Nov. 1 〜 Nov. 7 2010




” NY & LA マッチメーキング比較 ”


今週のアメリカで最も大きく報じられたのは、11月2日火曜日に行なわれた中間選挙とその結果。
オバマ大統領率いる民主党は、上院ではかろうじて 過半数を保ったものの、下院では61議席を共和党に奪われる大敗ぶりで、2年前に「CHANGE/変化」を謳って 当選したオバマ大統領の 過去約2年間のリーダーシップに対し、アメリカ国民から厳しい評価を突きつけられた結果となったのだった。
大統領は選挙翌日のプレス・カンファレンスで自らの責任を認めるコメントをしたけれど、 その翌日4日のニューヨーク・タイムズ、ニューヨーク・ポスト紙を始めとする、多くのメディアの第一面を飾ったのが 写真右のオバマ大統領が口をへの字に曲げた ばつの悪そうな表情。
もっとも、当選2年後の中間選挙で大きく破れたのはクリントン元大統領とて同じこと。 その後、クリントン大統領は共和党と歩調を揃えることによって、その2年後には大統領に再選されることになったけれど、 オバマ大統領に関しては、オバマ政権を1ターム(4年)で終わらせようという風潮が 共和党支持者の間で極めて 強いことが指摘されており、大統領の今後の政権の舵取りが難しくなっていることを感じさせているのだった。

その一方で、週後半からニューヨークで大きく報じられていたのは、過去最多の4万3千人の参加者で 大きな盛り上がりを見せたニューヨーク・マラソン。
マラソンが行なわれた今日、日曜は 私のいつものセントラル・パークのランニング・コースがマラソンのためクローズされているので、 別のコースを走り方々、5番街やパークの中を走るランナーを眺めていたけれど、 まだ午前中だったこともあり 通過して行ったのは もっぱら招待選手。 男女含めて皆、贅肉の無いボディに、上下動の少ないフォームで、物凄い速さで走っているのには圧倒されてしまったけれど、 それと同時に、日ごろ自分が走っているコースを世界のトップ・ランナー達が走っている姿に何となく感動してしまったのだった。

ニューヨーク・マラソンは毎年、参加希望者が多く、最終的には抽選で参加者が選ばれているけれど、 今年問題視されていたのが、その参加資格をインターネット上で売ろうとする人々が非常に多かったこと。
もちろん主催者側は参加資格を販売する行為を禁止しており、売り手の割り出し作業を行なっていることが伝えられていたけれど、 見つかった場合、売り手側は当然のことながら、生涯ニューヨーク・マラソンの参加資格を剥奪されるとのこと。 また、買い取った側も たとえ完走しても参加者全員に送られるメダルや翌朝のニューヨーク・タイムズ紙に掲載される 参加者全員のタイム・リストが、全て売り手の名義になることを警告していたのだった。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、当日マラソン・ランナーのために用意される水とゲータレードの量は9万4,410ガロン。 これらのドリンクのために使われるカップの数は230万個で、カップは全てリサイクル可能なもの。 26.2マイル(42.195キロ)のコースの間には、38の救急ステーションがあり、そこでは1万3,475枚のバンドエイド、1万1,410ポンドの氷が用意され、 コースの途中やゴール地点のセントラル・パークに設置された仮設トイレの数は1,694。
今年は、チリ炭鉱事故で69日間 閉じ込められていた作業員、エディソン・ぺニャの参加が大きなパブリシティを獲得していたこともあって、 200万人が沿道でマラソンを見守ったことが伝えられているのだった。 そのエディソン・ぺニャは見事に完走して、タイムは5時間40分。 走っている最中に、多くのランナー達とハイ・ファイブ(日本語で言うハイタッチ)をして いた体力消費を考えると、これはかなり立派な記録と言えるのだった。


