Oct. 28 〜 Nov. 3, 2013

” Great Trashy Tell-All Books?”


今週のニューヨークは セントラル・パークの紅葉がピークを迎えていたけれど、 そのセントラル・パークをゴールに、日曜に行なわれたのが 世界最大のマラソンであると同時に、世界最大のスポーツ・イベントであるニューヨーク・マラソン。
昨年は ハリケーン・サンディの影響で、スタート時間の44時間前に史上初めて NYマラソンが中止となったのは 記憶に新しいところ。 727日ぶりに行われた 今回のマラソンは そのサンディの被災者に加えて、この春 ゴール地点で爆弾テロが起こったボストン・マラソンの ランナーやサバイバーに捧げる大会と謳われていたのだった。
このため約5万人の参加ランナーは、ボストン・マラソンのカラーであるブルーのリボンを付けて走っていたけれど、 ニューヨーク・マラソンは チャリティのために約50億円の寄付金を集め、ニューヨークの街に約350億円の経済効果をもたらす ドル箱イベント。

もちろん、マラソン自体にも 多額の費用が掛っていて、 スタート地点のスタッテン・アイランドに ランナーのために用意されていたのが 9万3,600本のウォーター・ボトル、 3万150個のパワー・バー(アスリート用のスナック)、563パウンドのコーヒー。同エリアの仮設トイレの数だけでも 1,748ユニット。
またランナーにとっては、レース中の水分補給が大切とあって、コース中に何十箇所も設けられたウォーター・ステーションでは 6万2,370ガロンの水と 3万3,040ガロンのゲータレードが用意され、使用された紙コップの数は230万個。
さらに怪我をしたり、気分が悪くなったランナーのために、コース中には38箇所のエイド・ステーションが 設置されていたけれど、そこには バンド・エイドの数だけで合計1万4000箱、袋詰めの氷が1万2,530個、 痛み止め薬が5万2,000ボトル、そしてワセリンのジャーが220個用意されていたとのこと。 ちなみに何故ワセリンが必要かと言えば、長距離を走るうちに 肌が 着用している衣類との摩擦で 真っ赤になったり、 皮膚が擦り切れて出血することがあるためで、 予めワセリンを塗っておくと、それを防ぐことが出来るのだった。

今回のニューヨーク・マラソンでは、ボストン・マラソンの爆弾テロを受けて、 警備が非常に強化されており、 ニューヨーク市警察署長のレイ・ケリーは、ボストン・マラソンの翌日から 今回のNYマラソンの警備プランに取り組んでいたことを明らかにしているのだった。


さて 今週のアメリカのメディアはと言えば、引き続き報じられていたのが NSA(National Security Agency / 米国家安全保障局)のコントラクター、エドワード・スノーデンが 持ち出したファイルから 明らかになった アメリカによる新たなスパイ行為。 それによれば 先週報じられた友好国を含む35カ国の首脳に加えて、NSAでは ヴァチカンでコンクラーヴェが行われている時期を前後して、 現在のローマ法王フランシスコの電話までもを ハッキングしていたとのこと。
ホワイトハウス側は、オバマ大統領がその事実を 知らなかったとしているけれど、国の安保局が行っていることを 大統領が知らないというのは信じがたいというのが一般の見解。本当に知らなかったのであれば、 大統領が ”蚊帳の外”に追いやられているとも解釈できるだけに、 知っていたとしても、知らなかったとしても 大統領にとっては体裁が悪い状況になっているのだった。

加えて今週も、スタートから躓いているオバマ・ケアが更なる問題点を露呈していたけれど、一部の人々の間で怒りを買っていたのが、 大統領が 「オバマ・ケアがスタートしても、自分の加入している保険が気に入っている場合はそれがキープ出来る」と謳っていた公約が 守られなかったということ。 今週に入ってから、個人で保険に加入していた人々が保険会社から受けたのが オバマ・ケアのせいで それまで加入していた保険プログラムが廃止されたため、新たに保険に加入し直さなければならないという通達。
これはオバマ・ケアが最低限の保険カバーの条件を定めているためで、これまで健康で あえてカバー率の低い 安価な保険に入っていた人々は、 そのプログラムがオバマ・ケアの最低保障ラインに満たないということで、廃止されているのだった。 こうした人々が新たに保険に加入し直す場合、それまでの約4倍の保険料を支払うことになるとのことで、当然のことながら その対象になった人々は 公約破りとしてオバマ・ケアに猛反発。
この状況を受けて、オバマ大統領は 今週のスピーチで これまで散々言い続けてきた「自分の保険が気に入っているならば、その保険がキープできる」という 謳い文句に、「殆どの人々が」という言葉を加えているのだった。

