Oct. 30 〜 Nov. 5




バイオロジカル・デストニー



今週芸能メディアを最も賑わせていたニュースと言えば、何と言っても俳優のリース・ウィザースプーンとライアン・フィリペ (写真右) という ハリウッド・カップルの破局報道。
過去数年離婚が噂されていた2人であるものの、2人の子供をもうけ、7年に渡る結婚生活を続けていただけに、 周囲のリアクションは ”ショッキング!” というもので、メディアは 離婚の原因として ライアンの共演者との不倫関係を報じていたのだった。
リースと言えば、今年3月に行われたアカデミー賞で主演女優賞に輝いているけれど、過去数年の同賞の受賞者は、 ことごとく受賞後に 離婚や別離に追いやられていることが指摘されており、昨年「ミリオン・ダラー・ベイビー」で同賞を受賞したヒラリー・スワンクも、 おしどり夫婦と言われながら 夫で俳優のチャッド・ロウと 受賞数ヵ月後に離婚しているし、ハリー・べリー、ジュリア・ロバーツも 同賞受賞後にそれぞれ婚約関係にあったミュージシャンのエリック・べネー、俳優のベンジャミン・ブラッドとの関係が破局を 迎えている。
でもリース&ライアンについて言えばこのオスカー・カース(オスカーの呪い)に加えて、結婚が長続きしない3つのジンクスを すべて満たしていた事も指摘されている。そのジンクスとは・・・

  1. セレブリティ同士の結婚であること。

  2. 20代に結婚していること。

  3. 妻が夫よりずっと稼ぎが良いこと。



まず、1の 「セレブリティ同士の結婚」 というのは、極めて離婚率が高く、また結婚生活も短いもの。 ハリウッドでは10年間結婚生活が続けば、「金婚式に値する」と言われるほどで、トム・クルーズ&二コル・キッドマンも ほぼ10年ピッタリで破局しているし、ブラッド・ピット&ジェニファー・アニストンもメディアに対しては ”お互いに愛し合っているポーズ”を続けながらも 4年半で離婚。昨今スキャンダルとなった、チャーリー・シーン&デニス・リチャード、へザー・ロックレア&リッチー・サンボラなども、 一時は安定した結婚生活を送っているかと思われたカップルであるけれど 結局は離婚しており、 トム・ハンクス&リタ・ウィルソンのように 夫婦が共に俳優で、しかも長く結婚生活を続けているカップルは非常に珍しいのである。

次に 「20代で結婚している」 ということだけれど、ただでさえ離婚率の高いアメリカで、特に20代に結婚したカップルの離婚率は50%を越えるという 統計が得られているのである。20代のカップルが簡単に離婚する原因として挙げられるのは、深く考えずに結婚してしまうこと、 お互いに若いだけに別の相手とやり直すことをことを考えて、結婚生活を続ける努力をしないことなどが指摘されており、 30代の結婚になるとその離婚率が30%代前半にまで下がるという。

そして3番目の 「妻が夫より稼ぎが良い」 という点であるけれど、これについては今週私の周囲では結構な物議を醸していた。
確かにハリウッドでも、そして一般のビジネスマン&キャリア・ウーマンの夫婦でも、妻が夫よりずっと稼ぎが良く、サクセスフルであるというのは、 夫婦関係に好影響を及ぼさないようである。 リース・ウィザースプーンの場合、今年初めに彼女の映画出演ギャラが $29ミリオン(約34億円)に達し、 ジュリア・ロバーツを抜いて女優のトップになったことが伝えられたけれど、その一方で夫ライアンのギャラはその10分の1以下の $2ミリオン(約3.6億円)。一部ではライアンは妻の稼ぎのお陰で、B級映画の出演を全て断り、自分が興味が持てるインディペンデント・フィルム等に 出演してきたことが指摘されており、彼自身、妻の成功の恩恵を賜ってきた訳であるけれど、 事あるごとにメディアを通じて 「妻の方がずっと稼ぐ ダメ夫」 的な報道をされたり、自分の映画のプロモーションのインタビューで 妻のことばかり質問されるのは、やはり面白いものではないし、自尊心も傷つくのは事実のようである。

