Oct. 1 〜 Oct.. 7 2007




” The Red Wine Diet ”



今週はパリにファッション・ウィークが舞台を移していたけれど、ニューヨークは連日気温が30度に達する真夏のようなお天気。 さすがに夕方を過ぎると少し寒くなるけれど、10月とは思えないような夏日が続いている状態である。
そんな夏の陽気のニューヨークで連日行われているのが「セックス・アンド・ザ・シティ:ザ・ムービー」の 撮影であるけれど、映画は早くもアメリカではトレンド・セッター的役割を担っていて、 キャリーを始めとする4人のキャストが身に付けたシューズやバッグは、既にSATCマニアの間では引っ張りダコの人気。 マノーロ・ブラーニックではキャリーが履いていたゼブラのパンプスがあっという間に完売してしまったという。 また、これから撮影に登場すると言われる服やシューズの報道なども加熱していて、 先日ロジェ・ヴィヴィエのブティックのマネージャーと話していたら、主役のキャリーを演じるサラー・ジェシカ・パーカーが ロジェ・ヴィヴィエを愛用することから、撮影のために大量の商品が貸し出されたことをコッソリ教えてくれたのだった。

その一方でメンズ・ファッションの世界で猛烈な勢いでカムバックしてきているのが ”Bespoke / ビスポーク”。
ビスポークとはイギリスのメイド・トゥ・オーダーを指す言葉であるけれど、通常のオーダー・メイドは 既にパターンというものが存在していて、 そのパターンに応じて 採寸した顧客のサイズで 服やシューズを仕立てるというもの。 これに対して ビスポークにはパターンが存在せず、型紙を作る段階からクライアントの身体に 合わせて製作が行われるという贅を尽くしたもの。
例えばスーツを例に考えてみると、ウーマンズ・クロージングの高級スーツは約150工程で作られるのに対し、 メンズの高額スーツはパターンが存在した場合でも300工程。 ビスポーク・スーツはパターンから製作する訳であるから、 これを軽く上回る工程であるのは言うまでも無いこと。しかも 素材の裁断、 縫い上げなど 全ての作業が職人の手によって 進められる訳であるから、ビポーク・スーツの完成までに要する期間は通常4ヶ月〜5ヶ月と言われる。
そうして仕上がったスーツは 体型をカバーするだけでなく、着崩れ知らずで、その上 ファッションの専門家ならずとも 気が付くその仕立ての良さは 見ていて惚れ惚れするもの。なので お値段も当然それなりで、スーツ1着が4000〜6000ドルは当たり前という価格になっている。
こうしたスーツに限らず、シャツ、シューズ等、全身をビスポークで固めるのが、ヘッジファンダーなど 昨今稼ぎまくっている金融関係者を中心に 再び もてはやされているとのことで、私がこのコラムを書いている今日、10月7日付けのニューヨーク・ポスト紙のページ・シックス・マガジンでも ビスポーク・スーツとシャツを着用し、23万円のカフ・リンクとパテック・フィリップの600万円の時計をつけ、 ベルルッティやジョン・ロッブなどのビスポーク・シューズ・メーカーの靴を履き、ハンドメイドの250ドルのタイをした ウォール・ストリートの男性が記事にフィーチャーされていたのだった。(写真右)
ちなみに、ジョン・ロッブでビスポーク・シューズをオーダーしようと思ったら、まず採寸に要する時間だけで軽く30分以上。 そしてシューズが仕上がるまでには1年を要するというけれど、出来上がったシューズは靴ズレ知らずなだけでなく、 10年はもつと言われるもの。
このところ世界中で貧富の差が開いてきたことは先週のこのコラムでも触れたけれど、豊かな人々は どんどん限りないベストを求めるようになっており、その結果、たとえオフの時には既製服のアルマーニやトム・フォードを 着用したとしても、一流のビジネス・アウトフィットとしては ベスト中のベストであるビスポークを着用するようになってきているのが昨今なのである。

