Oct. 19 〜 Oct. 25 2009




” 知られざるセレブリティ・ビジネス・リッチ ”


今週のアメリカでは、週明けは引き続き、 先週起こったバルーン事件の狂言をめぐる 報道が大きく行われていたけれど、週の半ばになってニューヨーク・ポスト紙が大きく報じたのが、 スポーツ・ケーブル・チャンネル、ESPNの野球解説者で、かつてはニューヨーク・メッツのジェネラル・マネージャーを務めていた スティーブ・フィリップ(46歳)が、同局のプロダクション・アシスタントである22歳の女性と関係し(写真右がその2人)、 この女性が錯乱した様子で彼の自宅にやってきて、自宅に居た妻が911(日本の110番)に電話をするという、 ストーカーぶりを見せていたというスキャンダル。
このプロダクション・アシスタントの女性とスティーブ・フィリップが関係したのは3回と報じられているけれど、 彼女はインターネットを通じて人を雇い、その人物に彼の妻に 電話を掛けさせ、夫の浮気を伝えたり、自ら彼の家に常軌を逸した内容の手紙を届けに行った他、 彼の息子の学校の友人を偽って、息子とオンライン・チャットをしながら、家庭の内情を探っていたという疑いも持たれているのだった。
こうしたストーカー話を聞いて、アメリカ人の誰もが思い出すのが1987年に封切られたマイケル・ダグラス&グレン・クロース主演のサスペンス映画、「危険な情事」。 原題は「Fatal Attraction / フェイタル・アトラクション」で、こちらのタイトルの方が 男性にとっては怖いというイメージがありそうだけれど、 いずれにしても、アメリカでは昨今政治家が若い女性と関係するスキャンダルが数多く報じられ、 つい最近もトークショー・ホスト、デヴィッド・レターマンと 若いインターン女性との関係が大きく報じられたばかりなだけに、 またしてもの不倫騒動が非常に大きく取り沙汰されていたのだった。

この不倫とストーキングが行われたのは 夏のことであったけれど、スティーブ・フィリップの夫人は この一件が引き金になって 離婚訴訟を起こしており、フィリップ自身も NYポスト紙がこれを報じて以来、 ESPNへの番組出演を長期見合わせることになっているのが現状である。
夫人が離婚を決意しても仕方がないと言えるのは、スティーブ・フィリップの浮気がこれが初めてではないという部分。
彼が1998年にニューヨーク・メッツのジェネラル・マネージャーの職を追われた理由というも、他ならぬチームで働く複数の女性と彼との関係が 明るみに出て、セクシャル・ハラスメントの訴訟が起こされようとしていたため。 またESPNでも、彼が関係したのは今回の女性1人ではなく、複数の女性と関係していたことが明らかになっており、 ESPN側では この事件を単なるサスペンション、すなわち出演停止処分だけでは終わらせない意思を明らかにしているという。 (10月26日の報道で、ESPNはスティーブ・フィリップの解雇を発表しています。)

今回の報道を受けて、スティーブ・フィリップ側は事件の謝罪を行っているけれど、 プロダクション・アシスタントの女性の弁護士によれば、執拗に彼女を追いかけて関係を迫っていたのはフィリップの側で、 携帯メールを頻繁に送ったり、バーに誘って強いドリンクを飲ませる等、かなり積極的に口説いていた様子が明らかになっているのだった。
46歳のフィリップは、22歳の女性を口説けることに自己満足を覚えていたとも言われるけれど 3回のセックスで彼女との関係を終わらせようとした彼は、周囲に関係を悟られたことを危惧して 彼女が ”誰とでも寝てしまう” という 評判をESPN内で立てたことも 明らかになっている。 さらに、女性が妻に電話を掛けたことを知った彼は 「もしこれ以上余計なことを喋ったら、 お前をクビにしてもらうことだって出来るんだ」と、彼女に脅しを掛けていたことも女性によって証言されているのだった。

すなわちこのスティーブ・フィリップなる人物は、典型的な ”女性の敵” と言える存在な訳だけれど、 未だ2人が関係する以前、フィリップが彼女にしつこく言い寄っていた時点で プロダクション・アシスタントは直属の上司に フィリップについて相談したというけれど、返ってきたリアクションは 「そんな事には慣れるしかない」という そっけないものだったことも また明らかになっているのだった。
メディアはこうした報道を受けて、ESPNというケーブル局が 同局がターゲットとする20〜40代のスポーツ、もしくはスポーツ観戦を好む男性の メンタリティをそのままコーポレート・カルチャーとして引き継いでいると指摘。 すなわち 「女性=スポーツ感覚のセックス・オブジェクト」 という感じの、スポーツ・バーで酔っ払ってフットボールの試合を観戦している男性達と 同じ状態が職場に展開されていると非難されているのだった。