話は全く変わって、リアリティTVにさほど興味が無い私が、このところ見続けているのが ケーブル局のブラボーで放映されている 「Millionaire Matchmaker / ミリオネア・マッチメーカー」。
同番組は、元オンライン・マッチメーキング・サイトのマーケティングを担当していたパティ・スタンガー(写真右)が2000年にスタートした マッチメーキング・ビジネスを番組化したリアリティTVで、1回、1時間のプログラムで2人のミリオネアを それぞれの理想の相手と カップリングするというもの。
マッチメーカーであり、番組を切り盛りしていくパティ・スタンガーは、厳しい指摘をズケズケすることで有名で、 彼女のビジネスは主に男性のミリオネアに女性を紹介するサービス。 女性は無料で彼女のビジネスに登録が出来るけれど、男性側はサービスに応じて、年間360万円〜1200万円のフィーを支払っているという。
今や世界中にクライアントを擁することで知られる彼女であるけれど、 ロサンジェルス・エリアだけで彼女のビジネスに登録している独身女性の数は3万人。 お金はあっても、恋愛相手に恵まれないミリオネア達に デートの心構えやマナーをレクチャーする一方で、 彼らに引き合わせる女性達には、「ヘアをストレートにするように」、「歯を白くするように」、「ボディコンのミニ・ドレスを着て、ハイヒールを履くように」と アドバイスしているのだった。

「ミリオネア・マッチメーカー」は 3週間前にスタートした今シーズンが 4年目という人気ぶりであるけれど、 私が同番組を突然見始めた理由は、今回から舞台がそれまでのロサンジェルスからニューヨークに移ったため。 加えて、「ミリオネア・マッチメーカー」は私の一部の友達の間ではかなりの物議を巻き起こしているのだった。 
そのNY版第一回目の放映に登場したのは写真左、左側の女性、ブライス・グラバー(26歳)と右側の デレク・タバッコ(40歳)の2人。 富豪の娘で、生まれながらのミリオネアだったブライスは、「男性のタイプはスーツを着たジョージ・クルーニ」 と言い切る理想の高さ。通常、リアリティTVに登場するのは、お金はあってもあまり出が良くない成金タイプと 相場が決まっているけれど、ブライスは珍しくブルー・ブラッド(育ちが良いこと)と言える存在で、 自らが運営するウェブサイトのパブリシティ獲得のために出演したと言われているのだった。
そのブルー・ブラッドぶりを証明するかのように、彼女は「人に訊かれても、コネクションや交友関係は一切明かさない」と コメントしてしおり、これは出の良い人々に共通したアティテュード。パティのスタッフには 「セックス・アンド・ザ・シティ 」のシャーロットのようだとコメントされていたのだった。

一方のデレクは、 スポーツ・ウェブサイトを経営。番組内で 家を3軒持っていて、カスタム・メイドの車に運転手付きで乗っていることなどを ひけらかし気味に オープンにするだけあって、スタッテン・アイランドに住む 垢抜けない成金タイプ。
「もう何年も結婚相手探しをしている」と語る彼であるけれど、理想のタイプとして「ホットなボディの若い女性」を条件に挙げるような リアリティの無さ。 パティには「彼が探しているのはストリッパーよ!」 などと手厳しい指摘をされていたのだった。

番組の進行は、パティが2人のミリオネアのために候補者をそれぞれ20人ずつ用意して、 ミクサー(交流パーティー)を行い、それぞれのミリオネアがその中から気になる候補を2人ピック。 そしてその2人とそれぞれ 1対1の会話をした後、デート相手を2人のうちから選ぶというもの。
その結果、ブライスは誰も気に入る男性が居なくて、パティが2人の候補者を選ぶ始末。 デレクは40歳という年齢にも関わらず、パティが薦めた30代のキャリア・ウーマンよりも ナイト・クラブで働く22歳の ”ホットなボディ&若さ”を選び、既にデートが上手く行くはずが無いことを見る側に感じさせていたけれど、実際の結末もその通り。

ブライスと男性のデートは、まずはセントラル・パークでボートに乗って、その後、「セックス・アンド・ザ・シティ :ザ・ムービー」の中で キャリー&ビッグが結婚式を挙げることになっていたパブリック・ライブラリーでのディナー。 でも終始 しらけて、男性を相手にもしていないブライスと、 仕事が高校教師で ブライスの財力と美貌に圧倒されている 男性との会話が続くはずも無く、見ているだけで居心地が悪くなるようなデートシーンが展開。

