Oct. 12 〜 Oct. 18 2015

” That Famous Love Ranch !? ”
オドム&カダーシアン騒動で脚光を浴びた合法売春宿とは?


今週のニューヨークで最も報道時間が割かれていたニュースの1つが、9年ぶりにプレイオフに進出した ニューヨーク・メッツが 木曜に行われた第5戦で ロサンジェルス・ドジャースを下して、 ナショナル・リーグ・チャンピオンシップに駒を進めたという快挙。
ここで勝利を収めれば、次はワールド・シリーズであるけれど、メッツが前回ワールド・シリーズに出場したのは 今から15年前の2000年、 対ヤンキーズのサブウェイ・シリーズの際。それだけに、既にシティ・フィールドでスタートしているナショナル・リーグ・チャンピオンシップの のチケット価格は、ワールド・シリーズ並みのお値段で取引されていることが伝えられるけれど、 そのニューヨーク・メッツが 前回ワールド・チャンピオンになったのは今から29年前の1986年のこと。
とは言っても、長年ファンが無冠に嘆いてきたのはニューヨーク・メッツに限ったことではなく、アメリカン・リーグ・チャンピオン・シップに駒を進めた トロント・ブルージェイズが前回ワールド・チャンピオンに輝いたのは1993年、その対戦相手であるカンサスシティ・ロイヤルズは ぴったり30年前の1985年。そしてニューヨーク・メッツと現在ナショナル・リーグ・チャンピオンシップを争っているシカゴ・カブスが 前回ワールド・チャンピオンになったのは1908年で、何と107年間も無冠の状態。

そんな中、話題を醸しているのが1989年に封切られた映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の中に登場する 2015年10月21日付けのUSAトゥデイ紙上で、シカゴ・カブスがワールド・シリーズを制したニュースが報じられていること(写真上右)。 このため 映画ファンやカブス・ファンの間では、同映画が26年前に 今年のワールド・シリーズを予言していたのでは? とも言われるけれど、メッツ・ファンにとって さほどその予言を心配する必要が無いのは、このUSAトゥデイ紙の右上に 「Washingtons Prepares for Queen Diana's Visit (ワシントンがダイアナ女王の訪米準備に着手)」 というヘッドラインがフィーチャーされているため。 これが現実になるためには 故ダイアナ妃が離婚することも、死去する事もなく、 チャールズ皇太子がエリザベス女王から王位を継承していなければならない訳で、 1つのヘッドラインだけで 3つの間違いがあるようでは、”予言新聞”としては かなり信憑性に乏しいと言えるのだった。




上の2015年10月21日付けのUSAトゥデイ紙で、もう1つ興味深いとされるのが「President Says She's Tired of…」という ヘッドラインがフィーチャーされているということで、2015年に女性大統領が誕生しているという同紙の予言も また外れているけれど、 来年の選挙でそれ実現するかもしれないことを感じさせたのが、今週行われた民主党大統領候補のディベート。
放映局のCNNが セットのデザインに合わせて 候補者にドレスコードをアドバイスしたとあって、 見た目も内容も、半分茶番染みた共和党のディベートとは異なり、極めてまともであったのがこのディベート。 ここで他の候補者と役者が違うところを見せたのが、昨今支持率を落としていたヒラリー・クリントン元国務長官。 逆にヒラリー氏の横で、猫背とボディ・ランゲージで損をしていたと指摘されていたのが 過去数ヶ月間 支持率を伸ばしてきたバーニー・サンダース候補。
でも民主党側で 現時点で最も注目が集っているのは、ジョー・バイデン副大統領が大統領選に 出馬するか否か。バイデン氏は既に選挙資金集めで大きく出遅れているだけに、政治評論家やメディアは「今週中に決定を下さなければ、 ”時間切れ”」と声を揃えて指摘しているのだった。




その民主党大統領候補のディベートが行われていた10月13日、火曜日夜に ディベートをプレス・ルームで見守っていた各メディアの記者達にブレーキング・ニュースとして飛び込んできたのが、 ヴェガス郊外のブロテル(売春宿)で元NBAプレーヤー、ラマー・オドム(35歳)が意識不明となり、病院に運ばれたというニュース。
ラマー・オドムは2009年、2010年にロサンジェルス・レイカーズの一員として、NBAチャンピオンシップに輝いているものの、 民主党大統領ディベートの真っ最中のプレスルームに、速報が伝えられるほどの スパースター・プレーヤーであった訳ではないのは周知の事実。 にも関わらず、まるで現役時代のマイケル・ジョーダンが意識不明になったかのような扱いを受けたのは、 彼が事実上、リアリティTVで一躍 エンパイアを築いたカダーシアン・ファミリーの一員であるため。 ちょうど民主党のディベートがラスヴェガスで行われていたこともあり、その取材に当っていた記者達は、 ディベート終了後には、ラマー・オドムが運び込まれた病院で取材を続ける羽目になっていたのだった。

ラマー・オドムは2009年にキム・カダーシアンの妹である クロエ・カダーシアンと結婚。 カダーシアン・ファミリーのリアリティTVに加えて、「クロエ&ラマー」という夫婦のリアリティTVに出演していたものの、 その後、飲酒運転で逮捕されたり、コカインの常用が伝えられた彼は、今年の夏には 正式にクロエとの 離婚の手続きに入っていることが伝えられていたのだった。

