Oct. 27 〜 Nov. 2  2014

” Tinder Week ”
ティンダー・ウィーク


過去2週間ほどエボラ・ウィルスの報道が多かったアメリカであるけれど、新たな患者が出ることもなく、 それまで隔離されていた人々が 21日間の潜伏期間に発病することなく、普通の生活に戻ったニュースが報じられるようになって、 恐れられていたウィルスに対して、人々が徐々に 平静さを取り戻しつつあるのが現在。
逆に、これまで安全だと思われていたものに警鐘を鳴らすことになったニュースと言えば、ヴァージン・ギャラクティックの ロケット・プレーンが墜落し、パイロットが死亡した事故。 2004年に設立されたヴァージン・ギャラクティックは、民間企業による初の宇宙旅行ビジネスで、 「お金さえ出せば、誰もが宇宙に行ける時代の到来」を高々と謳っており、 チャリティ・イベントのオークションでその宇宙旅行が落札されたり、 レオナルド・ディカプリオ、ケイティ・ペリーといったセレブリティもその旅行を予約するなど、 話題を提供し続けてきた存在。
これまで その危険性について誰も指摘したことがないビジネスであったけれど、11月1日に起こった 打ち上げ直後のロケットの爆発炎上は、宇宙旅行に伴う危険性を世の中に 改めて示す結果となっていたのだった。

その一方で、今週のニューヨークは 金曜がハロウィーンで毎年恒例のパレードが行われ、、土曜の夜中過ぎにサマータイムが終了し、 時計の針を1時間遅らせるデイライト・セイヴィング、 そして日曜の朝からは ニューヨーク・マラソンという多忙な週。
今週は週末に掛けて気温がかなり下がった上に、風が強かったため、約5万人のランナーが参加したニューヨーク・マラソンは、 世界の一流ランナーも例年に比べてスロー・ペースで走らざるを得なかった状況。 そのニューヨーク・マラソンは、今年で44回目を数えるけれど 今大会で2万5,743番目にゴールしたランナーが、ニューヨーク・マラソン史上、100万人目の完走者。 このランナーは、2015年のNYマラソンへの参加資格が保証されるとのことなのだった。

ニューヨーク・マラソンは、ランナーの数でも世界一であるけれど、1万人のボランティアが 運営をサポートし、コース内に設けられる簡易トイレの数だけでも1,952ユニット。 使われる紙コップの数は230万。そして沿道で見守る人々の数も約200万人と言われ、 文句なしに世界最大のスポーツ・イベント。
例年、約300のチャリティのために30億円以上の寄付金が集められるイベントでもあり、 市外からの参加ランナーと その家族&友人の旅行収入や、スポンサー資金などで、 ニューヨーク市に350億円以上の経済インパクトをもたらしているのだった。




ところで2年前にスタートし、現在 若い世代のユーザーが最も多いデート・アプリが Tinder / ティンダー。
これは、フェスブックのアカウントを通じてログインし、フェイスブックのプロフィールに アップロードされている写真を通じて、ルックスのみで気に入った相手を選ぶというシステム。 閲覧する写真は 自分が出会いたい相手の年齢、相手が現在居るロケーションなどを 入力することによってフィルターが掛けられる仕組み。 写真を見て気に入ったら右にスワイプして「Like」、気に入らなかったら左にスワイプして「Nope」を選び、 自分が「Like」した相手が、自分の写真を見て「Like」してくれた場合は、マッチが成立し、 お互いにメッセージを送りあえるという至ってシンプルなアプリ。
ダウンロードは無料、使い方も簡単な上にゲーム感覚とあって、ティンダーの アクティブ・ユーザーの数は今や5000万人にも達する勢い。 多くのユーザーは、1日に11回程度ティンダーを利用するとのことで、仕事の合間やランチ・ブレークで 雑誌をめくる感覚で、写真をチェックするのが同アプリ。 女性ユーザーが1回に費やす平均時間は約8.5分、男性ユーザーが費やす平均時間は7.2分。 すなわち、ユーザーが1日に90分前後を使っているのがこのアプリなのだった。

ティンダーは 相手のルックスだけを見て、近距離に居る相手とのインスタントな出会いを提供することから、 ワンナイト・スタンド(一夜の火遊び)の相手を探すアプリというイメージも強く定着しており、アメリカでは 「ティンダーで真剣な交際相手を探している」などと言おうものなら、 一笑に付されるのが実際のところ。
ところが、Cube New Yorkの留学ビジネスである Will New Yorkで雇った デート・インストラクターによれば、 ティンダーは マッチ・ドット・コムやEハーモニーといったオンライン・デート・サイトに比べると、 遥かに昔ながらの男女の出会いに近い体験を提供するとのこと。 それを聞いて「まさか!」と思っていたところ、 彼の言い分を弁護するような記事が、今週木曜のニューヨーク・タイムズ紙に掲載されていたのだった。