さて 話は変わって ニューヨークでは、この秋から来年1月初旬までの間に 新しいワイン・バーが14軒オープンすることになっており、 ちょっとしたワイン・バー・ブームが訪れている。
そのラインナップは、ダウンタウンのノリータというロケーションながらも、シュバル・ブランやガイヤといった一流のワインを グラスで飲ませてしまうノーブル・フード&ワイン、NYタイムズの4つ星シェフ、ダニエル・ブリューがアッパー・ウエストサイドに11月にオープンする バー・ブリュー、そして来年1月8日にミッドタウンの一流ホテル、セント・リジス・ホテル内オープンが決定している ミシュラン3つ星シェフ、アラン・デュカスのアドゥール、変わったところでは ニューヨークNo.1のショコラティエ、ジャック・トレスが チョコレート&ピノ・ノアールをペアリングさせてしまうアイザ・カフェ&ワイン・バーなど。ユニークなライナップが揃っていて ワイン好きの私としては楽しみなところである。
でも今、何故ワイン・バーの波がニューヨークに来ているか?と言えば、その理由の1つは ヘッジファンダーに代表される 金融業界のリッチ・ピープルが、ナイト・ライフの世界でも トレンドセッターになっているためで、 実際彼らが訪れる訪れないは別として、スーツ&タイ・クラウドをターゲットにした カジュアル・セッティングなナイト・スポットとしての ワイン・バーが脚光を浴びているのである。 またワイン・バーという設定は、ビールを飲んで騒ぐタイプのブルーカラーの客層が寄り付かないので 客層がコントロールし易いこと。さらに、昨今の若くトレンディな客層は、飲んでも 食べない人々が多いため、 ワインというドリンクにフォーカスを当てた方が客単価が高くなるという。
そしてワイン・バーは フル・メニュー(レストランがサーブするようなアペタイザー、メイン、デザートから構成されるメニュー)の フードを出す必要が無いので、最小限のキッチン機能で ビジネスがスタート出来るということも大きな要因となっている。 多くの一流レストランでも、バー・セクションの方が食事を出すエリアよりも遥かに利益率が高いのが実情で、 「食事を中心に出すビジネスよりも、アルコールを中心に出すビジネスの方が儲かる」というというのはレストラン業界では 以前から常識としてまかり通っていることなのである。