ラマー・オドムが意識不明で発見されたのは ”Love Ranch / ラブ・ランチ”という非常に有名なブロテル(売春宿)。 ネヴァダ州は、全米で唯一 売春が合法の州であるものの、法律の規制により ブロテルがあるのは人里離れた郊外。 彼はここで3日3晩 飲酒、ドラッグ、セックスに明け暮れた結果、意識不明で病院に担ぎ込まれたとのことで、 彼の体内から検出されたと言われるのが、コカインを始めとするドラッグに加えて、大量の”ハーバル・ヴァイアグラ”と呼ばれる 薬事法の規制を受けない危険なED治療薬。
ラマー・オドムはラブ・ランチのオーナー、デニス・ホフの友人で、インターネットを通じてラブ・ランチの娼婦2人とも 交友関係があったことが伝えられており、 デニス・ホフは、ラマー・オドムを VIPスイート(写真下)に滞在させるにあたって 「ドラッグを持ち込まないこと」を条件にしていたという。
彼は意識不明になる直前には、滞在延長を希望していたそうで、 ラブ・ランチが、彼の3日間の滞在に請求していた金額は 約7万9000ドル(約950万円)。 この金額は 同施設にとって 決して驚くべき高額請求とは言えないもので、 その証拠に「ラブ・ランチで数年間 働いた娼婦は、余生を一切働くこと無しに過ごすだけの収入が得られる」と言われているのだった。






ラスヴェガスの一流ホテルとは程遠い簡素なインテリアのラブ・ランチが何故 人々に知られているかと言えば、 同施設がケーブル局HBOが製作するリアリティTV、「キャットハウス」の舞台になっているため。 「キャットハウス」は2005年に放映がスタートし、今年で10シーズン目を迎える長寿番組。 実は私は この番組を興味深く観ていた時期があって、それというのも 以前 ラブ・ランチを訪れたことがある 日本人商社マンから、同施設の詳細について話を聞いていたためで、そのストーリーが舞台裏から垣間見れるのが同番組なのだった。
その商社マンは クライアントを含む男性4人でラブ・ランチを訪れたそうで、 まずはバーで一杯飲んでいると、 セクシーなアウトフィットの娼婦達が ズラリと彼らの前に並んで、 そこから好みの女性を選ぶのがファースト・ステップ。このシーンは「キャットハウス」の番組にも頻繁に登場していたけれど、 中には バーで娼婦達とドリンクやパーティーを楽しんで、そのプロセスで相手を選ぶクライアントも居るようなのだった。

私が話を聞いた商社マンは、接待をする側だったので 一番日本人好みの女性をクライアントに譲って、 彼はさほど好みではない女性を選んだと言っていたけれど、値段やサービスについての交渉は選んだ女性と プライベートに行われることになっていて、これは法律で規制されているため。 商社マンは、選んだ女性に 「君はあまり 日本人好みじゃないから」と言って 価格を値切ったそうだけれど、 逆に彼のクライアントは 女性から高額のフィーを突きつけらて ”商談”が成立せず、 他のメンバーが女性と過ごしている間、そのクライアントは バーでビリヤードに興じて、それなりに楽しんでいたとのことなのだった。
私が個人的に興味があったのは、時間制限のサービスとしてのセックスが 一体どんな風に終わるのか? であったけれど、商社マン男性によれば ラブ・ランチのスタッフが 扉をノックして 終わりを告げにやって来るとのこと。 「キャットハウス」では、そのタイムキーパーの舞台裏も紹介されていたけれど、 私が何年も前に番組を見ていた時点では、各クライアントの請求書の上にタイマーが乗せられているだけ という極めて原始的、かつシンプルな方法で 時間管理が行われていたのだった。

リアリティTVに登場するキャラクターというのは、往々にしてエゴが強くて、パブリシティが大好きというのがお決まりのシナリオであるけれど、 その点では、ラブ・ランチのオーナー、デニス・ホフ(写真上、左側の男性)とカダーシアン・ファミリーは 似たり寄ったりの存在。 今週はラマー・オドムのトラブルで、一躍メディアの脚光を浴びたデニス・ホフが 様々なメディアのインタビューに応えていたけれど、 これに対して「ラマー&クロエのプライバシーを尊重して、メディアの取材には応じないように」と釘を刺したのが、カダーシアン・ファミリーのPRパーソン。
でもプライバシーを訴えながらも、ホフに対する取材の代わりに 「クロエがインタビューに応える用意がある」とPRパーソンが語ったことに腹を立てたホフは、 クロエに対して「Go To Hell!/ 地獄に行け!」とののしっていたけれど、 茶番劇ではカダーシアン・ファミリーに 決して負けていないのが彼なのだった。

そのカダーシアン・ファミリーは、彼女らのリアリティTVのせいで ラマー・オダムが今回のドラッグ、アルコール&セックスのオーバードースに追い込まれたという メディアからの指摘に危険信号を覚えたようで、彼が病院に搬送されてからは家族をあげたサポートを見せており、 その様子が 共和党大統領候補のドナルド・トランプの問題発言のニュースと交互に報じられていたのが今週のアメリカ。
要するに今のアメリカのメディアは、リアリティTVスターに牛耳られていると言っても過言ではない状況。 したがって オバマ大統領が今週 改めてプッシュした銃規制についても、 彼が行ったスピーチよりも キム・カダーシアンがツイートした方がずっと効果的に国民にメッセージが浸透するようにさえ思えるのだった。

Will New York 宿泊施設滞在



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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