私が思うに、妻の方が夫よりリッチでも夫婦関係が上手く行くパターンというのが3つあって、 そのうちの1つは、妻の実家が金持ちで、妻自身に生産性はないけれど、持参金と遺産で家計が潤うケース。 妻にお金はあっても 「稼がない、稼げない」ので、夫にしてみれば 「家の中で稼ぎがあるのは自分だけ」というステイタスが維持できる上に、 妻のお金は自分で稼いだお金ではなく、与えられたものなので、例え妻の方がリッチでも「競争の対象」にはならないのである。
2つ目は 夫が名誉、名声はあるものの、儲からない仕事をしていて、その家計を 稼ぎの良い妻が支えているというケース。 このケースでは 夫がミュージシャン、アーティスト、シェフ、フォトグラファーなどクリエイティブ関係の仕事をしている場合が多いけれど、 こうした大して儲からないものの 世間やメディアが注目してくれる仕事、もしくは名が売れるような仕事、派手な世界に関わる仕事をしている場合、 夫は自分の好きな仕事を続けながらも、それなりの生活レベルを保つために、稼ぎの良い妻の存在を有り難がるものなのである。
そして3つ目はブリットニー・スピアーズとケヴィン・フェダラインのような、「収入があるのは妻だけ、夫はその収入に頼って生活する」という ケース。もちろん これで上手く行っている夫婦の場合、夫はケヴィン・フェダラインのような ”パーティー三昧の売れないラッパー” など している訳ではなく、子供の面倒を見て、家事をこなしすという 所謂 ”主夫”をしていて、トラディショナルな夫婦の役割が入れ替わった 結婚生活をしているもの。 夫婦で会社勤めなどしていれば、その給与を比較して妻の方が稼いでいると 夫としては情けない思いをするかもしれないけれど、 逆に夫は稼ぎなど一切無く、妻だけが働いている場合、妻は自分が家で出来ないことをやってくれる夫に感謝し、 夫は、外で働いて来てくれる妻に感謝するようで、この”主夫”は 昨今、全米で徐々に増えてきていると言われるものである。


でも、上記の3ケースは世の中では ”マイノリティ (少数派)” と見なされるもので、実際に 「妻が夫より稼ぎが良い、妻が夫よりサクセスフルである」 カップルというのは 何故か破局を迎えるものである。
私の友人の中には「妻が自分より稼いでいるのが気に入らないなんて、夫側の了見が狭い」という意見もあったけれど、 男女の力関係、経済力や社会的地位というものは個人の考えや見解よりも 人類の歴史や人間の本能にも由来する ものなので、「妻の成功を手放しで喜べない夫」というのは、そう簡単に責められるものではない というのが私の考えである。

そもそも、30歳を過ぎたシングルの女友達は皆、声を揃えて 「今の自分の生活レベルより下がるような結婚はしたくない」というけれど、 これは要するに 「自分より収入が低い男性とは結婚したくない」ということである。
その一方で、男性にとって結婚とは、アメリカのような男女同権を謳っているような社会でも やはり「妻を養う」 というのが トラディショナルな スタイルで、例え結婚などしていなくても、女性がボーイフレンドのアパートに転がり込めば、 レントや電気代、食費などを支払うのは、往々にして男性側になるものである。
もちろん中には、生活費をキッチリ半分ずつ お互いの収入から出し合うカップルも居るし、「2人で稼いだ方が 収入が増えて生活が楽だから」 という理由で、妻が働くことを奨励する夫は多いけれど、一般的に女性側には夫を養う意思など殆ど無いのに対して、 男性側にとっては 「結婚=家族を養うこと」の図式がバイオロジカル・デストニー(生まれながらの運命)として意識や遺伝子に 組み込まれているのは 学者達も認める事実である。

