Oct. 10 〜 Oct.. 16 2005



Being Single



シングル・ライフを続けている人なら、誰もが痛感しているのが「出逢いの難しさ」であるけれど、 その難しさが故に、「出逢いの場」を提供することが ビジネスとして成り立つのは言うまでも無いことである。
この「出逢いの場」というものは 時代を映してどんどん移り変わっているもので、 私が知る限り、アメリカで最初に、見ず知らずの男女が知り合う場所として、 社会現象的に取り沙汰されたのは70年代のシングルズ・バーである。 この時代を象徴するダークな映画として、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッド・バーを探して (Looking for Mr. Good Bar)」があるけれど、 このタイトルのグッド・バーのバーとは、「シングルズ・バー」という意味だけでなく、「止まり木」的な意味も兼ねているのだそうで、 女性が 「自分の羽を休められる 止まり木になってくれる男性を探している」というメッセージがこめられたタイトルであったという。

これが80年代に入ると、西海岸からスタートしたフィットネス・ブームで、ジムが新たな男女の出逢いの場として シングルズ・バーに取って代わる存在になったけれど、この背景にはエイズの存在が 一般に認識されるようになった事実があることは否めないものである。
今から振り替えると、80年代から90年代前半までのジムでは、当時のエアロビクス・ブームを受けて、 ハイレグのレオタードや、身体のラインがクッキリ出るボディ・スーツ、レギンスを着用した女性が非常に多かったし、 ハイレグ・ソングのレオタードとレギンスのレイヤーという、今から思えば 何とも奇妙な出で立ちがホットとされて、 ボディに自信のある女性を中心に着用されていたのは記憶に新しいところである。

そして90年代末からこれに取って代わったのが、マッチ・ドット・コムに代表されるインターネット上の マッチメイキング・サイトであるけれど、 こうした全米規模の大きな流れ以外に、ニューヨークに関して言えば、90年代前半には、大型書籍店、バーンズ&ノーブルズが 男女の出逢いの場となった時期もあったし、スターバックスが未だマンハッタンに数店しかなかった90年代半ばには、 スターバックスも出逢いの場とされていた時期がある。また ここ2〜3年ほどは、アイポッドのブームを受けて ソーホーのアップル・ストアが若い層の出逢いのスポットと言われて来たし、 地下鉄の「L」 トレインも、若く ヒップな乗客が多いと言われ、ニューヨーク・ポスト紙などのローカル・メディアが 着目する出逢いの場となっていたりする。

その一方で、今日、10月16日付けのニューヨーク・タイムズ紙のスタイル・セクションに掲載されていたのが、 スパが新たな男女の出逢いのスポットになりつつあるという記事。
スパといえば、これまでは男性客を獲得するために、ブリス・スパが以前行っていた「マッチョ・マンデー」のように、 男性客のみの日や時間帯を設けて、彼らが女性の目を気にせず、マニキュアやフェイシャルが受けられるよう配慮をしてきたものだったけれど、 今や女性に出逢えるスポットとしてのスパをプロモートした方が、男性客が増えるとして、 「Co−Ed」、すなわち男女ミックスのスパ、男女がミングルできるスペースを設けたスパが増え始めているというのが そのレポートだったのである。
私は個人的には、ペディキュア後の、足の指にティッシュが巻きつけられた状態で、タオル地のスリッパを履いて、 スッピンで、バス・ローブを着用した姿が、どれだけ男性にアピールするのかは 疑わしく思っているけれど、 マニキュア、ペディキュア、フェイシャルをするほどにグルーミングにお金や時間を使っている男性は、 自分と同様にパーソナル・ケアに気を使っている女性との交際を望んでいるという事実を考慮すれば、 スパが出逢いのスポットとなり得ることは納得できるところである。

