Oct. 25 〜 Oct. 31 2004




Halloween Costume Choice




私がこのコラムを書いている10月31日は、言うまでも無くハロウィーンである。
ニューヨークでは毎年恒例のパレードが6番街で行われる他、 多くのクラブでハロウィーン・パーティーが行われることになっているけれど、 今年は日曜に当たってしまったため、前日の土曜や、その前の金曜に 繰り上げでパーティーを行う人々も多いようである。
地方や郊外だと、ハロウィーンと言えば、仮装をしているのはもっぱら子供達で、 「トリック・オア・トリート!」と言って、近隣の家を回って、お菓子を貰って歩く光景が見られるけれど、 そもそも子供が少ないマンハッタンではハロウィーンと言えば、大人達が コスチューム・パーティーを楽しむ日になっている。

アメリカでは、ハロウィーンはスーパーボウルが行われるスーパーサンデーに次いで 多くのパーティーが行われる日と言われているけれど、 ハロウィーンというイベントへの取り組み方は、人によって本当に様々で、 これは日本における年賀状への取り組みに似ていたりする。
多くの人は忙しいのを口実にしながらも、体裁を保つ程度の用意はするものだけど、 毎年のように凝る人は、前もってお金や時間を掛けて周到な準備をしており、その一方で、 何もしない人は、全く何もしないことになる。毎年同じスタイルをリピートする人も居れば、 毎年、その年の流行やジョークを盛り込む人も居るし、毎年 必ず間際になって駆け込みで準備をする人も居る訳で、 こうした駆け込み組は30分も列に並んだり、品薄で限られたチョイスからの選択を迫られて、 人一倍苦労をした挙げ句、「来年はもっと前もって準備しよう!」と、少なくともその時ばかりは 心に誓うことになるのである。

ハロウィーン・コスチュームは、大きく分けるとクラシック(スタンダード)とトレンディ(時代反映)の 2つに分けることが出来るけれど、多くの人々にとって無難なチョイスと言えるのは、やはりクラシックである。
このクラシック・コスチュームに含まれるのは、看護婦、メイド、スチュワーデス、ポリス、消防士といった ユニフォーム系、スーパーマン、バットマン、スパイダーマンといったスーパーヒーロー系、 ニンジャ&ゲイシャ・ルックを始め、チャイナドレスやインドのサリー、 フランスのルイ王朝ファッションといった時代&民族衣装系、 魔女、白雪姫、マーメイド、海賊、妖精、赤ずきん等の童話キャラクター系、 ハロウィーンにつき物の悪魔、ドラキュラ、フランケンシュタインといったモンスター系、 ネコ、ミツバチ、ウサギ等の動物系、 主に着ぐるみで ホットドッグやピザ、1輪挿しの花等になる物体系、 そして忘れてはならないのは歴史上のセレブリティで、このカテゴリーで 圧倒的に強いのは、エルビス・プレスリーとマリリン・モンローである。 エルビスの場合は白いジャンプスーツと揉み上げのあるヘアとサングラス、マリリン・モンローの場合は、 映画「7年目の浮気」で有名な真っ白のホルターネック・ドレスにプラチナ・ブロンドのヘア、 真っ赤な唇が定番中の定番となっている。

クラシック・コスチュームを選ぶ利点は、次の年、もしくは数年後でも着用が可能であること、 誰でも知っているコスチューム、もしくはキャラクターであるため、仮装の意図が 理解され易いこと、そしてインターネット上やコスチューム・ショップで 簡単に手に入るという点である。
でも反面、没個性型になりがちなのがクラシック・コスチュームで、よほどお金が掛かっている大袈裟(かつ本格的)なコスチュームであるか、 さもなくば、着用している本人の日頃のイメージを打ち破るほどに意外性があって、しかも非常に似合っているか、 あるいはメーク等で人とは違う工夫が凝らしていない限りは、似たようなコスチュームを着ている人はいくらでも居るし、 毎年見慣れたコスチュームであるだけに、周囲の受止め方もそれなりのもので、 それなりのインパクトしか与えられないことになる。

