Oct. 27 〜 Nov. 2 2003




1つ星、2つ星、3つ星


2週間前にザガットの2004年版のランキングが発表されたけれど、実際にニューヨーカーが レストランを選ぶ際に、ザガットよりも遥かに信頼しているのがニューヨーク・タイムスの レストラン・レビューである。
このレビューは毎週水曜日の「ダイニング・アウト」セクションに掲載され、 毎週1軒ずつのレストランが最高4つ星、最低がゼロ星に当たる「Poor(お粗末)」までで評価されるけれど、それと同時に 料理やインテリア、客層、サービス等についての批評がフィーチャーされ、 批評家のお薦め料理やノイズ・レベル、車椅子でのアクセスといった情報も併せて列挙されている。
タイムズのレストラン・レビューの対象となるのは、ある程度の規模や価格帯を満たしているレストランで、 テイク・アウト・フードや軽食専門の店は、レビューと同じページの下に掲載される 「$25 アンド・アンダー」という25ドル以下で食べられるレストランのセクションで紹介され、 こちらは星による採点は無しで、批評のみが紹介されることになる。
NYタイムズにフード・レビューが掲載されるのは名誉なことであり、レビューさえ良ければ 抜群の宣伝効果となるのは言うまでも無いことである。特にオープンしたてのレストランにいきなり3つ星の評価が 与えられるようなことがあれば、その日の朝からその店には予約の電話が殺到することになる。
だからと言ってレビューが悪いと客が寄り付かないかと言えばそうでもなく、話題性のある店ならば レビューが悪くてもオープンから半年くらいはかなり混み合うのが通常である。 でもそうした店は、1年あまりが経過すると オーナー、シェフ、料理、店名が変わり、インテリアにちょっと手が加わって、 全く新しい店としてレビューに登場することも少なくないのである。

現在ニューヨークには、4つ星レストランが数えるほどしか存在せず、 これらはダニエル、ル・ベルナダン、ジャン・ジョルジュ等、いわゆる「別格シェフの別格レストラン」であったりする。 だから新しさやエキサイトメントは味わえないし、客層は若干退屈であるものの、 落ち着いた雰囲気で、高い値段に応じた食事が楽しめることになる。

これに対して3つ星以下のレストランというのは、その敷居の位置がグッと下がって、 日常生活の中でちょくちょく出掛けるレストランとなる。だから多くのニューヨーカーにとっては、 4つ星より3つ星の方が、魅力的な存在である場合が多く、「料理が美味しく、 雰囲気や客層も良く、新しさやクリエイティビティもある」というレストランを想像させるのが3つ星である。 ザガットのイタリアン部門でトップに輝いたバッボ、日本食部門のトップのノブは いずれもこの3つ星である。そして3つ星のレストランというのが最も予約が取り難い存在であったりもする。

これが2つ星になると、雰囲気や客層、料理がもう少しカジュアルになり、 店内がガヤガヤと賑わっていて、「味は美味しいけれど、3つ星を付けるほどの クリエイティブさに欠ける」フードのレストランをイメージさせることになる。
4つの星の評価の中で、最も多いのが2つ星のレストランであるから、 その中にはニューヨークで「エキサイティング」と言われるレストラン、 常連客を獲得して生き残る長寿レストランの殆どが含まれている。 例を挙げれば、最近オープンしたアラン・デュカスのミックスや、 同じくこの秋オープンした今ニューヨークで最もホットなレストラン、 「Lever House」も2つ星ならば、ソーホーで長く人気を保つフレンチ・ビストロ、 バルタザールも2つ星の評価であった。

一方、これが1つ星になると、紙面では「1つ星=Good」とは記載されていても、 実際には 何処かに問題を抱えているレストランである場合が少なくなかったりする。
それは時にフードであったり、サービスであったり、座りにくい椅子や食事に不向きな照明であったり、 あまりに小さい店舗であったり、ノイズであったり、それら複数のコンビネーションであったりする。
期待して出掛けなければ、「ここが1つ星なんて信じられない!」という嬉しいサプライズが経験出来る場合もあるけれど、 その反面、「やっぱり1つ星だけのことはある…」と痛感させるような何かが起こる場合も少なくないのである。