でも、シングルライフが長くなれば なるほど、出逢いよりも 難しいと思えるのが、出逢った者同士が、お互いを お互いの生活の中にアジャストさせていくことである。
ことにニューヨークのように、キャリア優先のライフスタイルのシングルが多い街では、 先ず仕事をバリバリこなして、その残った時間で、自分のやりたいこと、やらなければいけないことをこなしていくことになるけれど、 平均的なニューヨーカーが往復の通勤時間と勤務時間に費やしているのは1日10時間。 これとニューヨーカーの平均的な睡眠時間、6.5時間を差し引くと、可処分所得ならぬ、可処分時間として残されているのは、 1日7.5時間となる。この中から、食事をしたり、シャワーを浴びたり、歯を磨いたり、郵便物やEメールをチェックしたりという、 様々なデイリー・ルーティーンや雑務に掛ける時間で、約4〜5時間を費やすのが一般的といわれている。 加えて、ジムに出掛けたり、ペットの散歩や世話をしたり、ショッピングやヘア・カットに出掛けたり、自分の趣味や勉強に時間を使いたいなどと思ったら、 出逢った相手と何らかの生活の接点を持たない限り、お互いに特別な時間を作って、会い続けるというのは非常に難しいと言わなければならないのである。

私の友人に言わせれば、20代のシングルと、30代以降のシングルの違いは、 20代のシングルは、可処分時間とエネルギーをパートナーを探す時間、パートナーと一緒に過ごす時間にあてて、 その選ぶ基準は自分が理想とするルックス、経済状態、パーソナリティーであるのに対し、 30代の以降のシングルは、自分の世界というものを持ち始めて、それに時間とエネルギーを注ぎ始めるので、 理想像の基準が若干緩むことがあっても、自分の世界に無理なく共存できるパートナーという条件が加わる分、 相手選びが難しくなっていく点であるという。
また私の別の友人は、「35歳を過ぎてもシングルで居る人は、そもそも1人で居るのが好きな人間」と指摘していたけれど、 これは、私自身を含む、私の周囲を見る限りにおいては、実に「言い得て妙」である。 実際、私が知る35歳以降のシングルは、皆、付き合っている相手は居ても、「1人で居る時間が大切」、 「住むのは1人の方が気楽」という見解を持っていて、人に合わせず、自分の時間をコントロールできる自由というものが、 ライフスタイルどころか、体質になってしまっている感さえあるのが実情なのである。
同じ30歳以降のシングルでも、離婚経験者や、長く一緒に暮らしたパートナーと別れた人の方が、 早く次の結婚相手やパートナーが見つかる傾向にあるのは、こうした人々の方が、相手に合わせる生活、 誰かとシェアする生活というのに、順応しているため と言われるけれど、 実際、離婚経験者の方が、35歳過ぎのライフ・ロング・シングルよりもずっと結婚にオープンで前向きなのは紛れも無い事実である。 

かく言う私は、自分が長くシングルを続けてきたからといっても、決して結婚反対派ではなく、どちらかと言えば、 結婚願望がある女性には30代前半までの、知恵がつき過ぎる前の段階で結婚してしまうことを勧めているけれど、 それでも、今の世の中で 20代半ばで結婚するというのは、ちょっと早過ぎるのでは?と思っていたりする。
理由は、以前にもこのコーナーに書いたけれど、女性は20代から30代前半に掛けて、2〜3回のターニング・ポイントを迎えるもので、 その都度、キャリア、結婚観が著しく変わる場合があるためである。 実際のところ、アメリカでは、20代で結婚したカップルの2組に1組、すなわち50%が離婚をしており、 これは相手を間違えたというよりも、自分自身を理解していなかったケースが多いと指摘されているのである。

ところで、私は既婚者になったことは無いので、既婚者の生活については決して口出しやら、批評はしないけれど、 既婚者は、以前シングルであっただけに、シングル・ライフに対してそれぞれネガティブ、ポジティブな意見を持っていることが多いようである。
一説では、自分のシングルライフが楽しかった既婚者、結婚生活がハッピーな既婚者の方が、シングル族に対してポジティブな考えを持っており、 シングルに対してネガティブな既婚者は、シングル時代に結婚願望が極めて強かった人、自分の結婚生活がハッピーで無い人 などと言われているけれど、これについては、確認のしようがないだけに、どの程度当たっているかは分からないものである。
ただ、一度親になってしまうと子供の気持ちが分からなくなるのと同様、一度結婚してしまえば シングルの状況も分からなくなるもので、 実際のところ、シングルというのは既婚者が思っているほど 悪いものでも、良いものでもないのである。



Catch of the Week No.2 Oct. : 10月 第2週


Catch of the Week No.1 Oct. : 10月 第1週


Catch of the Week No.4 Sep. : 9月 第4週


Catch of the Week No.3 Sep. : 9月 第3週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。