Oct. 4 〜 Oct. 10 2010




” Where's Money? ”


今週末のアメリカは月曜にコロンバス・デイを控えた3連休。 連休を明るく迎えようというムードのためか、金曜のダウ平均は5ヶ月ぶりに1万1000ドル台を回復して引けたのだった。
アメリカの株式市場というのは、時にこじつけたような中味の無い好材料に敏感に反応して 株価がアップするものだけれど、 実際のアメリカ経済状況が株価を反映したものではないことは、投資をしていない人ほど身にしみて感じているもの。
写真右はニューヨーク・ポスト紙に木曜に掲載された記事であるけれど、 これによれば、ニューヨーカーの2009年度の個人収入は3.1%ダウンしており、これは過去70年で初めての減少。 ことに収入の減りが激しいのはプライベート・セクターで働く個人で、その年収は6.8%ダウンしていることが伝えられているのだった
さらにニューヨーカーの失業率は2007年以来 106%のアップ、住宅価格は同じく2007年と比較して15%もダウン。 家の差し押さえ件数は2007年と比較して30%増加する一方で、住宅販売件数は2008年度から 34.9%ダウンしていることが伝えられているのだった。

記事のタイトルにもあるように、まさにニューヨークにとっては経済の大災害の年と言えたのが2009年であるけれど、 この記事の1部として掲載されていた2人のニューヨーカーのファイナンシャル・プロファイルは、その傾向が2010年にはさらに悪化している 様子が如実に現れているのだった。
ここに登場した2人のうちの1人は 38歳で会計士を営む男性。昨年は約2000ドルあった週給が今年は1500ドルに目減りし、今年はヴァケーションもなし。 このため、今年からはレントが600ドル安いアパートに引っ越し、生活を切り詰めている様子が描かれているのだった。
もう1人紹介されていたのは、26歳の駆け出しコスメトロジストの女性のケース。 今年夏にやっと再就職したばかりの彼女の週給は僅か215ドル、月給にして860ドルという安さ。もちろん外食などの贅沢は出来ないし、 アパートもルームメイトとのシェアで、そのレントは550ドル。昨年よりレントは25ドルアップしているという。
彼女のケースでショッキングだったのは、現在の収入が 仕事を見つける前に失業手当を支払われている時より少ないという事実。 彼女は就職前は週に325ドルの失業手当を受け取っており、月給にして1300ドル。税金の支払い義務も無かったという。
ところが仕事を見つけてからは、月収にして$440ドル手取り額が減っただけでなく、これに最低でも4%の所得税が課せられることになるので、 仕事を見つけたからといって必ずしも喜べない状況になっていたのだった。
仕事をするより失業保険を受け取っていた方が 収入が多いとなれば、「失業保険が受け取れるうちは無理に仕事をしたくない」 と考える人が居ても不思議では無いもの。 私にとって この状況は、抱えている住宅ローンの額の方が 家の価値よりずっと 大きいことを理由に、ローンの支払いを諦めて 家を出てしまう人々が多い 現在のアメリカの状況と非常にダブるものがあるのだった。
危惧されるべきなのは 「仕事をする」、「ローンを返済する」といった 社会的にまっとうな行為に対する代償が全く無いだけでなく、 「それを放棄した方がマシ」、あるいは「楽が出来る」という状況になっていることで、これでは 経済が回復に向かおうとしても、 その余力が弱者救済に吸い取られてしまうという悪循環を招いてしまうのである。
そもそも弱者救済の資金源は税金。そして税金の犠牲になるのは常にミドル・クラスと中小企業。 既に ミドル・クラスの数が減り、中小企業がサバイバル状態になっているのは周知の通りであるけれど、 こうした状況が貧富の差を益々広げていく現象は リセッションに入って以来、言うまでも無く顕著になっているのだった。

35歳以上の人だったら、 「人生ゲーム」で遊んだ経験がある人が多いと思うけれど、昭和時代に爆発的にブームになったこのゲームの結末は、 「億万長者になるか、貧乏農場に行くか?」。 高度成長時代は、そのどちらにもならないミドル・クラスが世の中に溢れていただけに、 私は子供心に この極端な結末を不思議に思ったことがあるけれど、現代は まさに人生ゲームのように 両極端な人生の結末が 用意されていると考えて、 心して生きなければならない時代。
家を買って、羽振りの良いビジネスをしていた人が、失業して収入が無くなり、離婚で財産の半分を失い、 ストレスで身体を壊して破産というような、人生ゲームのルーレットでツキに見放されたような状況が、 ゲームボードの上でなく、実際の人生で起こっているのが現在の世の中なのである。

ところで、今週にはバンク・オブ・アメリカが、相次ぐ書類の不備を受けて 家の差し押さえプロセスを一端ストップすることを発表。 また、オバマ大統領も 差し押さえプロセスを早め、銀行にとって有利に進める法案に対して 拒否権を発動することが報じられたけれど、 事実、住宅差し押さえのプロセスは、家の持ち主が提出した書類などには一切 目が通されることなく、 右から左への一方的な手続きで行われるケースが殆どとのことで、 本来差し押さえになる必要が無い人々が こうした乱雑なプロセスの犠牲になってきたことが伝えられているのだった。
また中には書類が捏造(ねつぞう)されているケースもあるというけれど、差し押さえになる側は そんな偽の書類の存在を知らないままにプロセスが行われてきた訳で、そうしたことが ここへ来て やっと問題視されているのだった。
でも これらの問題は、必ず銀行側が 弱者から散々利益をむしり取った後に浮上してきて、 銀行側が自ら問題を自己申告することによって、自らが有利なように解決していくのがこれまでのシナリオ。
経済の専門家の中には、「銀行側が一時差し押さえをストップするのは解決策ではなく、 余力のある人々からさらに返済額を巻き上げてから、差し押さえをしようとする手段 」という 厳しい指摘も聞かれているけれど、 こうしたことが行われているのが マフィア絡みの高利貸しではなく、一般の人々がお金を預けている大銀行という点が 私にとって最も恐ろしいと感じるところなのである。