デレクのデートは ヤンキー・スタジアムからスタートし、滑り出しは好調であったけれど 相手の女性のためにディナー用のドレスをホテルの部屋に用意しておくなど、カクテル・ウェイトレスは喜ばせることが出来ても、 キャリア・ウーマンだったら首を傾げるような取り計らいを見せていたのだった。そしてホテルの客室のバルコニーでのディナーとなったけれど、 ミリオネアが選んだホテルにしてはシャンパンをフルート(シャンパン・グラス)ではなく、ワイン・グラスに注ぐような手抜きのサービス。
2人の会話は極めて退屈なだけでなく、途中からは話が続かなくなってきて、 最後には 食事の後、デレクをクラブに誘う女性と、 「今日は長い1日だったから、家に送っていく」 というデレクの間に、年齢と体力のギャップをまざまざと感じさせる結果になっていたのだった。

この2つのケースは、ある意味ではニューヨークのデートシーンを象徴しているようなもの。
人が羨むようなホットで 若い女性に一生懸命お金を使うものの、結局、彼女らの未熟さや 若さについていけなくなる40代アップの男性達。 その一方で、ボーイフレンドや将来の夫になりうる男性と出会いたいとは思っていても、仕事が忙しい上に、巡り会う男性は 皆 理想に見合わない存在ばかり。自分のキャリアで十分お金が入ってくるので、無理に妥協して相手を探す必要も無いと考える女性達。

2人のミリオネアに出会うためにやってきた女性、男性達については、これぞニューヨーカーというような女性や男性は見られなくて、 逆に こんなラインナップを何処から探してきたんだろう?と疑いたくなるようなファッションやルックス。
それもそのはずで、同番組のオーディションが行なわれているのは平日の就業時間。 なのでルックスが良い女性は、自称女優とかカクテル・ウェイトレスや学生。 それでもLA版に比べて、女性の学歴やキャリアのレベルは格段にアップしているのは、過去のシーズンを見ていたCUBE New York の スタッフも指摘していたのだった。

ところで、同番組が私の友人を始め、ニューヨーカーの間で物議と反感を醸しているのは、 パティ・スタンガーと彼女の右腕、デスティンがニューヨークとLAを比較して語ったコメントを始めとする、彼らの”西海岸ボケ”が 人によっては鼻につくため。
彼らによれば「 NYの女性の方がリアルで、LAのように豊胸手術をして、ヘアをブリーチしたブロンドが居ない上に、高学歴でシリアスな仕事に就いている。 でもその分、自分にかまっていなくて、セクシーじゃない。ニューヨークは男性の方が、外観に気を配っている」とのこと。
これに対してニューヨークの女性の反発は、 「まともな仕事をしていなかったら、ニューヨークで男性を見つけるなんて絶対に不可能」、 「LAのルックス(豊胸手術&プラチナ・ブロンド)はニューヨークではストリッパーにしか見えない」、 「NYの男性が外観に気を配っているように見えるのは、LAの男性のようにTシャツと短パン、マンダル(男性のサンダル履きを馬鹿にした言葉)で 外を歩いたりしないから」というもの。

確かに、私も同番組を観ていて パティ・スタンガーが非常にLA的だと思うのは、 例えば「仕事を優先させていたら、決して恋をすることなんて出来ない」と女性にお説教をするなど、 結婚相手を見つけて、養ってもらうのを前提としたような、オールドファッションなライフスタイルを目指すように プッシュしている点。
「女優志願で、学歴は無いけれど ルックスを頼りにLAに行って、女優キャリアが花開かないので、年を取る前に 誰かと結婚しなければ」という状況ならば それで良いかもしれないけれど、 高い学費を支払って学歴を積んで、レベルの高いキャリアを目指している女性に対して、何時去っていくか分からない男性を 仕事より優先させろ というのは かなり非現実的なセオリーに思えるのである。

