Oct. 22 〜 Oct. 28 2007




”20代女性達のヤッピー・ギルト ”



今週のアメリカのメディアで最も大きく報じられていたのは カリフォルニアの各地で起こった山火事のニュースであったけれど、 その大規模な火災の火の手はセレブリティが数多く暮らすマリブにも達しており、ジェニファー・アニストンやトリー・スペリングの 邸宅なども危険にさらされていたことがレポートされている。
最も被害が大きかったサンディエゴ地区だけで、山火事の被害総額は10億ドル(1150億円)以上と言われているけれど、 この災害への対応は、ハリケーン・カテリーナ後のニュー・オリンズと比べると雲泥の差とも言われるもの。 カテリーナの際にはシェルターとなっていたスーパー・ドーム内でレイプ事件が続発し、シェルター内の治安の悪さとモラルの低さ、 衛生面の問題や、水や食料が十部に供給されないことが問題視されていたけれど、 サンディエゴのシェルターとなっていたクァルコム・スタジアムでは、多数のボランティアが現場をサポートしていたのに加えて、 水と食料は十分に行き渡り、マッサージや針治療、ヨガのクラスまでもが避難者に供給されているという。
こうした待遇はハリケーン・カテリーナの際の経験が生かされたというよりも、 被害地域が裕福な白人層が暮らすエリアであることに加えて、来年大統領選挙を控えているという政治的な理由が 大きいと言われているけれど、それでも消火や救出活動については 各方面からクレームが寄せられているのも また事実のようである。

さて、ニューヨークで先週 報道されていたのが デート斡旋ビジネスとして知られる「イッツ・ジャスト・ランチ」が、 同社の会員になっている女性達から集団訴訟で訴えられたというニュース。
平日のランチタイムに ブラインド・デート(いわゆるお見合い) をセットアップする 「イッツ・ジャスト・ランチ」 がスタートしたのは90年代前半のこと。 現在はランチだけでなく、ドリンク・デートなどもセットアップしているようであるけれど、 基本的に ランチタイムの短時間のデートならば時間が取り易く、出会った相手が気に入らなくても仕事を口実に短時間で逃げ出せる といった気軽さが手伝って、話題と人気を集めたのが インターネット普及前の90年代のこと。
その後、「マッチ・ドット・コム」などの インターネット・マッチメーキング・ビジネスにお株を奪われながらも、 全米各都市のみならず、世界数カ国でメンバーを増やしてきたのが「イッツ・ジャスト・ランチ」で、現在その会員数は 3万人以上。月に平均5万件のデートをセットアップし、同社がきっかけで結婚に至ったカップルは数千組 というのが 同社の言い分である。
しかしながら、今回訴訟に踏み切った女性達によれば 年会費とサービス料として500〜1500ドル(約6万円〜17万円)をチャージしながら、 「デートで待ち合わせのバーに行って見たら、相手の男性はアル中だった」とか、 「プロファイルにはスポーツマンと書いてあったのに、肥満体の男性が現れた」、 「ランドスケープ・アーティストと紹介された男性が、実は片手間に、庭の芝刈りをしているだけだった」、 「アート・ディーラーと紹介された男性は、運送会社でアートの運搬をしているだけだった」など、 話として聞くには笑えて面白いものの、本人だったら「騙された!」と気分が悪くなるような デートをセットアップし続けてきたという。
実はこの「イッツ・ジャスト・ランチ」というビジネスは今年7月にも、メンバーに対してオーバー・チャージをしていることが指摘され、 州の司法長官から約500万円の罰金の支払いを命じられたばかり。 また3年ほど前には、メンバーの女性達が「月に 4〜5人とのデートをセットアップする」と謳っておきながら、 半年たっても2回しかデート相手を紹介されていない」と 同社に対してクレームをしていたけれど、 この時の「イッツ・ジャスト・ランチ」側の言い分は、「女性達がもっとちゃんとメークをして、エクササイズで体重を落としてくれないと・・・」 という女性側に責任を転嫁するもの。 実際クレームをした数人の女性達は手が掛かったルックスとは言い難く、そのうちの何人かは 明らかに かなりの肥満という体型だったのである。
それでも、この時はクレームした女性達と「イッツ・ジャスト・ランチ」の間で、「同社がメンバーシップの期間を無料で延長し、きちんと男性を紹介する」という 条件で和解に至っており、訴訟まで発展することは無かったのだった。 でも この1件から教訓を得たのか、以来 同社は質はともかくとしてデート相手だけは 着実にクライアントに紹介する ビジネスを続けてきたようである。

