Oct. 9 〜 Oct. 15
吉方のポジティブ効果
今週ニューヨークで起こった最大の事件と言えるのは、イースト・リバーに程近い42階建てのアパートメント・ビルディングに、
ヤンキーズの投手で、パイロットとしては極めて飛行経験の浅いコリー・リドルが操縦する飛行機が突っ込んだというもの。
コリー・リドル、そして同乗していた飛行インストラクターは即死で、同事件はニューヨーカーに 9/11のテロを思い起こさせたけれど、
何よりもニューヨーカーを驚かせたと同時に、イースト・リバー&ハドソン・リバー沿いの高層ビルの住人を震え上がらせたのは、
そんな飛行経験の浅いパイロットが 住宅街のすぐ傍の河川上を飛行するに当たって 何の制限もされていないという事実。
マンハッタンでは、イーストサイドの96丁目より上は、ラガーディア空港に近いために飛行禁止区域になっているけれど、
それ以下のダウンタウン・エリアやハドソン・リバー沿いには1100フィート以下で飛行する限りは制限が無いそうで、実際
事故を起こした飛行機もイースト・リバーを北上して、90丁目あたりで旋回してからコントロールを失って、72丁目のビルに突入したというのが、
そのルートだったという。
なので、CUBE New York のオフィスを含むアッパー・イーストの90丁目より 上のテナントにとっては、若干規制で守られているという感じであるけれど、
それでも操縦不可能になった場合は、規制などあっても役には立たない訳で、この緩すぎる飛行制限はこの事件をきっかけに見直されることになっている。
ちなみに突入されたビルの住人は、飛行機が突っ込んだ30階、31階を除いては、金曜にはアパートに戻ることが許されており、
テロの時のようにビルが崩れ落ちるような惨事にはならなかった代わりに、事件後は このビルを一目見ようという野次馬が詰め掛けていることも
伝えられている。
この事故が起こった時、私が出掛けていたのがミラノで、事件については、アシスタントからのEメールと、日本から心配して連絡をくれた
友人からのEメールで知らされたような状態だった。
さて、私が旅行に出掛ける際に、プライベートでもビジネスでも必ずチェックするのが、占いの方位である。
私は、母が占いをする関係で、”方位のパワー”というのを学生時代から思い知らされており、旅行は 極力 「方位取り」を兼ねて出掛けるようにしている
のである。
この「方位取り」というのは、特定の方角に出掛けて 自分の運勢に必要な卦をその土地から吸収してくるというもの。
正式に方位取りをしようとすると、決められた時間帯にその土地の湧き水を取ったり、石や砂などを取ったりして、なかなか大変なものだけれど、
私はそこまではせずに、自分にとって方位が良いところに旅行に出掛けて、その土地のポジティブなエネルギーを吸収して来るという形で、
方位取りを行っていたりする。
また方位を選んで旅行をすると、天気に恵まれたり、良い人々に出会えたり、旅行の歯車が良い方向に上手く噛み合うので、
楽しくて、有意義な旅行が出来る上に、お金を払った以上の経験が出来てしまうという利点もあったりする。
私が近年、その方位の教えに背いて旅行をしたのは 昨年のサンクス・ギヴィングに 出掛けたパリであったけれど、
この時、私が酷い目にあったのは 昨年11月4週目のこのコラム”Sleepless In Paris” にも書いた通りだけど、
ここで説明しただけでなく、ロジェ・ヴィヴィエルでシューズを買ったら、右と左のサイズが違っていて大雨の中を取替えに行くことになったり、
高いレストランでがっかりするような料理を食べさせられたり等、本当に惨憺たる旅行だったのである。
以来、「方位は侮れない」ことを更に痛感した私は、今年のナパ&サンフランシスコの出張、7月のフィラデルフィア等、きちんと方位をチェックして
旅行することにしており、目的地に到着してからの移動にも注意を払って出掛けるようになったのだった。
さて、今回の旅行はミラノだけが目的地ではなくて、先ず先週末にスイスのチューリッヒで行われた友人の結婚式に出席し、
本当は翌日ミラノ入りする予定を、チューリッヒから見たミラノの方位が悪いということで、1日延期して、
今週月曜から金曜までの日程で ミラノに滞在することにしたのだった。
でも母親にクギを指されていたのが、10月という月で見るとヨーロッパの方位は良いけれど、2006年という年で見ると方位が良くないということで、
母の占いによれば、今回の私の旅行は 「好事魔多し、でも切り抜けられて吉」ということだった。
実際、この占いの言葉は今回の私の旅行を象徴しているようなものだったけれど、でも好事魔は多くても、楽しい事やラッキーな事の方が
もっと多かったので、印象としては「吉」というよりは「大吉」という感じで戻れた旅行だったのは事実である。
具体的に何が好事魔であったか?と言えば、まずスイスでは水とシャンプーが髪に合わず、髪がバサバサな状態で友人の結婚式に出席することに
なってしまったし、式当日の朝にチューリッヒに到着して 仮眠を取ったせいで、1日中 「顔が目覚めない」 という感覚を味わうことになってしまったのだった。
またミラノでは、ホテルに到着してみると、デザインがモダン過ぎて分からない事や不便な事だらけ。
ちなみに私が今回滞在したのは、Straf / ストラフ という ドゥオモ に程近いブティック・ホテルだったけれど、天井からも 水が出てくるタイプの
シャワーだと知らずに シャワーを使おうとして、頭から冷水をかぶってしまったり、洗面所はコップ型のシンクしかないデザイン(写真右)で
メークがし難かったし、バス・ルームにしか鏡が無いのも不都合に感じられることだった。
結局、私は最後までバスルームの電気の消し方が分からず(バスルームの何処を探してもスイッチは見あたらないのである!)、
