Oct. 5 〜 Oct. 11 2009




” Are We Dating? Or Just Hanging Out? ”


今週の週明けに報道されたショッキングなニュースと言えたのが、ヴォーグ誌を発行する雑誌出版社の最大手、コンディ・ナストが 『グルメ・マガジン』、『クッキー(育児雑誌)』、『モダン・ブライド』、『エレガント・ブライド』という4誌の廃刊を決定し、160人のスタッフがレイオフされたというニュース。
このうち、『クッキー』は2005年にスタートしたばかり。また『エレガント・ブライド』も1990年から出版された比較的新しいマガジン。 でも、「フード&レストラン業界版のヴォーグ誌」と言われた『グルメ・マガジン』は、1941年に誕生し、今も多数の定期購読者を擁する由緒あるマガジン。 また『モダン・ブライド』にしても、1949年からスタートしたブライダル・マガジンの草分け的存在なのだった。
『グルメ・マガジン』が廃刊になった理由と指摘されるのは、その出版コストが掛かりすぎるため。 同誌は、掲載するレシピや食材を研究するためのテスト・キッチンやそこに働く クッキング・スタッフを抱えているだけでなく、 スタッフは世界各国の5スター・ホテルや一流レストランの取材に駆け回ることはそのコンテンツから容易に想像がつくところ。しかも編集長のルース・レイチェルは 元ニューヨーク・タイムズ紙のレストラン・レビューアーとして高い評価と人気を誇り、何冊もの著書やTVプロジェクトでも知られる人物。 彼女のサラリーだけでも 年間に約1億円が支払われているのだった。
コンディ・ナストは、『ヴォーグ』の他にも、『マドモアゼル』、『グラマー』、そしてハリウッドに最も影響力を持つマガジン、『ヴァニティ・フェア』という メジャーな雑誌を擁しているけれど、今年に入って廃刊したマガジンの数は今回の4誌を含めて6つ。 2009年度には、約900億円の広告収入を失うことが見込まれており、リセッションとインターネットのせいで雑誌が売れなくなったこともさることながら、 広告収入の激減が ビジネスの大打撃になっていることが伝えられているのだった。

その一方で今週、例年よりもさらに一段と地味に報じられたのが、2010年度版ニューヨーク・ザガット・レストラン・サーヴェイが発売され、 グラマシー・タヴァーン が人気 No.1に選ばれたというニュース。
2010年度版のザガットには 3万8868人がサーヴェイ(調査)に参加し、2069軒のレストランが掲載されているというけれど、 これによれば、43%のニューヨーカーが「レストラン選びの際に 以前より値段を考慮するようになった」 と答えているそうで、 41%が「以前より安いレストランに行くようになった」と回答。 さらに21%が「アペタイザーかデザート、もしくはその両方を省いたディナーをするようになった」、19%が「お酒の量を減らすようになった」という いかにもリセッションを反映した 回答を示しているのだった。それでも、ザガットの調べではニューヨークはロンドン、東京、パリに比べれば 遥かにダイニング・アウト(外食)のコストが安いことも指摘されているのだった。
そのニューヨーカーの外食回数は これまでの週 3.4回 から 3回に減っていることが明らかになっているけれど、 そんな財布の口がタイトになったニューヨーカーを相手にするレストラン同様に 危機に瀕していると言われるのがザガットそのもの。
というのも、先述のように雑誌が売れなくなったのと同様に ザガットの売上も下がっており、創設者のティム&二ーナ・ザガット夫妻(写真左、ティム氏69歳、二ーナ夫人67歳)は 2008年1月にゴールドマン・サックスに依頼して、今や世界各国のレストランやホテル等をカバーするザガット全体を$200ミリオン(約180億円)で売却しようと試みていたとのこと。 夫妻はその半分の$100ミリオンでの買収オファーを断わったことが伝えられているけれど、その後 経済は悪化する一方で、 ザガットの 会社としてのバリューも暫くは下り続けると判断した夫妻は、売却を諦めたという。
ところが、そうするうちにザガットよりも どんどんパワーを増してきたのがインターネット上で 一般の人々のレビューを掲載する ”Yelp” ”Chowhound” という ウェブサイト。 ザガットのホームページには1ヶ月に27万人のユーザーしかアクセスしていないのに対して、”Yelp” のサイトにはアメリカ国内だけで700万人がアクセスしていることが 伝えられているのだった。
どうしてそんなに大きな差が開いているかといえば、ザガットのウェブサイトはレビューにアクセスするためには年間に25ドルのフィーを支払わなければならないため。 しかもオープンしたてのレストランについては、プレス・リリースに書かれているような情報しか掲載されていないのが実情。
これに対して、”Yelp” や ”Chowhound” は最新のレストランに実際に訪れた人々のレビューが寄せられるので、 トレンディなレストランに出掛けるのが大好きなニューヨーカーにとっては、こちらの情報の方がずっと役に立つのは言うまでも無いこと。
また、以前はザガットは ” レストランの電話帳 ” として非常に役に立ったけれど、今ではインターネットを使えばレストランの情報から、インテリアや料理の写真、 地図までが簡単に閲覧できる時代。 しかも そうした情報は携帯端末機で何時でも、何処に居ても手に入れられるので、わざわざザガットを買ったり、年間フィーを払う必要がなくなって来ているのである。
さらに言うならば、リセッションで多くのレストランがクローズした昨年から今年に掛けてだと、年に1度しか発行されないザガットの情報は 時に時代遅れ。 このことはザガットだけでなく、ミシュランについても然りであるけれど、年に1度の発行では 移り変わりの激しいニューヨークで レストランの名前やシェフ、経営者が代わっていたり、 レストランがクローズしているという状況には対応できないのである。


