Oct. 18 〜 Oct. 24 2010




” 私的レストラン・ガイド ”


セントラル・パークで紅葉が始まって、すっかり秋らしくなったニューヨークであるけれど、 アメリカでは11月1週目に中間選挙を控えているとあって、今週のニュースはもっぱら選挙絡みの報道に集中。 国民の半数以上が、現在のアメリカは間違った方向に進んでいるとアンケート調査で答えているだけあって、 この選挙で議席を失い、下院で過半数割れが見込まれているのが民主党。
しかしながら、その状況は今週に入ってから若干好転していることが伝えられており、 オバマ大統領は 全米各地で 民主党候補者の応援活動を精力的に行っていることが報じられているのだった。

その一方で、メジャーリーグはいよいよワールド・シリーズに入るけれど、今週ヤンキーズがテキサス・レンジャースに破れてしまったため、 その対戦カードはテキサス・レンジャースVS.サンフランシスコ・ジャイアンツというもの。
ヤンキーズは写真右のニューヨーク・ポスト紙に見られるとおり、メジャーリーグで最高額の給与を選手に支払っているだけに、 勝てなかった場合のローカル・メディアからのバッシングは厳しいものがあるけれど、 今年については ワールド・シリーズを戦えるクォリティのチームではなかったことが指摘されており、 レンジャースに破れたのは予想外というより、むしろ順当だったという声さえ聞かれていたのだった。

さて、秋と言えば日本では ”食欲の秋” であるけれど、 アメリカでも ザガット、ミシュランというレストラン・ガイドの最新版が登場するのがこの時期。
2つのガイドブックのレビュー、及びその比較は 今年もCUBE New Yorkで特集しているけれど、 ザガットによれば 昨年、2010年度のニューヨークでは新たに123軒のレストランがオープンし90軒がクローズ。 この数字は2009年度では157軒のオープニング、102軒のクローズだったので、どちらも減少傾向。 同じく減少傾向なのは、ニューヨーカーの外食回数で、リセッション前の 「1週間に3.3回」 から、2010年度は 「1週間に3回」まで 減ってきているのだった。
加えて、1回の食事で支払う金額も僅かながら減少傾向で、レストラン・ビジネスに リセッションが今も 影を落としていることが伺える数字になっているのだった。

でもニューヨークはレストラン・ビジネスの競争が全米で最も激しいと同時に、レストラン・ビジネスが潤う要素に溢れている街。
というのも、ニューヨークはアパートのキッチンが小さい上に、ニューヨーカーは仕事で忙しいとあって、 自宅であまり料理をしない人々。加えてレストラン・ダイニングはビジネス、社交&デートの欠かせない要素。 また ニューヨークへは全米国内はもとより、世界中からビジネスと観光の旅行者がやってくる訳で、 世界のどの都市よりもレストラン・ビジネスが繁栄していると同時に、ニューヨークで成功を収めれば、 世界中にフランチャイズを広げることが出来ると言われているのだった。

ところで、私はこんな仕事をしているだけに 友人からお薦めのレストランを訊かれることが多いけれど、 携帯メッセージで「今ソーホーに居るんだけれど、そんなに高くないレストランのお薦めは何処?」というような即答を求める 問い合わせを、特に仕事中にされることを 非常に嫌っていたりする。
でも、会話の中で最近オープンしたお薦めのレストランを訊かれたり、「両親がニューヨークに来たときに何処に連れて行ったら良いと思う?」といった 質問をされた場合は、私自身、食べ物の話題が好きなこともあって、 出来る限り親切に教えてあげるようにしているのだった。

ザガットの調べでは、 ニューヨーカーが人生最後の食事に選ぶレストランは、 ル・ベルナダン、ピーター・ルーガーとのことであるけれど、私もル・ベルナダンについては全く同感。
先日、セントラル・パークを走っていたら、ベルナダンのシェフ、エリック・リパートがパークを歩いているのを目撃してしまったけれど、 彼の完璧主義者ぶりは、そのキュジーヌに反映されていて、何時出掛けても本当に堪能できるのが同レストラン。 落ち着いたフォーマルな雰囲気なので、ニューヨーク・ダイニングの醍醐味と言える ザワザワした喧騒とは無縁なのと、 マン・ウォッチングが楽しめるタイプのレストランではないけれど、その分、5感全てを料理に集中させられる感じなのだった。