加えて、ニューヨークでは時間がお金と同じくらい大切。
なので、デート相手にピンと来なかったら 無理に相手に合わせてつまらない会話をするより、 鼻であしらって、それ以上関わらないというのは 誰もがやっていること。
彼女のセオリーだと、何のケミストリーも感じられない相手にチャンスを与えなければならない訳だけれど、 これも時間の概念がずっとゆったりしているLA的な発想で、ニューヨークにはマッチしないコンセプトに思えるのだった。

さらに、パティ・スタンガーはオーディションにやってきた女性達に、 二言目には「LBD! (Little Black Dress / リトル・ブラック・ドレス)」と言って、黒のミニ・ドレスを着用するように お説教をしているけれど、実はニューヨークの男性にあまり評判が良くないのがLBD。
というのも、ブラックは”ニューヨークの色” として知られているだけあって、男性側にしてみればブラックを着用している女性は 毎日何十人と眺めているので、LAに比べてLBDの新鮮味が無く、逆に無個性に映ってしまう場合が多いようなのである。
また最初のデートでLBDを着用されると、変にシリアスな印象を与えてしまうケースもあって、 LBDが必ずしも オールマイティとは言い切れないのである。

もう1つ付け加えるならば、彼女が運営するミリオネア・クラブでは 女性側に、「もし最初のデートで男性が最高級のレストランに連れて行ってくれなかったら レポートしてください。 こちらで男性に正しいデートのマナーをレクチャーします」などとアナウンスしているけれど、 これはニューヨークの男性からも、女性からも反発を買っているポリシー。
女性側にしてみれば、最初からそんな高いレストランに連れて行かれたら、「次のデートが断りにくい」、「食事に時間が掛かるので 退屈なデートの場合、苦痛になる」、「引き換えにセックスを要求されているようなプレッシャーを感じる」、 「財力をひけらかすようなお金の使い方に興ざめする」というのが反発理由。
男性側にしてみれば、「これから どうなるか分からないような初めてのデート相手のために、どうしてそんな大金をディナーに 支払わなければならないのか?」というのが 反発理由で、 ニューヨーカーの方が、遥かにデートに対してリアリスティックであることを露呈しているのだった。

こうしたギャップがニューヨークとLAで生まれるのは、ライフスタイルや人生設計の違いなどもあるけれど、 やはりニューヨークの方がシングル・シーンが活発であるため。 マッチメーカーなど居なくても、男性だったらよほどルックスに問題さえなければ、自力でデート相手くらい探せるものだし、 女性とて いくら男性との出会いが無いと言っていても、マッチメーカー無しで年に2〜3人程度とはデートをしている訳で、 結果的に纏まらなくて、結婚相手は見つからなくても、デートくらいは自力でしていて、特に男性側はデート相手が変わるのを楽しんでいる傾向が否めないのである。


ところで、私の友人のブロンド美女は パティ・スタンガーのビジネスを真似たニューヨーク版のマッチメーキング・サービスに 登録していたことがあるけれど、彼女によれば、登録直後に3人ほどリッチな男性を紹介されたという。 3人とも比較的まともなルックスで、セントラル・パーク・ウエストにペントハウスを持っていたり、ヘッジファンドのマネージャーだったり 大金持ちであったというけれど、つまらないデートだったり、相手が変わり者過ぎて、3人とも2度目のデートを断ってしまったそうで、 そのせいか その後は2度と相手を紹介されなくなってしまったと語っていたのだった。
このことからも察しがつくとおり、これだけ男性にとって買い手市場のニューヨークで、 しかもミリオネアの財力があって、まともなルックスをしているのにも関わらず、マッチメーキング・サービスが必要な男性というのは、 どこかに根本的な問題があると考えられる人々。 なので、女性側が そんなマッチメーキング・サービスを通じて ミリオネアに出会ったとしても、 決して幸せになれるはずは無いのである。


Catch of the Week No. 5 Oct. : 10月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Oct. : 10月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Oct. : 10月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Oct. : 10月 第 2 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





© Cube New York Inc. 2010