Oct. 26 〜 Nov. 1 2015

” Bacon & Marathon Could Shorten Your Life? ”
加工肉とマラソンは早死の原因?


今週末のニューヨークは 土曜日がハロウィーン、日曜が今年で45回目を数えるニューヨーク・マラソンが行われるマラソン・サンデーとあって、 ハロウィーン・パレードとマラソンの警備に当たったNYPD(ニューヨーク市警察)は大忙し。 世界最大のスポーツ・イベントであるニューヨーク・マラソンは、毎年 チャリティ目的でセレブリティ・ランナーが参加することで知られているけれど、 今年はイーサン・ホーク、アリシア・キーズ等が5万人の参加ランナーと共に、沿道の人々の歓声を浴びながら走っていたのだった。
今年もケニア勢が男女共にトップでゴールインしているけれど、男子優勝者のスタンリー・ビウォットのタイム(2時間10分34秒)と、 女子の2年連続の優勝者、メアリー・ケイタニーのタイム(2時間24分25秒)の違いは13分51秒。 これはプロのランナーの男女のタイム差としては、昨今の平均値と言える数字であるけれど、アマチュアの世界においては、 女性ランナーが 男性を上回るペースで タイムを向上させていることが伝えられており、それに伴って女性ランナーの数も増える傾向にあるのだった。




マラソンを走るアマチュア・ランナーの殆どは、見るからにフィットした体力に自信がありそうな人々。 ところが マラソン・ランナーと 週に20マイル(32キロ)以下を走るモデレート・ランナー、 そして全くランニングやエクササイズをしない人々、5万2000人を 30年間フォローした調査によれば、 マラソン・ランナーの平均寿命は、驚くなかれ 全くエクササイズをしない人々と同等。
それどころか、長年のマラソン・ランナーの方が、全く運動をしない人々よりも 冠動脈プラーク(心臓病や脳梗塞のリスク・ファクター)が多いというデータも得られているのだった。

そもそもマラソンがさほど健康のためにならないと指摘される要因は、 長過ぎる距離のランニングで、骨や筋肉に逆にダメージを与えていることに加えて、 ランニング中の脱水症状が心臓に負担を与えるため。
でも冠動脈プラークの要因になっているといわれるのは、マラソンに耐えるエネルギーを身体に補給するために 食べるパスタ等の炭水化物や、マラソン中&トレーニング中に飲むスポーツ・ドリンクの糖分、 マラソン後の疲労を癒すために摂取する糖分や脂肪分の多いたんぱく質など。
ニューヨーク・マラソンにおいては、毎年マラソン前夜に参加者を招いてのパスタ・パーティーが行われるけれど、 実際のところ前夜に摂取する炭水化物の量が多いと、通常多くのマラソン・ランナーが35キロ地点前後で味わう クラッシュ(劇的な疲労)が緩和されることが これまでの調査で明らかになっており、マラソンの日の朝食で何を食べるかよりも 前夜の炭水化物の量が 体力に大きな影響を与えると言われて久しい状況なのだった。

マラソン・ランナーは日頃からトレーニングで長距離を走っているだけに、炭水化物をエネルギーで消費をしていると考えがちであるけれど、 その炭水化物こそが冠動脈プラークの原因。 逆に 全くエクササイズをしていなくても、炭水化物の摂取を極力抑えた食生活を20年続けた女性が 45歳にして冠動脈プラークがほぼゼロというケースもレポートされており、 エクササイズだけでは体重が落とせないのと同様、マラソンを走っても炭水化物が多い食生活の問題は補えないことが この調査で立証されているのだった。

でも、週に20マイル(32キロ)以下を走るモデレート・ランナーについては、エクササイズをしない人々よりも 平均寿命が19%アップするという調査結果が得られているのに加えて、以下の肉体的、精神的ベネフィットが明らかになっているのだった。
・血圧、肺活量、コレステロール値など、健康状態全般が改善する
・体重を落とすことが出来る
・抵抗力が増すので、病気や感染症にかかり難くなる
・自分に自信がつく (精神的に強くなる)
・ストレスを解消できる
・精神的な落ち込みを回避できる

モデレート・ランナーとは、1週間に約32キロ程度を、3〜5回に分けて 1日7〜11キロを走るランナーで、 年齢や性別、体力に関わらず 時速11.5キロ以下が安全かつ、身体に負担が掛からないスピードと言われているのだった。




