Oct. 20 〜 26 2003




オーラのパワー


今年のワールド・シリーズは、ご存知のようにフロリダ・マーリンズがヤンキーズを4勝2敗で下して 王者に輝いたけれど、ヤンキー・ファンの私としては残念と思う反面、 3週間前のこのコーナー(Catch of the Week No.1 Oct.:10月第1週) での予想が当たった!と思う部分もあったし、 今年のヤンキーズはチャンピオンになるほどのオーラが感じられないことは、 シーズン当初から言い暮らして来たことだったので、「やっぱり…」と思う部分も大きかったのが実際のところだった。
でも私が3週間前にマーリンズについて「 チームとして放っているオーラから、もしかすると彼らがワールド・チャンピオンになるかもしれないとも思い始めてもいる」と 書いた直後から マーリンズはナショナル・リーグ・チャンピオンシリーズでシカゴ・カブスに3連敗をしていたので、 私の知人の中には「オーラがあるはずなのに、負けそうじゃない」と思っている人も居たようだった。
私が何をもってマーリンズがチャンピオンになれそうなオーラを放っていると思ったかと言えば、 彼らのディビジョン・シリーズの戦いぶりに 「野球を楽しんでいる」というポジティブなエネルギーや、チャンピオンシップに輝くチームにありがちな「ノリ」を見たからで、 残念ながらこれは今年のヤンキーズにはそれほど感じられないものだった。 ワールド・シリーズ第6戦の前に、マーリンズの選手がインタビューに応えて 「多くの球団は、選手がビジネスとして野球をしているけれど、マーリンズは 感情でプレーするもっと特別なチームだ」と語っていたけれど、私はこのコメントを聞いて妙に納得してしまう感じだった。

日本では少し前に、人がちょっと有名になると誰でも「カリスマXXXX」と呼ぶ傾向があったけれど、 カリスマというものはそう誰もが持ち合わせているものではなく、同じ米国大統領でもビル・クリントンにはあって、 ジョージ・ブッシュには無いものである。
これに対してオーラというのは、誰にでも備わっているもので、どんなに地味で存在感の無い人でも何らかのレベルで発しているものである。 オーラには ポジティブなものもあれば、ネガティブなものもあり、 これは時にルックスや本来の人間性よりも 他人に対して大きく働きかける威力を持っていたりする。 だから、ルックスの良し悪しに関係なく、また一言も喋る事無しに、人が好かれたり、嫌われたりするのは その人が発しているオーラのせいである。
またオーラは非常に強い人も居れば、弱い人も居る訳で、それは一般的に存在感として捉えられる場合も多いけれど、 オーラの質や強さは決して一定ではなく、強くなったり、弱くなったりするし、 ネガティブになったり、ポジティブになったりもするものである。
でも総じて言えるのは、その人のスピリッツ(魂)の状態がそのままオーラに反映されるということで、 身体は健康でも 緊張感の無い生活をしている人からは強いオーラは放たれないし、 どんなに苦しい生活をしていても、何かを成し遂げようと前向きに取り組んでいる人、 特にその人が上昇気流に乗り始めると、そのオーラが非常にポジティブなエネルギーとなって 周囲を動かしてしまう場合もある。

私がアメリカに来て意外に感じたのは、アメリカ人が思いのほかこのオーラというものに敏感であることで、 「You Have Great Aura」とか「I Like Your Aura」といった誉め言葉は、 この国に住み始めてから初めて聞くようになったものである。
アメリカ人がオーラと共に、人間が発する目に見えないパワーについて良く使う言葉に 「ケミストリー」というものがあるけれど、これは複数の人間が発するオーラの相乗効果とも言えるものである。 「ケミストリー」とは本来「化学反応」という意味ではあるけれど、 異性間でも、映画の共演者同士でも、会社の組織でも、個々が出すオーラが ハーモニーを生み出して、全てが無理なく、自然に、効率良く機能して、 ポジティブなエネルギーの発信源となるのが「ケミストリーがある」と言われる状態である。
映画の世界では「プリティ・ウーマン」で共演したジュリア・ロバーツ&リチャード・ギアが 抜群のケミストリーがあると言われていたけれど、 確かにこの作品では2人がお互いに持っている魅力を引き出し合って、 単純でエンディングが分かっているラブ・ストーリーも、 素晴らしいエンターテイメントになっていると思う。
このことはスポーツ・チームにしても然りで、チャンピオン・シップに輝くようなチームというのは、 オーラが強く、チームとしてのケミストリーが感じられるものだけれど、 逆に言えば、チームのケミストリーをぶち壊しにするようなオーラを放つプレーヤーが居れば、 その人間のせいで、どんなに優秀な選手が揃ってもチームが勝てないということも起こってくるのである。
そうした「チャンピオンになれないオーラ」を放っている選手というのは一流選手の中にも少なくない訳で、 私に言わせればNFLでかつてマイアミ・ドルフィンズのクォーターバックだったダン・マリーノ、 バッファロー・ビルズのクォーターバックとして4回もスーパーボウルに出場して、 1度も勝てなかったジム・ケリー等はその典型例である。 どちらもNFLの殿堂入り確実の歴史に残る名クォーターバックで、素晴らしい成績を残し、 沢山の勝利を経験しているけれど、「最後に勝利の女神が微笑むオーラ」というか、 「スーパーボウル・チャンピオンとして頂点に立つオーラ」というのは持ち合わせて居なかったように思う。

