につけた ディーン候補が酷評されているけれど、実際、私がTVのニュースで見ていても、 ハワード・ディーンの短くて太い首を強調するような、きつそうなシャツの衿周りは目に付いて、 一国の大統領を目指すにしては垢抜けないイメージになっているのは事実である。
ちなみに、グルーミングという点で民主党候補の中で最も評価が高いのは、最も若くて、ルックスも良い ジョン・エドワード上院議員であるけれど、大統領候補にまでファッションやグルーミングが 問われる社会なのだから、女性が自分のボーイフレンドにこれらを要求したところでバチは当たらないというものである。

そこで、私が考えてしまうのは、ファッション、ルックス、グルーミングといった 外観による第一印象が問われないレベルでは、 果たして人間は何を基準に、短時間で相手に評価されるのか?ということ。
実は、私のこの疑問に応えるかのような記事が昨年末のニューヨーク・タイムズに掲載されていて、 この記事では同じホームレスでも人々が素通りする人間と、お金を与える人間に分かれるポイントは何か? についてが書かれていた。 この記事のライターによれば、彼が5ドル与えても惜しくないと思ったのは、 お金を乞う傍ら、気の利いたジョークを言うホームレスだそうで、確かに地下鉄の中で 紙コップを持ってお金を集めているベガー(Begger)にしても、 単に「自分はホームレスで、昨日から何も食べていない」などと言う人よりも、 車内が思わず笑ってしまうような自己紹介をするようなベガーに対して ニューヨーカーが財布を開き易いのは 事実である。
だから そう考えれば、ルックスやファッションが全く問われない世界や、 ルックスやファッションが今さら目に入らないほどに長く続いた夫婦を始めとする人間関係では、 「ユーモアのセンスこそが最大の魅力になる」と言えるのかも知れない。





Catch of the Week No.3 Jan. : 1月 第3週


Catch of the Week No.2 Jan. : 1月 第2週


Catch of the Week No.1 Jan. : 1月 第1週


Catch of the Week No.4 Dec. : 12月 第4週