これに対してトレンディ・コスチューム、すなわち時代を反映したコスチュームということになると、 話題性があるだけに、人の目に留まり易く、見慣れたコスチュームとは異なり、新鮮な印象で、 上手く仮装をすれば、一緒に写真を取りたがる人が後を断たないほどの 人気者になってしまったりする。
トレンディ・コスチュームに影響を与えるのは時事問題、人気のTVや映画で、 2001年のテロの直後は、NYPD(NY市警察)、FDNY(NY消防局)への感謝を表すために、 警官、消防士のユニフォームや、愛国心を表現するアメリカ国旗をモチーフにしたコスチュームが 非常に多かったし、昨年なら映画「キル・ビル・ボリューム1」の公開直後だったので、 ウマ・サ―マンを真似て、ブロンドのウィッグに、黄色いトレーニング・スーツを着て日本刀を持つといった コスチュームが見られていた。他にも、「マトリックス」、「ザ・ロード・オブ・ザ・リングス」等 明らかにそれと分かるコスチューム・キャラクターが登場している映画からは、 人気のコスチュームが生まれ易いことになる。
当然、その時々の話題のセレブリティというのも人気の仮装対象になる訳で、 今年ならリアリティTV「アプレンティス」で人気のニューヨークの不動産王、ドナルド・トランプ、 ポルノ・ビデオ事件以来、すっかりセレブリティになったパリス・ヒルトン、 そして、現在刑務所に服役中のマーサ・スチュアート等がそれに当たる存在である。
ドナルド・トランプの場合は、彼のトレードマークになっている奇妙な髪型、真っ赤なネクタイとスーツ、 独特の顔の表情、彼の名台詞で流行語にもなった「You're fired!」を連発するのがポイントである。
パリス・ヒルトンに関しては、ブロンドのウィッグ、ディオールのバッグ&サングラス(レンズはピンク)、 お腹が出るような短いトップと超ミニ、焼けた脚にサンダルという出で立ちで、 彼女の愛犬、ティンカーベルに似たチワワと、携帯電話は欠かせないアイテム。 左脚を1歩前に出して、身体と顔を斜めに向けて、流し目でポーズするのと、 何を話し掛けられても、顎をしゃくりあげて、何も理解していないような顔をすることでリアリティを演出できることになる。
マーサ・スチュアートの場合は、囚人服を着て、ブロンドのマーサ・ヘアで、 彼女の口癖「It's a good thing」を会話に盛り込むことになるけれど、 アッパー・イーストサイドのパーティーだったら、これにエルメスのバーキンを持っていたりすると、 更にユーモラスなタッチを加えることが出来る。 というのも、マーサは公判中、毎日のようにエルメスのバーキンを持って法廷に姿を見せていたことが、 メディアで報じられており、バーキンはマーサ裁判を象徴するアクセサリーであったためで、 このようなマテリアリスティックなジョークは、ダウンタウンでは理解されないことも多いのである。

こうした時代のセレブリティの仮装は、実物に似ているに越したことは無いけれど、 似ていなくても、特徴を良く捕えたボディ・ランゲージやユーモラスな演出があれば、 非常にウケが良く、パーティーの中心的存在になれるものでもあったりする。
でも、このカテゴリーの落とし穴は、中途半端にトライをして失敗をすると、 仮装をしていると見なしてもらえなかったり、 誰になろうとしているのかを理解してもらえない点で、もし人に「誰に仮装しているつもりなの?」と 訊かれたら、それは大失敗であるし、中には人の仮装を批判する代わりに、あえてこうした質問を 皮肉として訊ねてくる人も居る訳で、ニューヨーカーはたかだか仮装についても 厳しい評価基準を持つ人々なのである。

また、今年は大統領選の年であるから、ブッシュ、ケリー両候補のフェイス・マスクも 時代を反映したトレンディ系に含められるけれど、そもそも2人のキャラクターが非常に退屈なこともあり、 スーツを着てフェイス・マスクを付けるだけの仮装では不十分。 マイケル・ムーアのそっくりサンとブッシュをセットにしたり、ジョン・ケリーなら ハインツ・ケチャップ(彼の妻、テレサ・ハインツ・ケリーは、ハインツ・ケチャップの 御曹司の未亡人で、その財産がケリーの選挙運営費に回っているのは、アメリカでは周知の事実)を 絡ませたジョークなどを盛り込まないと、全く面白味の感じられないのが実際のところである。

中には「ハロウィーンのコスチューム選びに人間性が出る」と考える人も居るけれど、 私が観察する限り、それは当たらずとも遠からずである。
例えば、ヒーロー・コスチュームを選ぶ人には、ヒーロー願望がある傾向は強いし、 日頃ファッショナブルな人は、仮装をさせてもファッショナブルであり、 日頃から着るものに手を抜いている人は、普段着に 耳と鼻だけを付けて、 ウサギに仮装したつもりになっていたりする。 完璧主義者は、とことんディテールに凝るし、シニカルなジョークを好む人は、 シニカルなジョークが感じられるコスチュームを選ぶことになり、 実生活でチアリーダーやバレリーナに成りたくても、成れなかった女性や、ゲイ男性は、 ハロウィーン・コスチュームでその夢を叶える場合も少なくないのである。
でもハロウィーンというのが1夜のイベントであるだけに、何処までそれに対して時間とお金が掛けられるか?というのは、 ライフスタイルや仕事の忙しさに左右される部分が大きく、 その結果、ハロウィーン・コスチュームを見ただけでは、その人が非常に忙しい人なのか、 こうしたイベントに手を抜く人なのかが判断出来ない場合も多いのである。

さて、今年のハロウィーン・コスチュームのトップ・セラーはと言えば、男性用がスパイダーマン、 次いでパイレーツ(海賊ルック)、 女性用は、今年ハリー・ベリー主演で映画化されたキャット・ウーマンがトップで、 それ以外にはメイド・ルック、セクシー・デビルのコスチュームの売れ行きが好調。 子供用はハリー・ポッターが圧倒的に強いという。
フェイス・マスクの売れ行きはブッシュ大統領がケリー上院議員を上回っているとのことで、 通常、この売り上げ結果は選挙結果に反映されるとも言われている。
このジンクスが当たるかどうかは、 前回のような開票トラブルが無い限りは、火曜日深夜にはっきりすることになるけれど、 今年に関して言えば、ワールド・シリーズよりも、ハロウィーンよりも、 大統領選挙の方が遥かにエキサイティングかつ、人々の関心が集中しているイベントとなっているのは、 紛れもない事実である。







Catch of the Week No.4 Oct. : 10月 第4週


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