その意味で、私が今のヤンキーズに「勝てないオーラ」をもたらしていると思うプレーヤーは ジェイソン・ジオンビである。
私は長年のヤンキー・ファンで彼の事を「ヤンキーズのプレーヤーらしくない」と嫌う人を何人も知っているけれど、 昨シーズンの春先、成績が悪かったジオンビがヤンキー・スタジアムで猛然とブーイングされた 原因も、単に彼が打てなかっただけでなく、多くのファンが彼の中に「王者ヤンキーズの一員らしからぬ何か」を 感じていたのではないか?とさえ思っていたりする。
ジオンビ1人が抜けたところで、ヤンキーズに王者のオーラやケミストリーが戻って来るほど 簡単な話では無いとは思うけれど、 1人の人間のオーラのパワーを軽視してはいけないというのは、 企業のプロジェクトでも、ちょっとしたパーティーを開くだけでも言えることである。
1人のネガティブ・オーラをポジティブ・オーラに変えただけで、 そこに抜群のケミストリーが生まれることは非常に多い訳で、 そうしたちょっとした違いが、同じように実力のある人間やチームを勝者と敗者に分けてしまうのだと思う。



「若草物語」について思うこと

私は文章を書くことを仕事の一部にしているにもかかわらず、小さい頃から本を読むのが嫌いで、 記事は読んでも、本は読まない生活は今も続いていたりする。
もちろんリサーチの一環となる本は読むけれど、それも最初から最後まで 読むことは先ず無いのが実際のところで、一生の間に最初から最後まで読んだ本の数の少なさでは 人には負けないとさえ思っている。
でも一度気に入った本があると、その本は3〜4回読んだりするし、特に気に入った部分は、 更に何度も読み返して、その文章からいろいろなことを思い出したり、考えたりするので、 気に入った本についてはストーリーから登場人物の名前までをほぼ完璧に覚えていたりする。 とは言っても、そうした何度も読み返すほど気に入った本には もう何年も巡り会っていなかったりする。
そんな私が、これまでの人生に最も影響を与えた本を一冊挙げるとするならば、 「若草物語」である。日本ではこんな少女趣味的タイトルであるけれど、 原題は「Little Women/リトル・ウィメン」といって、こちらの方がずっと内容に即していると私は考えている。
ストーリーはキャラクターの異なる4人姉妹が成長していく姿を様々な出来事と共に描いていくものだけれど、 モラル、家族愛、人に施すこと、人を許す事、自立など、様々なことを教えてくれたり、考えさせてくれる本で、 一度英語の原作を読んでみたいと思っているほど、気に入っているものだったりする。
この著者であるルイーザ・メイ・オルコットは1832年生まれの女流作家で、 「若草物語」の初版が出版されたのは1868年9月30日、彼女が35歳の時だった。 この物語は、4人姉妹の1人として、南北戦争時代を過ごしたオルコット自身の体験に基づくストーリーで、 今から135年前の、本の印刷や流通が全く発達していない当時、僅か8ヶ月程で、1万5000万部を 売り尽くしたというメガ・ベストセラーで、この時代に 字が読めるほどに教育が受けられた人口を 考慮するならば、これは更に驚くべき数字であったりする。
「若草物語」はハリウッドでも何度となく映画化されている作品で、一番最近に映画化されたのは、 1994年、ワイノナ・ライダーがオルコットのアルター・エゴであるジョセフィンを演じて オスカーにノミネートされ、母親役をスーザン・サランドンが、1番下の妹、エイミーを キースティン・ダンストが、そして隣人のローリーをクリスチャン・ベイルが演じたものだった。
映画が原作を超えないというのは、「若草物語」の場合、非常に顕著で、 2時間程度の作品には 誰もが知っている有名なエピソードしか盛り込めない訳で、 4人の姉妹の様々な人間性を感じさせるには薄っぺらな印象を与えてしまうのは仕方が無いと思う。

ここでふと考えてみると、現代で キャラクターが異なる4人の女性像とそのライフスタイルを 描いて大ヒットとなっているのが、言うまでも無く「セックス・アンド・ザ・シティ」である。 主人公が原作者のアルター・エゴであるライター(キャリー&ジョセフィン)で、 原作者の実際の体験に基づいて書かれたものであるところも同じであるし、 一見女性をターゲットとしたストーリーに思われがちであるけれど、 一度読み始めたり、見始めたりすると男性も夢中になってしまうところも似ていたりする。
だからといって「若草物語」が南北戦争時代の「セックス・アンド・ザ・シティ」 だとは 言わないけれど、奇しくもこの2つは私にとって最も関わりが深い書物とTV番組であったりする。
「セックス・アンド・ザ・シティ」 が135年後には、どうなっているかは分からないけれど、 「若草物語」のような名作は永遠に不滅であって欲しいと願うのが私の正直な気持ちである。









Catch of the Week No.3 Oct. : 10月 第3週


Catch of the Week No.2 Oct. : 10月 第2週


Catch of the Week No.1 Oct. : 10月 第1週


Catch of the Week No.4 Sep. : 9月 第4週