ニューヨークに暮らす女性でデート・サービスを利用する人の言い分というのは、「ニューヨークはただでさえ シングル男性が足りなくて、女性が余っているんだから、お金を払ってプロにセットアップしてもらわなければ、デート相手を見つけるなんて 無理」というもの。
反面、デート・サービスを信じない女性の言い分というのは、「ニューヨークはただでさえシングル男性が足りなくて、 女性が余っているんだから・・・」というところまでは一緒であるものの、「デート・サービスにお金を払ってまで 女性を探さなければならない男性なんて、ろくなのが居る筈が無い」というもの。
実際に今回のような集団訴訟が起こってみると、後者の「デート・サービスなんて信じない」という女性の読みの方が 当たっているように感じられるのは事実である。
噂では、日本円にして約100百万円以上の登録料をチャージして、良家の出、もしくはサクセスフルなリッチな男女の マッチメーキングやシングルズ・パーティーを専門に行うロンドンのビジネスが、新たにニューヨークでもスタートすることになっているというけれど、 もちろん こうしたビジネスはお金さえ払えば 誰でも登録できる訳ではなく、収入、学歴、職歴はもちろんのこと、 ありとあらゆるバックグラウンド調査が行われ、株式や不動産などの財産の証明までを必要とするもの。
でも逆に言えば、ある程度メンバーをふるいにかけない限り、一定のクォリティの女性と男性を紹介し続けるというのは不可能に等しい訳で、 その意味では他より高額なメンバーフィーを支払うものの、誰にでも登録が出来る「イッツ・ジャスト・ランチ」のようなビジネスでは、 それほど真っ当な出会いが期待できないのは当然と言えば当然の事なのである。
またホリデイ・シーズンが近づいてくると、ニューヨークを始めとする都市部では、シングルを対照にしたマッチメーキング・パーティーが 数多く行われるけれど、ここニューヨークに関しては 多くのパーティーで男性参加者が足りず、スタッフが知り合いの既婚男性やシングルでも 既に女性と一緒に暮らしているような男性を参加費無料で招待したり、 時にフィーを支払ってまで参加してもらっているという。 なので、まともな男性が何人も居るパーティーは 「逆に怪しい!」 というのは 主催者側のサポートをした経験がある男性の言い分である。

一方、インターネットのマッチメーキングの最大手、「マッチ・ドット・コム」では、現在50代以上の利用者が非常に増えていることが 伝えられている。 こうした利用者は離婚した両親の将来を心配する子供達に薦められて、「マッチ・ドット・コム」に登録するとのこと。
もちろん、若い世代の利用者も決して少なくはないけれど、若い世代の方が、「マッチ・ドット・コム」を ロマンス一辺倒の目的では利用していないことが指摘されている。 例えば、就職や転職で新しい街に移り住んで、知り合いが全く居ないため、 デート相手もさることながら、友達作りのために「マッチ・ドット・コム」を利用するというのはその顕著な例。 また若い女性の場合、 食事代、映画代をデート相手に払って貰って生活費を浮かせるために 「マッチ・ドット・コム」で次から次へと 新しい男性を見つけているケースも多いという。
さらに、特定の都市に頻繁に出張がある人は、出張先のナイトライフで退屈しないための ディナー&ドリンク・コンパニオン、時に浮気相手を「マッチ・ドット・コム」で探しているという。

ここまで聞くと、「そんな利点でもないと、若い世代があえてマッチ・ドット・コムでデート相手を探す必要なんて無いはず・・・」 と考える人も少なくないけれど、現在 意外にもデート相手に困っていると言われるのが20代の女性達である。 というのも現在の20代というのは、女性の年収が男性の年収を上回ったアメリカ初のジェネレーション。
例えば、現在のニューヨークでフルタイムで働く21〜30歳の女性の年収は、同じ年齢の男性フルタイム・ワーカーよりも 17%も高いという。この傾向はニューヨークのみならず、シカゴ、サンフランシスコ、ボストン、ミネアポリスなど アメリカの主要都市で 2005年の調査から認められているという。
女性の収入が男性を上回る 主要な要因として挙げられるのは、20代の女性が男性より高学歴であるためで、 現在20代のフルタイム・ワーカーのうち、女性の大卒が53%に達しているのに対して、 20代の男性のフルタイム・ワーカーでカレッジ・ディグリー(大学卒業資格)を持っているのは38%に過ぎないという。
また時を遡れば、現在の20代というのは高校時代に 主要科目が男女別のクラスで授業が行われるようになった 最初のジェネレーション。これは頭の良い女子生徒、クラスで積極的に発言する女子生徒が クラスで男子生徒に からかわれたり、敬遠されるために行われた措置 と言われるけれど、 お陰で 女子生徒の学力が急速に向上したと同時に、女子学生に対する大学の奨学金制度が非常に増えたのもこのジェネレーション。
その結果、女子生徒が高学歴かつ、キャリアに対しても積極的で、高いレベルを目指す傾向が顕著になったのが 現在の20代の女性達なのである。