こうした男女の意識の差というのは、石器時代のライフスタイルにまで遡って分析されており、 コロンビア大学のパートナーシップ・フォー・ジェンダー・スペシフィック・メディシンの設立者で 「Why Men Never Remember and Women Never Forget」 の著者であるマリアン・レガット博士によれば、男性が外に出て稼ぎ、女性が家の中の仕事をこなすというシステムは、 石器時代、体力に勝る男性が狩りに出て、獲物を持ち帰り、女性がそれを料理し、男性とその間に生まれた子供の世話をするという 自然の役割分担が起源となっているとのこと。
また 男性は1人で仕事をこなすのを好み、女性はグループで過ごすのを好む傾向があるけれど、これも遥か時代を遡れば、男性は 1人で狩りに出掛け、自分の手柄として食糧を持ち帰り、女性達はグループで集まって話をしながら料理や洗濯、子供の世話をして 男性の帰りを待つ というライフスタイルに起源を発するものであるという。 なので、女性は男性より言語に長けており、先天的に身振りやしぐさ、視線などから、様々な感情や”言葉の裏”等を感じ取る能力を身に付けているという。 その一方で 男性は 男性ホルモンが多ければ多いほど、”口下手”、言葉の選び方にも配慮が出来ず、無口であるそうで、 この違いは 「疲れると喋りたくない」という男性と、「ストレスが溜まったから誰かに聞いて欲しい」という女性の違いを生み出している。
しかしながら、男性の方が女性より効果的にコミュニケーションを取る能力には長けているとのことで、 スポーツのライバル同士が 一緒に過ごす時間など殆ど無くても ”男の友情”で結ばれていたり、 父と息子がキャッチボールをしながら 言葉以上のコミュニケーションを取り合ったり出来るのは、男性に本能的に備わった能力によるもの。 これに対して女性は言葉によるコミュニケーションから、妬みや顰蹙を買ったり、人の言葉に傷ついたり、腹を立てたりし合うもので、 人を疎外するのを好み、されるのを恐れるため、必ずしもコミュニケーションが有益なものにはならない傾向にある。

さらに、男性は 土地勘や地図を理解する能力に優れているものだけれど、 これは男性が地図や図面を見る際に、右脳と左脳の両方を使っているためで、これに対して女性は右脳しか使っていないという。 でも一度道に迷った場合、男性が「道を訊ねたがらない」のに対して、依頼心を良しとする女性は 人に道を訪ねるので、 時に左右の脳を使っている男性よりも、簡単に目的地に辿り着くもの。
集中力に関して言えば、男性の方が勝っているのは一般に指摘されることだけれど、マルチ・タスク、すなわち一度に複数のことをこなす能力は女性の方が優れており、 また総合的には女性の方が記憶力が良く、男性はマニアックに特定のものを覚える以外の記憶力は女性より遥かに劣るという。 これは、「夫が結婚記念日や自分のバースデーを覚えない」とボヤく妻が多いのに対して、その逆には滅多にお目に掛からないことからも 分かる通りである。
加えて種族を増やそうとする本能のためか、男性の方が簡単に性的に興奮すると同時に、複数のパートナーを求める、 すなわち浮気をする傾向にあるそうで、子供を産む能力の象徴である ”豊かな胸”、”丸いヒップ”、”パッチリした目”、そして ”若さ” 等に 本能的に惹かれるという。その一方で女性が本能的に惹かれるのは広い肩幅や男性らしい低い声等、自分を守ってもらえると感じられる 部分であるというけれど、女性の脳の方が仕組みが複雑のようで、男性ほどシンプルに アトラクションの要因が分析できないとも指摘されている。

生物というのは、自然界で長く生きていく間に環境に順応した進化を遂げる訳であるから、石器時代から ”男性が外で獲物を獲る、女性が家を守る” という男女関係が続いてきた事を思えば、男性が 「妻を養う」 という本能的な義務感を持っていても不思議ではないし、 その結果、妻が自分より稼げば テリトリーを侵された、もしくは立場を逆転されたような 気分になるのは理解できるもの。 また社会も ” 夫が妻より稼ぐ” のを当たり前とし、”妻が夫より稼ぐのは 夫にとっての恥”と見なす傾向が 根強いのは 言うまでもないことである。

さて、今回のリース&ライアンの離婚で リース・ウィザースプーンにとって気の毒なのは、夫ライアンが男性の本能を発揮して 若い女性と浮気をしたにも関わらず、カリフォルニアの法律によって、リースが結婚期間に稼いだ財産をライアンに半分渡さなければならない ということ。昨年11月に離婚を発表した ジェシカ・シンプソン&ニック・ラシェーも同様のケースで、 夫より遥かに稼いでいたジェシカの80〜100億円と言われる財産の半分が 離婚によってニック側のものになってしまう見込みで、 妻と別れた時に初めて世間から 羨ましがられるのが、こうした夫たちである。
要するに、稼ぎが少ない夫達は結婚中は社会やメディアからバッシングされるけれど、 ひと度 離婚するとなれば 法律からは守られているという訳である。



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執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。