ピーター・ルーガーについては、ステーキは美味しいけれど 今では同店並みのポーターハウス・ステーキを出すレストランが、 マンハッタンの中に増えてきたので、わざわざピーター・ルーガーのあるブルックリンまで出かける気分ではなくなってきているのが実情。 それと、同店は時にサービスが今ひとつな場合があるのも難点の1つ。
もちろん最も伝統があって、ニューヨークで一番有名なステーキハウスなので、1度は行って見る価値はあるけれど、 それよりも私が昨今出かけるのは、ストリップ・ハウス (写真左)。つい先週も ここでディナーをしたばかりだけれど、10日前に木曜夜の予約を取ろうとして、 やっと取れたのが9時。閉店までずっと混みあっている人気ぶりなのだった。
ちなみに、同店はザガットのステーキ部門ではピーター・ルーガーに次いで2位。系列はマイケル・ジョーダン・ステーキ・ハウスなどを経営する グラツィエ・グループ。ネーミングの”ストリップ”はストリップ・ステーキのことで、同店の名物はニューヨーク・ストリップと それより若干脂がのったリブ・アイ。
ネーミングにちなんで、ストリップ・クラブのようなインテリアやロゴ、ナプキンの柄が楽しめるけれど、同店はサイズ的にも 大きすぎず、小さすぎず、適度にザワザワしていて、客層も年齢層とキャリアがミックスされているのが魅力。 同店に限らず、ステーキ・ハウスではアペタイザーを取らず、ステーキとサイド・ディッシュだけに集中するのが正しいオーダーの仕方。 特にストリップ・ハウスではグース・ファットを使ったポテトとトリュフのオイルを使ったクリーム・オブ・スピニッチ(ほうれん草のクリーム煮)を オーダーするのはマスト!
デザートは10レイヤー以上ある巨大なチョコレート・ケーキが名物で、これはヴァニラ・アイスクリームを別にオーダーして 一緒に食べた方が 断然美味しいもの。 ケーキが残った場合も、見栄など張らずにドギー・バッグ(持ち帰り)を頼んで、 自宅でヴァニラ・アイスとミックスすると、スポンジが若干乾いてしまっても美味しく食べられるのだった。
日本人の中には「ステーキは絶対 松坂牛!」という人が多いけれど、アメリカに長く住んでしまうと 適度に歯ごたえのある アンガス・ビーフは全く別物の魅力。ニューヨークに住む日本人の中には 逆に「松坂牛のような霜降り牛は脂が多過ぎて苦手」 という人も少なくないのだった。

ニューヨークで 1回しかディナーが出来ない人のためにレストランを選ぶとしたら、以前から私が常にお薦めしているのは グラマシー・タヴァーン。同店は今年のザガットでもNo.1になっているけれど、料理もさることながら、私が同店を最も気に入っている理由はその フレンドリーなサービス。ウェイターは会話も 料理の説明も上手いので、食事がとても楽しくなるのだった。 でも、同店のサービスの良さはそれだけではなかったりする。
以前同店で友人のバースデー・ディナーをした際、バースデー・ガールが同店のオリーブ入りのパンを物凄く気に入ってしまったので、 ウェイターに「お金を払うから彼女にパンをお土産に持たせてあげて」とリクエストしたところ、コート・チェックで お土産用のパンをピックアップ 出来るように手配してくれて、もちろん無料。ピックアップしてみると、手提げ袋に入ったコンテナの中には6つもオリーブ・ブレッドが入っていたのだった。
またそのディナーでは、私のカードで纏めて支払いをしたけれど、レシートにチップの金額は正しく記載したものの、 支払い総額の計算を間違えて、100ドル多い金額を書いてしまったのだった。 そこで翌日慌てて電話をしたところ、会計の女性が丁寧に対応してくれたけれど、何と私の計算違いを既に理解していて、 私が記載したチップのみを請求書に加えた金額をカードにチャージしており、私が訂正するまでもなく、 正しい金額で請求が行われていたのだった。
普通のレストランだったら、お客が請求書に記載した金額の間違えに 気付いたとしても、 レストラン側が得をしていた場合は そのままチャージするのは当たり前。 なので、この2つのエピソードで 私は同店が益々好きになってしまったのだった。
ちなみに私がグラマシー・タヴァーンでオーダーするのは常にテイスティング・メニューとワインのペアリング。 ウェイターと仲良くなると、ワインをじゃんじゃんついでくれたりするのも同店を気に入っている点であったりする。

それ以外でお薦めは ミネッタ・タヴァーン (写真右)であるけれど、 ここはとにかく予約が取れないのだった。先日も友人が2週間前に予約を取ろうとしたところ、夜の11時半しかテーブルが空いていないと 言われたそうだけれど、実は私は同店予約の秘密の電話番号というのを持っているのだった。 ところがこのシークレット・ナンバーを駆使しても、8時の予約など絶対不可能と言えるほど人気なのが同店。
ちなみにミネッタ・タヴァーンはステーキとサラダが美味しいので、ステーキ・レストランとしてもお薦めな上に、 客層が良いのでマン・ウォッチングも楽しめるけれど、その予約の難しさはザガットにも記載されていたこと。 オープンから1年以上が経過しているけれど、予約困難の状況は全く変わっていないのだった。

