Oct. 5 〜 Oct. 11 2015

” The Asian Advantage in US? ”
アメリカにおける アジアン・アドバンテージ?


今週のアメリカで最も大きなニュースになったのは、共和党ジョン・ベイナー下院議長(写真上左、右側)辞任後の後任候補として 最有力であったケヴィン・マッカーシー(写真上左、左側)が、突如その立候補を取り消したという報道。
大統領選挙を控えて、一般の人々の政治への関心が高まっている昨今のアメリカであるけれど、 ローマ法王フランシスコが下院で初のスピーチを行った翌日に、ベイナー下院議員が辞任を発表したのがサプライズならば、 今週木曜にケヴィン・マッカーシーがその後任の立候補を取り消したのも 更なるサプライズ。 同報道は、過半数を占めながら、全く足並みが揃わない共和党内部の状況を露呈していると捉えられていたのだった。
ケヴィン・マッカーシーは立候補を取り止める直前に、2012年にリビアのベンガジで起こった米国領事館襲撃事件に関する、 ヒラリー・クリントン当時国務長官に対する隠蔽(いんぺい)疑惑捜査が、その大統領選挙の妨害工作の一端として 行われいることを示唆する発言をして、民主共和両党から大顰蹙を買ったばかり。 このためマッカーシーが下院議長立候補を取り止めた理由が、その失言が原因という見方もあったけれど、 今週には彼の不倫疑惑も浮上。でもその浮気相手と言われたレネー・エルマーズ下院議員は、 放送禁止用語を使って その噂をキッパリ否定しているのだった。

下院議長のポストを巡る共和党内部のドタバタぶりは、週末の「サタデー・ナイト・ライヴ」のコメディ・スケッチのネタにもなって、笑いをそそっていたけれど、 ニューヨーカーにとって笑っていられない状況となったのが、同じ土曜の夜、 ロサンジェルスで行われていたメッツVS.ドジャースのプレイオフ第2戦でのダーティー・プレー。
7回裏に内野ゴロを ダブル・プレーで処理しようと、セカンド・ベースにタッチし、1塁に送球しようとしたのがメッツのショートストップ、 ルーベン・テハダ。これに対して、フットボールのタックルのように テハダ目掛けた妨害スライディングを見せたのが ドジャースの1塁ランナーであったチェイス・アトリー。 このプレーがターニング・ポイントとなってメッツが逆転負けしただけでなく、テハダは足を骨折。 メッツがベスト・プレーヤーの1人を失っただけでなく、テハダはこのまま引退を迫られる可能性さえあるという最悪の状況を迎えているのだった。
同プレーは、私がこのコラムを書いている日曜のNYポスト紙の表&裏表紙(写真上)を飾ったことに象徴されるように、 メジャーリーグのみならず、全てのスポーツ・ファンの間で物議を醸したプレーで、 9年ぶりにプレイオフに駒を進めたニューヨーク・メッツのファンを激怒させたのは言うまでもないこと。 ツイッター上でも 大炎上していたのがこのトピックで、ドジャース・ファンでさえ アトリーを批判していた一方で、 デブラジオNY市長までもが抗議のツイートをしていた有り様。
月曜のプレイオフ第3戦は 舞台がメッツの本拠地、シティ・フィールドに移るのに加えて、ニューヨーク・メディアが一斉に チェイス・アトリーが過去にも 内野手を危険にさらすスライディングを何度も行っていた前例を指摘して 彼を叩いたことから、 アトリーに対しては猛烈なブーイングが見込まれているけれど、同時に メッツ・ファンの間では 第3戦で先発を務めるメッツのエース、 マット・ハーヴィーに対して 「リベンジ投球(死球での仕返し)をするべき」との声も聞かれているのだった。