でも今週のアメリカで最も物議を醸していた健康関連のニュースと言えば、 月曜にWHO(世界保健機関)が 加工肉を食べることに 喫煙同等の発がん性のリスクがあるという新しいガイドラインを発表したこと。 加えて 牛肉、豚肉、ラム肉などを含む赤身の肉についても、 発がん性をもたらすかもしれないリスクがあると WHOが見解付けていたけれど、 このニュースを聞いて ヴェジタリアンやヴィーガンが優越感に浸ったのも束の間、 肉食のアメリカのメディアだけでなく、イギリスのメディアまでもが 医療や栄養学の専門家が打ち出すデータを持ち出して、猛反発を見せていたのだった。

イギリスのがんリサーチの調査結果によれば、イギリス人の1000人中 66人が その生涯で大腸がんを患うというけれど、 ベーコン、ハム、ソーセージといった加工肉を控えた食生活をしていた人々でも 1000人中 56人が大腸がんになっており、 その違いは僅か1000人中10人、すなわち100人に1人=1%という ”誤差”の域を出ない数字。
また栄養学の専門家の多くは、赤身の肉が必須アミノ酸を摂取するために非常に有効である等、 健康面での肉のベネフィットをWHOが無視していることにも反発しており、 「ヴェジタリアン&ヴィーガンの女性が貧血に悩まされるのは、鉄分を豊富に含む肉を 摂取しないため」とも指摘しているのだった。

アメリカでは、今年に入ってからUSDA(農務省)が「卵黄やバターなどハイ・コレステロールの食べ物が、 実際には 高コレステロールの原因になる訳ではない」 として、従来の見解を改めるダイエタリー・ガイドラインを発表して、 卵白のオムレツがヘルシーだと信じてきた人々を混乱させたばかり。
それだけに、今週のWHOの発表は ヘルス・コンシャスの人々に 「専門家でさえ、何が健康を害する食生活なのか、はっきり分かっていない」という印象を強く与えていたのだった。





WHOが加工肉と赤身の肉の発がん性、および発がんの危険性についての発表をした月曜に、私が Will New Yorkのイベント・スペースでホストしていたのが、異業種交流の”肉ディナー”。 総勢12人のディナーで そのうち8名が男性だったため、男性が喜ぶ ” 肉中心のメニュー ” ということで、 ディナーを提案したところ、某レストランのシェフが 全コース肉料理のディナーをサーブして下さったのだった。
ディナーを始める直前にWHOの見解が少しだけ話題になっていたけれど、 ファースト・コースのビーフ・カルパッチォを一口食べた途端に そんな事はすっかり忘れて、 全員で6コース(写真上はそのうちの4品)の肉料理を食べまくったのがこのディナー。 その時にふと思ったのが、野菜料理はたとえどんなに美味しくても 肉料理ほどはディナー参加者のテンションを上げられないということ。 したがって、ファースト・コースから超美味な肉料理を味わうことは、特に男性が多いディナーの場合、アルコールが入る以上の アイス・ブレーカー(初対面の人たちが打ち解けるきっかけ)だと思ってしまったのだった。

かく言う私は、肉は食べても 加工肉とひき肉は極力食べない主義を貫いて15年は経過するけれど、 そんな私も2003年頃にベーコンに凝った時代があって、当時はヴァージニア州の有名な業者から、 アップルウッドでスモークしたベーコンを取り寄せて、それを耳たぶのようなプルプルの状態に炒めては、毎日のように食べていたのだった。
でもある時、 友達に「コレスロールのチェックをした方が良いのでは?」と冗談で言われたのがきっかけで、本当にチェックしてみたところ その数値があまりに高いのに驚いて、他の食生活は一切変えずに ベーコンだけ食べるのを止めたところ、 薬など一切飲まずして 1年後にはその数字が60以上も下がって、正常値の上限に落ちついていたのだった。

とは言っても 私が加工肉を食べないようにしているのは、コレステロールを心配しているというよりも ケミカルを恐れているためで、ファースト・フードや工場生産のフードを食べないようにしているのも同様の理由。
ファースト・フードについては、今年の夏に 日本にも進出しているアメリカの某チェーンが 「ブラック・ペッパー・エクストラクトの使用を止めて、 今後は本物のブラック・ペッパーを使用する」と発表したけれど、要するにそのチェーンは コストを落とすためにブラック・ペッパーを使用せず、ブラック・ペッパーの味をケミカルでクリエイトしていた訳で、 同様のことはファースト・フード・チェーンや工場生産のフードにおいては決して珍しいことではないもの。
こうしたケミカルが新陳代謝をスローダウンさせたり、体内に居残って悪さをするのは周知の事実で、 私にとっては 食べ物を装ったケミカルの方が、どんなに身体に悪いと言われる食材よりも はるかに恐ろしいと感じられるのだった。

Will New York 宿泊施設滞在



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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