でもこれを消さない限り 摩りガラスの窓から指し混む光のせいで ベッドで眠ることが出来ないため、仕方なく 電源をコントロールするカード・キーを
抜くことで問題を解決していたのだった。
でも私などはまだ良い方だったようで、滞在3日目には日本人のグループが1日だけ滞在していたけれど、廊下から女性の声で
「扉の開け方を教えてください」というパニック調の日本語が聞こえていたから、部屋に入る前からホテルの難度に苦しんでいた人も居たようである。
その他の好事魔と言える出来事と言えば、チューリッヒ〜ミラノ間の荷物の扱いが乱雑だったようで、私が愛用するジョー・マローンのレッド・ロージズの100mlボトルが、ヴァニティ・ケースの中で割れて粉々になっていたことや、爪が割れた事、歩きすぎて足がパンパンに張ってしまったこと、
忙しすぎて睡眠時間が殆ど取れなかった事、徒歩数分のレストランに行くのに道に迷ってしまった事など、細かいトラブルは沢山あったけれど、
逆にポジティブ要素としては、満足の行くショッピングが出来たのに加えて、レストランではことごとくVIP待遇を受けて 凄く良い思いをしてしまったし、
思ったよりも私のイタリア語が通じたこと、お天気にも恵まれ、いろんな人たちに出会えた上に、ミラノに住む私の高校時代の友人にも再会出来て、
物凄く楽しい思いをすることが出来てしまったのである。
なので、あまりにミラノ滞在が楽しくてすっかりハイパー気味になっていた私だけれど、旅行中の最大のパニックと言えたのは、
帰りの空港で、私が乗る予定だったミラノ〜チューリッヒ間のアリタリア航空が オーバーブッキング だったこと。
この便を逃してしまうと、私はチューリッヒから搭乗予定のニューヨーク行きのスイス・エアのフライトも逃してしまうことになるので、
真っ青になってしまったけれど、アリタリア航空のチェックイン・カウンターのスタッフは、「チケット購入の際のコントラクトにも記載されているように、
アリタリア航空は例え貴方が別便を逃したとしても、それに対して責任を取る必要は無い」などと説明してくる始末で、
「方位が悪くないはずなのに、どうしたんだろう?」などと真剣に考えることになってしまったのだった。
そこで 「好事魔多し、でも切り抜けられて吉」という暗示を思い出して、アリタリア航空のスタッフに別会社の便を手配することが出来ないか?と
交渉したところ、相手も段々私に情が移ってきたようで、何本も電話を掛けくれて、もし私が予約した便に乗れなかった場合、スイス・エアで、
ニューヨーク行きに間に合う便を手配してくれることになったのだった。
しかも、空港のカフェで無料でブレックファストが食べられるクーポンまでもらえて、朝食を取りながら搭乗できるかの返答を待っていたら、
アリタリアのスタッフが気遣って声を掛けてくれたりするので、同じオーバー・ブッキングでも昨年のパリで味わったエア・フランスのオーバー・ブッキングとは
段違いの待遇を受けることになったのだった。
結局のところ、私は予約したアリタリア航空には乗れなかったけれど、これはアリタリア航空の人々がスイス・エアの代替便を利用した方が私にとって都合が良いと判断してくれたためで、お陰で、私はチューリッヒ行きと、ニューヨーク行きの両方のチェックインをミラノで済ませることが出来た上に、
荷物はチューリッヒでピックアップしなくてもニューヨークに自動的に送られていくことになり、
結果的にはラッキーと言える展開になったのだった。
なので、今回の旅行は 「好事魔多し、でも切り抜けられて吉」という母の占いの暗示どおり、トラブルには何回か見舞われたけれど、
大ハッピー&大満足と言える旅で、NYに戻ってからも 旅行があまりに楽しかったので、1人で思わずニコニコしてしまっているような状態である。
でも最後にミラノのホテル、ストラフについて付け加えておくならば、同ホテルは確かにデザインに走りすぎている部分はあるけれど、
いろいろ便利な部分も沢山あって、先ずブティック・ホテルにも関わらず朝食が付いていること。
これは、今回の私のように朝7時前にホテルを出るような場合、ホテルでコーヒー1杯でも飲めるのと飲めないのでは、
大違いなのである。
また、スタッフは皆若くて、2日も居るとすごくフレンドリーになってくるので、インターネットを無料で使わせてくれたりなど、
いろいろとサービスをしてくれるようになるし、ホテルのバーも、ミラネーゼの利用者が多いので面白かったりする。
ファッション関係者の宿泊が多いと言われるストラフだけれど、実際私もここで知り合ったのは、
ドイツのラルフ・ローレンに勤めているという人たちで、ドリンクをご馳走になっていろいろ話が聞けたのは、
面白い経験だった。なので、不便も若干あったけれど、また泊まっても悪く無いと思っているのがストラフなのである。
今回の旅行があまりに楽しかったので、最初の2日間ミラノで私に同行していた友人は、
「また直ぐにミラノに行きたい!」と言っていたけれど、私は昨年のパリで苦い思いをしているだけに、
「ちゃんと方位を選んでからにしようね 」と、そんな友人にクギを刺している状態であったりする。
方位が悪くて無理に出掛けた旅でも、それなりに思い出に残るのは事実ではあるけれど、
戻ってきた時にホッとする旅行よりは、戻って来た時に「また行きたい!」という思いが出来る旅行の方が、
お金もエネルギーも有効に使えるだけでなく、戻ってきてから自分自身に見られるポジティブ効果というのが全く異なることは、
本当に実感できることなのである。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。
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