ところで、今週金曜には オバマ・ファミリーのオフィシャル・ポートレート(写真左)がウェブサイトを通じて一般に公開されているけれど、 ESPN同様の批判が集まりつつあるのが 現在のオバマ政権。
今日付けのニューヨーク・タイムズ紙の第一面で、オバマ大統領が4人の男性職員とバスケット・ボールをする写真と共に 報じられていたのが、スポーツ好きの大統領が暇を見つけてはバスケット・ボール、週末にはゴルフといったスポーツを もっぱら男性職員とばかりしており、そのメンバーがそのまま オバマ政権の政策決定に携わる傾向が顕著になってきているという状況。 このため、オバマ大統領は女性の支持票によって当選したにも関わらず、 歴代大統領の中で 最もホワイト・ハウスの女性アドバイザーの声がその政策に反映されていないことが ホワイト・ハウス・インサイダーの証言で明らかになっているのだった。

そのオバマ政権と言えば、経済・失業問題、および健康保険問題が一向に進展せず、国民が フラストレーションを募らせているのは以前からお伝えしている通りであるけれど、今週発表されたギャラップの世論調査によれば、 オバマ大統領は63%だった前四半期の支持率を9%も落として、現在の支持率は53%。 歴代の大統領が1四半期中に9%も支持率を落としたのは1953年以来のこと。
国民がオバマ政権の政策について最もネガティブな意見を持っているのは 失業問題で74%という圧倒的なネガティブ率。 第2位が税金問題(増税)、3位が健康保険問題がそれぞれ約70%。 そして第4位がエコノミーで、67%がオバマ政策にネガティブな見解を示しているのだった。

さて、オバマ・ファミリーのオフィシャル・ポートレートに話を戻せば、これを撮影したのは 著名フォトグラファーのアニー・リーヴォウィッツ。
彼女は数年前にエリザベス女王のオフィシャル・ポートレートも撮影しているけれど、彼女がオバマ・ファミリーのフォトグラファーに選ばれたのは、 今年春先に 彼女がヴァニティ・フェア誌の取材のために大統領とそのスタッフの撮影を行っていたため。
アニー・リーヴォウィッツと言えば、1回の撮影でチャージするフィーは日本円にして800万〜1,000万円。にも関わらず24億円もの借金を抱えて、 不動産やコピーライトがすべて抵当に入っていることで知られる存在。 そんな高額フォトグラファーをホワイト・ハウスが雇って良いのか?と思う人も居るかもしれないけれど、アニー・リーヴォウィッツは ホワイト・ハウス内を自由に撮影できるという条件と引き換えに、この撮影を無料で引き受けたことがホワイト・ハウスのプレスから明らかにされているのだった。

それにしても1回の撮影で800万円〜1000万円というのはとんでもない金額のように思えるけれど、 今日、10月25日付けのニューヨーク・ポスト紙(写真右)で報じられていたのが、アニー・リーヴォウィッツのように法外とも言えるフィーで 稼ぎまくる ニューヨークの 知られざるリッチ・ピープル達の存在。
例えば、ヘア・スタイリストのオーランド・ピタと言えば、ヴォーグを始めとするファッション誌のヘア・スタイリストを務めたり、 自ら開発したプロダクト・ラインで知られるだけでなく、ナオミ・キャンベル、キルスティン・ダンスト、ジェニファー・コネリーなど 多数のセレブリティ・クライアントを抱えるヘア業界のスーパースター。 彼のサロンで彼にヘア・カットを手がけてもらおうとすれば、その料金はなんと800ドル。(約7万3700円) 予約を入れるには2ヶ月待ちといわれるオーランドはサロンのオーナーなのでチップを支払う必要はないけれど、 タックスがこれに加わるのは言うまでもないこと。そして彼がミリオネアであるのも また言うまでもないこと。

でも、彼ほど名が知れた存在では無くても、例えば マッチボックス・リモというリムジン会社で働く運転手は、60年代のコルベットや30年代のリンカーンを含む高級車で、 ミック・ジャガーからビヨンセまでの送り迎えを担当して、一日に稼ぐフィーは多い時で何と200万円。 その年収も運転手とは思えない 2500万円になっているという。
またヨガのインストラクターもプライベート・レッスンで一時間150ドルをチャージするような有名インストラクターになると、 レッスン収入だけで軽く1000万円。このページで紹介されていたセイディ・ナルディーニの場合、この他にDVDのセールスや アイポッドのアプケーションなどで追加の収入があるという。

セールスの仕事で最も割りが良いのは、何と言っても値段が高い不動産。 不動産エージェントは売れた物件のパーセンテージをコミッションとして受け取るのが通常であるけれど、 NYポストで紹介されていたNYのトップ不動産エージェント、ドリー・レンツの年収は毎年6億〜7億円であるという。
この他、ストリッパーやヒップなラウンジのバーテンダーは共に日本円にして2500万円の年収を得ていると言われるけれど、 驚くべきはマッチメイカー、すなわち縁組ビジネスのエキスパートの年収。 このページで紹介されていた有名マッチメイカー、クリスティ・ナイティンゲールは、その縁組に最高で約250万円をチャージする という高額ぶりであるけれど、年収も1億2500万円と言われているのだった。
ちなみに、こうしたクライアント・ビジネスをしている人々というのは、金銭で受け取る収入以外に、 クライアントに食事やパーティー、時にバケーションに招待されたり、ホリデイ・シーズンには高額なギフトを受け取るのが常。 したがって収入以外の恩恵も多々受けていることで知られるのだった。

