Oct.13 〜 19 2003




Curse Is Alive!!


週末からヤンキーズVS.フロリダ・マーリンズのワールド・シリーズがスタートしたけれど、 私がこのページの更新を遅らせて、週末に出掛けていたのが ヤンキーズにリーグ・チャンピオンシップで敗れたレッドソックスのお膝元、ボストン。
先週行なわれていたヤンキーズVS.レッドソックスのチャンピオンシップは、かねてからの宿敵のライバル・チームの対決とは言え、 これまでに無いアグリーな様相を呈したものだったのは日本でも報道された通りである。
ことに全米のメディアが大々的に報じた 第3戦の乱闘、そしてブルペンでの暴力騒ぎは、 様々な論争を呼ぶことになったけれど、この一連のトラブルで メジャーリーグから最高額の罰金を科せられたのがボストン・レッドソックスのピッチャー、ペドロ・マルティネスである。
ペドロ・マルティネスと言えば、ヤンキー・ファンが憎らしいと思いながらも、 リーグのベスト・ピッチャーと認めざるを得ない名投手。 でもそのマナーの悪さ、クラス(品格)の無さは度々指摘されるもので、 第3戦でも、彼がヤンキーズのダグアウトを指差して「次はお前らにぶつけてやる」と言わんばかりの 挑発的なジェスチャーを見せたことは、例え神経戦も勝負のうちとは言え、 「あんな態度を取るべきではない」という声はレッドソックス・ファンからも聞かれたほどだった。
そのマルティネスが再び登板した第7戦、7回までマルティネスの投球から5センチも離れたところで バットを振っていたヤンキー・ナインを見て、「今年こそ行ける」と勝利を確信した レッドソックス・ファンは、地元ボストンには非常に多かったようである。 ところがそのヤンキーズに8回から突如 連打が飛び出して、同点に追い付き、その後 延長11回の アーロン・ブーンのサヨナラ・ホームランでヤンキーズが劇的な勝利を収めたことは、 正直なところヤンキー・ファンの私から見ても ヤンキーズにとっての「奇蹟」というよりも、レッドソックスにとっての「べーブルースの呪い」と言うべきものだった。
「べーブルースの呪い」については10月 第1週目のこのコーナーでも ご説明しているけれど、ヤンキーズの選手が、 メモリアル・パークのべーブルースの石碑にキスをして、シャンペンを掛けていた姿は 印象的であったし、サヨナラ・ホームランの瞬間に 「Curse Is Alive!! / 呪いは生きている!」とアナウンサーが叫んでいたのも 今回ばかりは妙に真実味を帯びて聞こえるものだった。

さて、今年もやっぱりダメだったレッドソックスだけれど、果たしてボストンはどうなっていたかと言えば、 この後味の悪いサヨナラ負けから未だ立ち直っていない様子は、様々な部分から感じられていた。
今週末のボストンのホテルは、ワールド・シリーズにレッドソックスが出場することを見込んだ予約が殺到していたそうで、 ビジネスマンや旅行者の中には市内のホテルが取れなかった人も多かったという。
スポーツ・ニュースのワールド・シリーズ報道にしても「本来だったらレッドソックスが出場している筈の ワールド・シリーズは…」といった皮肉交じりのセンテンスが聞かれたし、 日曜日のNFL(フットボール)で地元ニューイングランド・ペイトリオッツが劇的な勝利を収めたことを伝える際も、 「レッドソックスの夢が破れても、ペイトリオッツがある」と、事ある毎にレッドソックスの敗北が強調されていた。
でも、人々が物凄く落ち込んでいるかというと そうでもないようで、私が話したタクシーのドライバー達は 皆、口を揃えて「レッドソックス・ファンは、もうこんなのは何十年も経験して馴れっこだから」と意外にもサバサバと語っていた。

ニューヨークを離れて気がついたのは、世の中はシカゴ・カブスVS.ボストン・レッドソックスによる 80年、90年も優勝できなかったチーム同士のワールドシリーズを期待していたということで、 そのカブスの夢を打ち砕いたのは、日本でも報道された通り、カブス・ファンによるファールボールのキャッチであった。
ボールをキャッチした男性には、当然のことながらカブス・ファンの怒りが集中したため、 彼はシカゴ警察に保護されながら帰宅し、翌日もこの男性の自宅はシカゴ警察によって警備されることになってしまった。 男性はゲームの翌日、謝罪メッセージを発表し、自分はファールボールしか見えていなくて、カブスの選手がそれをキャッチしようとしているのに 気がつかなかったと説明していたけれど、 この1件で私が思い出したのは、1996年のヤンキーズVS.オリオールズのリーグ・チャンピオンシップで、 ヤンキー・ファンの少年が、確か網のようなものをフェンスから出して デレク・ジーターが打ったフライ・ボールをキャッチしたために、それがホームランとなり、 ヤンキーズが勝利したゲーム、 そして2000年のヤンキーズVS.メッツのサブウェイ・シリーズ(ワールド・シリーズ)で、 当時メッツの1員だったトッド・ジーリーが打ったボールが外野フェンスのクッションに当たり、 普通ならファンがそれに飛び付いて、ホームランとなるところを ヤンキー・ファンの男性があえて取ろうとしなかったために ボールがフィールドに戻り、ホームランだと思い込んで走っていたメッツの走者2人が 共にアウトになったというプレーだった。
どちらもファンの行動がヤンキーズにとって幸いした例で、 当然のことながらボールを捕った少年も、捕らなかった男性もヒーローになってしまったけれど、 やはりワールド・チャンピオンになれるチームというのは、 ファンにも恵まれるものなのだろうか?と思ってしまった。