さて、そんなワイン・バー・ブームとは別に、海の向こうのイギリスで今年7月に出版されたのが 「ザ・レッド・ワイン・ダイエット」という新しいダイエット本。(写真左)
この本はアメリカにも上陸し、「シンガーのジェシカ・シンプソンもダイエットにレッド・ワインを取り入れた」といった報道なども手伝って、 今ちょっとした話題になっているもの。
同ダイエット本の著者、ロジャー・コーダーはイギリスのウィリアム・ハーヴェイ・リサーチ・インスティテュートの リーディング・リサーチャー。彼が本を出版するまでもなく、90年代初頭からレッド・ワインが身体と健康に良いことは 医学ジャーナルなどでも発表されてきているけれど、この本はそうしたレッド・ワインの身体へのポジティブ効果に関する リサーチ結果を分かり易く説明しているもので、イギリスではダイエット&ヘルス関係者の間で高い評価を得ているものである。
ロジャー・コーダーによれば、レッド・ワイン・ダイエットは 短期的な効果を狙うようなトレンディ・ダイエットではなく、 レッド・ワインをライフスタイルに取り入れることによって、健康的に長生きするというアプローチで、 健康が達成されるプロセスでウェイト・ロス(減量)も自然に伴ってくるというのがその理論。
でも彼によれば、どのレッド・ワインを飲んでも同じようなヘルス・ベネフィットが得られるかと言えば そうでもないようである。
レッド・ワインには 何種類ものフラボノイド・ポリフェノールが存在しているけれど、その中のProcyanidins / プロシアニディンズ を多量に含んだレッド・ワインを飲むことが、血管内の機能を向上させ、コレステロール値を下げるのはもちろん、 心臓病や心筋梗塞、糖尿病、痴呆症、一部の癌を防ぐという効果をもたらすという。 プロシア二ディンズを多量に含むワインとは、フィルターを通さずに発酵に時間を掛ける生産工程を行っているワインだというけれど、 プロシア二ディンズはワインのエイジング・プロセスで失われていくものなだけに、若いワインほどこれが豊富に含まれているという。
具体的な産地でいうとイタリアのサルディニア、フランスならスッド・ウエストのワインに 多いものでは平均の4倍のプロシア二ディンズが含まれていたという調査結果を得ている。
でも同じ成分はダーク・チョコレート、ベリー、ウォルナッツ、ざくろ、リンゴにも含まれているとのことで、 これらの食材を ことにオーガニックでバランス良く食事に取り入れることによって、 レッド・ワイン・ダイエットをさらに効果的に行うことが出来るというのがロジャー・コーダー氏の理論である。
コーダー氏は自らもワイン通であり、リサーチをしながら、世界中のワインのテイスティングを行ったことも伝えられているけれど、 私個人としては プロシア二ディンズが多く含まれているワインのラインナップには あまり関心がそそられないのが正直なところ。
でも私も最近は、食後にデザートの変わりにフルーツとチーズをレッド・ワインと一緒に取るようにしていて、 これは食後に糖分を入れるよりも ずっと精神的に満足感が得られる上に、ヘルシーであるのは身体で実感していること。 なので、未だこの本を詳しく読んではいないものの、コーダー氏が謳う 効果が レッド・ワイン・ダイエットにあることは 期待できると思っていたりする。
でも気になるのはそのワインの摂取量。ワインは毒にも薬にもなるだけに、1日の摂取量に気をつけなければならないけれど、 コーダー氏によれば男性ならばグラスに2〜3杯、すなわちワインの750mlボトルの半分、 女性の場合はボトルの3分の1程度が許容量とされているというから、これはかなりヨーロピアン志向でリサーチが行われたと言えるもの。 アメリカでは、「グラス1杯 が 健康に良い 許容量のワイン」 としてまかり通って久しいのである。
でもその一方で、9月に発表されたリサーチ結果によれば、女性が毎日アルコールを摂取した場合、乳がんにかかる確率が 30%ほどアップし、がん家系の場合 その確率は70%もアップするという。 これはアルコールが乳がんの原因とされる女性ホルモンのレベルを高めるためだそうで、 こんなリサーチ結果を聞いてしまうと、一体誰が言うことを信じたら良いのかは全く分からないという感じである。

最後にウェイト・ロスに関して付け加えておくと、現在ハイスクール・ガールの間ではスリムより細い ”Skinny / スキニー”という細さでは 不十分なようで ”Boney / ボーニー ”、すなわち骨っぽいまでに細くなるべきであると考えられているそうである。
ファッション・ウィークでも、前回は”拒食症モデル締め出し”を大きく謳っていたにも関わらず、 今シーズンは すっかりそんなことは忘れ去られて、有名デパートのバイヤーをしている友人が、 「割り箸より細い、紙ナプキンみたいなモデルが歩いていた」と語っていたほど。
すなわち、世の中は引き続き「細ければ細いほどベター」の志向があるようだけれど、 私個人は 「ある程度の年齢に達したら、あまり細くない方が良いかも知れない」と考えを改めるようになってしまった。 というのも、アンジェリーナ・ジョリーや「セックス・アンド・ザ・シティ:ザ・ムービー」の サラー・ジェシカ・パーカーのデジタル・スナップを見ていると、 遠目では細くてカッコ良いけれど、デジタルのアップが捉えた彼女らの腕や肩、首、足には血管が蛇のようにむき出ていて、 見た目にとても美しいとは言えないのである。
私の場合、そもそも 彼女らのようには細くなれないので 最初からそんな風になる心配は不要であるけれど、 一般人は雑誌のカバーや映画のスクリーン上のセレブリティのように アグリーな血管を画像処理で消してもらうことは出来ない訳であるから、 「血管を隠すだけの肉が付いている方が 見場が良い」 と実感するのが今日この頃なのである。





Catch of the Week No. 5 Sep. : 9 月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Sep. : 9 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Sep. : 9 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Sep. : 9 月 第 2 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。