Oct. 24 〜 Oct.. 30 2005





ハロウィーン・アット・ランダム




先日、某TV局の番組リサーチをしている方から、Eメールでお問い合わせを頂いたけれど、 それは、このコラムの2004年6月第3週 「ウェディング・ブルー」についてだった。
問い合わせというのは、「情報の正確性を知るために、誰の意見を参考にして書いたのか、例えば何処かの大学の教授とか・・・を教えて下さい」 というものだったけれど、実際には、私がこの時に書いたアメリカの結婚式についての内容は、アメリカで一定期間以上、普通に暮らして居れば 誰でも知りうるもので、有識者のコメントで裏付けるような内容ではなかったため、訊かれた私の方が 少々驚いてしまったのだった。
そうやって、ふと考えると、確かに日本における結婚式では、クリスチャン・スタイルのウエディングが見よう見真似で行われているものの、 ガーター・トスのやり方が間違っていたり、「Something old, something new,something borrow, something blue」 (何か古い物、新しい物、借りた物、ブルーの物)を花嫁が身につける習わしが、2項目くらいしか満たされていなかったり、 ケーキにしても新郎新婦が入刀するところはクリスチャン・ウェディングを取り入れていても、お互いにケーキを与え合うという肝心なパート(これは、 どんな時でもお互いに施し合うことを誓い、象徴するイベント)は、実行されていなかったりするのである。
日本におけるクリスチャン・スタイルのウエディングが昨日、今日に始まったものではないだけに、 もう少し正式なマナーが正しく伝わっても良いような気がするけれど、その一方で、 ここアメリカでも、 日本の文化の解釈にかなりの 間違いがあるのは 紛れも無い事実である。

私がこのコラムを書いている10月30日、日曜は ハロウィーンの前日であるため、 今日付けのニューヨーク・タイムズ紙には、今年の子供用コスチュームの売り上げ第7位にランクされている 「ニンジャ」ルックが、いかにオリジナルからかけ離れ、オーセンティシティが欠落しているか を指摘する小さなコラムが掲載されていた。
実際、インターネットで調べてみたところ、販売されている「ニンジャ」ルックはどれも派手で、日本というより中国、東南アジア的な テイストのものばかり。これでは、アメリカの子供達が「忍者」のことを、刀を持ったパワー・レンジャー程度にしか思っていなくても、 仕方ないという感じなのである。 でもハロウィーン・コスチュームを製作する側にしてみれば、子供用のニンジャ・コスチュームが派手になってしまう 言い訳はいろいろあって、 先ず第一に、真っ黒な本来のニンジャ・ルックでは子供達にウケナイこと。 そして、子供達が 夜道を歩いても 車に轢かれないように、目立つ色にしなければ 母親達がコスチュームを購入したがらないのだそうで、これらが ニンジャ・ルックにリアリティが無くなる理由なのだという。
ちなみに、子供用コスチュームの売り上げNo.1は男児用が今年も「スパイダーマン」。女児用は「プリンセス」になっている。

そのハロウィーンであるけれど、今年はパーティーが週末3日間、ないし本来のハロウィーンである31日の月曜に分散して行われることも手伝ってか、 例年より控えめな盛り上がりしか見せていないのが実際のところである。
ここマンハッタンは、子供の絶対数が少ないこともあり、ハロウィーンと言えば大人のイベントになっているけれど、それは 毎年恒例のパレードを見ても分かる通り。 したがって、「時の人」と呼べるようなセレブリティや、ひねりやユーモアが感じられるコスチュームが「In!」とされる訳で、 昨年、この「時のセレブリティ」と言えたのはドナルド・トランプとパリス・ヒルトン。
トランプに扮する場合は、肩幅の広いスーツと、無地のレッドのタイを着用して、 彼のトレードマークの七三分けならぬ九一分けのヘアにして、彼がリアリティTV、アプレンティスで見せる 「コブラ」と呼ばれるハンドアクションと共に、「You're fired!」と言うのが仕上げのタッチ。一方のパリスに扮する場合は、ローウエストの超ミニ、ブロンドのウィッグ、ブルーのコンタクト・レンズ、 ラメの入ったピンクのトップ、ピンクの小さなバッグを肩にかけて、チワワを抱きながら、パリスの口癖 「That's Hot」を 連発するというもので、セレブリティに扮する場合、ファッションだけでなく、アティテュード(態度)や口調まで真似ないと、 面白さは半減するものである。