さて、今週最大のサプライズ・ニュースと言えたのは オバマ大統領のノーベル平和賞受賞の報道。
オバマ氏の受賞は、会場からざわめきが起こるほど驚きを伴ったもので、 アメリカ国内からも海外からも、賛否、もっぱら否のリアクションで受け止められたもの。 アラファト議長がノーベル平和賞を受賞した時以上の 物議を醸しているとさえ言われているのだった。
というのも、オバマ氏はアメリカ国内では 大統領に就任してからの9ヶ月間で 未だ何一つ目覚しい成果や変化をもたらしていないことが指摘される存在。 なので、大統領の支持者は 同氏のフレンドリー外交が評価されたことを歓迎していたものの、 それ以外の多くの人々は その受賞を 「何故?、何に対して?」 というリアクションで受け止めていたのだった。
ホワイト・ハウスのスタッフでさえ「今日はエープリル・フールじゃないよね?」 と語ったと伝えられるけれど、 イギリスのスカイ・ニュースは オバマ氏の受賞に対して「Nobel Prize for not being George W. Bush (ジョージ・W・ブッシュでないことに対するノーベル賞) 」 とコメント。 1983年に同賞を受賞したポーランドのワレサ議長も 「(受賞は)早すぎる。彼は今の所、何の功績も果たしていない」 と語ったのに加え、 ノルウェイ 野党の女性リーダー、シヴ・ジェンセン氏も 「ノーベル平和賞をオバマ氏の野心に対して与えるのは間違っている。 賞は功績に対して与えられるべき」 と厳しい批判を繰り広げているのだった。
一方、アメリカ国内では、夜のトークショー・ホストが、「オバマ大統領就任後の最も大きな功績はノーベル平和賞を受賞したことだ」 という 本末転倒なジョークを語って大笑いを誘っており、この受賞が大統領にとってプラスなのかマイナスなのかは判断しかねるところ。
でも確実に言えるのは、オバマ氏の功績ゼロの受賞でノーベル平和賞の格が大きく下がったことで、 それと同時に一部のメディアは 同賞が オバマ大統領の今後の外交政策に対するヨーロッパ諸国からの”けん制球” であると指摘。 今後のアフガニスタン、イラクを始めとする中東問題や北朝鮮の核問題等への対処に 足かせがつけられた とコメントしているのだった。