さて、貧富の差が開いているアメリカでお金があるのは一体どういう人々で、そのお金がどうやって使われているのか? という 素朴な疑問を抱く人も多いけれど、私は今週友人と話していて その答えと言えるようなエピソードを聞いたのだった。
私の友人は先週末、女友達の婚約パーティーに出かけたというけれど、その友達というのは23歳のウクライナ人モデル。 言うまでも無く、長身の美女。
婚約者の男性は、49歳のロシア系大金持ちのビジネス・エグゼクティブ。 彼と婚約してからというもの、ウクライナ人の元モデル嬢は ブランド物のギフトを受け取り、ハンプトンで優雅なウィークエンドを過ごし、 プライベート・ジェットで彼の旅行に同行するようなプリンセス・ライフをエンジョイしていたとのことで、 もちろん彼女は初婚で、相手の男性は再婚。
婚約パーティーのような席では 主催者側のパワーや家柄の良さが ゲストの格に現れるものだけれど、 会場となったマンハッタンのプライベート・クラブのパーティー・ルームには ワシントンの政界関係者や、ロシア系の大金持ちが ズラリと顔を揃え、その夫人と思しき女性達はピンポン玉のような巨大なジュエリーを指にも、首にも付けて、 私の友人は自らの貧しさを思い知ってしまった とこぼしていたのだった。

もう1つ、私のテニスのヒッティング・パートナーから聞いたのが、彼の55歳の不動産大富豪のクライアントの話。 この男性には20代の愛人が4人も居て、私のヒッティング・パートナーが会ったのはそのうちの1人。 男性は彼女のアパートのレント+生活費として、毎月9000ドル(約74万円)を彼女に支払い、その上に彼女の学費を支払っているという。
ニューヨークでは、愛人として こういう美味しい思いをしているのはロシア系と相場が決まっているので、 一応ヒッティング・パートナーに「その愛人ってロシア人?」と聞いたところ 「Of Course!」という返事が返ってきたのだった。
その富豪クライアントは 55歳という年齢も省みずに、クラブに出掛けてVIP遊びをするのが大好きとのことで、 その財布の中には20枚もクレジット・カードを備えているとのこと。 彼以外にも、ニューヨークのホットなクラブでは、いい歳をした男性が 露出の激しいアウトフィットを身につけた自称モデルを8人も連れて、 常にストレッチ・リムジンでやってきては、VIP遊びをしているケースが見られて、 こうした男性達はクラブのプロモーターの間では有名人であったりする。

この2つの話から言えるのは、お金がある男性達が20代の長身ロシア人美女に お金をつぎ込んでいるということ。 しかも中には、ニューヨーク・ポストの記事に登場した38歳の会計士の年収以上を支払われている愛人も居る訳である。
その一方で、真面目に勉強をした若い世代は、企業が新規採用を控えている上に、雇う場合、経験を優先させるので、 なかなか仕事に就けず、学費ローンを抱えて苦しい生活を強いられている状態。 かつて、私が尊敬するベンジャミン・フランクリンは、「知識への投資が最も利息を生み出す」と語ったけれど、 今の時代は「ロシア系モデルが最も美味しい思いをする」という状況になっているのだった。

ところで、私に言わせるとヒッティング・パートナーのクライアントは、大金持ちかもしれないけれど、 メガリッチの世界に ドップリ浸かっているとはあまり思えない存在。
というのも、今時20枚もクレジット・カードを持ち歩くなんて 本当のメガリッチは絶対しないこと。 本物のメガリッチの財布の中に現在入っているのは 通常、アメリカン・エクスプレスのセンチュリアン・カードとVISAのブラック・カードのみ。 センチュリアン・カードについては以前このコーナーで書いたことがあるけれど、 今年初めに登場したVISAのブラック・カードは、その年会費がアメックスのプラチナ・カードより安い395ドル。 アメリカのトップ1%の人々のみに発行するということで そのステイタスを保とうとしているカードで、 コンシアージュ・サービスは、アメリカン・エクスプレス並みのクォリティであるという。
メガ・リッチがセンチュリアン・カード以外にVISAブラックを持つ必要があるのは、世界を旅行する場合、 アメックスが使えない状況が時々あるためで、その点 VISAはオールマイティで便利であるという。

ちなみに、ニューヨークでVIP遊びをする場合に 水戸黄門の印籠のような役割を果たすのは圧倒的にセンチュリアン・カード。 このカードをキープするためには年間25万ドル(約2050万円)をカードで支払い、3000ドル(約24万6000円)の年会費を支払わなければならないとあって、 同カードを出すということは大金持ちだと高らかに宣言しているということ。
そしてこのカードさえ ひけらかせば、長身美女のロシアン・モデルも簡単になびいてくれるのである。


Catch of the Week No. 1 Oct. : 10月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Sep. : 9月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Sep. : 9月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Sep. : 9月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Sep. : 9月 第 1 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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