こうした20代の女性達は、同じ20代の男性達よりも収入が高いだけでなく、 プライベート・ライフでも 男性より 興味の対象が広範囲に及んでいると言われるけれど、 具体的にこれが何を意味するかといえば、女性は一流レストランでの食事やワイン、オペラ、アートの鑑賞、ブランド物の服やシューズ、 エキゾティックな海外旅行を好む反面、 男性は高額レストランやワイン、オペラ、アートとは無縁の生活をしており、 ダイナーで食事をし、バーでビールを飲みながら友人達とスポーツ観戦をするのが通常のナイトライフという生活。 女性達がクリスチャン・ルブタンやマノーロ・ブラーニックのシューズに支払うのと ほぼ同金額が 彼ら月々支払うレント(家賃)という 経済とカルチャーのアンバランスが生じているのである。
これが逆のシチュエーションであれば、女性は男性によって提供されるブランド物や一流レストランでのラグジュアリアスなディナー、 オペラやアートといったカルチャーに、乾いたスポンジが水分を吸収するがごとく 馴染んでいくものであるけれど、 女性側が経済の優位に立っている場合、状況はそれほど簡単でなはないという。 というのも男性側は、自分の稼ぎが多く無いのは承知していても、自分の方が女性よりが経済的に優位であるべきという プライドや、 女性との関係で自分が主導権を握りたいという意識が強いためで、女性の収入の高さが原因で別れるカップルは決して 少なくないという。
また付き合いを続けていても、女性側がヤッピー・ギルト(サクセスフルに稼いでいる人が、稼ぎの少ない人に対して抱く罪悪感)を感じるあまり、 付き合う男性の経済力に応じた生活を強いられることになり、高額なレストランや、ビジネス・クラスのフライトでのバケーションを楽しむ経済力を持ちながら、 相手に遠慮をするあまり、それをエンジョイすることが出来ないという状況に陥っていることが指摘されているのである。

こうした問題は、 20代の女性達が 40代の経済力がある男性とデートした場合は全く感じずに居られるというけれど、 ある程度収入のある女性が、自分よりも20も年上の男性とデートしたがるか?と言えば殆どの場合、答えはNo。
お金の無い20代の女性ならば、40代の男性とデートして 食事やバケーション、ショッピングの支払いをしてもらうのは 有難いし、男性側にしてみれば、自分より遥かに若い女性とデートしているという優越感は、そうした出費に見合うもの。
でも、男性に支払って貰う必要が無いほどに稼いでいて、精神的にもインディペンデントな女性達にとっては、 「世代が違う男性とデートしても面白くない」という意識は強いようで、こうした20代女性が最も 付き合いたがるのは、 30代前半から半ば程度の年齢の男性。 でも このマーケットは極めて小さく、引く手数多であるため、若く美しく、サクセスフルな20代女性でも デート相手がなかなか見つからないのは 他の世代同様であるという。

ところで、アメリカ人と話していて デート相手を探す話題になると、昨今では男性でも女性でも 自分の好みを、 「出来ればマンハッタンに住んでいて、年収が10万ドル以上、あまり忙しすぎなくて、映画や食事に出かけるのが好きな人。 宗教は問わないけれど、人種は・・・・」というように、かなり詳しく説明する傾向が強く、 誰も、「性格がおおらかな人」などとは言わないものである。
私の友人に言わせれば、これは「マッチ・ドット・コム」のプロフィールを作成する際の必要記入事項に類似しているのだそうで、 インターネット・マッチメーキングのビジネスが様々な形で現代のシングルライフに影響を及ぼしているのは紛れも無い事実。
でもこうした条件がぴったりマッチしたところで、必ずしもロマンスが花開く訳ではないのが現実の世界なのである。





Catch of the Week No. 3 Oct. : 10 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Oct. : 10 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Oct. : 10 月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Sep. : 9 月 第 5 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。