私の1番最近の1つ星体験は「Hue」という、新しくウエスト・ヴィレッジに出来たレストランで、この時はお友達6人での ディナーだった。1つ星のレビューがタイムズに掲載されたのは、私達が予約を取った翌日で、 ちょっぴりショックだったけれど、雰囲気や客層がヒップであると言われていたので、 食事には期待しないで出掛けたけれど、結果的には食事は決して不味くは無く、 酷かったのはサービスだった。
先ず、1番最初にレストランについた友人が、「Hue」という店名が外に大きく出ていなかったので、 メートルディーに「ここはヒューですか?」と訊ねると、物凄くスノッブ かつ嫌な態度で 「ウエです。」とフランス語読みに訂正されたそうで、それで一事が万事という感じであった。 その後、私達6人のうち5人が揃ったところで、「もう1人が遅くなりそうだからテーブルにつきたい」と言うと、 「当店は全員揃ってからでないとテーブルに通さないポリシーです」と、またしてもスノッブな態度。
結局6人目の友人が直ぐに現れたので、テーブルに通されたけれど、出てきた白ワインは室温だし、メニューが出てくるのも、 注文を取りに来るのも遅く、ウエイト・スタッフのオペレーションが 全く出来ていないのは明らかだった。そしてレストラン側がのろのろしているせいでディナーが長引いたにも関わらず、 「We really need this table」、すなわち「他の予約客が待っているからテーブルを空けて欲しい」と言って、追い出されることになってしまった。
帰る際も、コート・チェックに荷物やコートを預けた友人は、それを受け取るのに何分も待たされ、 やっと受け取ったコートの中にはハンガーが入ったままという情けなさで、それを入り口のドアマンに渡すと 彼は謝ることもなくそれを受け取って、憮然とした表情でコートチェックに返しに行った。
そして極めつけだったのは、追い出されたせいで 話が終わらなかった私達が店の前で喋っていたところ、 ドアマンに「ここじゃなくて、そっちで喋ってくれ」と、店の外に居た客に対してまで注文をつけたことで、 「これが1つ星たる由縁か」としみじみ納得してしまった。

ではこのようなサービスが1つ星だけかと言えばそうでもなく、私が2週間前に出掛けた 某3つ星のレストランも、かなり酷いサービスで 美味しい食事をすっかり台無しにしてくれた。
まず、こちらが3人なのにも関わらず、2人用を若干大きくした程度の小さなテーブルに押し込められ、 私は後ろのテーブルの人が立つ度に椅子を引かなければならないという状況。 加えてメニューを貰うまでに15分、最初に出てきた料理には一切の説明もなく、 その後も料理はなかなか出て来ないし、カトラリーは並べてくれないし、 やっと出て来た料理はカトラリーが並んでいないために戻って行ってしまうというお粗末ぶりで、 私はすっかり気分が悪くなってしまった。
そこでウェイターよりも上のポジションのマネージャーらしき男性が「How is everyting?」と訊ねて来たので、 「食事は美味しいけれど、サービスには不満がある」と言って、 如何に先方のオペレーションが酷いかを思わずクレームしてしまったけれど、言い終わったら 隣のテーブルに座っていた女性から「ブラボー!」と喝采を浴びてしまった。
文句を言われたレストラン側は、何とか汚名を挽回しようと、デザートを1つ余分に持って来たけれど、 それは私がオーダーしたのと同じチョコレートのデザートという気の利かないチョイス。 私以外の2名も興味を示さなかったので、「これは必要ありません」と断ったところ、 「もう一度チャンスを与えて欲しい」と、今度はババロアのレイヤーにフルーツ・ソースを添えた別のデザートを出してきた。 こちらは、美味しいものだったし、それと一緒に「これまで飲んだ中で1番美味しい」と言える 素晴らしいデザート・ワインを出してくれたので、その誠意に幾分気分が和らいだけれど、 先方の汚名挽回のデザートを待っていたせいで、こちらの帰宅時間が益々遅くなってしまったのは、翌朝早起きをしなければならなかっただけに 辛いものがあった。

逆に、最近出掛けたレストランで3つ星のパワーを感じたのは「ノブ」で、 サービスが非常にテキパキしていて、食事もとても美味しかった。 私たちは最も品数の多い120ドルのおまかせコースを2時間半足らずで味わったうことになったけれど、 来店客が話し込む時間帯に出される最初の3品は、比較的時間を開けてサーブし、 そしてその後、話より食事という感じになったところで 良いペースで料理をを運んで来るので、 コースの後半では満腹感と満足感が味わえたし、しかも急がされる思いもなく、 非常にスムースなオペレーションだったと思う。
やはり10年以上、ニューヨークで最も予約が取り難いレストランであり続けるには、 フードだけでなく、それだけのオペレーションと それを実現するウェイト・スタッフが大切であることを痛感してしまったし、 そうしたことはもちろんニューヨーク・タイムズのレビューでも 評価の対象となるものである。

ちなみに4つ星レストランにはどんなサービスが要求されるかと言えば、 私の印象に残っているのは、90年代前半にセント・リージス・ホテル内にオープンしたフレンチ・レストラン、 レスピナッセが4つ星を獲得した時のレビューで紹介されていたエピソード。
評論家がワインを注文したところ、そのワインが品切れになってしまっていて、 レストラン側がその代わりとしてサジェストしてきたのが、同じようなフレーバーでそれよりも高価なワイン。 ここまでなら良くありそうな話であるけれど、批評家が食事の終わりに再びワイン・リストを 見せてもらったところ、品切れのワインがちゃんとリストから消されて、と言っても ペンや修正液で消したのではなく、きちんとそれが削除されたリストが 新たにプリントアウトされていたというのである。