この記事によれば、ティンダーの創設者の考えでは、マッチ・ドット・コムやEハーモニーといった オンライン・デート・サイトが提供するのは非常に不自然な出会い。 というのも 人が自然に出会う場合、自分のプロファイルを記入して、質問事項に答えて、その情報を交換し合って 出会うというのは有り得ないシナリオ。 お互いの顔や雰囲気を見て、興味がある者同士が お互いのバックグラウンドなどを あらかじめ知らずに声を掛け合うのが普通の出会い。 そう考えると、ティンダーによる出会いはオールド・ファッションなデート相手探しに通じるコンセプトなのだった。

またティンダー社内のデート心理の専門家によれば、人は写真を見ている最中、相手のルックスだけに関心を払っているのではなく、 その相手が着ているものや、顔の表情など、写真に写っている全てから、様々な情報を得ようとして、 相手に思いをめぐらせるとのこと。 その結果、ティンダーでは特定のルックスの良い利用者に「Like」が殺到することはあまり無いという。
逆に、マッチ・ドット・コムに代表されるオンライン・デート・サイトの場合、サイトに記載されているプロフィールを 鵜呑みにして、写真から相手を知ろうとはせず、相手のルックスをチェックする用途でしか使わないケースが殆ど。 このため、見るからにグッドルッキングな利用者に、コンタクトが殺到するのがシナリオ。 私の友人のブロンド美女は、以前オンライン・デート・サイトへの登録したところ、僅か3日で200以上のコンタクトが寄せられたと語っていたのだった。

ティンダーの利用者がルックス・コンシャスでないことを立証するかのように、ティンダーでは そのユーザーに、 グッド・ルッキングなモデルの写真を見せて、そのリアクションをチェックする試みを行ったという。 すると多くの女性利用者は 男性モデルの写真を見ると、ナルシストのイメージを抱いて敬遠する傾向にあり、 男性モデルに好感を持った女性は僅か14%。 一方の男性が、女性モデルに惹かれる確率はそれより高い 46%であったけれど、 それでもこの数字は一般に思い描かれているよりも、ずっと低いといえるのだった。

要するにルックスが良いからと言って、デート相手が沢山見つかるわけではないというのが現実の世の中。 ニューヨーク・タイムズ紙の記事では、むしろその逆であるケースが多いとさえ指摘していたのだった。


では、デート相手が沢山見つかるルックスとはどんなものかと言えば、専門家の分析では 人とは異なるユニーク、かつ好感が持たれるルックス。
したがって どんなに見た目が可愛い顔でも、韓国のビューティー・コンテストの候補者のように、 「25人が揃いも揃って全員同じ顔 」というようなルックスの良さは、気味が悪いと思われて、好かれないのが欧米社会。 ハリウッドにおいても、「何処にでも居そうなブロンド美女ではスターになれない」と言われて、早50年以上が経過しているのだった。

でも、自分の顔の個性をそのままにルックスが向上するのであれば、それがティンダーで有利に働くと考える人は多いもの。 そんな、ティンダーの利用者の間で人気を博しているのが、Pixtr / ピクストルというアプリ。 これは写真を フォトショップで修正してくれるアプリで、写真上で見ての通り、 シワ、ニキビを含む顔の粗を隠し、鼻の形を整え、目に輝きを増して、肌をスムースに見せてくれるもの。
確かに、写真上のアフターは ビフォアの顔を ナチュラルにベターにしたバージョン。 でも私の考えでは、ビフォアの写真で彼女が気に入らなかった男性は、アフターを見ても彼女を気に入ることは無いと思うのだった。

結局のところ、見た目に美しい女性というのは、 それによってチヤホヤされることはあっても、恋愛に恵まれなかったり、 「周囲が思うほどはモテない」ケースが意外に多いもの。 私が知る限りでも、本当にモテる女性というのは、さほど美女とは言えないケースが多いのだった。
デート・サイトに登録後3日間に、200以上のコンタクトがあった私のブロンド美女の友人が ティンダーを利用したらどうなるかは 興味津々であるけれど、彼女はまさに チヤホヤされることは多くても、ボーイフレンドや恋愛には恵まれないタイプ。
実は私も、彼女と仲良く 一緒に出掛けるようになってから、 私のようなアジア人でも、 年下のブロンド美女に 引け目を感じる必要が無いことを学んだ次第。 というのも 2人で一緒に居て、私だけが 男性からビジネス・カードをもらうケースが何度と無くあったためで、 英語で言うアプローチャブル、すなわち近寄り易いルックス、親しみ易いルックスというのは、 美しさよりも 社交やデート、キャリアにおいて 武器になるケースは少なくないのだった。



Will New York 宿泊施設滞在



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




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