さて、話をザガットに戻すと今年のザガットに新たに設けられたのが、”Cheap Date / チープ・デート” という部門で、 安価なデートに適したレストランのトップ10が選ばれているという。
そのトップに選ばれたのが、 フードで30点満点中24点を獲得した ソーホーの スナックという 小さなギリシャ料理のレストラン。(写真左) シンプルで飾り気の無いインテリアは ロマンティックな雰囲気とは言い難いけれど、料理が美味しいのは事実のようで、ディナーのお値段が1人分27ドルで上がるという。
同レストランはザガットで「ファースト・デートには最適のスポット」と評されているようだけれど、 リセッションに突入して久しいニューヨークでは、”ファースト・デートに最適のスポット” を考える以前に、 その食事が本当に ” デート ” なのか否か 見極める必要が出てきつつあるようなのだった。
というのも、私の友人の2人がつい最近、新しい男性と ”デート” を始めたけれど、2人の共通した ”ファースト・デート” の 戸惑いというのが、大したレストランに出かけている訳ではないのに、チェック(勘定)がテーブルに届いた時に 男性側が直ぐにそれを手に取らず、お互いがお互いの出方を見守っている状態が暫く続いたということ。 2人とも、そんな男性の態度に対する分析は 「こちらがしびれを切らしてチェックを手にとって、”Should we spread? (割り勘にする?)” って オファーするのを待っていたんだと思う」 というもの。
結局、そのうちの1人のケースでは 相手の男性が チェックを手にとって自分のクレジット・カードを挟んだというけれど、 もう1人のケースはそれほど簡単な結末が迎えられなかったのだった。

彼女は翌日 仕事で早起きをしなければならないので、早目にレストランを出たいと思っていたこともあり、彼にさっさと支払いを済ませて欲しいと考えて、 先ず化粧室に席を立ったという。そして時間を掛けてから戻ってきて、当然支払いが済んだという設定で、 「じゃあ、行きましょう!」とレストランを出ようと相手を促したという。
彼女によれば、支払いが済んでいればそのまま出られるし、済んでいなかった場合、少なくとも彼に支払いを急がせることが出来るというのがその作戦。 お金が無い学生時代に良くやった手口なのだという。
相手の男性は支払いを済ましていなくて、チェックを見ながら計算を始めたので、てっきりチップの計算をしているのかと思ったら、 彼女の顔を見て、「君も払ってくれるの?」と真顔で訊いて来るので、彼女は 「初めてのデートは男性が支払うものよ!」 と 彼女曰く ”キュートにその質問をかわした” つもりでいたところ、返って来たリアクションというのが 「これってデートだったの? 僕はただハングアウトしているだけかと思ってた」 というもの。
これですっかり侮辱された気持ちになった彼女は、キッチリ半分を彼女のカードで支払って、さっさと家に帰ってきたというけれど、 直ぐに相手の男性から携帯メールが届いて、「また君とハングアウトしたい」と書いてあったそうで 当然のことながら彼女は 「私って一体何なの?」と真剣に考えてしまったという。 ちなみに、この日彼女が支払ったのはチップを含めて40ドルちょっと。でも彼の方が高い料理を頼んでいたので、 彼女の方が持ち出し分が多かったはず・・・というのがそのコメントなのだった。

ハングアウトというのは、日本語にし難い言葉だけれど、カジュアルに一緒に時間を過ごすこと。 普通はロマンティックな意味合いが無い言葉だけれど、女性を最初のデートに誘う際に 相手が構えないように あえて ” デート ” ではなく ” ハングアウト ” という言葉を 使う男性が多いのも事実で、男性にその気さえあれば、 ” ハングアウト ” = ” デート ” な訳である。
でも私の友人の場合、 ” ハングアウト ” = ” 男性が女性と割り勘に出来るディナー ” という新しい定義をその体験で 学ばせられてしまった訳で、彼女はこの男性とその後3回ほど ” ハングアウト ” して、 いずれも割り勘にしてきたという。
結局、この男性が初めて彼女の分を支払ってくれたのが、スターバックスのコーヒー。 でもその後映画を観に行って、彼のチケット代12.50ドルを立て替えていた彼女は、彼に10ドルを渡されて 「さっきコーヒー代を払ったから、映画代はこれで良いでしょ?」 と言われて、 すっかりシラケてしまったという。
この話を聞いて、私の別の友達が興味を示したのが 「2人の間には本当に 何も無いのか?」ということ。 彼女は、任天堂のウィ・テニスをしに彼のアパートに2回ほど遊びに行っていて、そのうち1日は彼の家に泊まっているにも関わらず、 本当に2人の間には何も無くて、言葉の通り ハングアウトしているだけなのだという。