ところで、論議を巻き起こしたヤンキーズVS.レッドソックス第3戦の翌日、私は旅行の準備でケープ・エアというボストンの小さな航空会社に 電話を掛けていたけれど、その時、軽い冗談でオペレーターに「フェンウェイ・パーク(ボストン・レッドソックスの本拠地)で 何が起ころうと、ボストンに行くのを楽しみにしている」と言ったところ、 相手は間髪入れずに「ヤンキーズのファンなの?」と訊いて来た。 もちろん私は「Die Hard Yankee Fan(しぶといまでのヤンキー・ファン)」と答えたけれど、電話の向こう側にいるのは 「Die Hard Red Sox Fan」。でも彼女と私は至って友好的に第3戦の問題点を 語り合って、「ヤンキーズVS.レッドソックスでワールドシリーズが戦えたら面白いのに…。」などと 言いながら、結局30分以上、野球のことで話し込んでしまった。
何処のチームのファンであろうと本当に野球が好きな人と野球について語り合うのは楽しいものだけれど、 特にヤンキーズとレッドソックスは因縁のライバルであるだけに、お互いに覚えている試合や 覚えているプレーが共通していて、私達はすっかり意気投合してしまった。
そして語り合ううちに達した結論は、ヤンキー・ファンとレッド・ソックス・ファンは 意外にも良い飲み友達になれるかも知れないということだった。




再会!

先述のとおり、私は今週末をボストンで過ごしていたけれど、 ボストン行きが決まった途端に、私が心に決めていたのが ファイン・アート・ミュージアムにあるクロード・モネの「ラ・ジャポネーズ」という絵(写真左)を 見に行こうということだった。
私が初めてこの絵を見たのは、かれこれ20年前に上野美術館で大々的に行なわれた クロード・モネ展でのことで、モネらしからぬ色彩、構図ではあるものの、 その鮮やかな美しさと迫力に魅せられて、絵の前から離れられなくなってしまったことは今でもはっきり覚えていることである。
一緒に出掛けた私の親友も、この絵をとても気に入り、2人でこの作品を眺めながら何十分も過ごしたけれど、 そうすることになったのは、絵の説明の部分に「ボストン美術館からの出展」と書いてあったのを見て、 「パリのルーブルならまだしも、ボストンに行く事なんて一生無いだろうから、 この絵を生で見られるのはこれが最後」と考えて、その素晴らしさを目に焼き付けようとしたからだった。
今回、ボストンには2泊3日の滞在だったけれど、着いた日の午後には美術館を訪れて、 他の展示には目もくれずに向ったのがこの絵だった。そして約20年ぶりに再会したこの作品は、 私の鮮明な記憶と全く同じ美しさ、鮮やかさ、迫力のあるもので、私はまたしてもこの絵の前で 何分もたたずんで、何度もこの絵の前に戻り、様々な距離からこの絵を眺めることになってしまった。
そして不思議な気持ちになったのが、この絵を最初に見た時、 私は自分の人生が24〜25歳で結婚して、子供を産むような ものだと思い込んでいたことで、自分が外国で暮らすなんて想像もしなかったし、 この絵を再び生で見る日が来るということも、全く考えてもみなかったことである。
だから人間の人生なんて、本当にどうなっていくかは分からないものだと改めて感じてしまったし、 自分が本当に好きなものには、時間が掛かってもいつかは出逢えるものなのかもしれないとも思ってしまった。
世の中には、成り行きで不本意な仕事に就いてしまい、そのまま人生が終わるものとあきらめている人が 少なくないけれど、本当にやりたい事、好きな仕事がある人は、時間が掛かってもやがて それを始めることになる例は多いし、一度はあきらめた本当に好きな人と時間を掛けて 結ばれる例も少なくないのである。
「1枚の絵と再会したくらいで大袈裟」と思われるかもしれないけれど、 モネの絵を見るうちに私が強く感じたのは「人生、いつかは…という希望を捨ててはいけない」ということだった。



Catch of the Week No.2 Oct. : 10月 第2週


Catch of the Week No.1 Oct. : 10月 第1週


Catch of the Week No.4 Sep. : 9月 第4週


Catch of the Week No.3 Sep. : 9月 第3週