話は変わって、今日のニューヨーク・タイムズ紙に掲載されていたのが、「The Asian Advantage/ジ・アジアン・アドバンテージ」 というタイトルの記事。
アメリカには、様々な人種が居るとは言え、社会統計的に語られる際のカテゴライズは白人、黒人、ヒスパニック、そしてアジア人という4グループ。 長きに渡って、アメリカ社会で最大のマイノリティであったのが黒人層であるけれど、 それがヒスパニックに追い抜かれたのは近年のこと。 センサス・ビューローの最新の調査結果によれば、現在移民の47%がヒスパニック系。 しかしながら新たに移民としてアメリカにやってくるアジア人の数は、2013年の時点でヒスパニックを上回っており、 2050年までには アジア人は黒人層を抜いて、ヒスパニックに次ぐアメリカ第2位のマイノリティ・グループになることが見込まれているのだった。
そのアジア人、及びアジア系アメリカ人は、今や白人層を上回り 最も高学歴な人種グループであると同時に、 その平均年間世帯所得が アメリカ全体の平均年間所得を上回っている 唯一のマイノリティ人種。 ニューヨーク・タイムズの記事の著者、ニコラス・クリストフは この要因を アジア人の移民が、往々にして高学歴で、既にドクターやリサーチ・サイエンティストといった 高収入が得られるプロフェッショナルとしてアメリカにやってくること、 アジア系ファミリーの離婚率が低く、家庭環境、生活環境が安定していること、 そしてアジア人が学問を重視し、学生時代からハードワークを奨励するカルチャーであることを指摘しているのだった。

またアメリカ社会においては、「アジア人なのだから数学が出来るはず」、 「アジア人の学生は優秀」といった ポジティブな人種偏見が根強く、 アジア人学生がその人種スタンダードに見合う学力レベルを保つプレッシャーを感じて努力する傾向が強いことも 同記事では説明されており、 「Aマイナスは、アジア人にとってのF」というジョークを引用して、常にAやAプラスが 当たり前のアジア人学生の優秀さが紹介されていたのだった。




またアジア人の移民は、親の世代が貧しくても 子供が高学歴、高収入のキャリアへの ステータスアップを見せる例も非常に多いとのことで、 事実、アジア系移民のサクセスは、「マイノリティをもっと優遇するべき」、「マイノリティにチャンスを与えるべき」と 訴える黒人&ヒスパニック層に対する 白人層の反論に頻繁に用いられて久しい状況。 すなわち、人種のディスアドバンテージを振りかざす黒人&ヒスパニック層に対して、 「文句を言わずに、アジア人のようにハードワークでサクセスを勝ち取れ」というのが、白人層のマイノリティ優遇措置に対する反論になっているのだった。

しかしながらアメリカ社会が 高学歴のアジア系アメリカ人のサクセスを諸手を上げて歓迎してするかと言えば そうでもないのが実情。 その象徴と言われるのが、アジア人学生の プレステージの高い大学への進学ハードルが高いこと。 例えば過去10年間でハーバード大学に入学を希望するアジア人は3倍に増えたものの、2012年に入学したアジア人学生の数は、 1992年に入学した学生よりも少ないとのこと。 ハーバード側は、過去10年間でアジア人学生の割合が17%から21%に増えたとして、これがアメリカの総人口における アジア人の増加を上回るプロポーションであると反論しているけれど、 アジア人学生は、白人を含む どの人種よりもSAT(アメリカにおける共通一時試験)で高得点を得ないかぎりは、 アイビー・リーグの大学に進学出来ないと言われて久しい状況なのだった。

また 数学や科学など、学問的には優れていても、ダンス&音楽等のパフォーマンスやクリエイティビティという点で、 他人種ほど秀でた存在が居ないことが指摘されるのがアジア人、及びアジア人学生。
その一方でアジア人女性が人種を超えて異性にアピールするのに対して、 アジア人男性の他人種の女性へのアピールは未だに弱いことが指摘されており、 そのことはデーティング・サービスが ”アジア人女性との出会いを提供するイベント”を企画しても、 その逆のイベントが企画されない状況にも現れているのだった。
でも昨今では、若い世代を中心にアジア人女性が 以前よりもアジア人男性と交際、結婚するケースが増えているとのことで、 このことは、アジア人がアメリカ社会に根付いて来た状況を受けて、女性が白人男性と結婚することによって自分のアメリカ社会における ポジションを確立しようという意識が希薄になってきたことを現しているとも言われるのだった。