私はこの話を、最初は「ケチな男!」と思って聞いていたけれど、ここまで聞いた後はすっかり考えを改めて、 それほど下心が無いハングアウトなのだったら、何も男性が食事代を支払う必要は無いかも・・・と思ってしまったのだった。
そもそも 男性が相手の女性と セックスをしたがらないのだったらゲイ男性と同じようなもの。 私はゲイ男性とディナーに出かけたら、女友達同様に割り勘にする訳で、この男性の場合も ディナーを割り勘にする方が筋が通っているように考えられるのだった。
いずれにしても、この一連のエピソードで私が悟ったのは、 「セックス・アンド・ザ・シティ」 のシーズン1のエピソードで、 サマンサが語っていた「男が与え、女が受け取るっていうのは ”バイオロジカル・デスティ二ー (生まれながらの運命)” よ!」 という 台詞 は、 男性が女性に対して性的興味、もしくは社会的プライドを抱いている場合にしか通用しないセオリーであるということ。 すなわち、男性側が女性に対して性的興味があって、一緒に時間を過ごすことに意味合いや下心がある場合は、 男性がディナーでもドリンクでも喜んで支払うものだけれど、リセッションで男性の性欲と経済力が低下しているご時世だと、 ”デート” が ”ハングアウト ” になって、ディナーが割り勘になってしまう事態が起こるのも理解できるように思えるのだった。

そういう ”デート” 、” ハングアウト” といった下らないカテゴリーに翻弄される友達を見ていただけに、3週間ほど前に 新しく バンク・オブ・アメリカ・タワーの1階に移転したレストラン、 オリオール(写真右)で 友人と私の隣のテーブルに座った 全く見知らぬカップルに対して 私が 勧めたのが 2人の結婚。
このカップルは、仲睦まじく料理を取り分けながらディナーを楽しんでいたので、友人と私は 当然、夫婦か恋人同士だと思っていたけれど、カップルの女性側と私の友人が 同時に化粧室に席を立ったので、それぞれのテーブルに残された男性と私は 目が合ったのをきっかけに 会話を始めたのだった。
彼は既に1度このレストランに来ていて、その時にとても美味しかったので、この日彼女を連れて訪れたとのこと。 訊いてみると、この2人は5年生の時から2年間同じクラスで、それ以来1度も会っていなかったけれど、何とタイムズ・スクエアで 何十年ぶりかで 再会し、お互いに 全く変わっていない お互いのことが 直ぐに分かったという 運命的な出会いをしていたのだった。
この日は2人にとっての再会以来 最初の ディナーとのことだったけれど、2人は息がピッタリ合っている上に、 既に幸せなカップルとしてのオーラを放っている パーフェクト・マッチぶり。 なので、2人が共に シングルで誰とも付き合っていないことを確認した私は、 2人が余計な 恋愛の駆け引きで無駄な時間やエネルギーを使うことないように と思い、 「別に今日婚約しなくても良いけれど、近日中にお互いの両親をブランチで引き合わせるべき!」と提案しただけでなく、2人にそれを実行することを約束させてしまったのだった。
2人は「私達、そんな間柄じゃないから・・・」 などと言わないだけでなく、「結婚したら、ブライズメイドをしてくれる?」などと言ってくるほどの乗り気ぶり。 なので、私は 「早い方が良いから・・・」 と言って2月のウェディングを提案して、男性には 「彼女の両親に会ったら、経済的な安定を保障することを強調してね!」と アドバイスしておいたのだった。
2人はその後シアターに出掛ける予定だったようで、8時前に友人と私にお礼を言ってレストランを出て行ったけれど、男性側は先に女性のコートを受け取って彼女に着せてあげる紳士ぶり。 しかも、驚いたことには、彼は彼女のディナーを支払っているのはもちろんのこと、私達のデザートまで支払ってレストランを後にしており、 私達はデザートをオーダーする段階になって ウェイトレスからそのサプライズ・プレゼントについて知らされたのだった。
私は、お金離れの良さだけが男性の評価基準とは思わないけれどが、やはり女性を幸せにする男性というのは たとえリセッションでも チマチマ誰が幾らを支払うべきなどと 言わない人だと思うのだった。
なので、友人と私にこんなチャーミングなプレゼントをしてくれた男性は きっと彼女を幸せにすることが出来ると確信するだけに、 このカップルには本当に結婚して、 そして ハッピーになって欲しいと思うのだった。





Catch of the Week No. 1 Oct. : 10月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Sep. : 9 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Sep. : 9 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Sep. : 9 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Sep. : 9 月 第 1 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





© Cube New York Inc. 2009