では、今年のハロウィーンは どんなセレブリティがもてはやされているかといえば、 先ず誰もが考えそうなのが、コカイン常用がメディアによって暴露されてしまったケイト・モスである。 ミラー誌の表紙のようなホットパンツ姿で、けだるそうな態度で、CDケースの上で、白い粉をクレジット・カードで ラインに仕分けて、丸めた20ポンド札で鼻から吸い込むふりをするだけであるけれど、 体型や髪型が似ていないと、単なるコークヘッド(コカイン中毒) かと思われてしまうもの。
またニューヨーク・ポスト紙 (写真右) が大提案していたのは、今年6月にホテルのコンシアージュに向かって電話を投げつけて逮捕されたラッセル・クロウ。 これは、逮捕の映像でお馴染みになったブルーのジャケットとジーンズを着用し、電話を持ち歩いて、 時々怒り狂ってそれを投げつけるというのがポイントであるという。
この他、同紙では カウチの上で「I Love Her, I Love Her」 を連発して飛び跳ね、着地と共にガッツポーズを 取るだけで、トム・クルーズになれると言っているけれど、これはアメリカでは誰もが知るエピソードとなった、トム・クルーズがトークショーで見せた 奇行の再現。カウチのあるクラブや、ホーム・パーティーでないと出来ないものであるのに加え、 誰でも考えそうなことなので、人より先にやってしまうこと、そして外観が似ている方が「勝ち!」の試みである。
またカップルならば、トム&ケイティ(婚約者のケイティ・ホルムズ)になるというアイデアもあり、この場合、トム役のネクタイのカラーと ケイティ役のドレスのカラーがピッタリ マッチし、30秒ごとにキスをしなければならない。しかも、このキスもただのキスではなく、 トム役の腕にケイティ役が身体を30度傾斜させた片足立ちをし、反対側の足は膝を90度に曲げていなければならないという。

でも、想像してみれば分かるとおり、これらはかなり低バジェットで、仮装というより物まねに止まっている訳で、それほど今年のハロウィーンは 今ひとつパッとするキャラクターに欠けているのである。
その反面、年々バラエティが増し、どんどん凝ったコスチュームが登場し、それと同時に高額化しているのが ペット・コスチューム、ことにドッグ・コスチュームである。 私が住むアッパー・イーストサイドでも、飼い主は普通の格好をしていて、犬だけが仮装しているという光景を 今週末は随分目にしたけれど、正直なところ、人間の仮装よりもずっとキュートだし、多くの人が足を止めて眺めたり、 飼い主に声を掛けたりしてしていて、人間が仮装しているよりも ずっと好感と注目を集めていたのである。
もし犬に勝てる存在があるとすれば、それは赤ちゃんで、さやえんどう や かぼちゃ といった野菜や、ウサギやクマ、ミツバチというのが ベイビー・コスチュームの定番。 アメリカの広告業界では、「人々の関心を引きたかったら、子犬と赤ちゃんの画像を使え」という鉄則があるけれど、 ハロウィーンも この例外ではない という印象である。

さて、ハロウィーンは本来、子供たちが「Trick Or Treat」と言いながら、近所の家を訪ね、お菓子を貰って歩くイベントであるけれど、 お菓子(Treat)をくれなかった家にする悪戯(Trick)というのは、通常、生卵を投げつける、もしくは庭の木々にトイレットペーパーを グルグルに巻きつけるといったものである。 でもそれを逆手に取って、ハロウィーンならばお菓子をくれようが、くれなかろうが、人や車に 生卵を投げつけても、さしてお咎めが無いと 勘違いするティーンエイジャーは多かったりする。
昨日にはブロンクスで、運転中の車に生卵を幾つも投げつけたティーンエイジャーのグループに腹を立てた男性が、 グループを追いかけたところ、ティーンの1人が彼に3発の銃弾を発射し、男性が重態となる事件が起きている。 グループの2人は今日までに逮捕されたものの、まだ数人が逃走中で、ブロンクスの近隣住民からは、 「もうハロウィーンなんてやめるべきだ」というコメントも聞かれている。
また ここ数年は、ハロウィーンの日は顔をマスクで被った強盗を始めとする犯罪が多いことから、 多くの学校が、ハロウィーン・イベントを数日は早めて行い、ハロウィーン当日は休校にするというところが増えているというし、 メディアや学校は子供たちに「見知らぬ人にもらったキャンディを食べないように」と警告しており、 古き良きハロウィーンは姿を消しつつあるとも指摘されている。
そもそも、ハロウィーンとは、「Trick Or Treat」以外に、ホラー映画のキャラクターの仮装や、血を流したメイクなどをして、 恐怖を演出して楽しむイベントでもある訳だけれど、昨今のアメリカでは、この日を利用して事件を起こす人々への恐怖の方が、 これを遥かに上回っているのが実情なのである。



Catch of the Week No.4 Oct. : 10月 第4週


Catch of the Week No.3 Oct. : 10月 第3週


Catch of the Week No.2 Oct. : 10月 第2週


Catch of the Week No.1 Oct. : 10月 第1週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。