その一方で、今週はオバマ・ケアの責任者であるキャスリーン・セベリウス(写真上右)が議会の公聴会で、問題が山積する オバマ・ケアのウェブサイトについて説明していたけれど、それによれば オバマ・ケア・スタートの初日に、 「ヘルス・ケア・ドット・ゴヴ」のウェブサイトを通じて 申請を行えたのは 僅か6人。 それ以外の人々はエラー・メッセージの連続で、ストレスを抱えるだけに終わっているけれど、そのヘルス・ケア・ドット・ゴヴは 今週末にもサイトがダウンし、大統領が提示した11月30日までの修復が難しいことを感じさせていたのだった。

そんなオバマ・ケアの失態ぶりに加えて、NSAのスパイ行為で イメージダウンが続いた オバマ大統領の支持率は、今週の世論調査で 42%にまで低下。この数字は不人気で知られたジョージ・W・ブッシュ大統領の ハリケーン・カトリーナ後の支持率と大差が無いと言われているのだった。




さらに大統領にとって、新たなダメージとして浮上したのが、11月5日火曜日に発売される 「Double Down: Game Change 2012 / ダブル・ダウン:ゲーム・チェンジ 2012」という 昨年の大統領選挙に関する暴露本。
タイトルの ダブル・ダウンとは、ギャンブル用語から派生した表現で、この場合のダウンは下がるという意味ではなく 掛け金。(ダウンには 前金、頭金という意味もあります) すなわち ”掛け金をダブルにする=大きな賭けに出る” という意味。
同書の中では、再選に自信が持てなかったオバマ大統領が、 ジョー・バイデン副大統領の替わりに、 ヒラリー・クリントンを副大統領に 選挙戦を展開した方が有利であるかを検討していたことや、 オバマ大統領が 1回目のディベートで 共和党候補、ミット・ロムニーにやり込められ、 自信を失った発言をしていたこと、 またオバマ大統領が 彼の再選を救ったと言われるクリントン元大統領が非常に苦手で、一緒に18ホールのゴルフを することさえ耐えられなかったエピソード等、オバマ大統領と ミット・ロムニーの選挙キャンペーンのインサイダーから 集めたと思しき情報が数多く紹介されているのだった。
その中でも顰蹙を買っているのが、大統領がアメリカ軍のドローン攻撃について語っている際に、 「自分は人を殺すのが上手いんだ」と、ノーベル平和賞受賞者とは思えない ジョークを口走ったというエピソード。
同書についてホワイトハウスは一切のコメントを現時点では避けているけれど、 オバマ政権では、10月半ばにも そのスタッフが 過去2年に渡ってツイッター上で、インサイダー・インフォメーションを交えた 政界ツイートを続けていたことが発覚して 解雇されたばかりなのだった。


こうした暴露本は、英語では”Tell-All Book / テルオール・ブック” と呼ばれ、ハリウッドや政界を舞台にした物が圧倒的に多いけれど、 ファッション業界を舞台にしているのが、10月末に出版された ”In Her Shoes / イン・ハー・シューズ ” 。 同書は2011年に ジミー・チュウを去った、というより 事実上追い出されたと言われる 同ブランド創始者で、チーフ・クリエイティブ・オフィサーであったタマラ・メロン (写真上)の自叙伝であるけれど、実際にはジミー・チュウのビジネスの暴露本。
この中で タマラ・メロンは 学校を中退し、ブリティッシュ・ヴォーグで5年働くうちに、ドラッグを常用するようになり、 それが原因でヴォーグを解雇されて、リハビリ入りした自らの過去に加えて、その後 ジミー・チュウと組んで シューズ・ブランドを立ち上げた経緯を語っているけれど、 彼女がブランド創設後に気付いたのが、ジミー・チュウ本人に 全く クリエイティブな才能が無く、 靴の修理屋でしかなかったということ。
そこで彼女が助けを仰いだのが ジミー・チュウの姪で、今もブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めている サンドラ・チョイ。 タマラと彼女はヴィンテージ・ショップを回って、シューズのデザイン・アイデアを得て、 ジミー・チュウのラインを構築。 ジミー・チュウ本人は、自分の名前がついたブランドのために 1足のシューズもデザインすることは無かったという。