レストラン・ビジネスというのは本当に奥深いものであるけれど、その批評を書く側も、 NYタイムズの場合、最低4回はそのレストランに出掛けることが要求されており、 ランチや朝食を出すレストランの場合、それらも味わってからでないと批評が書けないことになっている。 だから、タイムズからまぐれ当たりで良いレビューを貰うという可能性は極めて低いと言えるけれど、 それだからこそニューヨーカーはタイムズのレビューを最も信頼するのである。



Buying Power of Baby Boomers

先日、チャンネル・サーフィンをしていたら、 現在アメリカで視聴率No.1ネットワークとなっている CBSの会長のインタビューが放映されているのを目にした。
かつては3大ネットワークの最下位で、4位のフォックスに追い上げられていたCBSであるが、 「サバイバー」、「CSI」などの人気番組を生み出して トップに返り咲いたのは 近年のTV業界のサクセス・ストーリーとして語られるものである。 でもそのCBSのカムバックの背景にあるのは、TV業界、及び広告業界が最も視聴率獲得にこだわる 19〜49歳という年齢層に捕われないプログラミングが効を奏したと結果と言われており、 逆にその年齢層の視聴率獲得にこだわるがために失敗しているのが、 かつてのNo.1ネットワーク、NBCである。
TV業界、広告業界がどうして19〜49歳にこだわっているかと言えば、 この年齢層がもっとも購買力があり、トレンドに敏感と考えられており、で、 多くの企業がこの年齢層を対象に広告を発信したがっているためである。 だから、この年齢層の視聴者を沢山獲得すれば、それだけ広告収入が得られるといのが 従来のTVネットワークのサクセス・フォーミュラであったけれど、 その傾向に意義を唱え、50代以上の視聴者を重視して成功しているのがCBSである。
私がその会長のインタビューを聞いていて「もっとも」だと思った点を簡単に整理すると以下の通りである。
1. 若い世代はTVを見ない。インターネットを始めとする他のメディアに多く時間を使う。
2. 現在50歳以上のベビー・ブーマー世代は、かつての50歳以上の世代とは全く異なるライフスタイルをしている。
3. 19歳や20歳の若者よりも、50歳以上の人々の方が、遥かに多額の消費をしている。
以上の理由から、TV業界が19〜49歳という年齢層の獲得に躍起になって、 「トレンドを意識するあまり中身の無い番組を制作するのは馬鹿げている」し、 「50歳以上の視聴者とそのバイイング・パワーを軽視するのはおかしい」というのが彼の言い分であった。

そしてそんな彼の言葉を裏付けるかのように、今週日曜日のニューヨーク・タイムズの一面に掲載されたのが 「At Sea With MP3's, Boomers Buoy The Struggling Record Industry」という記事。
これは不振にあえぐレコード業界が、ダウンロードはしても 決してCDを購入しない若い世代よりも 年齢が上で、確実にCDを購入してくれる客層を狙ったマーケティングにシフトしつつあるというもの。 CD売り場を見ても、昨今はMTV世代と呼ばれる若い層が聴くタイプの音楽を ごく小さなセクションで取り扱い、売り場面積の殆どをロッド・スチュアート、スティング、 バーバラ・ストライザンド、イーグルス、もしくは若手アーティストでもノーラ・ジョーンズなど アダルト・コンテンポラリーのアーティストのCD展開に当てて、売り上げを挽回しているとのことだった。
実際、昨年の時点でベビー・ブーマー世代による 往年のミュージシャンのベスト・アルバム、 昔発売されたアルバムのCDによる再発売の売れ行きは、CD売り上げ全体の35%にまで拡大して来ていることが伝えられている。

こうしてふと考えると、ギャップの業績が悪化したのも10代、20代のヒップな客層を求めるあまりに ベビーブーマー世代のニーズを軽視したためで、現在業績を回復しつつある同ブランドは やはりその路線をベビーブーマー世代を顧客として意識したものに戻してきている。

アメリカでは過去30年以上に渡って消費とカルチャーを引っ張ってきたのが ベビーブーマー世代であり、そのパワーが今も衰えていないことは こうした様々な業界で起こっている現象を見れば窺い知れることである。
そして彼らに代わる消費グループとして、これまでにジェネレーションXやら、ジェネレーションYやらが 登場したものの、それらはあっさり消え失せてしまう程度のものに過ぎなかった訳で、 これらをターゲットとしたビジネスも彼らと共に消え失せたのは歴史が示す通りである。
結局のところ、ベビーブーマー世代のようなパワフルな消費者層が存在する社会では、 わざわざ新しい世代を模索するのは、かえってビジネスを難しくするだけの試みで、 彼らが消費を続けられる限り、彼らをターゲットにし続けた方が、 遥かに確実なビジネスが実現するというのが私の考えである。










Catch of the Week No.4 Oct. : 10月 第4週


Catch of the Week No.3 Oct. : 10月 第3週


Catch of the Week No.2 Oct. : 10月 第2週


Catch of the Week No.1 Oct. : 10月 第1週