でも マン・ウォッチングを楽しむのならば、ミネッタ・タヴァーンのオーナー、キース・マクナリーが90年代にソーホーにオープンした バルタザールは今もお薦めのスポット。 私はオープン以来、同店の雰囲気が好きで何度も足を運んでいるけれど、ふと考えるとキース・マクナリーのレストランは その殆どが好きで、 これは私だけでなく、多くのニューヨーカーにとっても同様なのである。

さて、ニューヨークでは過去数年グルメ・バーガー・ブームなるものが続いていて、 ハンバーガーの値段が15ドル〜40ドルまで、どんどんアップしていたけれど、リセッションの影響か、 今はその人気が衰えて、再びハンバーガーの価格競争時代に突入しているとのことなのだった。
私がニューヨークのハンバーガーでお薦めとして挙げるのは、やはりシェイク・シャックのシャック・バーガー (写真左)。 私は 基本的にアメリカでは 牛のひき肉は食べないようにしているので、ファスト・フードのバーガーなどは論外であるけれど、 シェイク・シャックは出所のきちんとしたブラック・アンガスを使っているので、そこは安心できる部分。
同店のハンバーガーは「シンプル・イズ・ベスト」を地で行ったようなバーガーで、お値段もシングル・バーガーが約4.75ドル、 ダブルが約7.25ドルという ハンバーガーらしいお値段。
オーバー・プライスのグルメ・バーガーとしては、ミシュラン3つ星シェフのダニエル・ブリューがDBビストロでかつてサーブしていた フォアグラ・バーガーや、同じく彼が2009年にダウンタウンにオープンした DBGB のバーガー(最低で14ドル)等があるけれど、 前者は胃にもたれた上に、かなり邪道という印象だけが残ったバーガー。後者は正直なところ、特に何が美味しいのか 分からなかったバーガー。
先述のステーキ・ハウス、ピーター・ルーガーがランチでサーブしているルーガー・バーガー(8.95ドル)にしても、 ハンバーグの外が黒く焦げているのに、中はレア過ぎて、一口食べて失敗という味なのだった。
私がシェイク・シャックでオーダーするのは、シャック・バーガーのダブルと ブラック&ホワイト・シェイク(ヴァニラ&チョコレートをミックスしたシェイク)。 シェイクはかなり甘いけれど、味自体は美味しいと言えるもの。私は揚げ物を食べない主義なので、フライをオーダーしない代わりに バーガーをダブルにすることにしているのだった。
シャック・バーガーは、柔らかくて甘みのあるバンズに、レタス、トマト、とろけたチェダー・チーズとジューシーで柔らかいパティが 挟まっているというもので、パティをシャック・ソースで焼いているので 味は若干付いているけれど、 私はそこにマスタードとケチャップを少しだけつけて食べるのを好んでいるのだった。 先述のようにバンズが柔らかいので、テイクアウトするよりもその場で食べる方がお薦め。
シェイク・シャックはつい最近、私の自宅近くのアッパー・イーストサイドにも支店をオープンしたばかりだけれど、同店に限らず、 マンハッタンにある全4店舗で、常に行列が出来ている人気ぶり。 でもラインが進むのは非常に早いので、想像しているより待たずに済むのだった。

最近、オープンしたばかりの 未だCUBE New York で取り上げていないレストランで、美味しかったのは ミシュラン3つ星シェフ、ジャン・ジョルジュが オープンした”ABCキッチン”、そしてリアリティTV出演で人気の 元グラマシー・タヴァーンのシェフ、トム・コリッキオが イーストリバー沿いにオープンしたての ”リバーパーク”。
どうしても仕事柄、常に新しいところばかりトライするようになってしまうので、複数回 足を運ぶレストランというのは限られてしまうけれど、 過去2年間で私が2回以上出掛けたレストランは、 上記のレストランに加えて モモフク・サム・バー、パスティス、サラベス、 イレブン・マディソン・パーク、響屋、15イースト、モダン、アクアグリル、ラ・グルノイユ、プリノズ。 これらは全て私のお薦めレストランでもあるけれど、 サラベスについては自宅から近いのでブランチで使うけれど、常にそれほど美味しいとは思わないのだった。
でもここのアプリコット・オレンジ・マーマレードはジャムの傑作だと思っていて、日本に住む両親にも時々送っているもの。

ところで、ザガットによればニューヨーカーに好まれるキュジーヌは No.1 がイタリアンでダントツの30%の支持を獲得。 2位はフレンチ(15%)、3位がアメリカン(13%)、4位が日本食(12%)となっているとのこと。
でも特に若い年齢層は、ヘルシー志向、そうでないを問わず、かなり日本食を好むようになってきているので、 個人的には 近い将来、 日本食がフレンチの人気を上回るだろうと予想しているのだった。


Catch of the Week No. 3 Oct. : 10月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Oct. : 10月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Oct. : 10月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Sep. : 9月 第 4 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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