こんな風に、様々な分野にミリオネアが出現し、時にドライバーやストリッパー、バーテンダーのように 特に学歴が無くても出来る仕事でも かなりの年収を上げられるとなると、高額な学費を支払って大学を出て、MBAやドクター・デグリーを 取るのが馬鹿馬鹿しく感じられる人も居るかもしれないけれど、 やはり最も稼ぐのは金融、それもヘッジファンド・マネージャー。
中でも最もサクセスフルなジョン・ポルソンの年収はリセッションに突入していた2008年の時点でも2000億円。 スポーツ界の最高給取り、ヤンキーズのアレックス・ロドリゲスが受け取っている報酬は、年間約30億円であるから 全くの桁外れ。 A.ロッドも、ジョン・ポルソンも、それぞれスポーツ、金融界で稀に見る逸材と言われる存在であるけれど、 同じ逸材でも金融界の方が 遥かに稼ぎが良いのは言うまでもないことなのである。

この特集記事を見ていて、1つ言えることは同じビジネスでも自分がセレブリティになるか、さもなくばセレブリティを顧客するか、 もしくはその両方で、収入が格段に増えるということ。
例えば、その好例と言えるのが写真左のトレーナー、アレックス・レンズニック。
彼はロシア軍の指揮官からトレーナーになった人物で、ニューヨーク以外にもパリ、ロンドン、モスクワにホリスティック・スパとジムを融合させたクラブを オープンしている人物。 彼のクライアント・リストには、引退したベテラン・デザイナー、ヴァレンティノやブルガリ・ファミリー、 ディーパック・ショプラといったスピリチャル・グルに加えて数人のロシアン・ビリオネアや彼らと付き合うモデルたち、 そしてハリウッド・セレブリティが名前を連ねており、ことに彼はレッド・カーペット・シーズンを控えた時期に セレブリティのウエスト・サイズを小さく、細くすることで知られているのだった。
彼が1日のトレーニンでクライアントにチャージすると言われる金額は日本円にして約15万円。 とは言っても、これが1日付きっ切りのフィーでないのは当然のこと。
ストレスが人間を太らせると考える彼は、ダイエットのアドバイスやトレーニング・プログラムの他に、 リラクセーションと睡眠に重きを置いたプログラムで知られており、 トレーニングの中心となるのはもっぱら有酸素運動。これを1週間に最低200分こなし、 メタボリズムを下げないために、ごく軽い食事とスナックを、1日何回にも分けて摂取するというのが基本。
多くのセレブリティやビリオネア達は、モチベーションを高めたり、食事のアドバイスを得るために 彼を旅行やパーティーに同行させているとのことだけれど、 彼の時間を拘束すればするほど、フィーがアップするのは当然のシステム。
記事によればアレックス・レンズニックはセレブリティ&ビリオネア・クライアントのトレーニングと同行スケジュールで 殆ど私生活がない状態であるというけれど、彼らを通じて様々な人々に会えるのが 魅力であると語っているのだった。
でもこれがジムに勤める通常のトレーナーになると、1時間に70ドルを稼げたらかなりの高給取り。 同じトレーナーでもロシアン・アーミー出身というユニークな経歴とそのユニークなスパルタ方式、さらにクライアントがセレブリティという違いで、 収入は雲泥の差になるのである。

また、アメリカには犬を散歩させるドッグ・ウォーカーという仕事があるけれど、 セレブリティを顧客にすれば収入が格段に違うのはドッグ・ウォーカーにも言えること。
ニューヨークには、犬を飼っていながら散歩させる時間がない人々が多いため、 飼い主が出かけた後のアパートに鍵を預かって入り、犬の散歩をさせて、その後アパートに戻すのが ドッグ・ウォーカーの仕事。 昨今では失業して仕事が見つからないニューヨーカーが 1日20ドル〜30ドルでドッグ・ウォーカーのアルバイトをしていることが伝えられていたりする。
でもそのクライアントが、モデルのハイディ・クルム、俳優のカイル・マクラクレンやヘレン・ハントになると、 1回の散歩のフィーが230ドル。犬を散歩させるだけで年収500万円になってしまうのである。

とは言っても、セレブリティ・クライアントの名前を利用して、一般の人々に高額を支払わせているビジネスは、 一度セレブリティ・クライアントが去ってしまうと途端にその魅力が褪せてしまうもの。
例えば、マドンナ、グイネス・パートロをクライアントに一躍有名になったトレーナー、トレーシー・アンダーソンは、 今月に入ってマドンナが別のトレーナーに移ることを明らかにしたために、途端にそのネームバリューが低下したことが伝えらているのだった。
そう考えると、セレブリティもセレブリティを顧客にしたビジネスも、稼げるうちに稼いでおかなければならないという点では 共通しているものなのである。





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Catch of the Week No. 1 Oct. : 10月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Sep. : 9 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Sep. : 9 月 第 3 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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