タマラとサンドラ・チョイで クリエイトしたシューズは、ヴィクトリア・ベッカムや生前のダイアナ妃といった 一流の顧客を獲得。アメリカでは、「セックス・アンド・ザ・シティ 」の中でフィーチャーされて、一躍知名度を上げたのだった。 やがて名ばかりのデザイナー、ジミー・チュウに持ち株を全て売却させて、ブランドから退かせたのは2001年のこと。
その後、ジミー・チュウは大きくビジネスを拡大し、タマラはブランドの広告塔としてメディアに登場。 セレブリティ・ステータスを高めていったけれど、彼女の私生活は プレイボーイの夫との離婚など、決して平穏なものではなかったという。
そしてジミー・チュウは 2011年にドイツの Labelux Group / ラベルクス・グループに買収され、 それがきっかけで、タマラ・メロンが同ブランドを去ることになったけれど、 ファッション業界では、同書が「タマラ・メロンのジミー・チュウに対するリベンジ本」という意見が多く、 同時に 彼女が新たに11月から展開する 自らのブランド・プロモーションも 兼ねているのだった。


同じく ”自叙伝”を謳った暴露本と言えるのが、10月29日に発売になった「The Bite in the Apple: A Memoir of My Life With Steve Jobs / ザ・バイト・イン・ジ・アップル:アメモアール・オブ・マイ・ライフ・ウィズ・スティーブ・ジョブス」。
同書は、アップルの創設者スティーブ・ジョブスと1972年から交際し、その後、アップルのエンジニアを交えて 3人で1つ屋根の下に暮らし、ジョブスとの間に娘、リサを出産したクリスアン・ブレナン(写真上左、中央)が執筆したもの。
2人の関係は1977年に終わったというけれど、同書によれば その後 ウェイトレスをしながら、生活保護を受けて 娘を育てていたクリスアンに対して、スティーブ・ジョブスはアップルの株式が公開され、ミリオネアになっても 養育費として 僅か500ドル(約5万円)しか支払っていなかったこと。 またジョブスは クリスアンが妊娠を告げた際には、「自分の遺伝子が盗まれた気分だ」と語り、 1979年のDNA鑑定で リサが自分の娘と立証されても、自分の子供とは認めようとしなかったという。
それ以外にも、スティーブ・ジョブスがクリスアンを蔑んだ態度で扱うなど、決して良い人間とは思えないエピソードが、 部分的に心温まるエピソードに混じってフィーチャーされているのが同書なのだった。

著名人に関する暴露本というのは、書籍の分野ではベストセラー・カテゴリーの1つになっているけれど、 2014年3月に出版される、ちょっと変わった切り口の暴露本が、 ゴシップ系の著書で知られるマイケル・グロスが執筆した「House of Outrageous Fortune: 15 Central Park West, The World's Most Powerful Address / ハウス・オブ・アウトレイジャス・フォーチュン:15セントラル・パーク・ウエスト、ザ・ワールズ・モースト・パワフル・アドレス」 という長いタイトルの本。
同書は、セントラル・パーク・ウェスト15番地のコンドミニアムに暮らす メガ・リッチの生活の実態を暴くもので、 このビルの住人は、スティング、デンゼル・ワシントン、ゴールドマン・サックスのCEO、ロイド・ブランクフェイン、ヘッジファンド・ビリオネアのダニエル・ローブ 等、錚々たる顔ぶれ。
同書の中で、既に話題になっているのが 2010年から約300万円の家賃を毎月支払って同ビルの住人になっている ヤンキーズのアレックス・ロドリゲスの 生活ぶり。彼は頻繁に娼婦を雇い、1度に2人の娼婦を雇うことも しばしば。 そして娼婦が帰った10分後に その当時 彼と交際していた女優のキャメロン・ディアスがやってくるという状況が 珍しくなかったという。
同書は15セントラル・パーク・ウエストのビルで働く人々や、ビルに関わる人々からの情報で構成されているようだけれど、 こうした人々が プライバシーに関わる情報をメディアに喋ってしまうのは ニュース性が高い人物というよりも、彼らが嫌いな人物。 実際アレックス・ロドリゲスについては、ビルのスタッフが口を揃えて「ナルシストで、感じが悪い」と 語っているのだった。

こうした身近な人間にプライバシーを暴露されないためには、日ごろから 良い態度で接することが大切と言えるけれど、 たとえ態度が多少横柄だったとしても 多額のチップさえ支払っていれば、周囲の人間の口が堅くなるのも また事実なのである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


PAGE TOP