さて、ひと括りにアジア人と言った場合に、一体どの国籍が含まれるかと言えば、日本人、中国人、韓国人、ベトナム人、タイ人、 フィリピン人の ”イースト・エイジャン(東アジア人)”に加えて、 インド、スリランカ、パキスタン、バングラディシュといった ”サウス・エイジャン(南アジア人)”を纏めた総称がアジア人。
このうち、現在のアメリカにおける高学歴アジア系アメリカ人のマジョリティを担っているのは中国人と韓国人。 そしてこれから増えて行くアジア系移民のマジョリティとなるのが中国人とインド人なのだった。

前述のようにダンス&音楽等のパフォーマンスやクリエイティビティ分野に弱いアジア系は、 アメリカのエンターテイメント界において、人種比率に遥かに及ばない数のスターしか送り込んでいないのが実情。 アジア人ミュージシャンで最も知名度が高いのは、ヨー・ヨー・マ。日本人では今も ヨーコ・オノが知名度のトップ。 私が昨夜食事をしたアメリカ人の友人4人は全員、日本人俳優、日本人ミュージシャンを1人もフルネームで言えず、 「あの映画に出ていた人」程度に思い当たる俳優が居る程度。 でも黒澤明監督のことはもちろん知っていて、アメリカ社会全般では意外にインテリ層に知られているのが村上春樹氏の存在とその作品なのだった。

とは言ってもYouTubeの世界には既にアジア人スーパースターが存在していて、それが全世界に700万人のサブスクライバーを持つ Michelle Phan / ミシェル・ファン(写真上左)。彼女のメーク&ビューティーのレクチャー・ビデオは既に300本を越えて、 ロレアル社は彼女のコスメティック・ラインを発売しているほか、その著書も出版されており、YouTubeミリオネアの走りとなったのが彼女。

また、この秋からは3大ネットワークの1つであるABCで、アジア人を主演にした番組が2本スタートしているけれど、 その1本が映画「ハングオーバー」で一躍有名になった韓国系アメリカ人俳優、ケン・ジョン(写真上、中央)を主演にした「ドクター・ケン」。 同番組は俳優になる以前は実際に医師であった彼が ドクターを演じるコメディで、2週目が放映された時点では、まずまずの視聴率。
でもそれを超える高視聴率を獲得しているのが、インドの大スター女優、プリヤンカ・ショプラ(写真上、右)がFBIエージェントに扮する 「クアンティコ」。このサスペンスは、放映2週目に視聴率をアップさせただけでなく、DVD録画をする人々が増えていることが指摘されており、 批評家の間では、「プリヤンカ・ショプラがハリウッド・デビューを果たす日も近い」という声が聞かれているのだった。

Pew リサーチの調べによれば、2015年の時点でアメリカ総人口の人種別比率は、白人層が62%、黒人層が12%、ヒスパニック系は18%、 そしてアジア人が6%。このうち向こう40年で人口比率が唯一横ばいするマイノリティが黒人層。 その数を約33%増やすのがヒスパニック、233%増やすのがアジア人で、ヒスパニックとアジア人の増加分だけ人口比率を落とすのが白人層。
でも世界各国の国力が経済力のパワーであるのと同様、アメリカ国内における人種のパワーも 財力や購買力のパワーに比例することから、アジア人がアメリカ社会において最もパワフルなマイノリティになりつつあることは確実と言えるのだった。

Will New York 宿泊施設滞在



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

Shopping

PAGE TOP